2002.6.28 「この期に及んで深まる謎」編


どんどん行きますよ。

 

【7/28】

例によって悪夢を見た宏。

お嬢は体調を崩して寝込んだままでした。

海で泳ぐのは初めてだったから疲れただけ、なんて強がるお嬢が悲しいです。

宏に看病のお礼を言うお嬢。なんで体調を崩すんだろう……?

 

寝ているお嬢をうちわで扇ぎながらメデスと会話する宏。

メデスによると死神とは『既に死んだ存在』なので『死ぬ』ことは無いそうです。

でも『消える』ことはありえるんだとか。

それにしてもやっぱりお嬢はもう死んだ人間ってことなのでしょうか。

何をすればいいのか考えている、と宏は言いますが、そんな宏をメデスは鼻で笑っているかのようです。

動け、とメデスは言うのです。

宏もそんなことはわかっているのですが。

ちとせとお嬢。

苦しむ2人の少女を思うだけで宏も苦しいのです。

「動け、稲葉。我が輩と違って、お前には人を抱く腕も、歩み寄ることのできる足もある。あがくだけあがいてみろ」

それが人間だ、とメデス。お前の言葉は相変わらず重いよなぁ。

そんなメデスに礼を言いかけて飲み込んだ宏。

その言葉は全てが終わってからだ、と。

どんな『終わり』なのかはわかりません。

  ○ちとせの元へ行く

  ○お嬢の元にいる

……はうっ!

とりあえず動こう、という宏の意気込みは嬉しいのですが……究極の選択。

下手をすればエンディングすら変えかねない選択肢だと思います。

そこで俺はどうすればいいのか。

 

 

もちろんお嬢の元にいます。

 

 

だからと言ってちとせを軽んじている訳ではありませんよ!!

ただこんなにも弱弱しくも愛しいお嬢を放っておくなんて……できない!!

でもちとせも可愛い妹……俺だって苦しいんです。

 

お嬢とそうめん。

でもお嬢は箸も持てないほど弱弱しくなっていて……。

涙目になりながらも必死でそうめんを食べようとするお嬢……ああぁ……。

宏がいくら言ってもお嬢は意地になっているのか箸を動かすばかり。

しかし麺は無常にもお嬢の口に入る事は無く……。

「うう〜……どうしてかな、前は上手くいったのに……」

見かねた宏は立ち上がってお嬢の手から箸を奪い取りました。

「……つまんないな」

「どうして?」

「だって、自分で食べたかった」

「……お嬢、おれと会った頃に言っただろ。ひとりだとつまらない事も、ふたりだと楽しくなるって」

「あ……」

「あれは、嘘だったのか?」

「……嘘なんかじゃ無いよ。ほんとに、楽しくなるんだから」

「じゃ、今も楽しくないか? だって、ふたりで食事を取るんだから」

「う〜ん、そうか。じゃ、楽しい」

やっとお嬢が笑顔を浮かべてくれました。

しかも『あ〜ん』まであったので俺は幸せです。

 

休んでいるお嬢を残してちとせのところへ。

ちとせの部屋の前に立った時、宏の耳に聞こえてきたのは……嗚咽。

ああ……ちとせも苦しんでいる……悲しんでいる……。

ノックしてしばらくして返事が聞こえてきてから部屋の中へ。

そこには元気そうにしたちとせが居ました。

もちろんベッドにいるのですが、その顔は笑顔を絶やすことの無い顔で……。

宏はベッドに腰掛け、何かを言おうとするのですが……言葉はつまってしまうばかり。

言いたいことはたくさんあるのに。

お嬢に貸したマンガの感想を聞きたがるちとせ。

そして近く迫ってきた手術が楽しみだ、とちとせは言います。

「虫を捕ったり出来るし……海や川で泳げるようになるし……ハイキングにだって行けるし、かけっこだって出来る……。楽しい事がいっぱいだよ!」

曇りの無い笑顔。苦しみを隠した笑顔……ううぅっ。

「だから、手術が終わったら、4人でたくさんたくさん遊ぼうね! お兄ちゃんと、華子お姉ちゃんと、お嬢ちゃんと、わたしで……」

「……ああ。たくさん遊ぼう。それこそ、ぶっ倒れるまで」

宏は目を瞑りますが、どうしても4人が楽しく遊んでいる様子を浮かべることは出来ませんでした……。

 

ほとんど食べることの出来なかった夕食後、お嬢が宏に質問してきました。

「どうして、チーちゃんは看病してあげないの?」

「…………!」

自分がいてもちとせの心臓がよくなる訳でもないので意味がない、と自分に言い聞かせるように答える宏。

そんなの関係ないよ、とお嬢。

「すっごく意味ある」

「え?」

「チーちゃんが喜ぶんだもん。大事な大事な、意味」

「…………」

「でしょ?」

にこー笑い。

「あ、ああ……そう……だな」

そう認めると同時に宏に沸いてきた悔恨の感情。

もっとちとせの側にいてやればよかった、と。

 

結局ちとせの側にいなかったのは無力な自分に気付きたくないという自分可愛さのためだったことに気付いた宏。

いつの間にか駅前に宏は居ました。

そこで聞こえてきたのは華子の絶叫。

結局宏は食堂で野球中継を見ていた華子にビールを付き合われることに。

華子が酔いつぶれてしまったので支えながら店の外に出た宏。

「で、どこに行くんだ? 実家でいいのか?」

「そう……ちとせの部屋」

「あん? ちとせの部屋? 何でだよ。もう寝てるだろ?」

「元気……づける」

「…………」

「阿呆……」

「あ?」

「お前は、ほんとに阿呆だ……彼女の……不安にも気が付かないで……」

それきり黙りこんだ華子。

宏……ここで動かなくちゃ漢じゃないぜ。

「なあ、華子……手術って……そんなに難しいのか?」

返事無し。

「おい、華子……寝たのか?」

「……寝てない。阿呆には……答えない」

「…………」

「自分で考えろ……馬鹿」

「……ああ、そうだな……」

 

完全に酔いつぶれてる華子を玄関において、宏はちとせの部屋へ。

突然やってきた宏に驚くちとせに宏は告げました。

この村に住むことにする、と。

その言葉にさらに驚き、問いかけてくるちとせ。

この家には絶対に住みたくないと言ってた宏がそんなことを言ったことに驚いているのです。

気が変わったんだ、と宏。

お姉ちゃんに何か言われたんでしょ、と「あはは」と笑うちとせ。

「ちとせ……ごめんな」

「え?」

「今まで、側に居てやらなくて」

「あ……」

「それに……笑顔ばかり押しつけて」

手術迫ってきたよな、と宏。

「不安か?」

「……う、ううん、そんな事無い」

ぶんぶんと手と頭をちとせは振ります。

「だってほら、麻酔が効いている内に手術なんて終わっちゃうし……」

「うん、そうだけどさ。でも……」

ちとせの肩に手を回して、その小さな身体をぐっと引き寄せる宏。

今こそ……今こそ、『兄』を、『漢』を見せる時!!

「あ……」

「ごめんな。ほんとは、おれがこんな事言っちゃいけないのかもしれないけど……おれは、不安だよ」

ぴくんと震えたちとせの身体。

「思えば、いつだって不安だったんだ。でも、おれにはそうしようも無い事で……不安から、そして無力感から、おれはいつだって逃げていた……考えないようにしていたんだよ」

「お兄ちゃん……」

「これからは、ちとせの側に居て、ちとせの事をたくさん考えるようにする。ちとせが不安じゃ無いって言うなら、おれが代わりに不安になる。代わりに悲しんで、代わりに怖がるんだ。どうさ?」

「…………」

くすっ、と笑い声を漏らすちとせ。

「……お兄ちゃん、とってもヘンな事言ってるよ。側にいてくれるなら、代わりじゃなくて、一緒に、でしょ? 一緒に笑うの」

「ああ……そうかもな。ヘンなこと言ってゴメンな」

「うんん……それだったら、わたしだってヘンだよ。だって……涙が出ているのに、わたし、とっても嬉しいんだもの」

泣きながら笑うちとせ……よかった……よかったなぁ……。

「嬉しいのに、泣けちゃうの。これも……ヘンだよね?」

「……ヘンじゃない」

もう言葉が出てこなくて宏はちとせの頭をくしゃくしゃとかき回すばかり。

それが呼び水になったように、くしゃっと泣き崩れたちとせの顔。

「う、うう……お兄ちゃん……」

宏の胸で泣き続けるちとせ……初めて宏に見せた泣き顔。

それは宏が『本当のお兄ちゃん』になった瞬間……。

 

よかった……本当によかったよぉ!!

ちとせぇ!!

俺はお前にも幸せになってもらいたいんだよ!!

こんな健気な……優しい子が幸せになれないなんて理不尽が許されてたまるかよ、なぁ!?

 

帰り道。

自分の影を踏もうと子供のように頑張っていた宏に話しかけてきた人間がいました。

「こんばんは」

華子……いや、口調は間違いなく千夏さんです。

もっとも宏は華子だと思ってますが。そう言えば宏は千夏さんに会ったことが無いんでしたっけ。

何やら千夏さんは上機嫌のようですが、宏はそれが玄関先に放置された華子の怒りの表情だと判断。

謝っても千夏さんには何のことやら、って感じです。

 

そして宏は千夏さんに違和感を感じながらも一緒に草原へ。

「あのさ、酔うとそうなるの?」

「え? ちょっと違うかな。嬉しいとこうなるの」

さっきはなにしてたの? と千夏さん。

「あれ……あれは、自分の影が踏めないかなって」

「ふ〜ん、自分の影を踏むねぇ」

「いや、出来ないのは知ってるんだけどな」

「……そんなことないよ」

「えっ?」

「叶わない夢はないよ。でも、叶えてしまうと消えてしまう夢もあるの。叶わないほうが幸せな夢もあるの」

「……」

千夏さんの声に作り物めいたもの感じる宏。まるでメデスと話しているようだ、と。

「それでもさ、人はあがくんだろ。それが夢である限り、どんな結末が待っていても」

「…………」

息を呑んだ……ような感じの千夏さん。

「強くなったね」

「ん?」

「ちとせちゃん、喜んでたね」

「……聞いてたのか?」

「うんん。でも、君の顔を見れば分かるよ……。お兄ちゃんの顔してるもん」

「……ぜってぇ、素面じゃ言えないよな」

そうね、とくすくす笑って少し離れる千夏さん。

「ねぇ……あの子のほうがどう? 探しモノ見つかったって?」

「探し物? ああ、お嬢か。そうだな、今はそれどころじゃなくて……。大切なモノだって言ってたけど、なんだろうな」

「本当は、もう見つけてるんじゃないかな……」

「え?」

それきり千夏さんは何も喋りませんでした。

ただ悲しそうに空を見上げるばかり……。

 

旅館に帰ると華子から預かった帽子がありませんでした。

「あぁ……あれ、返しに行ったよ」

布団の中からだるそうに答えるお嬢。

「……そうか。ちゃんと返せた?」

「うん。返したよ。喜んでくれた……」

そうか……この日は律が死んだ日でしたか。

漢・律よ、安らかに眠れ。

まぁ今夜はゆっくり眠ってくれな、と宏。

「そうだ、寝ないでついてようか?」

「そう言ってくれるの、待ってたんだ」

宏のほうを向いて、にっこり微笑みながらそう言ったお嬢……たまらんかも。

俺でもよければ寝ないでと言うか寝かせないでと言うか……でもお嬢の寝顔を眺めてるのもそれはそ(以下略)。

 

お嬢が寝たのを確認すると、宏は書置きを残してメデスを持って浜辺へ。

お嬢はどこに行っていたんだ、とメデスを問い詰める宏。

帰って来た答えは「お前の考えている通りだ」。

つまり……死神の『仕事』をしてきたということ。

「なんでだ……そんなに死神の仕事が大切なのかよ!? あんなにボロボロなのに……神様ってやつがいて、そいつに命令されているのか?」

もしそうなら、と宏は思います。

神様だろうがなんだろうが、俺が殺してやる。

「少し落ち着け稲葉」

「……すまない」

「いや。お嬢のためと思えば些事だ。お前の気持ちを否定はしない。だが、誰かがやらなくてはいけないんだ」

死神がどうやって生まれるか知っているか。そうメデスは言います。

「死神はな。皮肉なことに、やさしい魂だけがなれるんだ。やさしい魂が、なんらかの事情できちんと彼岸に運ばれなかった魂が……彷徨って彷徨って、いきつく先が−−」

「まさか……」

「そのまさか、だ」

それがお嬢だと言うのか……なんと……なんという悲劇。

「稲葉」

「…………」

「お嬢はな、自分の辛さを知っているから頑張るんだ。死神は誰にも気付かれず、誰にも見えず。”死”にばかり関わって、泣き顔ばかり見ていかなければならない。そんな生活をもう半世紀は続けている」

ってことはお嬢は60歳は超えているってことか……。

「そんなのありかよ……そんなもん聞いたら……止められるわけないじゃないか」

ちとせと同じだ、と宏。

自分が一番辛いのに、つねに笑顔で頑張って……。

「ありがとう、と言う言葉だが。元来の意味では、有り難い−−つまりなかなか起こらない出来事への謝辞なのだが」

唐突に語りだしたメデスの口から出てきた言葉は−−

「ありがとう。お前には感謝している」

「…………」

メデスの口から出てくると……重い言葉だな。

でもそれだけにメデスの実感がこもっているような……そんな言葉です。

「お嬢はどうして死神にな−−」

言いかけて消えた言葉。

どうしてお嬢が死神になったのか。

宏は気付きました。

お嬢とメデスがどこで会ったのか。

どうしてお嬢の魂がきちんと運ばれなかったのか。

 

もし……、

もしも、だよ。

もしかして、死神がやって来たら、こう言って欲しいの。

『この女の子は我が輩の獲物だ。だから、お前などお呼びでは無い』

 

そしてメデスはその少女の願いから生まれた命。

でもメデスがその役割を演じることは無かった……。

 

「あっ」

暗がりから声。

「お嬢?」

ふらふらしながらも浜辺を近づいてくるお嬢。

慌てて駆け寄った宏の足に抱きつくとお嬢は言いました。

「……ばか」

「お、お嬢、どうした!?」

「ずっと看病してくれるって言ったのに……起きたときに誰もいなくて。メデスにいなくて……ほんとに捨てられたのかと思った」

泣いてはいないものの限りなく弱いお嬢の声。

その声に宏の胸が痛みました。

「ごめん」

砂浜に膝をついて、お嬢をぎゅっと抱きしめる宏。

「ごめんな……」

「……ぽかぽかしちゃうぞ」

してください……(←バカ)。

「ぽかぽかは痛いから勘弁な」

「じゃあ、もう約束破っちゃだけだよ」

「ああ」

頭をなでながら立ち上がるとお嬢はにこー笑い。

 

え〜と……お嬢はやっぱりメデスを生み出した姉妹の妹だったということなんですね。

妹……つまりお嬢の願いによって命を得たメデスでしたが時既に遅し。

お嬢の命は失われてしまった……。

でもお嬢の魂を運ぶべくやってきた死神はメデスによって追い払われてしまった、と。

本来妹がメデスに頼んだのは『命を奪うべくやってくる死神を追い払う』こと。

しかし実際にお嬢の命を奪われてしまい、メデスに出来たのは魂を運ばれないようにすることだけ。

結果としてお嬢は死神に……。

 

なんと悲しい物語なのでしょうか……うううっ。

 

お嬢!!

 

切なさが止まらないよ!!

 

【7/29】

例の悪夢を見た宏が目覚めると、そこには元気なお嬢が。なんていい朝なんだ……。

夢を見たにも関わらずうなされていなかった宏。

それは夢に出てくる視線の主達が決して宏に危害を加えることができないことを理解したからでしょうか。

朝食もキレイにたいらげたお嬢は本当に元気になったようです。

それでも心配してくる宏に対してバレリーナよろしくくるくる回ってみせるお嬢。可愛すぎる。

そんなお嬢を宏は遊びに誘いました。

おそらく今までまともに誰とも遊んだ事などなかったと思われるお嬢を遊ばせてやりたくて。

「だったら、草原とかはどうだ?

「うん、ボクはどこだっていいよ。あなたと一緒なら♪」

なんて嬉しくも可愛いことを言ってくれるんだ……。

 

草原で寝転びながら一緒にマンガを読む2人。

お嬢と出会った事により流れ出した2人の時間を、本をめくる……つまりはマンガを読む行為に重ねる宏。

マンガに熱中していたお嬢が、ふと宏の方を向いて言いました。

「マンガってさ……」

「うん?」

「終わらなければいいのにね」

「…………」

何事も無かったかのようにマンガの世界へと戻っていったお嬢。

まるで宏の心を読んだかのようなセリフ。

流れ出した時間はいつかは止まる。それはその人との間にやがて来る別れ。

でも宏は思います。

それはお嬢の考えであり、自分はそれを笑い飛ばしたのではなかったか、と。

「そうだな……終わらなければ……いいのにな……」

マンガに熱中しているお嬢は何を訊かれたのかもわかっていない様子でコクコク頷くばかりでした。

 

「それでね、あのね……」

マンガを読み終えると、草原からすぐにちとせの部屋にやってきたお嬢と宏。

「うん、けどわたしは……」

「ボクはね、あれはね……」

マンガの感想を熱く語り合うお嬢とちとせ。

「ねえ、お兄ちゃんも一緒に読んだんでしょ? 感想聞かせてよ」

「え? あ、ああ……そうだな」

突然話をふられたものの全くマンガの内容なんて覚えていない宏。

宏が覚えているのはお嬢の横顔だけだったのです。それじゃあ仕方ありません。

  ○ナイスミドルだな。

  ○デス声で叫びそうになったよ。

  ○お役所仕事って感じだな。

せめてもっとマシな選択肢ないのかよ。どれも少なくとも少女マンガの感想じゃないぞ。

まぁここは一番訳の分からない選択肢でいきますか。

つまり『お役所仕事』で。

「そ、そう……」

しまった、はずしたらしい、と宏。お前バカ?

その後もお嬢とちとせはマンガの話に夢中。

その間に改めてマンガを読んでみると面白いことに気付いた宏はいつのまにか熱中。

お嬢からもう帰ろうよ、と言われるぐらい熱中していたようです。

ちなみにお嬢が帰ろう、というのはちとせの身体を心配してですよ。優しい子や……。

「明日は、来てくれなくていいからね」

「……え? どうして?」

「わたし……ほら、もう病院に行って、手術に備えないといけないから……」

「…………」

本来ならもっと早く入院しなくてはならなかったらしいのですが、無理を言ってそれを伸ばしてもらっていたちとせ。

「だから、今日のうちに感想が聞けて、本当に良かったよ」

お嬢に向かってにっこりと笑うちとせ。

「じゃ、おれの感想は、ちとせが帰ってきてからにするよ」

「うん……て、さっきのが感想じゃないの? 一緒に読んでたんでしょ?」

「いや……あれは適当。実は寝ていたんだ」

「……やっぱり」

「……嘘つき」

宏を睨むお嬢。

そんなお嬢がおかしくて、笑い出す宏とちとせ。

平和です。こんな時間がいつまでも続けばいいのに……。

ちとせは一体どうなるんだろう……。

 

帰り道。

お嬢がメデスを持っていなかったことに気付いた宏。

メデスはちとせの部屋に残る、と自分から言い出したようです。

その理由はお嬢にもわからないようでしたが……

「ボク、何だかね、アルキメデスとは、もう二度と会えないような気がするんだ」

「……え?」

表情の無い顔でそう言ったお嬢。

「でもね、寂しくは無いんだよ。だって、いつかは別れるんだから」

お嬢の言葉も気になりますが……メデスは一体何をやりたいのでしょうか。

ひょっとして……メデスがやり遂げようとしているのかもしれません。

『自分が生まれた理由』を。

守れなかったお嬢の代わりに、お嬢に似ているちとせを……いや、まさか……。

 

商店街にて。

メデスがいなくなって寂しいのではないか、と思った宏がお嬢にぬいぐるみでも買ってやろうかと言い出しました……が。

「それ以上言ったら、ボク怒るから」

本気で怒るんだから、と真剣な顔をするお嬢に宏は平謝り。

どんなぬいぐるみだってお嬢と時を重ねてきたメデスの代わりにはならないのです。

と言うかメデスの代わりになるぬいぐるみがあったらスゲェ。

 

眠るちとせに話しかけるメデス。

そんな無用心なマネはいつものメデスからは考えられないことです。

『眠る』という事が無いメデス(ってことはいつか宏に言っていたのは狸寝入りか)。

耳を塞ぐことも、目を塞ぐこともできずに少女の苦悶の顔や声を聞き続けてきたメデス……。

ここで言う少女とはメデスに命を与えた少女……つまりお嬢のことでしょう。

まるでその時の繰り返しかのようにちとせの想いを全てメデスは聞き及びました。

ちとせも誰もいない部屋では人形に向かって自分の本当の気持ちを打ち明けるということですね……。

辛いこと……嬉しいこと……それらの全てを。

「願わくば、我が輩の果たせなかった使命を成就したいものだ。蹉跌を踏んだモノとしては」

蹉跌……いつか華子が言っていた言葉です。

その意味は『失敗』『挫折』……お嬢を救うことができなかった事を言っているのでしょう。

メデスは「少女」の願いをちとせで果たそうとしているのですね。

「それに、ちとせ……お前は死神であるお嬢の、唯一の友達なのだからな」

宏は?

 

宏は夢を見ていました。例の悪夢ではありません。

少年が祈る夢。

彼にとっての神様であるカカシに祈りを捧げる夢を宏は見ていたのです。

『母さんの身体が良くなりますように……』

『ついでに、あの怖い女の人が、もう少し僕に優しくしてくれますように……』

『お小遣いももらえますように』

『それから、父さんがもっと家に居ますように……』

いつも少年……おそらくは子供の頃の宏が祈っていました。

「何をやっているの?」

目を開けた時、目の前にいた一人の少女……それはお嬢。

名前を尋ねると目を伏せて言えない、とお嬢は言います。

「だって、発音できないんだもん」

外国の人か、と宏は納得。

宏に何をやっていたのかを尋ねてきたお嬢ですが、祈りのことは言えません。

だから誰か遊び相手が来ないか待っていた、と宏は誤魔化しました。

「ほんと? やった!」

ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶお嬢。

その日から2人は友達に。

 

宏は子供の頃……お嬢と会っていた?

そう言えばお嬢は前に会ったことがなかったか訊いてきたことがありましたね。

それがメデスの言う『内野』たる所以でしょうか。

お嬢の姿を子供の宏が見ることが出来たのは母親の死が近かったからでしょう。

そして母親の魂を運ぶ役割を負っていたのはおそらくお嬢。

果たして2人の出会いがもたらすものは。

何故宏はお嬢と会っていたことを忘れているのか……。

 

【7/30】

暑い中、お嬢のリクエストでセミ捕りで遊ぶ2人。

お嬢の身体が心配になりながらも宏はお嬢の笑顔には勝てません。

へーきへーき、と言いながらはしゃぎ回るお嬢。

その姿をちとせと重なりました。

2人が似てきていることに不安を感じる宏。

 

結局お嬢は寝込んでしまいました。

自分の汗臭さを心配して、お嬢はお風呂に入りたがっています。

やはりそんなところは女の子ってことですね。

「我慢した方がいい。余計に体調を崩すかもしれない」

うん、でもね、とお嬢。

「あんまりくさいと、あなたに嫌われちゃうかもしれないから……」

んな訳ないだろう……お嬢の臭い……いや『香り』ですよ。

むしろ少し汗臭いぐらいの方がよりお嬢本人の臭(以下略)。

  ○真面目に答える。

  ○ぼける。

ここは……真面目に答えておきましょう(今更ですが)。

「汗くさいのなんて嫌うもんか」

だっておれは、と宏。

「お嬢が……」

「…………」

「…………」

「何?」

「いや……」

根性無しがぁぁぁ!!!

ともかく匂いくらいじゃ嫌いになんかならない、と宏は言います。んな事分かりきってるっつーの。

「じゃ、どんな事だったら、嫌いになる?」

「……さあ?」

お嬢を嫌いになるなんて事あるのだろうか、と宏。

無いね(キッパリ)。

「ボクね、思うんだ……」

お嬢がふと語りだしました。

「ボクとあなたって、きっと、前に会った事があるんだよ……」

「…………」

「今まで、ずっと忘れてたけど……この村にやって来て、あなたの顔を見たら……ふっと思い出して……いつの事なのか、どこの事なのか、会って何を喋ったのか……全然思い出せないけれど……」

辛い事や嫌な事はえてして忘れやすい。それはメデスの言葉。

やがてお嬢は眠りに付きました。

 

昼間の疲れからいつしか眠ってしまっていた宏。

ふと見るとお嬢の姿がありませんでした。

死神の少女がいなくなっている……そこから浮かび上がる想像に宏は慌てて公衆電話に走りました。

電話をかけた先は華子。

病院から連絡がなかったか、と宏は叫びますが華子は寝ぼけた声でそんなの無い、と言って電話を切ってしまいました。

宏はちとせの身に何か、と思ったのでしょう。とりあえずよかった……。

ちなみに華子は外にいたみたいですが……なんでしょ?

この日は千夏さんが伊月に関する謝罪を彰にしていた日ですが、なにかそれと関係あるのでしょうか。

 

とにかくちとせではなかった、と安堵する宏ですが今度は不安な気持ちが湧き上がってきました。

お嬢はまた死神としての職務を全うしているのだろうか、と。

今にも走り出して探したくでも場所が分からない。

それにお嬢が帰って来た時に部屋をからっぽにしたくもない。

ただ……なにも言わずに「おかえり」と言ってあげたい。

「はぁ……」

結局なんなんだろうな、この気持ちは、と宏。

愛だろ、愛。(永瀬風)

宏はとりあえず風呂に。

 

「あ……?」

そこにはすっかりいい気分のお嬢が。

「お、お嬢……?」

「あ……あなたも来たんだ」

可愛いけど帽子の上にタオルを乗せるのはどうかと……。

男湯だと言っても移動する気の無いお嬢。

宏じゃないやつが入ってきたらどうするつもりなんだ……と一瞬思いましたがお嬢の姿は見えないんですよね。一安心。

まいった、と頭を洗い始めた宏。

でも目を開けると宏の股間のすぐ近くでマジマジと宏のイチモツを眺めるお嬢が。

必死で隠す宏ですが……

「見せてよ。そのヘンなの」

「お嬢……あんまりヘンヘンって言うなよ。傷つくじゃないか」

「え? どうして?」

「どうしてって……」

「だって、ヘンだよ。そんなの、ボクには付いてないもん」

そう言って自分の股間に視線をやるお嬢につられて宏もお嬢の股間を……

「ね、何も生えてないでしょ?」

そう言って心なしか股を開くようにするお嬢。

ここに華子かメデスがいたら大変だな……。

「…………」

「ん? どうかした?」

「……あ? あ、ああ……」

宏・思考停止。

そこには『何も』生えていなかったそうな。流石お嬢(意味不明)。

「なのに、どうしてあなたにはそんなのが付いてるの? それに、毛も」

「こ、これはだなあ……と言うか、からかっているのか?」

「引っ張ったら、取れるかな……」

「わあ! 駄目駄目! 引っ張ったって、取れないの!」

「……そうなの?」

「そうそう。そうなの」

「ふうん……ボクのところにも、くっつくかと思ったんだけどな……」

「…………」

その光景を想像して背筋が寒くなる宏(俺も)。

「ほ、ほら! と、ともかく、もうあっちへ行って!」

ある事情により立ち上がることが出来なくなっていた宏。仕方ないよな……。

『それ』がなんなのか質問してくるお嬢に対して何とか誤魔化そうとする宏。

でも結局はちゃんとした説明をすることに。

「ふうん……赤ちゃんか……」

いまいちピンと来ていない様子のお嬢。

そんなお嬢を見て宏に分かったことがありました。

何故お嬢がこういったことに疎いのか。

それは死神だから。

だから生殖に関する事には極めて疎く、その知識もなかなか頭に入らないのだ、と。

ややこじ付け臭いですが多分その通りなんでしょう。

「ん〜……話だけじゃ分かりづらいよ。ちょっと見せて」

「あ……ああ!?」

意外な程の力でひょいとどかされてしまった宏の手。

「あ! さっきより大きくなってるよ!」

ますます怒張してくる宏のムスコ。

どうやら見られると興奮するタイプのようです。

「ヘンなの……。さっきは、先っちょが少ししか見えなかったのに」

ほっといてくれ、と宏。

お嬢……それは言っちゃあいけないぜ。男としての尊厳に関わる問題なんだ……。

痛いのか訊かれて正直に痛いと言う宏。

 

「ボクが治してあげるよ。どうしたらいいのかな?」

 

なんですとーー!?

ってこの展開は予想できてましたが。

その『方法』を教えるという事はお嬢を性愛の対象として見るという事だ、と宏は考えます。

好きであることに疑いはありませんでしたがそれとこれとは話が違う、と。

と言うか明らかに性愛の対象としてみてるじゃねーか。

その股間が何よりの証拠だ。

おれは……。

  ○お嬢を望んでいる。

  ○そんな風には見れない。

だから見てるんだって……と言う訳でお嬢を望んでみました。

 

お嬢に手でやらせて宏はスッキリ。

何も知らないお嬢に『あんな事』をさせて多少の罪悪感を感じる宏。

でも展開的にまぁしゃーない、ってことで。

お嬢が手に付いた『ソレ』を嗅いだり、指先で弄んだりしているのを見て恥ずかしくなった宏は湯船に。

そして後ろから聞こえてきた声。

「ヘンな味……」

「…………」

宏はそれを聞かなかった事に。わははははは。

 

宏の夢。子供の頃のこと。

少女……お嬢と毎日のように夕暮れになると会っていた宏。

宏はその年の夏祭りが中止になったことを悔しがっているようです。

違う……。

夢を見ている宏は違和感を感じました。

宏にとって、今まで夏祭りが中止になった事は無かったのです。

ならばこの夢は一体……誰の見ている夢なのか。

母親を助けるためにカカシに祈る少年。

それを遮るように立つお嬢。

「……もぅ……無駄……」

「え?」

「祈ったってね……無駄なんだ……」

「う……む、無駄って言うなっ!!」

涙が溢れて、喉が鳴って……唯一自分に優しくしてくれた母親のことを想う。

「ぼ、僕、僕は……祈って、祈って、そ、それでお母さんを……!」

「だってもう……連れて行っちゃったから……」

「……え?」

「ボクが、連れて行っちゃったから……もう、この世には居ないんだよ」

「あ……あ……」

目の前が薄暗くなって……息苦しくなって。

「あなたとも……もうお別れなの。だって、もうすぐボクの姿が見えなくなっちゃうから……」

これまで一緒に遊んで楽しかった、とお嬢。

少年は無力な自分を責めるばかり。

母親の死に目にも会えず、やったことと言えばカカシに祈ることだけ。

目の前に死神の少女がいたにも関わらず、母親の死をとめることも出来ず。

無力な自分が一番許せなくて。

目の前の少女が許せなくて。

一番許せないのが自分だとわかりながらも、悲しみや怒りを自分以外の誰かにぶつけたくて……。

「この死神めっ! お前のせいで母さんはっ!!」

「−−!」

お嬢が泣きじゃくる姿を見てられなくて、一目散に逃げたした少年。

大好きな友達を自分が泣かしたことが辛くて。

ひたすらに、どこを走っているのかもわからないままひたすらに走って……道路に飛び出して……。

そして……。

 

ヘッドライトが目の前に迫ってきたような気がした……。

 

 

子供の頃、お嬢と会っていたのは宏じゃない? 誰? 宏との関係は?

でも境遇は確かに宏で……違っているのは夏祭りの有無だけ。

そこにはどんな秘密が……。

そしておそらくは事故に遭ったであろう夢の中の少年。

彼は助かったのか。助かったとしたらそこにお嬢がどう絡んでくるのか……。

 

そろそろクライマックス?

大いなる謎を秘めつつ、以下次回!!


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