2002.6.18 「ヤラれた……けど3章クリア」編


そう言えば。

砂浜で横になってるCGで初めて気が付いたんですけど、茜って結構日焼けしてたんですね。

会話の中でそーゆーことを言ってたのは知ってるんですが、ここまでクッキリとすくぅる水着の日焼け跡があったとは……やるなサーカス。

 

……ゴメンなさい。競泳用水着ですよね。わかってます、わかってますが……。

 

立ち絵もよく見るとちゃんと日焼け跡がありました。みなさんすぐわかりました?

 

それでは続きです。

 

【7/21】

朝、茜に起こされた良和。茜はいつも通りの茜です。

それに引き換え良和は寝不足もあって気分は最悪。

旅館をチェックアウトして海に行っても自分は泳がずに茜だけを海に入られて眠る良和でした。

 

気が付いたんですけど、2人が泊まった旅館って4章に出てくる宏が泊まった旅館ですか?

なんか部屋の絵が同じだったような気がするんですが……どう考えても違いますよね。

宏は常盤村に泊まってる訳だし。

俺の勘違いか、スタッフの手抜きか。

 

病院のアカネ。

身体はもうかなり良くなっていました。後は記憶さえ取り戻せば元通り。

頭に浮かんでくるのは大切な男女のことでした。

男性について色々聞いてくる女性に答えてあげる自分。

そんな自分がただただ悲しかったことだけを覚えていたのです。

ふと目をやった自分の手首。そこに巻かれていた包帯はもう取れていました。

そして目に浮かんでくるのは涙。

手首を見ているとどうしても涙が出てきてしまうアカネ。

手首の怪我−−そこにはとても重要な意味があるのかもしれない、とアカネは思います。

そこにやってきた二宮医師。

自分がいて孫が出来たような気にならなかったか、という質問に半ば強引に頷かせるアカネ。

すると読んでいた小説を読むのを止める、とアカネは言います。

また借りに来るからその時まで取っておいて、と2人は笑うのでした。

 

良和の目が覚めるとそこは自分の部屋。

別に知らないうちに帰ってきていたのではありません。

あの後2時間ほど寝てから良和は茜と一緒に海で泳いでから帰宅。

時計を見ると現在は朝の4時です。

そしてトイレに向かった良和が廊下で見た人影。

『彼女』がいるはずがない、と自分のことをどうかしてる、と笑ってまたベッドに眠りにつくのでした。

透子さんが来てたに決まってるんですけどね。

 

【7/22】

朝食とも昼食とも言えない食事。

メニューはカルボナーラでしたが、茜は良和が食べる様子を眺めています。

それはまるで透子さんのようで、その事を言おうとして止めた良和。

茜は翌日に迫ってきていた水泳大会のことを良和に忘れてないか確認してきました。

「百葉箱を確認しに行く日だろう?」

慣れないギャグに「頭でも打った?」と茜。

良和……お前は彰にでも弟子入りしなさい。

ゴーグルを海に忘れてきた、と言う茜は新しいゴーグルを買いに外へ。

それで出かけようとした茜を良和は呼び止めました。

「あのさ……ちょっと、ヘンなこと訊くけど」

「え? やぁだ、スリーサイズは秘密だよ」

 

甘い!! 甘いぜ!!

俺はヒロイン誕生日表を作る際に誕生日を調べようとプレイ前から「水夏」公式ビジュアルファンブックを買った後で公式サイトにバリバリ載ってるのを見て愕然した男だぜ!!

確かに説明書や公式サイトには載ってないかもしれないが、ファンブックなら…………載ってねぇ!!

んな殺生な……。

エロゲーなんてスリーサイズ載せてナンボだろ!?

 

いやもちろん冗談です。ちょっと驚いたものですから。

そんなものをこの「水夏」に求めていません。

それに透子さんが巨乳であることは見ればわかるので満足です。

 

話が逸れました。戻しましょう。

良和は夜中の2時ごろ透子さんらしき人影を見たことを茜に言いました。

それを聞いてケラケラを笑い出して、そんなに透子さんが恋しかったのか、と笑いながら部屋を出て行った茜。

良和は透子さんのことを訊ねた瞬間、茜の表情が色を失ったように見えたことが気になっていました。

う〜ん、透子さんは本当に良和の幻覚(?)だったのかなぁ?

 

アカネ。

茜色に染まる意味を見ながら砂浜でアカネはまた泣きそうになっていました。

強く浮かんでくる『泳ぎたい』と言う願望。

そんな想いと共に海を眺めていると1人の男性とぶつかってしまい、アカネは尻餅を。

同時に手を地面についた衝撃で手首に走る激痛。

ぶつかってきた水着の男性は何度も頭を下げて謝りながら去っていきました。

……宏?

いや、彰と蒼司にはこんなシーンが無かったからそう思っただけなんですけど。

その男性の後姿を見送るアカネの口から漏れる声。

「ああ……」

久しぶりにぶり返した手首の痛み。

「ああ……」

 

あたしは−−。

 

病室でボタンを押すと二宮医師がやってきました。

「何かね?」

「先生、あたしね」

 

「−−記憶が蘇ったよ」

 

 

 

まじで!? ……ってああ!!

こんな時に良和視点にぃぃ!!

 

 

 

透子さんのアパートにやってきた良和。

お土産の自分の買った貝殻の置物と茜の買った砂時計を渡すと透子さんは素直に喜んでくれました。

部屋に入って朝のことを透子さんにも茜に訊いたことを訊ねてみるとやはり完全に良和の勘違いのようでした。

おっかしいなぁ。

透子さんは2日会わないだけでも我慢できなくて家に忍び込んでくるぐらい良和のことを愛してると思ったのに。

もちろんそれが透子さんの魅力ですよ。美点です、美点。

昼ご飯は食べてきて満腹状態の良和でしたが、それを言うと透子さんは昼を抜きかねないので自分も食べることに。

 

 

「今まで、お世話になりました」

『アカネ』は『茜』でした。

二宮医師にまたここを訪れることを告げて電車に乗って一路帰路に。

茜は全てを思い出していました。

自分の性質も。

自殺の理由も。

怪我をした手首。これが直接の原因でした。

学園最後の年の、最後の大会前。

車にぶつかりそうになって思い切り尻餅をついて、同時に手も地面についてしまったためにしてまった怪我。

自暴自棄になった茜は透子さんと良和の仲を引き裂こうとしたけど……失敗。

家を飛び出した茜は追いかけてくる良和から逃げるように自殺の名所へ。

−−運動不足だね、お兄ちゃん

バテていた良和にそう笑いかけて−−−身を投げた。

茜の名前を絶叫する良和の声を聞きながら茜は意識を失って……と言う訳。

死ぬつもりだったのに死ななかった。

それは可能性が残っているということなのか、と茜は思います。

水泳の方はもうダメだけどもう1つの可能性……良和のことは分からない。

そう思いたい茜。

良和と透子さんがどうしているかが茜は気になります。

悲しんでくれているか、もしくは……喜んでいるのか。

良和はともかく透子さんの方はあり得ると思うだけに悲しくなる茜。

いっそ透子さんのことを嫌いになれれば、と思いつつもそれは無理な話。

−−待っていてね。

 

そうか……やっぱり茜だったのか…………ってことはやっぱりタイムスリップ?

 

透子さんとは不能なままの良和は遅くなる前に帰ってきていました。

自分が茜に対して抱いている劣情を知られたくない、と思いながら。

暗い自室に入るとそこには人の気配。

「誰か……居るのか?」

電気を点けるとベッドの上には両膝を抱えた茜が。

「おい……茜?」

どう見ても普通ではない雰囲気の茜に近づいてやっと良和は気付きました。

茜の手首に包帯が巻かれていることに。

どうしたのか訊ねる良和。

「……泳げないんだよ……」

怪我をしてしまった茜。

翌日は大会……でもそれまでに治るはずもなく、出たところで実力が発揮出来る訳もなく。

茜の水泳にかける意気込みを知っているだけに良和は何も言うことが出来ず、茜の肩に手を置いた状態で時間は過ぎていきました。

しばらくして顔を上げた茜……。

「お兄ちゃん……」

涙に濡れたその顔が痛々しくて……とその時。

気が付くとベッドに横になっていた良和。

「お兄ちゃん……」

隣には婉然(えんぜん:要するに美しいこと……ってわかんねーよ)とした笑みを浮かべる茜。

それはいつかの夢と全く同じ場面……。

 

ん? ん? ん?

これが茜が手を怪我した日のことで……良和と透子さんの仲を引き裂こうとして失敗した時のこと?

そこに帰って来た茜がやってくる……ということでしょうか。

 

茜が常盤村に帰って来ました。

半分ぐらいはタイムスリップを信じていた茜。

茜は2人のキューピッドを務めたことをずっと後悔していました。

そして駅前で人の気配を感じた茜が振り返ると……そこに居たのは千夏さん。

「茜さん……」

「え?」

「……あなたを、助けない方が良かったのかもしれない」

「……助ける……あたしを?」

その言葉に二宮医師の言っていた名前を思い出す茜。

自分を二宮診療所に連れて行ってくれた命の恩人。

「あなたが、千夏さん?」

「…………」

茜の言葉ににこりともせず、返事もせず、微動だにせずただ茜の顔を見つめている千夏さん。

「これだけは、言わせてください」

千夏さんは氷のように硬い声で言いました。

過去は変えられない、と。

「あ……」

「あなたが歩んできた道を引き返す事は出来ないの。当然、その岐路に立つ事も出来ません」

「…………」

反論は出来ない。でも反発は覚える茜。自分は過去を変えたいんだ、と。

「現在をして、現在を変える。それが、取り得る選択でしょう。けれど−−」

ふっと遠い目をする千夏さん。

「歩んできた道の長さがあります。積み重ねが」

 

−−それを崩さないで。

 

そんな声が聞こえたと思ったら千夏さんの姿は闇の中に消えていました。

「ふ……ふ……」

一人、薄暗い笑いを漏らす茜。

 

あたしはまさに、その積み重ねをぶちこわしたいんだ。

 

「え−−?」

背後から聞こえてきた声。

聞き覚えのある男の声にふりむくと−−−。

 

……鏡太郎しか考えられませんけどね。

 

 

「な、何……す、するんだよ……」

上擦った声で良和は茜に言います。

「お兄ちゃん……」

完全に夢で見た光景に目眩が起きそうな良和。

「あたし……もう、駄目だよ」

あたしを慰めてよ、と近づいてきた顔から逃れようとしても後頭部を抑えられていてそれも出来ず……。

柔らかな感触を唇に感じながら良和は思います。

自分には逃げる気が無かったのかもしれない、と。

「お兄ちゃん……抱いてよ」

「だ、駄目だ……妹なんだから……」

「そんなの関係無いよ」

「…………」

「お兄ちゃん……いいよね?」

「お、俺は−−」

  ○茜を抱く

  ○茜を抱かない

 

……こ、これは……。

 

3章初の選択肢!?

 

思い返してみると確かに今まで選択肢が全然無かった気がします。

1発目でこんな重い選択を迫ってくるとは……やるなサーカス。

 

では一体どうすればいいのか……なんて悩んだりはしません。

抱きません(きっぱり)。

何故なら俺は透子さんを愛しているから。

 

「無理だ……」

「……どうして?」

「言ったはずだ……俺たちは兄妹だ。そんな事、許されるはずが無い」

「……だったら、あたしも言ったはずだよ。そんなの関係無いって」

そう言って再びキスを迫ってきた茜を手の平で遮る良和。

「お兄ちゃん……」

「兄妹だからってばかりじゃ無い」

「じゃあ……何なの?」

理由は2つ。

1つは妹だから。もうひとつは−−

 

「透子を愛しているから」

 

よく言った。

裏切ることはできない、と良和。

「あ……」

良和に背中を向けている茜から聞こえてくる涙声。

小刻みに震える肩を見ながら強烈な罪悪感に襲われる良和。

しばらくして嗚咽が止みました。

そして良和に背を向けたままの茜が口にした言葉は……

 

「良和……私、嬉しい……」

 

「……え?」

『良和』と言う呼び方。

 

そ……そうか!!

 

頭のリボンに手をかけて結び目が解かれ、そしてリボンが頭から外されると……

 

ふぁさっ。

 

重たげな髪。

振り向いた茜−−−

 

−−透子が、そこに居た。

 

 

 

そうだったのかーーー!!!!!

 

謎が解けたーーー!!!

そういうことだったのかぁぁ!!

ヤラレターー!!!!!

 

うわぁぁぁぁぁぁ…………

 

……それにしても透子さん、いつの間に下半身が裸に?

 

 

 

茜と鏡太郎。

茜が生きていたことに鏡太郎は驚きます。

喜んでもいいはずなのに、この世の終わりのような顔をしている鏡太郎。

良和と透子さんがどうしているかを茜が訊ねると鏡太郎は明らかにうろたえた様子。

そして全てを話す、と鏡太郎。

その鏡太郎の口から語られた真実。それは……とんでもないことでした。

 

茜が死んだと思って精神が崩壊寸前にまでなった良和。

それは茜の死を自分の責任と思い込んだことも関係していたのです。

求愛を退けられたから茜は死を選んだのだ、と。

(これを『滑稽で切ない誤解』と思う茜がいまいちわかりませんが)

そんな良和を救うために取られた措置が『暗示』。

鏡太郎によって施された『リボンを付けた透子さんを茜だと認識する暗示』です。

それは茜を生きているものを思わせる一時的な救済措置。

一週間の期限付きで施されたその暗示と記憶の改竄はこの日が最終日でした。

それは同時に良和の中で茜が自殺を試みた日。

透子さんが茜を演じるに当たり、そのために必要な情報を鏡太郎は催眠によって良和から引き出していたのです。

しかし良和は結局誘惑してきた茜をどうしたかについては口を割ることはなかったとのこと。

その結果を知っているのは茜だけ、ということになります。

 

そして今、良和は『透子さんの茜』に対して同じ選択を迫られているのです。

果たして良和はどうするのか。

鏡太郎は言います。

良和は暗示にかかっているとは言え、茜を抱かなかったと言う罪悪感を持っている、と。

そう言って笑う鏡太郎に対して嫌悪感を覚えた茜。

それは鏡太郎の本心がわかったから。

透子さんに惚れていた鏡太郎。

もしここで良和が透子さんを茜だと思って抱けば、2人の仲は終わり……。

 

良和の選択を見届けるために茜は自宅へ。

果たして良和はあの時と同じように『茜』を拒むのか。

それとも受け入れるのか。

もし受け入れたとしたら透子さんは悲しむでしょう。それは茜の望んだこと。

「ふ……ふふ……」

期待感に思わず笑みがこぼれる茜。

「お兄ちゃん、あたしを抱いてね」

千夏さんの言っていた積み重ねや歩んできた道なんて潰してやる、と茜は思います。

自分は二人のキューピッドになりたかったのではなく、自分のキューピッドになりたいんだ、と。

 

手段なんか、選ぶもんか。

 

鏡太郎ってとんでもない奴だったんですね。

2章でさやかさんの相手をしてる時とかは結構イイ奴だと思ってたのに。

でもそれ以上にイメージが変わったのは茜です。

こんなにもダークな奴だったとは……。

 

 

 

自宅へ忍び込むように入っていく茜。

光が漏れている良和の部屋の壁に張り付き耳をそばだてます。

そこに聞こえてきた懐かしい透子さんの声。

 

「……愛してる、良和」

 

ああ……。

やっぱり、そうなんだ。

 

中から二人の愛し合う音(つまりセックスの音?)が聞こえてきて涙を必死にこらえる茜。

絶対に泣くもんか、と。

 

だって、透子お姉ちゃんが幸せになれたんだから。

 

 

 

……へ?

 

またもや良和は『茜』を選ばなかった。

良和はただ透子さんを愛し、透子さんも良和をただ愛していた……。

茜の入り込む余地はどこにも無くて。

流すまいとした涙はやっぱり流れていて。

やがて部屋から、透子さんから遠ざかる茜。

 

 

 

さようなら、透子お姉ちゃん。

 

あなただけを、愛し続けていたんだよ。

 

 

−−さようなら、あたしの愛しい人

 

 

 

 

何ぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?!?!?

 

そうだったのかぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

あ、茜は良和ではなく透子さんをぉぉぉぉぉぉ!!!!!

 ・

 ・

 ・

こ……こりゃあまいった……やられたよ…………。

 

 

 

透子さんは良和に全てを話しました。

騙していてごめんなさい、と涙を流す透子さん。

そして良和は全てを思い出していました。

自分のせいで(と思い込んでいる)死んでしまった茜。

とめどなく涙を流す良和。

「私が居るわ……」

そんな良和を優しく包み込む透子さん。

「あなたには、私が居る……私は、あなたの側を決して離れません。……それじゃ駄目なの?」

さらに力が込められる透子さんの手。

「−−私だけじゃ、駄目なの?」

「駄目じゃ……駄目じゃ無いさ……」

ともすればそのまま眠ってしまいそうな安心感を感じる良和。

「あなたを……あなただけを、愛し続けてきました……」

透子さんの腰を抱き寄せる良和。

 

「……愛してる、良和」

 

そして透子さんとのH。

茜には悪いけど……これでよかったんですよね。

 

 

【7/22】

良和と、黒幕・鏡太郎。

いつもカウンセリングを受けていた部屋で二人は話をしています。

鏡太郎が良和にかけた暗示は視覚・嗅覚・聴覚に関するものでした。

でもそんな暗示をかけることが出来たのも良和が茜の死を忘れたがっていたから。

透子さんは悲しみ、苦しんでいる良和のために茜を演じる決心をしました。

では何故鏡太郎もそうした企みというか、この『劇』に参加したのか。

それはもちろん透子さんをモノにするためだった訳ですがそんなことを言えるはずもありません。

良和のため、とかなんとか言ってごまかす鏡太郎。

 

良和は茜から1つのことを聞いていました。

それは『良和と茜の血液鑑定を鏡太郎が茜の依頼で行った』と言うこと。

その結果、鏡太郎は茜に嘘を教えたんだそうです。

つまり『良和と茜が本当の兄妹では無い、という嘘』を。

茜は良和と血の繋がりがあれば自分の行動の歯止めになる、と考えて鏡太郎に鑑定を依頼したのでしょう。

結果は茜の望む(?)通り良和と茜は血の繋がりがあった……でも鏡太郎はそれを告げなかった。

茜の行動に歯止めを設けたくなかったのではないか、と良和は鏡太郎を問い詰めますが鏡太郎は飄々とかわすばかり。

 

もうカウンセリングには来ない、と良和が言ってからしばらく続いた沈黙。

そして部屋を出ようとした良和の背後から声が聞こえてきました。

「僕は、彼女の幻影を振り切る事が出来なかった」

「……何の話です?」

「存外未練がましい人間でね」

「…………」

透子さんを求め続けていた鏡太郎。

彼は事あるたびに透子さんとの接触を図ったそうです。

そんな透子さんとの会話の中で鏡太郎は「ある事」を透子さんに話しました。

それは茜からの血液鑑定依頼のこと。

「そして、嘘を教えるように言ったのはね……」

彼女なんだ、と鏡太郎。

つまり茜の歯止めとなる現実を教えず、わざと嘘を教えたのは透子さんの示唆によるものだと鏡太郎は言うのです。

「……嘘だ……」

「そして僕が思うに、彼女こそは茜ちゃんの意図を熟知していた」

そして透子さんがそんなことをした理由を鏡太郎はこう憶測します。

「彼女は、君と茜ちゃんの仲の、決定的な破綻を望んだのではないのかね?」

もちろんそれは一種の賭け。

「事態は予想外の方向へと進んだ。茜ちゃんの自殺だ」

「…………」

「そして彼女は、遂に賭の結末を知れなかった。……暗示下においてさえ、君は言わなかったのだから」

「もう……いいですか?」

ようやくそれだけ言って足を踏み出した良和。

鏡太郎はこれが最後のカウンセリングだから、と最後に言いました。

 

「僕は、君が大嫌いだったよ」

 

こいつカウンセラー失格。

っつーか説明書には『良和の親友』って書いてあるんですけど。

自分が勤務する病院の経営者の息子に向かって……スゴいのやら、アホなのやら。

それにしても全ては鏡太郎ではなく、透子さんの差し金だったってことですか。

そんなバカな……いやしかし……ううむ……。

 

病院を出て透子さんと歩く良和。

良和は透子さんの顔を見て、さっきの鏡太郎の憶測話を心の中で完全に否定します。

腕を組んで周りに誰もいない道を歩く2人。

茜は夏休みの間ずっと二宮医師の所に遊びにいっているそうです。

おそらくは家に居ることができないのでしょう。哀れ茜。

「ねえ……良和」

「ん?」

「私たち……ふたりっきりね」

「…………」

「気が付いてる? 辺りに、誰も居ないわ」

「ああ……そうだな」

「私、嬉しい……」

「…………」

 

「あなたと私、ふたりっきりで……」

 

ひゅう……!

 

風が吹き去り、前髪で一瞬視界が覆われて……良和はある種の悟りを得ました。

鏡太郎の『憶測』は憶測ではなかった、と。

あれは真実であり、つまり透子さんは良和と自分以外の存在を排除したかったのです。

鏡太郎も茜も透子さんによって踊らされていた……と言うこと。

茜に対しては良和との不仲を相談する振りをして、同時に良和が茜に気があるらしいと仄めかして……やがてそれは茜が行動に移る時の弾みに。

透子さんにそれだけの演技力があることは既に証明済みであり、茜の行動は透子さんによって誘導されていたのです。

一方で鏡太郎にも透子さんは働きかけます。

茜に対して嘘を伝え、良和には暗示をかけるよう示唆。

鏡太郎が自分に気があることを知っていた透子さんは彼の望みを理解していました。

それは良和と透子さんの決別であり、それを可能にするのは『茜』のみ。

そして良和は鏡太郎の元へと赴くことに……。

 

良和は全てを悟りました。

自分が優位に立っていたと思っていた透子さんでしたが、真実はそんなことはなくむしろ……と頭を微かに振る良和。

「どうかした……?」

顔を覗き込んでくる透子さん。

「いや……」

それはプロバビリティに過ぎない、と良和は思います。

……って『プロバビリティ』って何だよ。

調べてみたら「ありそうなこと」とか「見込」とか、そんな意味のようです。

 

おそらくは全て透子さんの手によるもの。

それは透子さんにとっては危険な賭けでもありました。

それでも透子は、と良和。

「透子……俺のこと、好きか?」

「え?」

「言ってくれないか? 聞きたいんだ」

しばしの無言の後、透子さんはしっかりとした声音で囁きました。

 

「愛しています……」

 

透子さんはこの世でふたりになることを望みました。

 

「でも、どうしたの? 急に」

そう言って透子さんが浮かべる笑みは良和の好きな、全てを包み込むような笑み。

それは物心ついた時からずっと渇望していたものであることに今気付いた良和。

遂に良和に与えてくれなかったもの。

 

−−かあさん。

 

「いや……何でも無いんだよ」

そう言って笑みを浮かべると、良和は透子さんの身体を強く引き寄せました。

決して離れたくない、と。

透子さんに自分しか居ない事を強く願いながら。

そして自分には透子さんしか居ない……。

 

 

 

「愛してる、透子」

 

 

 

ふたりだけをその腕に抱いた空の下を。

 

 

 

ふたりだけが呼吸していると思える空気の中で。

 

 

 

ふたりだけの足音を耳にしながら。

 

 

 

僕たちは、どこまでも歩き続けた。

 

 

 

 

 

3章……終了。

 

なんつーか……

 

後味悪ぃ…… って感じです。

 

なんか終盤の怒涛の展開についていくでイッパイイッパイだったんですがちょっとまとめてみましょう。

 

ます茜は透子さんを愛していました。

でも茜は透子さんの幸せを願ってもいたし、2人の仲を引き裂くことに抵抗を感じていたのでしょう。

そこで自分の行動の歯止めになれば、と鏡太郎に良和と自分の血液鑑定を依頼。

その結果、義理の兄妹だと思われていた良和と茜は本当の兄妹であったことがわかります。

ここでそのことを茜が知れば全てはそのままで終わったことでしょうが……そうは問屋が卸しませんでした。

鏡太郎は嘘の結果を茜に伝え、しかもそれは透子さんの示唆によるもの。

透子さんは『妹』としての茜が良和の側にいることも良しとしなかったのです。

自分の言動により、巧みに茜をコントロールして良和との仲を破綻させようと透子さんは暗躍します。

良和に向かって『茜と良和は他人』などと言っていたのも良和の意識を少しでも茜に向けさせようとする策略だったのでしょうが、それは後々の話です。

とにかく透子さんは茜を完全に操ることに成功しました。おそらく茜の自分に対する気持ちも知っての上で。

結果として茜は良和と透子さんの仲を裂こうと良和を誘惑するに至りますが……失敗。

水泳も失っていて自暴自棄になった茜は自殺。

実は生きていたとは言え、残された者にとっては完全に死んだも同然となったのです。

予想外の展開とは言え、兎にも角にも茜を『排除』できた訳ですが透子さんの野望(?)は終わりません。

透子さんの差し金とは言え、茜は良和を誘惑しました。

それに対して良和がどういう態度に出たかが不明のままだったのです。

鏡太郎の催眠による情報採取も、その後の暗示も全ては透子さんの示唆によるもの。

それにより透子さんは良和が茜に対してどんな態度をとったのかと知ることができ、同時に『茜』と言う存在を良和の中から消し去り、さらには鏡太郎をも良和から離れさせることにも成功しました。

透子さんが愛しているのは良和だけで、その行動の全ては良和のため。

そして良和にももう透子さんしか残されておらず、また透子さんは良和にとって幼少の頃より手に入れることのできなかった『母親』の象徴に。

2人は正にお似合いです。どうか幸せになってくださいな。

 

はぁ……。

 

 

 

思ったことをツラツラと書いてみましたがこんな感じでしょうか。

なんか救いがあるのか無いのか判断に困るストーリーでしたが意外性だけは抜群でした。

特に終盤の「これでもか」と言わんばかりのどんでん返しの数々には完全に脱帽です。

『茜』と『アカネ』が同時に存在していた理由。

茜の気持ち。

全ての黒幕。

いやぁ……ヤラれた。

 

今にして思えば、と言うのがたくさんあります。

二宮医師が良和と海で溺れた『茜』を見て美男美女みたいなことを言っていたかと思いますが、それは『茜』と『アカネ』の見た目が違うからこその言葉です。

それに本当に『茜』だとしたら「美人」と言うより「可愛い」という表現をしたでしょうし、当然「似た顔の……」ぐらいも言ったでしょう。

それは駅で彰が2人に持った印象にも言えることです。透子さんが良和に「お兄ちゃん」なんて呼んでも違和感ありまくりでしょうから。

要所要所で透子さん演ずる『茜』が複雑な表情をしたのもよくわかります。

あと夜の廊下で見た透子さんの姿と言うのはやっぱり透子さんで、その時はリボンを着けていなかったということなんですね。

『茜』が溺れたのもそれが透子さんだったからで、泳ぐスピードがそれほど速くなかったのも同じ理由。

目覚めてぼんやりした頭で「良和……」と言ってしまったのにはこんな訳があった訳です。変だと思いましたよ、ホント。

何より透子さんと茜って一度も一緒に出てきてないんですよね。これは本当に騙されちゃったなぁ……。

 

結局、誰一人としてマトモな人間がいなかったこの3章。

思いの他ドロドロしていて……まさに人間ドラマ。

不満があるとすれば名無しの少女が出てこなかったこと。お兄さんは寂しかったです。

皆勤賞ならず……かぁ(感慨深げに)。

 

それにしても透子さん……アンタ恐ぇよ。結構好きだったのに。

でも透子さんの行動の全ては良和のためだったのだと思います。

そう考えれば少しは救われる……かな?

 

 

 

とにかく3章も終了です。

ということはつまり……。

 

次は名無しの少女です。

 

つまり本番です。

 

次回より4章開始。ついにここまで来たぜ……長かったです。

それでは以下次回!!


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