2002.8.24 「こだま先輩クリアー!!」編


急ぎますぜ。

 

【10/26】

文化祭準備真っ最中。

こだま先輩はしきりにノートのことを聞いてきますが、さっくり家に忘れてきた舞人。

誤魔化そうとする舞人ですが何度も聞かれて、結局正直に忘れたことを伝えたんですが、こだま先輩は今すぐにでも評価を聞きたい御様子です。

なんでそんなに自分の評価を聞きたがるのかを舞人が尋ねると……

「桜井君だから、かな」

とのこと。

要するに『桜井ハンサム之介』だから、ってことと舞人が創造力に溢れた人間だから、ってことですか。

もちろん舞人に対する個人的感情も入ってると思われますが。

「あー、じゃあ、明日どっかで会うってのはどうですか」

キタ!!

「え?」

「だから明日」

ちなみに『明日』は日曜日。

「俺、ノート持っていきますから、バクロワルド辺りで」

「……え?」

どんどん顔を赤くするこだま先輩。

「ええっ?!」

「そんな過剰な反応しないでください。借りたものを返すだけです」

「あ……そ、そうだよね。私、男の子と日曜日に出かける約束なんかしたことないから、びっくりしちゃったよ」

……海に行ったじゃないですか。

「……嫌そうですね」

「そ、そんなことないよ。まさかっ。あ、あはは……デ、デートとか、そんなんじゃないもんね」

「いえ、デートです」

「ええっ!?」

当然です。

「めちゃめちゃデートです」

「ええええっ!!」

「やっぱり嫌そうですね」

「だ、だって……」

「まあ、嫌ならいいですけど」

「その……デ、デートじゃなければいいよ?」

「あー、じゃあいいっす。俺、デートがしたかったんで。ノートが月曜日、ここに持ってきますから」

いつになく積極的な舞人。

やっぱりこだま先輩が相手だと何でもいいやすいみたいですね、からかう感覚で。

「い、いいよ、明日でいいんだってば」

「やったー、こだまちゃんとデートだあ」

「だ、だから違うよっ、そういうのじゃなくてっ」

「強情なひとだなあ」

「だってノートの受け渡しするだけだもん」

「そんなこと言わないで、せっかくの日曜に外へ出るんだから、メシぐらいは食っていきましょうよ」

「う、うん、そのぐらいならいいよ」

「ついでに映画も観ていきません?」

「あっ、それなら私、見たいのがあるの。三十年前のリバイバルなんだけどね、フランス映画の金字塔なんだよ。桜井君、ラブロマンスとか嫌い?」

「面白ければなんでもいいですけど」

「うんっ。じゃあ、けってー!」

さらには新しい鞄も欲しかったから一緒に、と。

こだま先輩は舞人がスカート派かパンツ派か、何てことまで気にしだして携帯電話の番号まで交換。

んで上機嫌になって鼻歌まで歌っていたところをひかり姐さんに見つかりました。

「怪しいわねー、明日デートでもあるんじゃないの?」

「違うよぉー。もう嫌だなあ、みんな、そんなのじゃないんだってばー」

最後まで強情な人でしたとさ。

 

【10/27】

デートの日。

ちゃんと目を覚ました舞人ですが、こだま先輩が寝坊。

昨日寝付けなかった、と電話で謝ってきました。

結果待ち合わせ時間は10時から12時に変更。

 

2時間後。

今度は突然親戚の伯父さんがやってきた、との連絡。

隙を見て抜け出すから、とこだま先輩。

そこにこだま先輩の弟が会話に入ってきました。

『もしもし? あんた姉貴の彼氏?』

「まあ、志願者ってとこだ」

『かっ、返しなさいっ!』

『あんたロリコン?』

『なっ、なに馬鹿なこと言ってるの!』

『遊びだったらそこらのコギャルにしてくれよ? うちの男に免疫ないんだから、捨てられたらあんたンとこ行って手首切りかね……』

『ぎああっ!』

『ご、ごめんね、またあとでかけ直すから』

「は、はあ」

『あ、姉貴……シャーペンの先で脇腹はナシだろ……』

なかなか仲のいい姉弟のようで。

多少シスコンのケはありそうですが、イイやつそうです。

 

数時間後。

今から出る、というこだま先輩の連絡を受けて待ち合わせ場所の駅前プロムナードへ。

でも舞人が待っていても全然こだま先輩は現れません。

そして電話が。

『ごめんね、両親にどうしても断れない用事を頼まれちゃってて……』

「あ、そうなんですか」

『本当にごめんね。終わり次第すぐ駆けつけるから、もうちょっと待っててもらえないかな……」

「あ、いいですよ。どうせ暇だし」

『良かったぁ……今日すっごく楽しみにしてたから、怒って帰られちゃったらどうしようかと思ったよ』

「怒りませんよ、デートしてもらうのは俺の方なんだから」

『デ、デートじゃないってばあ!』

『なにぃ、姉貴デートだとっ!?』

『う、うるさいっ』

『ぎやあっ!』

『ご、ごめんね桜井君、また連絡するから』

……やっぱり仲がいいみたいです。

 

さらにしばらく待ってもこだま先輩はやってこないので今度は舞人から連絡してみました。

すると電話に出たのは弟で、こだま先輩は今電話に出られない、とのこと。

舞人は立ってるのも疲れてきたからシャルルマーニュで待ってる、と伝言。

 

シャルルマーニュで待つこと数時間。

外は雨が降ってきていましたが、こだま先輩は現れません。

諦めて帰ろうとした時電話が。

『あ、桜井サン?』

弟クン。

「ああ、そうだけど……」

『えっと、ちょっと気になったから念のため聞くけど……あんた、姉貴と合流できたの?』

「は? いや、まだだけど……え、だって、先輩そっちにいるんだろ」

『いないよ』

「え?」

『もうとっくに出かけてるんだよ、ケータイ忘れたまんま』

「なに……じゃ、じゃあまさか、先輩は待ちあわせ場所変えたってこと……」

『ああ、知らない』

 

このクソガキがぁぁぁ!!!

 

前言撤回!!!

「ばっ……馬鹿野郎、それを早く言え!」

『だ、だって……』

 

電話を切って店を飛び出した舞人。

雨が降っていて、既に何時間も経過していました。

まさか、と思いながらもただ雨の中をひた走る舞人……。

 

雨のプロムナードに傘も差さずに立つ小さな人影。

「先輩っ!」

「え?」

呆然とするこだま先輩。

「……さくらいくん?」

びしょ濡れになりながらもこだま先輩は舞人の姿に晴れやかに笑いました。

「うわぁ、来てくれたんだぁ、ありがとう」

「え……いや……なにしてんですか、こんなとこで」

「もう怒って帰っちゃったと思ったんだけど、桜井君を待たせた分ぐらいは私も待たなきゃと思って」

「……なんてね、本当はただあきらめが悪いだけなんだけど。えへへっ」

「だって……傘もないのに」

「あ、うん、急に降ってきたからね。あ、あはは……お金がないわけじゃないんだよ? 買いに行ってるあいだに桜井君が来たら大変でしょ。ほら、私、濡れるのは慣れてるし」

「……服、汚れてますよ」

「あ、あはは……ちょっと走ってくる途中で転んじゃって。せっかく下ろしたての一張羅だったのに、ひどいよねー、あそこの段差」

「あ、ごめんね、こんな格好のやつとは並んで歩きたくないよね……もう、やだなぁ私……」

「そんなこと……」

「今からじゃ映画館もデパートも閉まっちゃうしね……あはは、楽しみにしてたのにな、初めてのデート。これじゃ私、馬鹿みたいだね……」

「あ、あはは……わ、私、もう帰ろう、かな……あは、あははは」

こらえきれず、こだま先輩を抱き寄せていた舞人。

「……え」

「桜井君?」

 

「俺、先輩が好きです」

 

「な、なに言ってるの……?」

 

「好きです」

 

「…………」

 

「うん……」

 

「私も……好きだよ」

 

強く抱き合う2人。

雨に抱かれながらそっと重なる唇……。

 

……感動。

 

【10/28】

中間テストが返ってきました。

舞人的にはかなり成績が上がったのですが、それでも山彦には届かず。

頑張れ舞人。

 

街中で、そして公園で出会った桜香。

瑛が現れたために消えてしまいましたが、一体桜香は何を求めているのか……。

 

【11/3】

文化祭。

つばさと一緒に現れたのは久々登場の猫又・希望。

2人のくだらない話には付きあっておれん、とばかりに廊下の隅に寝転んでそのまま眠ってしまった舞人。

目が覚めた時には既に文芸部の上演が始まっている時間でした。

しかも1時間前にはメールまで来ていて、それは当然こだま先輩から。

ちなみにさりげなく呼び方が『先輩』から『こだまさん』に変わっているところがニクいです。

舞人は急いで体育館へ。

 

「パン、いったいおまえは、どこの何者だ!」

「ぼくは若さだ、喜びだ! 卵から 飛びだしたばかりの小鳥さ!」

既にクライマックス。

観客席には和人組(和人、瑛、瑞音&椿)の姿が。きっとこだまに呼ばれたんでしょう。

立ったままステージを見る舞人。

そこから見るこだま先輩の姿は格好いいものでした。

こだまさん、きっと子供たちのいい導き手になれるんじゃないかな。

がんばれ里見こだま、と舞人を思うのでした。

 

それにしてもこだま先輩のピーター・パンはかなり可愛いです。

そしてひかり姐さんのフック船長はかなりカッコいいです。

流石だ。

 

「いやあ、いい劇でしたよ」

「本当っ?」

文芸部公認の仲となっていた2人は打ち上げには参加させてもらえず、夜の街を歩いていました。

毒つきながらもひかり姐さんに感謝の念。

「本当にもう、てのひらビショビショっす。いやあ、迫真の演技でした」

「え……そ、そうかな」

「子供たち大喜びでしたからね」

「やだやだ、やめてよー、そんなことないってばー」

「格好よかったなあ、ひかり姐さんのフック船長」

「やめてってば、恥ずかしいよー」

「え……? ひかり?」

「あー、あと、こだまさんも格好よかったですよ」

「……思いだしたように付けくわえなくてもいいよ」

いじけるこだま先輩も可愛い。

笑いながらも、いい加減からかうのはやめろよな、と自分に言い聞かせる舞人。

「どうせ私は大根役者だからね」

「いやいや、冗談ですって。大したもんですよ、思わず目が釘付けでした」

「どうせ舞人君は、ひかりに釘付けだったんでしょ。可愛い彼女をほっぽって」

「いやあ、俺の彼女は、可愛いっていうより妖艶な色香って感じですから」

「まあ、そうだけどね」

「えええっ!?」

「……なに?」

「あ、いや、えーと……」

わははは。この辺は相変わらずか。

 

一緒に歩きながら、舞人を弟扱いするこだま先輩。

そんなこだま先輩ですが、舞人のことが心から好きであることをはっきりと伝えてきます。

舞人の性格や言動、その全てが好きだと言うのです。

そのお陰で最近は恋愛小説を読むのも楽しくなってきた、と。

「ありがとう、舞人君」

「いえ、どういたしまして」

思わずにやけてしまう舞人。

「このあったかい気持ちがずっと続くといいのにね」

「いいのにね、ってなんですか。まるで終焉を預言したかのような言い草はおやめなさい」

「ふふっ、そうだよね。ごめんね……」

「まったく……今度そんなこと言ったら、ジュニア向けのライトファンタジーまる一冊音読させますよ。とりわけ擬音とかビックリマークが誌面を埋めつくしているような……」

いつもの軽口を叩く舞人が、こだま先輩の気配が消えたことに気づき振り返ると……

「こだまさん?」

月明かりの下、ひっそりとこだま先輩は立ち止まっていました。

「どうか……しました?」

「嫌な予感がするの」

「え……」

ただならぬ不安が舞人を襲いました。

「舞人君はなにも感じない?」

「いえ……べつに……」

「そう……」

「あ、あの、嫌な予感って……どんな……?」

「終わっちゃうの」

 

「私たちの恋が、どんどん大きくなって……」

 

「最後には……泡みたいに弾けて……なくなっちゃうの」

 

「は、はは……」

笑う舞人。でもそれはとても下手な笑い方で。

「面白いですね、さすがにこだまさんは発想力が豊かだなあ」

「そうだよね……気のせい、だよね……」

「当たりまえじゃないですか。そんな些細な妄想を気にすることはありません」

「ふふっ」

舞人と一緒に笑うこだまさん。

それもやはりとても下手な笑い方で。

 

「恋って桜と同じなのかな……」

 

「どんなに美しく満開に咲きみだれても、いずれは必ず舞い散る運命なのかな……」

 

月明かりに輝く涙が一粒。

 

「そんなこと……」

 

「ないですよ……」

 

自分の運命を知り、その上で断固として否定する舞人。

 

「うん」

 

「そうだね」

 

「そうだよね……」

 

2人に出来るのはただ互いを抱きしめ合うことだけ。

 

 

 

そろそろ、か……。

 

【11/11】

公園にて舞人と桜香。そして和人と瑛。

果たして和人は桜香の心に触れたのか……。

 

【11/18】

舞人が暗くなって委員会から帰ってくると(と言うかちゃんと委員長やってたのか)ポストに大学ノートが。

こだま先輩が続きを書いたから読んでくれ、と置いていったみたいです。

待っててくれればいいのに、と思いつつも夢に向かって頑張っているこだま先輩を想う舞人。

俺としては前回舞人が書いた批評内容が知りたいのですが、またこだま先輩が持ってきたと言う事は納得できる内容だったのでしょう。

 

【11/23】

夜の桜の丘で舞人と朝陽。

既に自分に訪れるであろう運命を理解していながらも舞人は必死に否定しようとしているようです。頑張れ……。

 

【12/4】

修学旅行開始です。

流石にこだま先輩が修学旅行先(北海道で間違いないかと)に来ることはないでしょう……ガックリ。

 

【12/5】

自由行動は舞人1人でフラフラ。

夜、露天風呂にでも入ろうかと思った時に現れたのはドクターイエロー。

「よし、一緒に入るか」

当然逃げ出しました。

 

夜中に目が覚めた舞人。

目が覚めた理由は夢。

こだま先輩の別れを予感する言葉の夢でした。

寝汗を流そうと舞人は露天風呂へ。

想うのは別れの舞人自身にも訪れている別れの予感……。

「ちょんまげ〜」

頭頂部にかすかな質量を感じて振り返ると……

「ぞわああああ!」

ドクターイエロー登場。

頭に乗せたのは(一応)タオルだそうです。わははは。

逃げ出そうとした舞人に後ろから声をかけてきたドクターイエローこと谷河教諭。

「女には星座のひとつも教えとけ」

「は、はあ……?」

「星ってなァ、どっからでも見えッかンな。たとえ終わったあとでも、女はその星を見るたびにてめェを思いだすってわけよ。ざまァ見やがれだろ?」

「あの、先生。なにやら励ましていただけるのは有難いんですが、縁起でもない話はやめてください」

「あ、違うンか? ンだよ、いかにも失恋童貞のツラしてッからよ。やべぇンかと思ったぜ」

「べつに……そんなこと……」

あってたまるか、と舞人。

「だいたい俺、星座なんて知りませんから」

「ヴァーカ、星はたとえだ。ま、適当にがんばれや。男と女なんざ、泣こうが喚こうが終わるときゃ終わる」

「……どうして嫌な励まし方しか出来ないかなあ、この人は」

「必ず最後に愛は勝つってか? ハッ、都合のいい言葉で癒されンだったら、安上がりで結構じゃねェの。CD屋でも行ってこいや」

「なるほど……そうしますよ」

「素直だねぇ、桜井君は。ハッハッハッハッ」

深夜の星空に響く哄笑が何故か温かかった舞人でした。

 

谷河さんなりの励まし方……なんでしょうね。

 

【12/6】

修学旅行から帰ってくると、アパートの前でこだま先輩が舞人を待ってました。

「……こだまさん?」

「こんばんわっ」

「ど、どうしたんですか、こんな時間に」

「おむかえ。舞人君に会いたくて我慢できなかったんだ」

「は、はは……面と向かって言われると照れますな」

「郵送でも良かったんだけど、最後だからちゃんと手渡ししておきたくて」

「最後?」

「うん、最後」

「……なにが?」

「…………」

差し出されたのはいつもの大学ノート。

「書きおえたの」

「あ……」

安堵する舞人。その理由は……言わずもがな。

「そうか、そっちか……ああ……おつかれ、こだまさん」

「疲れるのはこれからだよ。いまはまだ……」

「そうですよね、受験日まで二ヶ月……いよいよ息抜きしてる暇もなくなってきましたね」

そんな時にわざわざすいません、と言う舞人に「最後だからね」と繰り返すこだま先輩。

訪れる無言の間。

そしてこだま先輩は舞人が心の支えになってくれていて、だからこそ頑張れる、と言ってくれました。

舞人の言葉全てがこだま先輩にとっては特別な言葉。

「恋をするとね、何気ない一言が宝石みたいに光りかがやくんだよ」

星空を見上げながらのこだま先輩の言葉。

「俺、こだまさんのそういうとこ好きだな」

「ありがと」

微笑んで舞人の腕にそっと抱きついてきたこだま先輩。

「ふふっ、今の言葉は一等星だった」

照れる舞人。

「こだまさん文系なんだから、もっと評価厳しくなきゃ」

「あはは、だめだめ。舞人君を好きになってからこっち、愛の詩だったら何を読んでも感銘受けちゃうから」

 

「幸せって怖いね」

 

「……怖いよ」

 

こだま先輩の肩を抱く舞人。

「私、舞人君を好きになって良かった。それだけは後悔しないよ」

「俺も……同じだよ」

「……ね、上がらせてもらっていい?」

「ええ」

 

舞人の部屋へ。

室内を物色したりポスターを注意したりしながらも嬉しそうなこだま先輩。

「楽しい」

「はあ」

「楽しいね」

「そうですね」

「楽しいのに……」

舞人の体に額をつけているために表情の見えないこだま先輩の声から失われていく色。

「どうしてこんなに悲しいのかな」

「ねえ、なんで……?」

そして顔を上げると……瞳に滲んでいた涙。

「こだまさん……」

こだま先輩だけでなく、舞人も感じる悲しさ。

その悲しさから逃げるように互いのぬくもりを求める2人。

 

 

 

Hシーン突入。

 

年上のように振舞う(事実だけど)こだま先輩と、すっかり年下のような(事実だけど)舞人。

そんな2人が凄く優しくて……よかったです。

 

んでこだま先輩は予想以上に脱いだらスゴかった。

独身28歳の見立ては正しかった、と言う事ですね。

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

「こだまさん?」

「こだまさーん、大丈夫ですかー」

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

「はぁ……はぁ……なんとか……」

「い、痛かったっすかー」

「恋の軽い翼で……この塀は飛びこえました……」

「……なにそれ」

「ロミオとジュリエット」

「ふーん」

「ねえ、舞人君……」

 

「私たちも許されない恋だったのかな……」

 

「そんなこと……あってたまるか」

 

 

【12/7】

朝陽によって告げられた『ゲーム』の終焉。

 

【12/8】

恋が引き裂かれることを予感しながら放課後の図書室へ。

そこにはひかり姐さんと話しているこだま先輩の姿が。

覚悟を決めて舞人はこだま先輩に声を……

「こだまさん」

「え?」

振り向いたこだま先輩。

「あ」

「どーも」

「おっす」

「こ、こんにちは」

その笑顔は引きつった笑顔。

「あの、えーと……」

 

「なに君だっけ?」

 

力なく笑う舞人。

「あんた何くだらないこと言ってんのよ、桜井泣きそうな顔しちゃったじゃない」

「え……あ、ごめんね?」

「その、ほら私、もの覚えとか悪くて。そうそう、桜井君……だよね、あはは」

「えーと……それで、なにしに来たの?」

質問には答えずに笑顔を作る舞人。

「先輩、楽しそうですね」

「いいでしょ。夢を語る少女はいつでも輝いてるものよ」

「ひかりぃ……」

「へえ……どんな夢なんですか」

「な、なんでもないよ、あはは……」

「俺には教えてくれないんですか」

「だって……」

「たぶん言ったら大笑いするもん」

「そうかなあ」

「だいたい夢っていうのは、やすやすと滅多に人に話すことじゃないの」

「そうなんですか」

 

「ふふっ、ごめんね」

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう、舞人君

 

 

 

 

 

【12/24】

山彦とのクリスマス慰撫。

嗚呼、山彦。

 

【1/15】

廊下で会ったのは谷河教諭。

腐っていた舞人をからかうように茶化してきました。

半分は怒っているようでもあるような感じで。

「もっとマシなツマしとけや、おお?」

「……放っといてもらえます? 俺、もともとこんな顔っすから」

「だな。ンなツラしてッからオンナに逃げられンだよ、ヴァーカ」

「……部外者は黙ってろ」

「あ? なんか言ったか、クソジャリ」

「黙れって言ったんだよ、クソ教師!」

「ほっほー、面白ェこと言ってくれんじゃん、さっくらいくぅーん?」

舞人の肩に腕を回してきたドクターイエロー。

「血ィ見とくか、おお?」

「放せよ」

その腕を振り解いた舞人。

「事情も知らないくせに、勝手なことぬかすな! 俺はあんたに心配されるほど落ちぶれちゃいない!」

「はッ! マシなツラできンじゃねーかよ、桜井。怖えェ怖えェ、腐ってるよかよっぽどイイぜぇ?」

失恋という経験で男が磨かれていくんだ、と言いながら舞人のポケットにタバコを箱ごと押し込んできました。

「え、ちょっとこれ……」

「やるよ。屋上でも行って青春して来い」

そして最後には恒例の『舞人狙い』発言をかましてましたが……谷河教諭なりの励まし、身に染みました。

舞人は本当に周囲の人間に恵まれてると思います。

 

【2/14】

街で舞人に声をかけてきたのはひかり姐さん。

あまりに覇気の無い舞人に苛立っている御様子。

「いつもの欲しい?」

「なんですか、いつものって」

「ニッコリ笑ってバイオレンス」

「ああ……いや、今日は勘弁してください。俺、そんな気分じゃ……」

パン!

「ぶぇぷっ!」

「どう? なんだったらもう一発いる?」

「あ、あんたな、ひとの話を……」

パン!

「ぶぇぷっ!」

「女々しい顔してるんじゃないの」

周囲もはばからぬ大声。

「あんた、うちの可愛いマスコットを射止めたんだから、ちゃんと責任とりなさいよね。さもないと部員引きつれて、あんたの家、破城槌でたたき潰すわよ」

「相変わらず、ひかり姐さんはおっかないなあ」

肩を揺らしながら鼻を鳴らす舞人。

笑えるきっかけが出来て、少しだけ有難がってたりします。

「あんたが気合入れて欲しそうな顔してるからでしょ。ほら、ボーッと突っ立ってないで、さっさと行きなさいよ」

「へーへー、言われなくても」

「分かってるじゃない」

満足げなひかり姐さん。

「戦闘、開始」

「は? なんですかそれ」

「あんたね、文芸部だったら太宰ぐらい読みなさいよ」

幽霊部員ですから、と舞人。ちなみに「戦闘、開始」は太宰治の『斜陽』に出てくる言葉です。

「そして、まもなく姐さんも卒業。俺の知られざるプロフィールを握る者はこの世から消えうせるのです」

「なに言ってんの。あんたのことぐらい、みんな知ってるわよ」

「……へ?」

確かに。こだま先輩も知ってたぐらいですからね。

「っていうか、あんた部長だから」

「はああ?」

「私が推薦して、満場一致で可決したわ」

「な、な、な……あほかあっ!」

「しっかりな、桜井」

パン!

「痛てっ!」

相変わらず強引なひかり姐さん。流石です。

文芸部部長・桜井舞人、今日も生きてます。

 

それにしても……ひかり姐さんはやっぱりイイオンナですねぇ。

 

【2/21】

舞人の想いの深さ、そして求めるものを少しだけ理解した桜香。

そんな桜香によって一度だけ与えられた機会。

 

【3/1】

卒業式の日。

徹夜をした舞人は保健室で眠っていました。

何でも谷河教諭によると舞人に関しては保健室での横行は許されるようです。

徹夜の理由は『返したいものがある』から。

そして舞人は部活に顔を出すために図書室へ。

このごろは本を読む趣味に目覚め始めていた舞人でした。

誰の影響かは……わかりきってますね。

 

図書室から飛び出してきた佐竹先輩と宇都宮先輩。

流石に卒業ともなれば涙腺が緩むようです。

ちょっとだけ寂しくなるな、と舞人は優しい(?)言葉をかけます……が。

今後はOGをしてちょくちょく顔を出すとのこと。それでこそ、ですね。

 

放課後の図書室。

点在する部員たちの中には『彼女』の姿も。

テーブルの上にはノートと丸筒。

真剣な表情ながらも微笑が浮かんでいるこだま先輩が使っているのは1本のシャーペン。

それは映画帰りに舞人がファンシーショップで冗談半分に買い与えたものでした。

短くて、そしてとても幸せだった秋を思い出す舞人。

外国の洒落た恋愛小説でも読みたい気分になって本棚を目指して……すれ違った席の少女がふと頭を上げました。

その温かい笑顔に舞人は思わず息を呑んで立ち止まって……。

振り向いた先には笑顔のこだま先輩。

笑顔の先には舞人。

 

「先輩……」

 

うめくように漏れた呟きは押しよせる期待と共に飲み込んで。

 

「なにしてるんですか、こだまさん」

 

「夢に向かって精進してるの」

 

「受験も無事終わったし、これからは本腰入れて頑張っちゃうよ」

 

見覚えのある色あせた大学ノートが誇らしく見える舞人。

 

「続き、書いてくれたんだね」

 

「愚作ながら」

 

「私、いちおう完結させてたはずなんだけど……?」

 

「だって、あんな暗い終わり方じゃ、全国のチビッ子が悲観的な大人になっちゃいますよ」

 

「思いません? ご都合主義のエピローグがあったっていいじゃないですか」

 

「うん、そうだね」

 

「ありがとう、舞人君」

 

「本当に……ありがとう」

 

「こちらこそ」

 

こだま先輩の創作は先輩自身の物語であり、それはすくいとった幸せが掌から零れおちていく悲恋の寓話。

だからこそハッピーエンドを付け加えた舞人。

それは舞人自身が望んだ結末。

 

「これからもよろしくね」

 

重なる2人の手が恥ずかしくて、さりげなくこだま先輩の肩に移した舞人。

 

「安心してください、俺が里見こだまを立派な喜劇作家にしてみせます」

 

「あはは、それはちょっと」

 

「でも楽しい話はいいよね。歓びは心に浮かぶ星だから、笑った分だけ人は輝いて生きていけるんだよ」

 

「なるほど。で、それは誰の言葉なんですか」

 

「里見こだま」

 

「ほう」

 

「ふふっ、舞人君が誉めてくれたから作中で使っちゃおうかな」

 

そう言いながら再びペンを取るこだま先輩。

舞人もケースから別のペンを拾い上げて横から茶々を。

それはいつもの姿。

 

「いやいや、誉めてませんって。表に出すんだったら、もっとパンチを効かせないと」

 

「不条理ギャグとかは駄目だよ?」

 

「なに生意気なこと言ってるんです。笑わせたもん勝ちでしょうが」

 

「駄目だってばぁ……作家性を疑われちゃうよぉ」

 

「アマチュアが生意気なこと言うんじゃありません。いいから先生に任せなさい。バリバリ添削して、どこの演芸場に出しても恥ずかしくない脚本にしてあげますから」

 

「舞人君……私、コントの台本作るわけじゃないんだけど」

 

「なにっ、そうだったのか」

 

「えー、参ったな。俺、こだまさんの手伝いしたかったのに」

 

「ふふっ、いいよ。読んでくれるひとを楽しませるのは私の夢なんだもん」

 

楽しそうに言いながら、むくれたように少し口を尖らせるこだま先輩。

 

「舞人君は、私を笑わせてくれてればいいの」

 

これまでの2人は承前に過ぎなくて、2人の物語はいまだ終わらず。

 

「ずっとそばにいてくれれば、それだけで私、幸せだから」

 

「あ、それなら得意分野だ」

 

「じゃあ俺は、里見こだま物語の狂言回しという役柄で」

 

「あははっ、舞人君って面白いこと言うんだね」

 

「あれ、お気に召しませんでしたか」

 

「ううん」

 

「私、舞人君のこと尊敬してるから。何を言われても、宝石を贈られたみたいに嬉しくなってきちゃうよ」

 

「こだまさん、宝石なんか好きだったんですか」

 

「ふふっ、そうじゃないよ。心がどんどん綺麗になっていくってこと」

 

「陳腐な表現だなあ。仮にも作家志望なんだから、もっと心に響く言葉で表してくださいよ」

 

「うーん……それじゃあ」

 

 

 

「大好き!」

 

 

 

 

 

こだま先輩クリアー!! ぱちぱちぱち。

 

う〜ん、よかった!! よかったよ!!

こだま先輩のキャラも、ストーリーもグッドです!!

夢に向かって二人三脚で突っ走れ!!

 

こだま先輩が書いたという悲恋の物語。

それは自分達の行く末を描いたものだったんでしょう。

でも舞人はそれにハッピーエンドを追加しました。

そしてそれが現実のものとなるように頑張って……それは成し遂げられた、と。

流石は桜井ハンサム之介。

こだま先輩もまさか舞人が本当に喜劇……というかコントのネタ帳を持ってるとは思ってないでしょうねー。

 

今回の白眉はやはりひかり姐さんでしょうか。

こだま先輩と舞人を温かく(熱く?)見守り、最後も舞人の背中を押して(ひっぱたいて?)くれました。

美人だし、格好いいし、頭いいし、運動神経もいいし、ノリもいいし……完璧じゃないですか。

ついて行きまっせ〜。

 

あとドクターイエローこと谷河教諭。

彼も美味しいところをかっさらっていってくれました。

少々乱暴な方法ながらも舞人を励まし、時には罵倒し、時にはセッティングし。

この男がいなかったら舞人とこだま先輩が結ばれることは無かった……とまでは言いませんが、かなりの助けになったことは事実ですね。多謝。

 

それにしても『DANGER×DANGER概論』がもの凄く読みたいのですが、それは俺だけじゃないですよね?

あとこだま先輩と舞人の合作とも言える作品も。

卒業式の日、舞人が保健室に行く前に寄ったのはおそらく図書室だったんでしょう。

そこにこだま先輩に借りていた大学ノートを置いておいた、と。

それは2人が結ばれた夜から借りっ放しだった大切な預かり物であり、2人の絆のような物でもありました。

その中で描かれているハッピーエンドは舞人による『作品』であり、事実でもあり。

文芸部・部長、桜井舞人の面目躍如と行ったところでしょうか。

満場一致で可決した文芸部の勇断に拍手を贈りたいと思います。

結構良い部長になるんじゃないですかね、舞人は。

多分佐竹先輩や宇都宮先輩に限らず、こだま先輩は言うに及ばずひかり姐さんもちょくちょく来てくれるでしょうしね。

文化祭での芝居がどうなるかが一番心配ですが。

 

何はともあれこだま先輩もクリアーいたしました。

 

……と言う事は。

 

残り1人!!

 

森青葉!! 待ってろよ!!

 

と言う訳で以下次回。


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