2002.8.12 「小町よ……」編


一気に参ります!!

 

【12/4】

修学旅行です。

スッチーに目を奪われている山彦や熊の心配をしている希望&つばさ。

君たちひょっとしてバカ?

んで夜は山彦と楽しい(?)一時。

修学旅行で覗き……青春の思い出ですね。行ってないけど。

 

【12/5】

舞人は基本的に友達がいないので1人。

唯一の友達……と言うか親友の山彦が先に行ってしまったようなので舞人は一人きり。

頭に浮かんでくるのは桜坂に残してきた『彼女』のこと。

どうせなら一緒に来たかったな……。

舞人も成長したもんです。

結局舞人は1人で街を歩いて(札幌?)時間を潰すのでした。

 

夜。

風呂上りにロビーでくつろいでいるところに小町から携帯に電話がかかってきました。

つい不満そうな声を出してしまい、その癖を直そうと青葉ちゃんに話しかけるような口調になったり、改めて今までと同じように話したり……『普通』に話すだけでも舞人は大変です。

それに引き換え小町は微妙にしおらしくなっていました。自分も大人にならなきゃな、と舞人。

「で、どうした? 土産は熊の置物でいいんだろ?」

ホントにそんなこと言ったのか? と疑いたくなります。まぁ舞人のジョークでしょう。

『いえ、あの、ちょっとお話が……』

「話? 長いのか? 遠いからな……桜坂からここだと、電話代いくらかかるんだ。平気か?」

『あ、はい、平気です。電話代は……』

携帯だから料金は一緒とのこと。初めて知りました。

「でも無理はするなよ。べつに明日の夜にはそっちに帰ってるんだから、いくらでも会えるんだ」

言った直後にその恥ずかしさに気付いて赤くなってしまった舞人。

『は、はい、ありがとうございます』

それはどうやら小町も一緒のようです。

うんうん、初々しくていいなぁ。

『あの、でも、いますぐ会いたいんです』

ブツッ! ツーツーツー……

「あわわわわ……」

とんでもないムズかゆさで思わず電話を切って放り投げてしまった舞人。

再び電話が鳴ったので緩んだ顔を引き締めつつ舞人は会話を再開。

『す、すみません、お取り込み中でしたか……?』

「いや、ちょっとした操作ミスだ。すまん」

『あの、先輩。もし大丈夫なら、なんですけど』

「ん? なんだ?」

『自由時間にこっちに出て来られないでしょうか?』

「こっち?」

『あ、実は私、いま実家にいるんです』

「へえ」

「……」

「はあ!?」

思わず大声をあげてしまった舞人。

「実家って……雪村クリーニングかっ?」

『す、すみません』

「お、おまえ……だって、授業はどうした」

『二、三日風邪をひいておきました』

喋り方が多少落ち着いてもダイナミック馬鹿のまま、とは舞人の弁。

これはむしろ『流石小町』と言うべきでしょう。

『あの、どうしてもこっちで先輩に話したいことがありまして……』

真剣な口調の小町に舞人も何かを感じたのでしょう。

「あー、分かった。ちょっと待ってろ」

ヤケクソ気味に言って電話を切った舞人。

どう考えても自由時間で行って帰ってくる、なんてのは不可能。

それでも舞人は小町の行動を少しは嬉しく思うのでした。

そして舞人は浅間先生に……

「実はいま実家方面から、母親が奇特との報がありまして」

「なにっ、お母様が危篤だとっ?」

「はい……母には前からアブナイところがあったのですが」

「そうか、危ない状態なのか……」

そしてめでたく実家に帰る了承をゲット。むしろ早く帰ってやれ、ぐらいの勢いで。

確かに嘘は言って無い。わははは。

 

故郷の街を歩く舞人と小町。

雪の降る寒い夜道、小町を自分のコートに入れて歩く舞人。

そして突然始まった雪合戦。

「遅いですよー!」

「ぐはっ! や、やりやがったな貴様っ! 喰らえ、必殺ホワイトキャノン!」

「きゃああ!」

「楽には死ねんぞ、オラァ!」

「負けませんよー! それっ、それぇっ!」

童心に返り、汚れるのも気にせずに雪の中を走り回る2人。

ちなみに小町の髪型はさらに変わっていました。

髪の毛を後ろで2つに束ねた感じです。この小町も……イイ!!

そのうち舞人は気付きました。その場所の意味に。

そこは小町が最初の勇気を振り絞った場所。

 

子供の頃。

仲良くしてやる、と小町に告げた幼い舞人。

同時に芽生えた小さな恋心。

面白いことを言って笑ってれば仲良くしてやる、と。

必死に考え込む小町。

「そ、そんなに急に言われても、小町困っちゃうよ」

「小町と困っちゃうをかけたのか。まあまあだな」

小町の計算か、もしくは偶然か。

それはわかりませんが、舞人は小町と遊んでやることに。

小町に自分を「せんぱい」を呼ぶように言って、2人はかくれんぼをすることになりました。

舞人が最初の鬼となり、慌てて走り出した小町。

でも舞人は小町の姿が見えなくなるとすぐに自分の家に帰ってしまいました。

 

その話を小町の口から聞いて思い出した舞人。

「昔の話とはいえちょっとひどいですよ、先輩」

再び雪道を歩き出した2人。

笑いながら舞人を見上げる小町ですが、それはとても笑い話などではありませんでした。

「ここです。思い出の隠れ家」

そこは名も知らない家の物置。

「潜伏先としては、なかなかいい場所ですよね。あんまり使われてないみたいですし」

その苦い思い出を笑えるようになるまでに、どれほど強さが必要か。

小町の笑顔はただただ舞人の心を締め付けます。

「あのときは、私も人を疑うってことを知りませんでしたから」

かくれんぼで隠れながらも見つけてもらうことを楽しみにしていた幼い頃の小町。

「寒いし怖いし寂しいし、もう泣いちゃいそうでした。でも、そこに白馬の王子様が迎えに来てくれたんです。恋に落ちても仕方ないと思いません?」

「いや、あれは……」

小町が帰ってこないことが発覚して母親の袋叩きにあった幼い頃の舞人。

大人達も探していたにも関わらず、小町を見つけたのはふてくされながら探していた舞人でした。

それはたまたま。

舞人がやってきたことを心から喜んでいた小町。

あくまでも遊びの中だと思っていた小町の笑顔は舞人の怒りを増幅させました。

八つ当たり気味に小町に当たりちらした舞人。

2人はその時の隠れ家に並んで座っていました。

言葉を重ねるほど、幼かった罪に押しつぶされそうになる舞人。

「ごめん」

どう謝っても気が済まないけど、それでも謝るしかなく。

「ごめん、小町」

自分の膝に顔を埋めて、小町の顔を見る事ができないままに謝ります。

「ごめん」

何度もその言葉を繰り返す舞人。

それはおそらくその時のことだけでなく、今までの全ての悔恨と共に謝っていたのでしょう。

例え赦されなくても、何度でも言い続けるつもりだった舞人に小町は言いました。

「いいんですよー、もぉ。ほら、どんなに綺麗な雪の結晶だって、核になってるのはごみとか塵なんですから」

眩しそうに目を細めて笑う小町。

小町はそんな酷い仕打ちすらも、綺麗で大切な思い出であると言っているのです……。

「私はいま、すごく幸せです。だから……」

小町が舞人に体を預けてきました。

「こちらこそ」

 

「ずっとそばに置いてくれて、ありがとうございました」

 

遠慮がちに触れた小町の手を強く握り返した舞人。

舞人に抑えようのない激情が沸き立ち、つづけて全身を抱きしめました。

「ごめん」

小町を抱きしめながら、ただその言葉を繰り返す舞人。

「ごめん」

「なんもー」

「ごめん」

「なんもさー」

微笑みながら、故郷の言葉で舞人を赦してくれた小町。

そして2人は互いに強く抱き合って互いを求めるのでした……。

 

 

Hシーンへ。

やっと……という感じですが、それだけに感無量です。

 

その中で小町の胸はEに限りなく近いDカップであることが判明。

感動を超え、驚嘆すら覚えた舞人。この幸せ者め!!

 

 

1つになれた喜びを感じる2人。

この幸せがいつまでも……続かないんだろうなぁ……。

 

 

っつーかどなたか「なんもさー」の意味を教えてください。

 

【12/6】

朝一番の便で母親に叩き返された舞人。

夕方目覚めたときは自分の部屋でした。台所には制服姿の小町が。

どうにも体調の悪い舞人は小町が食事を作ってくれたのはわかっていましたが再びに眠りに。

 

でもそれも長くは続きませんでした。

嫌な夢を見てうなされて目が覚めてしまったのです。

そんな舞人にキスをして一緒に布団に入ってきた小町。

小町も嫌な夢を見た、と舞人に告げました。

舞人が遠くに行ってしまう夢。

そしてイチャイチャ……と言うかまったりと言うか。

とにかくそのまま2人は昨夜に続いてHに突入です。

 

 

希望の時もそうでしたが……。

 

本番よりも、口でする時の方がはるかにヤラしいです。

 

しかも小町は胸まで使って。

舞人……この幸せ者!!

 

 

でもそんな小町の健気さも不安から来るものなのでしょう。

まるで『舞人』を自分の身体に刻み込もうとせんばかりのHでした。

 

H後。

これからもずっとそばに置いてくれ、と小町。

小町は舞人の母親に宣言したことがあるそうです。

「小町の夢は舞人ちゃんのお嫁さんです、って」

「は、はは……」

「あ、先輩は結婚をちらつかせるとたじろぐタイプですね。男性としてはいただけませんよ、そういう態度は。しかも愛しあったあとなのに」

そこまで言って自分の言葉に照れる小町。

「あ、愛しあったって……」

「自分で言って勝手に照れるな」

そして舞人は小町の頭を抱きこんで自分の胸板に乗せました。

小町の瞳に光る涙。

愛する人の涙さえ、喜びのもたらす産物であると疑わない舞人。

確かにこの時2人は幸せでした。

 

でも。

 

小町が制服を着て舞人の夕食のために買い物に外へ出て行きました。

1人になった途端、訳も無く焦燥感に襲われた舞人。

舞人は飛び起きて窓辺へと走り、カーテンをあけて外の闇を見通すと……そこに小町はいました。

凍える夜の下、立ち尽くしていた小町。

それも不安に満ちた表情で……。

舞人はすぐに服を着ると小町の後を追って外へ。

そうしなければ、もう二度と帰ってこないような……そんな馬鹿げた空想が頭を掠めながら。

 

2人の別れは……近い。

 

【12/7】

夜。桜の丘にて。

結果は同じだった、と悲しげに呟く桜香と笑い飛ばす朝陽。

怒りに任せた舞人の一撃も軽く払われ、朝陽は舞人に怒号を飛ばします。

そしてそのまま去っていった朝陽の姿が見えなくなるのを待って舞人も歩き出しました。

まだ終わったつもりはない。

そう桜香に言い残して。

 

【12/8】

日曜日。

舞人は夢を見ていました。

白銀の世界。

降り積もる雪。

でも伸ばした掌に舞い落ちた雪が冷たい雫となって消えうせてしまう夢。

 

舞人は携帯電話の音で目が覚めました。

発信者は小町。

『あの、お手数ですけどちょっとご足労願えませんでしょうか』

「言われなくてもただちにすっとんで行く!」

不安から大声を出してしまう舞人。

ただ一刻も早く小町の顔が見たくて。

「どこだ、どこにいるんだっ」

『……ど、どうしたんですか、そんなに慌てて。今は桜坂病院横の教会にいるんですけど』

「きょ、教会? なんでそんなとこに……」

電話の向こうでいたずら好きな小町がくすりと笑う声が。

『ちょっと面白いイベントがあるんですよ。よろしかったら……』

「分かった」

行けば分かるんだな、と舞人。

『来ていただけるんですか? うわぁ、無理を言ってすいません。あ、おめかしして来てくださいね』

「そんなこと言ってる場合かよっ!」

焦燥感から怒鳴ってしまった舞人に、小町が息を呑んでいました。

「悪い……いま行くから、とにかく待っててくれ」

「ぜったい行くから……」

「待っててくれ」

「頼む……」

「もう少しだけ、待っててくれ」

ほとばしる想い。最早舞人の声は嘆願に。

そして舞人はすぐに着替えて外に飛び出しました。

ドアの鍵を閉め忘れたことを思い出しても引き返すことはありません。

失いたくないものはそこにはないから。

失いたくないものはこれから行く場所にあるから。

 

ただひたすらに走り続ける舞人。

額の汗を拭い、涙を流していたことに気付いても足を緩めることは無く。

 

白い西洋建築。

三角錐の屋根に立つ細い十字。

教会で行われていたイベントとは結婚式の一日体験。

きやびらかな花嫁衣裳を着た女性達が恋人と幸せを感じる時。

呼吸を整え、入り口へと近づき……扉を開いた舞人。

 

ステンドグラス越しの柔らかな光を浴びて、小町はそこにいました。

足跡ひとつない雪野原のように純潔なウェディングドレスの小町。

安堵に崩れ落ちそうになりながらも舞人は歩き出しました。

「小町っ」

感謝の念に打ち震えながら力一杯呼んだ彼女の名前。

 

「待たせたな、小町」

 

「……はい?」

 

呼びかけに振り向いた瞳……それは色を失った瞳。

 

「小町……」

 

そこにはかつての舞人を見る優しい輝きは無く……。

絶望に飲み込まれる魂。

それはまるで夢で見た、溶けてなくなる雪のようで。

 

舞人は悟りました。

間に合わなかったことを。

それは自分に降りかかる逃れようのない運命。

 

そして小町は怯えた瞳のまま、口を開きました。

 

 

 

「……どちら様でしょう?」

 

 

 

 

ぐはっ。(←吐血)

 

 

 

【12/24】

寂しい……と言うよりも虚無なクリスマスイブ。

そこにやってきたのは山彦。

「今夜は朝まで付きあうぜ、舞人! クリスマス慰撫のオールナイト・パーティーだ!」

ああ……山彦…………最高だよ!!

ナイス・ガイだよ!!

 

【1/15】

舞人を久しぶりに起こしに来た青葉ちゃん。

最近小町が舞人の話をしないので喧嘩でもしたのか、と青葉ちゃんは心配そうです。

「もしかしたらおねえちゃん、おにいちゃんのこと好きだったのかもしれないよ」

「はは……そう、かなあ……」

「うん、もしかしたらだけどね」

「もしかしたらか……」

早く仲直りした方がいいよ、と笑顔の青葉ちゃん。

寂しく笑う舞人の心境を思うと……苦しいです。

 

【2/14】

校門付近で見かけた男女。

それは麦兵衛にバレンタインのチョコを渡す小町の姿。

見慣れたはずなのに、なお痛む舞人の胸。

それでも小町さえ笑っていられるなら……を舞人は思います。

サッカーの試合のことで盛り上がる2人でしたが、小町が舞人の姿に気付きました。

「あ、桜井先輩だ。お疲れさまでーす」

「おうっ」

小町の笑顔に負けないぐらいの笑顔を作る舞人。

そんな舞人を見て麦兵衛は不審顔。

「いまお帰りですか?」

「まあな」

「あははっ、なんだかハッスルが足りないんですね」

「……そうか?」

「今日の運勢で悪い結果でも出てましたか? 駄目ですよ。ああいうのは、いくつもに検証結果の中から、自分に都合の良いものだけを選りぬいて信じないといけません」

「そうだな……」

そのとおりだ、と夕日を見上げて目を細める舞人。

「俺も、心のチャンネルを変えて面白おかしく生きてみるよ」

「ええ? 桜井先輩って面白いこと言うんですね」

『占いでチャンネルを変える』

これは以前小町が舞人に言っていた台詞。

他人事のように笑う小町はとても遠い存在。

「それじゃ、お先に失礼しまーす」

「……ああ」

気を付けてな、と舞人。

「小町さん……いいの?」

「え? なにが?」

「いや……」

小町と怪訝そうな声を出していた麦兵衛が歩き出しました。

 

抜き去るタイミングをつかめず、2人の後ろをゆっくりと歩く舞人。

聞こえてくるのは楽しげな2人の会話。

舞人は靴に小石が入った振りをして歩くのをやめました……が、そんな舞人を見ていたのは麦兵衛でした。

「ごめん、俺ちょっと用事思いだした。先に帰ってていいよ」

「う、うん」

 

どういうことだ、と舞人に問いかけてくる麦兵衛。

とぼけて横を素通りしようとした舞人の胸倉を麦兵衛が掴んできました。

「ふざけるな」

「知るか、放せ」

「放すものかよ。貴様が答えるまではな」

「答えるまでもないだろ、ご覧のとおりだ。知ってのとおり俺はろくでもない男だからな、愛想を尽かされたって仕方ないだろ」

「……なんだと?」

「笑えよ。良かったじゃないか。まさに、おまえの望んだとおりの結末だ。この世に悪の栄えたためしはないってな」

舞人は思います。

自分がもっと優しければ、もっと小町の気持ちに応えていれば違う結末もあったのかもしれない、と。

しかし、今となってはすべてが後のまつり。

舞人はただ自分を貶めるだけ……。

「というわけだ。がんばれよ、少年」

「あ?」

「七兆歩譲って……おまえだったら任せてもいい」

「…………っ!」

麦兵衛の眼光に激しい炎が宿り、次の瞬間には舞人は麦兵衛によって蹴り倒されていました。

「ざけたこと言ってんじゃねえよ!」

「熱くなるな、ガキ」

仕方ないんだ、と擦り切れた袖を払いながら立ち上がる舞人。

「仕方のないことなんだよ。俺にはどうしようもないことなんだよ!」

「なに都合のいいことぬかしてやがる! 今度という今度は呆れはてたぜ。今までさんざん彼女を突きはなしておいたくせに、自分が同じことをされたらさっさと諦めるのかよ!」

「仕方ないって言ってるだろ! 俺だって、これからはあいつを守ろうと思ったよ! 思ったんだよ!」

麦兵衛に向けられている怒りは自分に対する怒り。

「でも……もう駄目なんだよ! もう俺じゃ……駄目なんだよ……」

だから頼む、と舞人。

「あいつを……頼む……」

「笑わせんな!」

舞人の腹部にめり込む麦兵衛の拳。

「うっ」

さらに容赦のない蹴り。

「悲劇のヒーローにでもなったつもりかよ。小町さんはどれだけ辛い思いをしても諦めなかったんだぞ!」

 

「だったら、てめえもウジ虫根性は大概にしろ! それでも男か、この腐れインポ野郎!」

 

麦兵衛の蹴りが舞人の顎に。

何とか身を支えた舞人に浮かんできた苛立ち。

「なんだと……」

それは不甲斐なさとやるせなさ。

 

「うるせえ、クソガキ! おまえに何が分かるんだよ!」

 

その後は乱戦。

地面でもつれ合いながら殴りあう2人。

 

そしていつしか広大な黄昏の空の下、地面に寝そべっていました。

 

「なん……なんなんだよ、この状況は……。くだらない……なんでおまえ好みの展開に付きあわなきゃならないんだ……」

「……けっ。甲斐性なしのくせにマシなパンチ持ってるじゃねえか」

立ち上がることのできる舞人と寝そべったままの麦兵衛。

「行けよ。勝者の義務だぜ、拒否権はない」

「ふん、見りゃ分かるだろ。いま行くとこだ」

よろめきながら立ち上がる舞人は麦兵衛に言いました。

「おまえごときにケツ叩かれなくてもな」

それは諦めずに歩き出すため。

「よう」

「……あ?」

麦兵衛が横たわったまま舞人に話しかけてきました。

「俺、あんたが嫌いだ。いや、大嫌いだ」

「……なにをいまさら。そんなことは百も承知だ」

「そうだな。でも……」

ゆっくりと舞人の方を向く麦兵衛。

「反吐が出るほど嫌いってわけじゃあなかったぜ」

吊りあがる切れた唇。笑っているのでしょう。

「……ほざけ熱血マニア。おまえなんぞに惚れられるいわれはない」

「フッ……肉親以外で俺の名前を誉めてくれたのは、あんたが二人目だったんだ」

 

そんな理由かよ。

 

どう考えても舞人としてはギャグだったんじゃないのか?

っつーか誉めたっけ? いまいち覚えてません。

そしてきっと一人目は小町でしょう。

 

「……そうかい」

舞人は歩き出しました。

心の中で麦兵衛を『友』と呼びながら。

今はただ歩くことしかできないけど、せめて大手を振って歩いていこう、と。

 

【2/21】

桜の丘。

1人でいるよりも2人。

そして決して諦めないことを桜香に告げる舞人。

それを聞いた桜香が舞人に与える一度きりの機会。

笑っていて下さい、という桜香の願いと共に走り出した舞人。

桜香との永遠の別れと知りながら……。

 

【4/7】

桜舞う昼下がり、山彦と歩く春の街並。

そして携帯電話でカレンダーを確認した舞人はあることを思い出しました。

「わ、悪い山彦、急用を思いだしたっ」

山彦を置き去りにして走り出した舞人が辿り着いたのは、とある店。

『彼女』がデートと呼んだあの日に来た店です。

「こちらのティーポット、贈答用に包んでもらえますか」

小町は言ってました。

自分への誕生日プレゼントもティーポットがいい、と。

 

304号室の前に立つ舞人。

ドアを叩くこともなく、メッセージカードの無いバースデイプレゼントをドアの横に。

ひょっとしたら気味悪がって処分してしまうかもしれませんが、舞人はそれでも構いませんでした。

 

ベッドで泣いていた舞人。

小町と過ごした優しい日々を想いながら。

そして鳴り出した携帯電話。

ディスプレイには新着メールの表示が。

気だるく寝返りをうちながら届いたばかりのメールを開くと……。

 

次の瞬間、舞人は立ち上がっていました。

痛いぐらいに高鳴る鼓動。

まぶたを拭って窓を開けてベランダへ。

 

 

そこには……

 

 

「……馬鹿」

 

涙で揺れる声。

 

「おまえ……」

 

大きく息を吸い込んで……、どうしようもなく震える体。

 

「おまえっ! 真っ昼間からなんて格好してんだよ!」

 

舞人を見上げて微笑む小町。

その身を純潔なウェディングドレスに包みながら。

 

「私、馬鹿ですからー!」

 

「大馬鹿だよ……」

 

「結局……俺なんかのとこに戻ってきやがって……」

 

泣いているのか、笑っているのか自分でも分からない舞人。

ただひたすら嬉しくて……。

 

「こっ……」

 

「この馬鹿っ、どこまで付いてくれば気が済むんだよ!」

 

「好きになったら一直線!」

 

「あなたを追って、どこまでもー!」

 

昼下がりの住宅街で、大声をあげて涙ぐんでいる2人。

桜色に染まる世界。

 

「どこまでって、どこまでだよ!」

 

「えーとぉ、もう、この際ですからー!」

 

「七兆光年ぐらいは付いていこうかとー!」

 

 

ありがとう。

 

ずっと付いてきてくれた彼女に。

 

これからも共に歩んでくれる愛しいひとに。

 

俺は何度だって言おう。

 

 

「小町、ごめんっ」

 

「ほんっとに、ごめんなー」

 

小町は笑いました。

それは満面の笑顔。

あの雪の日に初めて見た……ずっと好きだった柔らかい笑顔。

 

 

 

「地獄の果てまで追いかけていきますからねー、せーんぱいっ!」

 

 

 

 

 

 

小町シナリオ、クリアー!! ぱちぱちぱち。

 

よかった!!

 

よかったなぁ、小町!!

 

小町が幸せになってくれて……本当によかった!!

 

 

 

謎は一切解けないままでしたが。

 

 

 

と言う訳で小町シナリオを振り返ってみましょう。

子供の頃はとても大人しかった小町。

それこそ同年代の子供の輪に入ることすらできないぐらいに。

そんな小町に初めて遊ぼうと声をかけてきたのが舞人でした。

例えそれが強制的に言わされていたものだったとしても小町にとっては忘れることのできない瞬間となったことでしょう。

そしてかくれんぼの末に行方不明となり、それを舞人が見つけた時に小町の運命は決まったのかもしれません。

ある意味不憫です。

舞人に「面白ければ遊んでやる」と言われ、小町は必死に努力したことでしょう。

それこそ今の爆笑トークを繰り広げられるようになるまでにはかなりの苦難の道があったと思います。

そのかいあってか小町は舞人の相方としての実力を身につけることができました。

……が舞人は進学と共に桜坂へ。

舞人のいない1年間を小町がどんな想いで過ごしていたかは想像に難くありません。

小町はその想いのままに舞人を追って桜坂学園へ入学。

 

そんな小町はおそらく誰のシナリオをプレイする上でも唯一舞人に心を寄せるキャラでしょう。

(まぁ青葉ちゃんとかもそうかもしれませんが『愛』の強さで言えば……)

そういう意味でも「Kanon」の名雪的存在と言えるかもしれません。

ますます不憫です。

でも舞人は舞人で初めて見た小町の笑顔に心を奪われていた訳ですから小町とあまり変わらないと言えば変わらないかも。

ただ舞人はそれを完全に忘れてしまっていた訳ですが……。

 

そう言えば何故小町は舞人を完全に忘れてしまっていたのでしょうか?

希望は舞人を愛したことを忘れてもクラスメートという認識は残っていました。

麦兵衛に殴られた日、小町が舞人のことを知っていたのは忘れた後に知り合ったのでしょう。

同じアパートであることから知りあった……と小町は思っていると考えるのが妥当かと。

つまり小町からは完全に舞人の記憶がなくなってしまっていました。

それは何故か。

考えられるのは小町にとって舞人とは『愛情の対象』以外の何者でもなかった、ということです。

つまり『舞人を愛したことを忘れる』ということは舞人の存在そのものを忘れることに等しかったということ。

それに対して希望にとって舞人は『愛した人』であると同時に『クラスメート』でもありました。

だから『舞人を愛したことを忘れ』ても、『クラスメート』である認識は残った……と。

まぁあくまで推測ですけどね。

他のヒロインをやってみないことには何とも言えませんが、以上が俺の見解です。

 

そんなこんなで小町シナリオ。

私的にはなかりクリティカルヒットなシナリオでした。

希望シナリオ以上に後半の怒涛の急展開が気にならないでもありませんが……まぁいいでしょう。

一途に舞人を想い続けてきた小町。そんな彼女が幸せにならないなんて嘘です。

 

麦兵衛もなかなかいいキャラでした。

ラスト間際での舞人との殴り合い。

小町に惚れているくせに、小町のために舞人を奮起させた麦兵衛の行動には感動を禁じえません。

お前なら絶対いいヤツが見つかるよ。

だから小町シナリオ以外でも小町に手を出すんじゃないぞ。

 

 

 

それにしても。

謎という点に関しては全く解けないままでした。

希望シナリオの補完的シナリオになると思ってたんだけどなぁ……。

未クリアの3人でその辺が明かされるとは思えません。

唯一の可能性を秘めてるのは昔の舞人を知ってるかぐらぐらいですが、あまり期待はできないでしょう。

 

むぅ……。

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

そうか!!

 

おまけシナリオがあるんですね!?

 

「みずいろ」における日和クリアに出てくる「みずいろ」のような。

「銀色−完全版−」における石切の物語のような。

「水夏」における「閉幕」のような。

 

でなきゃおかしいだろ!?

 

と言う訳でどんどん先へと進みます。

 

あっ、あと希望・小町とクリアして思ったのですが、ストーリー展開はみんな同じような感じになるんですね。

それこそ「ONE」と同じように。

展開としては……

  1. 全ヒロイン共通イベントの第一部(〜6/22)
  2. ヒロイン決定後のまったりタイム
  3. 結ばれる2人
  4. 舞人を忘れるヒロイン
  5. 山彦とのクリスマス慰撫(12/24)
  6. サブキャラに背中を押される舞人(2/14)
  7. 桜香に与えられる一度きりの機会(2/21)
  8. ハッピーエンド(4/7)

って感じで。

2/14に出てくるサブキャラは希望の時はつばさ、小町の時は麦兵衛でした。

となると、つばさには希望、こだま先輩にはひかり姐さん、青葉ちゃんにはかぐら、って展開かな。

 

ここらで次へと参ります。

次なる目標は「クールビューティー&ホットキューティ−」(命名by俺)の八重樫つばさ。

果たしてつばさとはどんな物語を織り成すのか……。

それでは以下次回!!


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