2002.8.1 「希望クリア!! ……だけど」編
一気に参ります。
【11/3】
桜学祭……つまり文化祭です。
着ぐるみ姿でお化け屋敷の呼び込みをやっている我らが舞人君。
ちなみにドラキュラ姿のつばさが妙に可愛いのですが問題ないですよね?
1年B組の救護室に行こう、と舞人を誘ってきたのは当然山彦。
なんでも学年一可愛いと評判の女の子が看護婦のコスプレをしているとのことです。
……小町?
そこに冷たい声を浴びせてきたのはやっぱり当然の希望嬢。
「大盛況なんだって。舞人君もはやく行きなよ」
ちなみに希望は妖怪・猫又。
『なが沢』の制服に猫耳としっぽを付けたその姿は本人としては怖いつもりなのですが、舞人からしてみれば可愛いだけ。
何かいけないのかな、と希望。
「そうだな……猫言葉が足りないんじゃないか?」
「なにそれ?」
「まず基本はニェニヌネノだ」
「にゃるほど」
ぐはぁっ!
か、可愛い……。
その後はなんだかんだと言いながら校内デートを楽しんだんだとさ。
めでたしめでたし。
【11/11】
夕焼けの公園。
全てに否定的な言葉を寂しげに綴る桜香。
そこにやってきたのは和人と瑛でした。
以前桜香が桜吹雪の中に消えていったのを見た瑛は桜香のことを「さくらちゃん」と呼び、親しげに話しかけてきました。
「私は……他の誰かといることが救いになるとは思えません……」
瑛すら首を傾げるほどの寂しげな声の桜香に声をかけたのは和人。
「もしよかったらさ、一緒に遊んでくれないかな」
そう言いながら桜香に差し出された和人の手。
「きっと楽しいよ」
一緒に遊べばみんな楽しくなれる。
そんな和人の言葉が桜香の心に。
何度も何度も逡巡を繰り返した末に桜香が口にした言葉は……
「……申し訳……ありません……」
そして逃げるように桜香が去っていくと以前と同じように枯葉が桜吹雪と化して桜香を包みました。
その中で一瞬だけ振り返った桜香の顔は……確かに笑顔でした。
舞人に残ったのは桜香の心に触れたという確かな感触。
和人……お前は凄いよ……。
お前の優しさが俺の心にまで響いてきちまったよ……。
【11/18】
学校帰りに希望を送ってバス停にて。
もう見てるこっちがニヤけるほどのラブラブっぷり。
舞人が確かな幸せを感じていた瞬間です。
そのまま終われば何事も無かったと思うのですが……
「ね、ちょっと寄り道しない?」
そう言って希望が舞人の手を引いて向かいだしたのは舞人が視界からも外そうとしていた場所。
桜の丘。
「いいでしょ、ここ。とにかく、この眺めがねー」
「ああ……このまえ聞いた」
楽しげに以前と同じことを語る希望。
ですが舞人は耐え難い焦燥感に襲われ帰ろうとしますが希望はまるで耳に入っていないかのように話を続けます。
「私がお母さんに怒られたりして泣いてるとね、よくおばあちゃんが、こっそりここに連れてきてくれたの」
「だから、それはもう聞いたってば。いいから帰ろう」
「懐かしいなあ。悪いところばっかり並べてめそめそしててもしょうがないぞーって、よく頭叩かれたっけ」
「……希望?」
舞人がふと気付いた違和感。
デジャヴのように繰り返される希望の言葉。
「こうやって、二人でのーんびり、ひなたぼっこしたなあ」
そして舞人と希望の目が合って……
「ここ、桜井君もよく来るの?」
「のぞ……」
舞人の脳裏に浮かんだ映像は、去り行く少女の後姿。
永い間、自分が無意識のうちの怖れていたものに気付いた舞人。
愛するものの喪失。
思い出されるのは「愛することは許されていない」という朝陽の言葉。
走り出すために再び希望の手を取った舞人。
「痛っ」
「あ、ごめ……」
「もぉ、舞人君乱暴だよー」
呼び方は「桜井君」から「舞人君」に戻っていました。
それでも舞人の心から恐怖感が消えることは無く……。
「私ね、本当はどうして舞人君を好きになったのか、自分でもよく分からないの」
バス停でバスを待っていると希望がそんなことを言い出しました。
ただ初めて逢った時にすごく懐かしい感じして嬉しかった、と。
「昔の友達に再会できたような、そんな気がして、このひとと仲良くなりたいなーって思っちゃった」
「ああ……そういえば、最初からやけに馴れ馴れしかったもんな、おまえ」
その『理由』を知っていながらも茶化すことしかできない舞人。
笑いあう2人。
泣きたいぐらいに幸せを感じながら。
「でもね」
しかし、希望に微笑みには夜の闇が翳って……
「最近こわい夢を見るの」
自分達が離れ離れになる夢。
「また独りぼっちになっちゃう夢」
自分でも『また』と言ったことには気付いていない希望。
しかし舞人にはわかっていました。
自分達がかつて出会い、小さな恋心を抱き、そして離れていったことを。
この身の存在の不浄なるがゆえに。
そして朝陽の言うとおりならば、自分達には再び別れが訪れることを……。
……むぅ。
2人が小さい時に出会っていたことはわかりましたが……そこまでです。
何故2人は離れ離れになってしまったのか。
何故2人がそれを覚えていなかったのか。
何故また離れてしまうことになるのか。
そして希望の言動にも注目。
舞人を『桜井君』と呼んだり、以前と同じ会話を繰り返し……まるでそのことを覚えていないかのようだったりしたこと。
……「ONE」?
【11/23】
夜。桜の丘。
「友よ、拍手を! 喜劇は終わった!」
舞人と朝陽の2人きり。
「友よ! とびっきりのトラジディが始まる!」
「なんだと……」
「リメイク版だけどね」
トラジディ(Tragedy)……悲劇の意味。
これは希望との別れを言っているのは間違いありません。
そしてリメイク。
悲劇が繰り返される、と。
ああぶっ殺したい……。
【12/4】
修学旅行です。
舞人があまり乗り気でないのは半ば里帰りのようなものだからでした。
『陸続き』などのことばによると舞人の故郷である『雫内』と言うのは北海道のようですね。
舞人と一緒に自由時間を過ごしたい希望と、始めからそのつもりだった舞人。
「俺たち、つ、付きあってる……んだからさあ。そんなもん……言わなくても分かるだろ?」
「分からない」
性分なのか、分かれるときに次の約束がないと辛い、と希望は言います。
そして浅間先生が舞人を呼ぶのでそっちに行こうとした時。
「待ちなさい、マイダーリン」
「あん?」
「いま教えたばかりでしょう。別れのあいさつはシーユーネクストタイムっぽいのにしなさい」
「あ? おまえ、なに言って……」
「しなさい」
むずがる舞人に『言わせマニア』の希望。
そこで舞人は仕方なく……
「アイ シャル リターン」
希望、ダメ出し。
「また逢おう、桜舞うこの丘で」
「うーん……なんだか、いかにも弱小ソフトメーカーが好んで使いそうな痛寒いフレーズだね。でも、たぶん考えた本人はかっこいいと思いこんでるんだよ」
「いやいや、それは違うと思うぞ。きっと分かっててやってるんだよ。ギリギリのダサカッコいいを狙ってるんだな。うん、そうだ、そうに違いない」
「……ほ、本当だよ?」
「誰に言ってるの?」
わははは。たまにはこーゆー楽屋ネタもいいですね。
じゃあこんなのはどうだ、と舞人。
「したっけねー」
「……なにそれ?」
「今に分かる。向こうに着いたら、ガキどもの言葉に耳を傾けているといい」
「あ、舞人君のふるさとの言葉なんだ?」
「まあ、そんなとこだ」
「えへへー、またひとつ好きなひとのことを知ってしまった」
「安上がりな幸せだなあ」
「おかげさまで」
俺はこの笑顔が見られれば幸せです……。
そしてさらに浅間先生に呼ばれて舞人がそっちに行くと。
「舞人くーん、したっけね〜」
微妙に使い方が違う気もするが、と舞人。
一体どんな意味なんでしょうか?
夜。
ホテルのロビーでくつろいでいた舞人のところに現れたのは山彦でした。
「なあ舞人、そろそろ女子風呂覗きに行かないか」
あたかも当然のように言う山彦。
舞人が行かない、と言うと山彦も一緒にくつろぐことに。
山彦が言うには野郎同士でグヘグヘ言うところがレジャーなんだそうです。
かなりの説得力があると思う俺は間違ってますか?
【12/5】
「うわー、まっしろー!」
夜、ストールを広げて雪景色の街並にはしゃぐ希望。可愛い!!
雪の街路樹。手を繋いで歩く2人。
「ねぇねぇ、舞人君」
「あん?」
「私たち、いつから始まってたんだろうね」
「……え?」
「ほら、いつからお互いを意識してたのかなーって」
「あ、ああ……」
一瞬嫌な予感がよぎった舞人は安堵のため息。
希望が記憶を取り戻した、と思ったのでしょう。
……と言うか舞人はもう完全に記憶を取り戻してるんですよね?
そーゆー大事な情報はプレイヤーと主人公で共有しないと……。
「私、ときどき錯覚するんだよね。ずーっと昔から舞人君と始まってたみたいな、そんな気がすることあるの」
曖昧に返事を返す舞人。
「変だよねー。私たちって、つくづく相性がいいんだね。なんて言ってみたりして。えへへー、照れりこ照れりこ」
もう『照れりこ』に悶えることもない……そんな雰囲気。
舞人も希望の無邪気さ、そして真実を告げることができないことが辛くて……。
っつーか俺たちには告げてくれ、頼むから。
「ありえないよ……」
それは舞人の「自分達がまた離されたらどうする?」という問いに対する反論。
でもそれはあまりにも力の無い声で。
「泣きたいぐらい、寒いよ……」
そんな希望を舞人は抱きしめてやることしか出来ませんでした。
希望は記憶を取り戻してはいないようですが……それでも感じるところがあるのでしょう。
最早2人の別離は逃れられない運命なのか。
【12/6】
修学旅行から帰ってきました。
うっかり舞人の母親とかに会いに行ったりしないかなぁ、と思っていたのですがガッカリ。
「ねえねえ、帰りにクレープ屋さん寄っていこうよ」
「そうだな。そのあとすこしブラついて、晩メシでも食っていくか」
「さんせー!」
そう言って希望は舞人の腕に飛びついてきましたがすぐに離れて謝ってきました。
それは周囲の同級生たちを意識してのこと。つまりは舞人に注意されてきたこと。
でも舞人は自分から希望の手を握りました。
最初は驚きながらもすぐに大きく手を振って歩き出した希望。
「♪ふんふふ〜ん、ふんふふっふふ〜ん」
そんな希望に涙が出そうになる舞人でした……。
【12/7】
夜の桜の丘。
「やはり……結果は同じなのですね」
悲しげな桜香。
「あはは、また僕の勝ちだ。あまりに一方的過ぎて賭けにもならないよ」
耳障りな笑い声の朝陽。
「だから言っただろう? 人のココロなんてそんなものだよ。僕は永い時間、その絶望を数え切れないほど目の当たりにしてきたんだ」
「……なにを」
朝陽の言葉についに舞人キレる。
「知ったふうなことを言いやがって。おまえが何年生きてきたか知らないが、ちっぽけな主観で俺たちをくくるな!」
そんな舞人の激情をもあざ笑う朝陽。
殴りかかった舞人の拳をあっさりと受け止める朝陽。
「つけあがるなよ、ヒトの子が」
冷たい怒りのみなぎった言葉。
「貴様らが声高に唱えるその安っぽい幻想はいつの世も欺瞞と欲望に彩られた利害追求の交わりでしかなかった。僕を失望させたのは貴様らだ、人間ッ!」
そして朝陽は不機嫌そうに去っていきました。
「また面白いゲームが始まったら戻ってくるよ。元気でやりたまえ」
袖口から突如出現した桜の造花を桜香に渡して。
これからどうするのか、と静かに聞いてきた桜香。
「俺はまだ……終わったつもりはないから」
悪あがきだと分かっていても動かずにはいられない舞人。
いくつか分かった事が。
まず舞人は人間だということ。
あと分かりきってはいましたが朝陽は人間ではないということ。
そして舞人は『桜の丘にいた』ということ。
それでもまだまだ見えてはきません……。
【12/8】
夜の22時。
希望に電話で呼び出された舞人。
『いま私、あの丘にいるんだけど……』
「なっ……?」
『はやく……来て……。私、もう一人はやだよ……』
「な、なに馬鹿なこと言ってるんだよ、今から行ってやるから」
『舞人君……私、思いだしちゃったよ……』
桜の丘。
舞人にそこで謝りたいという希望。
「あらためまして。ひさしぶりだね、舞人君」
「ああ……そうだな」
「知ってたんだ?」
「昔、私たちがここでよく遊んでたこと」
希望は思い出していました。
2人が昔、ここで一緒に遊んでいたこと。
舞人の事が好きだったこと。
でも、何故2人が離れ離れになってしまったのかは知らなくて……。
希望は言いたくないことは言わなくてもいい、と言います。
そしていつも通りのやり取り。
そのやり取りもどこか空々しいもので。
「とにかく、もう二度と離れないって約束してほしい」
「ばか、なに言ってんだよ。当たりまえだろ、そんなの」
「誓える?」
「……誓えます」
「えへへー、誓われてしまったー」
本当は分かってるんだけどね、と希望は舞人の肩に頭を乗せながら言いました。
「私たち、もうすぐ終わっちゃうんでしょ?」
舞人愕然。
そんな予感が頭から離れない、と希望。
「舞人君もそうなんでしょ? 最近、おっかない顔してること多いもんね」
「希望……ごめん、俺のせいなんだ」
言っても信じてもらえないと思うけど、と舞人。
「信じられないと思うけど、俺……」
「いいってば」
希望は舞人の手を握り締めて言いました。
「好きなひとが言いにくいことを無理に聞きだすほど、私は野暮な女じゃありません」
「もしも……」
「もしも舞人君が私のことを好きじゃなくなったとしても……」
「ただほんの少しでいいから……私っていうおかしい女の子がいたってこと……」
「胸の隅っこにでも置いといてくれればいいよ。それが私のささやかな希望」
「このぐらいだったら約束してくれるよね」
「だから……当たりまえだって言ってるじゃないか」
小指を差し出して笑う希望。
「約束しなさい」
「……分かった」
固い笑顔で指を絡める舞人。
「約束します」
でも希望は笑顔のまま途端に涙をぼろぼろこぼして……
「それも駄目なの?」
「な……ばか、約束するって言ったじゃないか……」
「うそつき」
「……え?」
「敬語になってた……」
それは嘘をつくときの舞人の癖。
希望は舞人にすがりついてきました。
「どうして?」
「どうして約束してくれないの?」
「どうして私たち、いつも離れちゃうの?」
「せっかくまた逢えたのに、どうしてまた離れちゃうの?」
「希望……」
「ごめん、俺が悪いんだ」
「俺が恋なんかしたから世界が狂ったんだ」
「謝らないでよ!」
「謝ってる暇があったらもっと好きになってよ!」
「私がどこかに行っちゃわないぐらい……」
「いっぱい、いっぱい抱きしめてよ……」
そうだな、と舞人。
「俺たち、いっぱい抱きあおう」
H突入。
今度こそ(?)相手を離したくない、離れたくない一心からのH。
さらには希望は口でまで御奉仕。
それも全て舞人のために。
最後は舞人を口で受け止めて……
「……まじゅい」
「らしいな」
だから出せって言ったのに、と舞人。
「ううん、平気だよ。好きなひとの一部だもん、なんだって美味しいよ」
でも口の中の苦味を確かめてから。
「……ごめん、やっぱりそれはありえない」
なんとなくコミカルな雰囲気。
シリアスな展開の中における一服の清涼剤(そうか?)。
【12/9】
舞人は別れの予感を抱きつつ『なが沢』へ。
「学級委員が下校途中に寄り道してるーっ。いっけないんだー」
笑いながら舞人に声をかける希望。
いつも通りの希望。
嬉しさにこみあげる涙をこらえる舞人。
「い、いいんだよ、そんな校則はないんだから」
「ルールはなくてもモラルは守らなきゃ。なにしろ学級委員長なんだからね」
「うるさい、売上に協力してやらないぞ」
「あ、うそっこです。今のはほんの戯言です」
それでは御注文をどうぞ、と希望。
そうだなぁ、と少し考えて舞人はいいました。
「あ、そうだ! じゃあ今度こそアンコ・ド・カンテーヌを!」
それは以前その場で希望と交わした戯言。
その時は笑いながら冗談で返した希望。
でも今は困り笑いを浮かべて……。
「ええ?」
「だからアンコ・ド・カンテーヌだよ」
「なにそれ?」
「なんだ、おまえ、半年前のことをもう忘れたのか? ここで散々……」
そこで舞人も……気付きました。
「え……忘れ……た……?」
もうわけわかんないよ、と希望。
「桜井君ってちょっと怖いひとだと思ってたけど、面白いこと言うんだね」
舞人は悟りました。
「は、はは……ははははは……」
「……なにが面白いの?」
「いや……」
悲しいんだ、と舞人。
「悲しくて……笑うよりほか思いつかない」
「もう、また変なことばっかりー」
オーダーが決まったらまた呼んでね、と舞人に背を向けて去ってゆく希望。
俺のもとを、去ってゆく。
走馬灯のように流れる2人の軌跡とエンディングテーマ……ではありません。
なぜならスタッフロールが無かったから。
舞人君
曲が終わると同時に聞こえた希望の声。
そしてやっぱり物語は続きました。
ますます「ONE」っぽいですね。
【12/24】
クリスマスイブ。
部屋で独り、ただひたすらにくさっていた舞人を外に連れ出したのは山彦でした。
「そういやおまえ……なんでいま俺といるんだ?」
「ああ? なんの嫌味だそりゃ」
「だって、おまえだったら他にいくらでも……」
いくらでもいるようなのは今日じゃなくてもいいんだよ、よ山彦。
「とにかく、今年のイブは男の友情を深めることにしたんだ。どうよ、なんか青春ってカンジするだろ」
知ってるのか、と舞人は思います。
舞人が独りになってしまったことを山彦は知っていました。
それで舞人の傍にいてやろうと……。
山彦……お前こそ、ベスト・ガイだよ!!
そんな山彦に久しぶりに笑って……泣きたくなった舞人。
「知ってるか? 慰撫って言葉があるんだってさ! 苦しさに耐えきれないヒトを慰めるって意味らしいぜ!」
「なんだそりゃ。おもしろい言葉だな」
「今夜は朝まで付き合うぜ、舞人!」
「クリスマス慰撫のオールナイト・パーティーだ!」
舞人は改めて思いました。俺はいい親友を持った、と。
【1/15】
浅間先生にまで励まされる舞人。
よっぽど傍目からも落ち込んでいるのでしょう。
「適当に! 生きるな!」
あんたも頑張れよ……。
【2/14】
夕暮れの校庭。
北国の故郷にいた頃よりもはるかに永く寒い冬。
泣きたいぐらいに寒く。
修学旅行の夜の希望の言葉が昨日のことのように蘇ります。
そして帰ろうと振り返った先にはつばさが。
舞人の挨拶に皮肉な……まるで舞人を責めているかのような微笑を返すつばさ。
つばさは片腕を腰に当てて何かを言いましたが、その声は北風に消えてしまいました。
でもそれは非難の罵声であることは容易に読み取れて。
「後悔はしてないつもりだ」
すれ違いざまにそう呟き、振り返らず歩き続けようとした舞人ですが……
「るぁっ!?」
尻に衝撃。
「な、な、な……?」
振り返ると足をぶらぶらさせて愛嬌のある笑顔を浮かべているつばさ。
「くそ、乱暴な男だ……」
負けじと歯を見せて笑い返す舞人。
つばさは無言で片手を上げて……舞人もそれに応じて。
パァァァン!
ハイタッチの快音が無人のグラウンドに響き渡りました。
つばさ……お前も分かっちゃいたけどいいヤツだよなぁ。
でも次は小町の予定なんだよ……。
【2/21】
降り注ぐ日差しの下。舞人は桜の丘で口笛を吹いていました。
「まあ、諦めは悪い方だから」
苦笑しながら振り向くと、そこには桜香の姿。
「まだ……追い続けるつもりなのですか……?」
苦笑を浮かべることでそれに答える舞人。
人間が嫌いである、と桜香は言います。
「人間は必ず裏切りますから……」
一度だけでなく何度も、と。
その二度目の孤独を与えてしまったのは桜香の前から消え去った自分、と舞人は何も言えません。
……と言うかもう本格的にわからないんですけど。
とにかく舞人はそれが間違っているとはっきりわかっていました。
一人でいる自由よりも二人でいる充足を求めた舞人。
「教えて下さい。あなたにとって、人間というものはそれほどまでに素晴らしいものなのでしょうか。この場所を……私を……すべてを忘れてまでも手に入れたいと願うような……そんな……!」
「……関係ないんだよ、もう。何が素晴らしいだとか、素晴らしくないだとか」
ただ周りのものや人を好きでいたくて、自分を好きでいて欲しかった。ただそれだけなんだ、と舞人。
人にも世界にも心にも触れたことがないという桜香にほんの少し触れた和人のことを舞人は口にしました。
自分には和人の言動が理解できないという桜香ですが、舞人は気付きました。
桜香は分かっていて、ただそれを認めたくなくて、怖がっているという事に。
「私には……分かりません……」
「みんなでいた事がないから。そんな声をかけてくれた人がいないから」
舞人の頭に浮かんできたのは母親のこと。
自分に声をかけて、一緒に楽しく遊んで、他の誰かと遊ぶ楽しさを教えてくれた人。
「桜香は俺を求めてくれた。和人も桜香を求めた。どっちも同じなんだよ。俺も、桜香も、和人も、他の誰だって、みんな知ってるんだ。一人じゃいられないって」
「……それでも……それでも、人間と私達が一つになることは出来ません。それを求めた結果は……あなたが一番知っているのではないのですか……」
いくつもの不安の含まれたか細い声。
「俺は諦めない。絶対に」
「必要なんだよ。彼女が」
「彼女が一緒でないと、もう笑えない」
「…………」
じっと舞人を見つめてくる桜香。
どのくらいそうしていたのか……
「なんとなくですけれど……」
「本当になんとなくですけれど……少しだけなら分かるような気も……します」
「あなたが何を求めていたのか……」
微かに緩んだようみ見えた桜香の表情。
そして何かを決意したように言いました。
「一度だけです」
「え……?」
「私ではそれが限界。それ以上はもう……何も出来ません。そこから先は、すべてあなた次第……」
凛とした、強い想いのこめられた声。
「一度だけ、機会を」
強まる風。
「これでもう、お別れでしょうから……」
「……だから……」
「だからお願いです……」
「笑って……いて下さいね」
そう言って優しく、穏やかに笑っていた桜香。
まるで泣いているかのように笑っていた桜香に舞人は笑って見せました。
ずっと昔……桜香と一緒に過ごし、桜香を守って、桜香と同じ存在であった頃のことを想いながら。
これからもきっと笑ってやることを誓いながら。
「大丈夫ですよね」
「ご自分の力で、大切なものを見つける事の出来たあなたなら、絶対に……」
「一度だけです。必ず……取り戻してみせて下さい」
緩やかに消えていく桜香の姿。
それは舞人という『桜香達とは違うもの』との永遠の別離。
桜香が望まぬ限り二度と出会う事は無く、桜香がそれを望むことも無い。
舞人にとって母親が希望になったように、誰かが桜香の希望になってやれない限り。
希望になれない今の舞人に出来ることはただ一つ。
「ああ、大丈夫だ」
その言葉に満足したかのように静かになっていく風。
舞人はそのまま桜に背を向けて走り出しました。
風が止むよりも早く。
風が消えるよりも……早く。
【4/7】
春休みの穏やかな昼下がり。
桜の咲く街並を山彦と一緒に舞人は歩きます。
遠い記憶に想いを馳せながら。
ありがとう。
感謝のささやきを春風に乗せながら。
桜が満開の丘。
桜の幹に背を傾けて腰を下ろすと自然と口を突いて流れ出た旋律。
初めて口笛を覚えた時の練習曲だったような気がする曲。
「懐かしいね、その曲」
目を開けると、そこには薄い衣をまとった少女の姿が。
夢を見ているようでもありながら、確かな現実感を感じる光景。
「ああ、そうだろ」
胸に込み上げて張り裂けそうな喜び。
「俺の好きな曲なんだ」
「私もね、その歌が大好きだったんだ」
「小さい頃だったから、歌詞なんか分からなかったけどね」
「よくここで遊んだ男の子に、教えてあげたこともあるんだよ」
「俺はここで口笛の練習をした覚えがある」
顔を上げると降り注ぐ木漏れ日。
「そのころ、俺はまだ口笛を吹けなかったんだ」
「でも一生懸命練習した。この曲を教えてくれたやつに、口笛で聞かせてやりたかったんだ」
希望に向かって意地悪く相好を崩す舞人。
「吹けるようになったころには、そいつ……どっかに行っちゃったんだけどな」
「えー、そうなんだー、ひどい子だねー」
「あのな……」
相変わらずの希望に思わず舞人は笑ってしまいました。
「ま、いいけどな」
「また戻ってきたみたいだし」
白い指を伸ばし、舞人の肩に乗った花びらをそっとつまんで風に乗せた希望。
唇には柔らかい笑み。
「ふん……」
「また忘れたりした業務用生ゴミ処理機で殴るけどな」
「大丈夫だよ。うん、大丈夫大丈夫」
きらきらと輝く栗色の瞳。
「私はこの名前を背負っているかぎり、どんな暗闇の中でもかすかな希望を探しあてるよ。だから何度でも思いだせるの」
「そんな綺麗なオチを付けたって駄目だ。態度で示してもらわないとな」
「どうすればいいの?」
微笑んだままかすかに柳眉を下げる希望。
舞人は足を組み替えて、少し大袈裟に肩を揺すって言いました。
「そうだな」
「たとえば……二度と離れなければいいんじゃないか?」
「あ、それなら簡単だ」
「だって私、そのつもりで来たんだもん」
「つもりじゃ困る。そんな隙だらけの人生だからおまえは足元をすくわれるんだぞ」
「まったく世話の焼けるやつだ。今後は俺も、しっかりと目を光らせておかないとな。ひょっとしたら、また突然いなくなるかもしれない」
「あははは、ありえない」
会心のロイヤル・スマイル。
抱きしめたいほどに可愛い微笑み。
やるなぁ、プリンセス。
舞人の両肩に手を置いて間近に迫ってきた希望。
その唇が触れ合う寸前、希望は舞人の瞳をしっかりと見据えて告げました。
「今度こそ、ありえない!」
希望シナリオ、クリアー!! ぱちぱちぱち。
よかったよかった。
希望は舞人の元に帰ってきました……本当によかった……。
・
・・
・・・
・・・・
まぁ待てよ。
これで終わりですか?
もう何が何だか。
わからないことだらけです。
なので箇条書きにしてみました。
- 昔、舞人と希望は何故離れることになったのか。
- 希望が舞人との愛を一時忘れたのは何故か。
- 舞人と母親の関係は。
- 朝陽は何者か。
- 桜香も何者か。
- っつーか舞人は何者か。
軽く書いてみただけでもこんなに……。
まぁその辺の謎は他のヒロインをクリアしていく段階で徐々に明らかになっていくのでしょうから問題無しです。
プレイ中にもちょっと書きましたが何となく展開が「ONE」と似てますね。
それでいて希望のストーリーにおける位置は「Kanon」のあゆのような感じです。
希望シナリオからすると、希望こそがこの「それ散る」の要となる……つまりキーパーソンなのではないかと。
舞人が恋愛を恐れていたのも小さい時の希望との別れが原因ですし、
思うに希望シナリオの補完的存在が小町シナリオなのではないでしょうか。
希望と別れてからの舞人を知るヒロイン……。
イメージとしちゃ「Kanon」の名雪ですね。
プレイするまえからかなり決め付けちゃってますがスイマセン。
とにかく希望シナリオについて。
希望は舞人と小さい時に出会っていた、と。
その時2人は幼心に好き合っていたにも関わらず、希望は舞人から離れていってしまった……。
そして再会。
希望は忘れていたにも関わらず舞人に当時の面影を見出したのかいきなり魅かれてしまいました。
きっとそれはばあちゃんのセリフを舞人が口にしたからなんでしょうが、舞人自身その言葉は希望のばあちゃんか希望本人から聞いたものでしょうからある意味必然と言えるかもしれません。
……だめです。ここまでが限界です。
もうわからないことだらけで……これ以上は他のシナリオをクリアしてから考えます。
わかったことと言えばエンディングのスタッフロールで声優さん達の名前がわかったので書いておきます。
キャラクター 声優さん 星崎希望
川原瑞音佐々留美子 雪村小町
佐伯和人九条信乃 八重樫つばさ
水無月瑛櫛引絵里 里見こだま 高山沙希 森青葉
結城ひかり楠真理 相楽山彦 青川輝 牧島麦兵衛 阿仁谷浩樹 浅間弥太郎
谷川浩暉今田鉄男 芹沢かぐら
佐伯和観井原早紀 朝陽
恵美椿島田純 桜香
郁原郁奈鳥居花音
なかなか面白いですね。
一人二役をやっていらっしゃる方がこんなにいらしゃったとは。
大人しい青葉ちゃんとひかり姐さんが同じなのは驚きましたが、それ以上にかぐらと和観さんが登場したシーンはそれこそ一人二役でやっていらっしゃったことに驚き。
郁原郁奈はまだ登場していないので何とも言えませんが、言われてみれば確かに桜香の声は「D.C.」の音夢と同じでした。
でも小町と和人が同じってのが一番意外だったかも。
とにかく何はともあれ希望シナリオクリアです。
まさかここまで悶えさせてくれるとは思ってなかったので、その意味ではかなり満足です。
でも後半があまりにも急展開&説明不足だったために消化不良を起こしている印象は拭えません。
前半のペースや爆笑トークの数々があまりにも秀逸だったためにかなり残念です。
他のシナリオでの補完を期待いたします。
それでは次の狙いは小町です。
俺的前評判第1位の小町でございます。
希望シナリオではあまりに悲しい役どころだったので今度こそ俺の手で幸せにしてやりたいと思います。
それでは以下次回!!