2002.4.11 「日和……日和ぃ!!!」編
毎度のことなんですが……。
辛抱たまりませんでした。
こっからは一気にエンディングまで見ちゃってます。
あれで日記書きながらプレイしろってのが無理な話なんです。
それでですね。
本編に進む前にお願いしたいことがございます。
もちろんコレは強制ではありません。
単にみなさんにより雰囲気を味わっていただきたいだけですから。
で。
何をやって頂きたいのかと言うとまずこちらの「ねこねこソフト」さんのダウンロードページへ。
さらに1番下にある「みずいろ」のBGMダウンロードコーナーへ。
そこでサンプル1『「みずいろ」オープニング曲フルコーラスバージョン』をダウンロードして頂きたいのです。
ダウンロードして頂いたとしてもすぐにそれをかけて頂きたい訳ではございません。
ですのでダウンロード中は下記本編を読み進めて頂いて構いません。
読み進めていくと画面の右端に『♪』マークが出てきます。
その時、ダウンロードして頂いたmp3をかけてください。
そしてその先は可能な限りゆっくりとお読みください。その方がより雰囲気が出るかと思われます。
何度も言いますが決して強制ではないので(当たり前ですが)普通に読んで頂いても一向に構いません。
長々と失礼いたしました。
それでは本編をどうぞ……。
「…まだ持ってたのか?」
「う、うん…」
結ばれた後の2人。
身体を起こした日和の手には先日のストローがありました。
海でジュースを飲んだ時のストローです。
とても大事そうに、穏やかな目でしっかりを握っていました。
「わたしの宝物だよ…」
「…日和」
「えへへ…」
いつもの笑顔を向けてくれる日和。
「…日和、ちょっと貸してみろ」
「えっ、で、でも…」
「ほら、大丈夫だから」
「う、うん…」
ストローを受け取った健二。
「じゃあ、今度は右手出して…」
「…うん?」
そして日和の柔らかい指に巻きつける。
くるくると、くるくると。
白いストローを幾重にも。
「あっ…」
「高価なリングは無理だけど…」
「………」
「これで勘弁してくれ…」
日和の指に巻かれた白いストロー。
それは2人の想いを繋ぐリング。
「…うれしい」
涙を流す日和……美しい。
「ありがとう…」
涙が滲む日和の姿がぼやけてよく見えない健二。
健二自身の涙で……。
ホワイトアウト。
『日和』
『おめでとう…』
(あれ?…)
「お医者さまがね…もう大丈夫って言ってくれたわよ」
(あれれ? あれはお母さん?)
「…よかったな」
(こっちは…もしかしてお父さん?)
「手術は成功だって」
(手術? 一体何のことを話してるの?)
(それにいつの間に…二人ともそんなに年をとったの? ねえ?)
「これですぐに学校に戻れるぞ」
「よかったわね…日和」
「…うん」
(あれ? あれは…わたし? あれれ?)
病院。
日和の手術は成功しました。
そして『日和』はその情景を見ているのです。
「すぐに元気になるわよ〜」
「ははは、元々病気じゃないんだし、本当に良かった…」
「ほら、お父さん泣かないでよ」
「正直、諦めかけてたからな…」
(…なに? 一体みんなで何を話してるの?)
「だけどね…」
「ああ、何でも言ってごらん」
「お父さんが言っていた…何か、悔いはないかってことだけど…結局わたし…何も思いつけなかったよ…」
(悔い? 悔いってどういう意味だろ?)
「ううん、もういいのよ日和」
「そうさ、もう元気になったんだからな」
「う、うん…」
「そうそう、新学期からすぐに学校にも戻れるかもよ〜」
「ああ、良かったな日和」
「だ、だけど…心に何か引っ掛かって…そんな…大切なことが…」
(あれ? あれれ? 何なのそれは?)
「とても、後悔していた筈のことが…」
(ねえ、教えてよ?)
再びホワイトアウト。
『お前はくれないのか?』
子供の頃。
日和が引っ越す前のバレンタイン。その少し前の頃。
「えっ…わ、わたし?」
「ああ、雪希だってくれるって言ってたぞ」
「わ、わたしは、そ、その…」
「まあ、別にお前のなんか欲しくねーよ」
「そ、そんな〜っ」
「きっと食べたらオナカ痛くなっちゃう」
「ひ、ひどいよぉ〜、けんちゃん」
「ま、期待してねーよ」
「ふ、ふ〜んだっ」
「お、なんか生意気だな?」
「えっ」
「ほら、こちょこちょしてやる〜」
「あ、あ〜ん、やめてよぉ〜っ」
家でバレンタインに向けて頑張る日和。
そんな日和に母親は引越しについて話しかけてきました。
父親とも話し合った結果、日和がどうしても嫌なら考える、と。
でもそうしたら通勤など父親が色々と大変なのでできるだけ賛成するよう母親は言います。
一生懸命手作りチョコに挑戦する日和。
「…けんちゃん、喜んでくれるかな?」
そんなことを思いながらアルミホイルでハートの形を作ってみたり。
「えへへ…」
嬉しかった日和。
引越ししないで済むと思って。
健二とこれからもずっと一緒なんだと思って。
そして出来上がったチョコ。
「あ〜ん、上手くできないよぉ〜」
どうしても変な形になってしまい、普段は気にならない自分のニブさが悔しい日和。
でもきっと健二は喜んでくれると信じています。
だってわたしの好きな、けんちゃんだもんね…
メッセージカードも付ける。
「えへへ…ちょっと恥ずかしいよぉ…」
自分で書いたカードを読んで1人で照れる日和。
きっと喜んでくれる。そう信じて。
健二の部屋にて。
「ね、ねえ、けんちゃん…」
「ん?」
「あ、あのね…」
「なんだよ、ニコニコして変な奴だな?」
日和のポケットには小さなチョコが忍ばせてありました。
健二がどんな顔をするのか想像しながら。
「え、えとね…」
コンコンコンッ
そこに入ってきたのは雪希。
そして雪希の手から健二に渡された手作りチョコ。
それはとてもキレイな包装紙に包まれていて。
「あ、それで日和…」
「……」
「何の話だっけ?」
「えっ…」
「ほら、さっきの?」
「あっ、え、えと、え〜と…」
「えへへ…忘れちゃった…」
しょうがねえな、と健二。
そして、せっかくだから、と健二が渡してきたのは雪希のチョコ。
とても綺麗な包装紙にくるまれたチョコが日和にはとてもすごく思えて……。
健二がキレイな包装紙を開けると、中からは更にキレイなチョコ達。
…わたしのと全然違う。
1つ1つが丁寧にハート型をしたチョコ。
「ちっ、なんだよ雪希の奴…恥ずかしいじゃねーかよ…」
「……」
「まあいいや、じゃあはい」
「…え?」
健二がその内のチョコの1つを日和に手渡す。
「うん、美味しいな〜。さすが雪希だな」
「………」
「どうだ、美味いだろ?」
「あ、え、え〜と…」
『えへへ…おいしいね』
…そう言った瞬間、胸が泣いた…
「あ、ちょっとジュース持ってきてやるよ」
「う、うん…」
部屋に1人で残った日和がポケットから取り出したのは自分のチョコ。
「…せっかく作ったのにね?」
全然ハート型じゃない。きっと美味しくないと思う。
けど。
それでも一生懸命作った。
チョコを持つ手に見えるのは、作った時にできたやけどの跡。
「…せっかく…作ったのに…」
トントントンッ
部屋のクローゼットを開ける日和。
それは唯一日和が得意なこと。
健二にも開けられないのに、日和だけが開けられる。
そして一番下の引き出しに自分の作ったチョコの包みを隠した日和。
…きっと…けんちゃんは…気付かない
わたしだけの秘密。
わたしだけの想い出…
「…これでいいんだよ」
うん。
これがきっと…一番いいんだよね…
夕焼けの下。健二と日和。
「ね、ねえ、けんちゃん…」
「なんだ」
「も、もしも…もしもね、わたしがいなくなったら……さびしい?」
「はあ」
「え、えと、だから…」
「お前、なに言ってるんだ?」
「あ、あの…だから…」
「全然、意味がわかんねーぞ」
「ご、ごめん」
…ほんとうは、さびしいって言って欲しかった
…ほんとうは、そばに居たいって言いたかった…
オレンジ色の空をたくさんの雲が流れる。
冷たい北風に揺れる日和の髪。
「あ、そうだ」
健二が雪希に貰ったチョコを取り出す。
「ほら、日和」
「…うん?」
「もう1個やるよ」
「……」
「お前だけの限定サービスだからな?」
「ありがと…」
「だけどさ…お前もいつかくれよな?」
「………」
…どうして言わなかったんだろ?
どうしてホントは…
作ったんだよって言えなかったんだろ…
「じゃあな、日和」
「あっ、けんちゃん…」
「なんだよ?」
「あ、あのね、え、え〜と…」
「早く帰らないとテレビ始まっちまうぞ?」
「そ、その…」
『さよなら…』
違う、違うんだよ
ホントは、そんなことを言いたかったんじゃないのに…
…違うのに…
家に帰って母親に引越しに賛成する、と告げた日和。
喜んで早速引越しの準備に入る母親。
(…わたし…ばかだよ…)
子供と言うのは……時として本当に残酷です。
無知が故に、純粋に人を傷つけてしまって……。
健二が日和にチョコをあげたのだって、日和がチョコを好きだから、ってただそれだけだったのに。
それが健二の優しさだったのに。
「…日和」
「……」
「日和!?」
「あっ…」
「きゅ、急に黙るから驚いたぞ?」
「………」
健二の部屋。
「どうしたんだよ?」
「………」
寂しそうな顔で、黙って健二の顔を見つめる日和。
ただ指の白いストローを大事そうにしながら。
自分と言う存在の全てを理解した日和……。
「ゴメンね…わたしが悪かったんだよ…」
「えっ」
「あの時、勇気があったら…」
「お、おい?」
「ずっと側にいられたのに…」
「お、お前、何を言ってるんだ?」
「どうやら、悔いが残ってたみたい」
「…悔い?」
「うん。今までゴメンね…けんちゃん」
「お、おい、どういう意味だよ?」
「たぶんね…わたし…覚えていないと思う…」
…覚えていない?
それは一体どういう意味なんだよ?
「お、おい日和!?」
「…わたしは……わたしであって、今のわたしじゃないの…」
「さっきから何のことだよっ!?」
日和の哀しそうな顔。
でも健二にはその理由がわからず。
でもそこから感じるのはもう2度と会えない別れのような雰囲気で……。
「…あのね、けんちゃん」
そう言ってクローゼットに視線を移す日和。
指差しているのはいつも日和が出てくる大きな扉ではなく、その下の引き出し。
「…えっ?」
「………」
「…クローゼット?」
「………」
「…これがどうしたんだ?」
「…わたしね…これでも頑張って作ったんだよ…」
「こ、これが一体どうしたって言うんだよ!?」
「………」
「ちゃ、ちゃんと話してくれよ!」
「………きっとわたしを見つけても…悲しい思いをするだけだと思う…」
「お前を見つけるって…」
そのニュアンスから日和がどこかに居るということを感じ取る健二。
「だから…じゃあね…」
そう言った瞬間に、薄っすらと消え始めた日和の姿。
まるで始めから、そこに何もなかったように、背景に溶けるように薄っすらと。
「ひ、日和!!」
「………」
「ま、まて消えるなっ!」
どうして消えるんだよ!
いつも勝手に現れて、勝手に消えて…
どうして俺を泣かせてばっかりなんだよ!
「…ごめんね」
「いい、構わない、許すっ」
「………」
「な、何の事かわからないけどっ、だっ、だからここにっ!」
「…ありがと…きっと忘れないよ…」
「ば、ばか、なに言ってるんだよっ」
「この宝物のリングのことも…きっと忘れないよ…」
「あっ、おい待て!!」
((えへへ…))
「日和ーっ!」
祈るように手を組んだ日和。
その日和が消える瞬間に見せた顔。
それはいつもと違った寂しい顔…哀しい涙。
「…日和」
ただ白いストローをくるくる回しただけのリング。
健二が作ってやって、そして持ち主を失ったリング。
日和が消えた跡に残っていたのはそんなリングだけ。
「ばか…忘れ物しやがって…」
また俺を一人にしやがって…
また俺を泣かせやがって…
…また俺を…
涙で滲んだ視線の先には、いつもの壊れた黒いクローゼット。
日和が指差していた引出し。
最後に開けたのは、子供の頃日和が自慢気に開けて見せた時。
「まさか…」
ガンガンッ、ガンガンガンガンッ
随分長い間使っていなかった引出しは容易に開きません。
「開け、こいつっ」
ガンガンガンッ、ガンガンドガドガドガッ
目一杯の力で殴る健二。すると……
ガタッ…
「ひ、開いた…」
そしてその中にあったのは小さな包装紙の包み。
すっかり色褪せて、花の絵のような模様も滲んだ包装紙。
「ははっ、まさか…まさか、まさか…」
丁寧に包装紙を広げると、中からはアルミホイルに包まれた物と、色褪せた1枚のメッセージカードが。
「なっ…なんだよ…こ、このヘタクソな字は…」
それは紛れもなく、幼い頃の日和の字。
へたくそで、滲んでしまって、それでも何度も何度も書き直した跡があって……
(すきです。けんちゃん)
「ううっ、なにが、すきですだよ?」
「ガ、ガキのくせに…」
「恥ずかしいこと書きやがって…」
「うっ、ううっ…」
俯いた健二の目から落ちる涙。
それは青のペンで書かれた日和の文字に落ちて。
白っぽいメッセージカードに日和の文字が滲んでいって……。
「…ばか日和」
淡い青から、白へと溶けるように…あいつの文字がみずいろに滲んでいた…
スタッフロール。
そして。
「ここか…」
健二は大きな病院の入り口に、小さな花束を持って立っていました。
日和を探し続けた健二は日和が生きていることを知りました。
先月起きた交通事故も。今はこの病院に入院していることも。
「…日和」
ただはただ嬉しかった健二。
もう2度と会えないと思っていたのに、また一緒に過すことができる。
また、あの照れた笑顔を自分に向けてくれる、と。
通路に面した小さな個室。
ドアの横には『早坂』のネームプレート。
胸を震わせつつノックする健二。
『…はい、どうぞ』
それは間違いなく日和の声。
ドアを開けて病室の中へ……。
「ひ、日和…」
「えっ」
「会いたかったぞ…」
一番会いたかった日和がそこにいる。
そう思うと涙がこぼれてきてしまう健二。
「も、もうどこにも行かないでくれ…」
「えっ…」
健二はベッドのそばまで寄って、ぎゅっと日和の手を握りました。
「きゃっ…」
「…日和?」
「え、えと…あ、あの…」
「…ど、どちらさまですか?」
「えっ…」
「ご、ごめんなさい…」
あまり物覚えのいい方じゃなくて、と謝る日和。
そんな日和の姿に健二は日和の言葉を思い出します。
(きっと覚えていないと思うから…)
(わたしは、わたしであって…今のわたしじゃないの…)
その言葉の意味がやっとわかった気がした健二。
戸惑った声をだす日和。
健二は服の袖で涙を拭うと、手に持っていた花束を日和に向けました。
「…えっ?」
「早く元気になれよ…」
「あっ…は、はい」
「じゃあ、これ…」
花束を渡すと日和はお礼を言いました。
「…まあ気にすんなよ」
「で、でも、こんな高価な物…」
「まあ早いホワイトデーだと思ってくれ」
「え?」
「いや、遅すぎかな…」
「?」
健二が身体の具合を聞くともう手術も無事に終わったので早く退院したい、と日和は言います。
頑張れよ、と健二。
少しだけ照れた顔でお礼を言う日和。
…うん。これでいいんだよな。
日和が元気な姿でいてくれただけで健二は嬉しいと思えたのです。
もう2度と会えないと思っていた日和が、またこうして照れた笑顔を見せてくれる。
自分のことを覚えていなくても、やっぱり日和に変わりはない、と。
「なあ、こんなこと憶えているか?」
「えっ?」
「すっごく昔のことなんだけどさ…」
「は、はい?」
「…近所にさ、いつもお前をイジメてた奴がいたろ?」
「え、ええっ?」
「ほら、変な奴でさ…」
「え、え〜と、う〜ん…」
「ほら、よ〜く思い出してみろよ?」
「え、え〜と、う〜ん…あっ」
「どうさ、思い出したか?」
「う、うん…確か…」
((…けんちゃん、って子が居たよ))
「ああ、いつもイジメられて、嫌な奴だったろ?」
「えっ、え〜と、確かよく泣かされてたけど…で、でも…わたし、好きだったよ…」
「…ほう、そうか?」
「う、うん……でもどうして今頃そんなことを?」
「……」
「?」
「…俺だ」
「はい?」
「…俺の事だよ」
「えっ…」
「…久しぶりだな、日和?」
「えっ、ええ〜っ!?」
【ある晴れた水曜日】
暦の上ではもう春なのに、まだコートが似合う頃。
「…どうだ、わかったか?」
「う、う〜ん…」
「よし、じゃあ次いくぞ」
「あっ、まってよぉ〜」
健二は日和の病室で勉強を教えていました。
入院により勉強が遅れがちな日和のためにとったノートは真っ黒に見えるほどしっかりと書かれていました。
「あっ、これでいいのかな?」
嬉しそうに解答を書いていく日和。
「ああ、よく出来たな」
「う、うん」
「えらいぞ、日和」
「えへへ…」
そう言って日和は照れた笑顔を見せるのでした。
「ね、ねえ…けんちゃん」
「どうした?」
「あ、あのね…質問があるんだけど」
「ああ、言ってみろよ」
「え、えとね、ど、どうして…こんなにわたしに…親切にしてくれるの?」
「……」
「今まで何年も会ってなかったのに…」
何年も会っていなかったにも関わらず、ずっと日和に付きっ切りの健二。
日和がそれを不思議がるのも仕方ありません。
「…もしかして、迷惑か?」
「あっ、ち、違う違うっ!」
ぶるんぶるんと大きく何度も首を振る日和。
そんな日和をみて「このへんは変わってないな」と思う健二。
「そ、そんな意味じゃ、わ、わわわたしは、そ、その…」
「…ああ、わかってるよ」
「う、うん…」
また少し春に近づいたある日。
厚手にセーターが、ニットのシャツへと変わるころ。
健二は相変わらず日和の元へと足を運んでいました。
「う、う〜ん、難しいよぉ〜」
「ほら、頑張れよ」
「う、うん…」
いつものように健二が勉強を教えていると。
「あっ」
ぷらんぷらん…
「う、う〜ん、え〜と…」
口に咥えたシャーペンをブラブラさせて考え込む日和。
ふふふ…やっぱり癖なんだよな?
その姿を見て嬉しくもあり……少し切なくもあった健二。
「どうだ、いい考え浮かんだか?」
「う、う〜ん…難しいよぉ〜」
「そうか、頑張れよ?」
「う、うん」
口に咥えたシャーペンに、キラキラと反射していた窓から差し込む光。
「や、やっぱりわたし英語苦手だよぉ〜」
「ああ、確か…物理も苦手だよな?」
「ええっ?」
「てゆーか得意なのは現国だけだよな?」
「ど、どうして知ってるのぉ〜!?」
「はははっ」
「ね、ねえってばぁ〜」
「…まあな」
…もちろん知っているさ。
他にもお前がどんなにいい奴だったかも…
それに俺のことを愛してくれていた事も…
南から桜が咲き始める頃。
書店にGW情報誌が飾られる頃。
「えっ、そうなの?」
「ああ、まだ最近だけどな…」
「わあ〜、あの町にも遊園地できたんだ〜」
街外れにできた遊園地の話題に興じる2人。
観覧車が好き、でもコーヒーカップが1番好き、と日和。
「う、うん、で、でも…いつもね、お、お父さんと一緒に乗るから、ちょ、ちょっと恥ずかしいの…」
「ははは、お前らしいな」
「あ、あ〜ん、笑わないでよぉ〜」
「悪い悪い、じゃあさ…今度一緒に行こうか?」
「えっ、ほ、ほんとに?」
「ああ、一緒にコーヒーカップ乗ろうぜ?」
「う、うん、ぜ、絶対だよ!」
「ああ、ただし……仲良く恋人同士っぽくな?」
「ええ〜っ、わわわ…こ、こここ恋人だなんて…」
「なっ、日和?」
「は、恥ずかしいよぉ〜」
【雨が止んだ月曜日】
空の青が、高く高く見えた日。
もうすぐ日和の退院も間近に迫った頃。
「ええっ、ホントに?」
「ああ、嘘じゃねえよ…」
「だ、だけど…ちょっと恥ずかしいね…」
「ああ、公衆の面前だからな」
1つのジュースに2本のストロー。
2人はそんな話をしていました。
「そ、そのカップルさんスゴイね…」
「…そうだな…スゴイよな」
「そ、そんな恥ずかしいこと…普通はできないよねぇ…」
「…ああ、恥ずかしい奴らだよな…」
「う、うん…」
いつもの照れた顔で、健二に微笑みかける日和。
「ね、ねえ、けんちゃん…」
「…うん?」
「あ、あのね…だけど、やっぱり…」
顔を赤らめた日和が言うには……
「わ、わたし、やってみたいかも…」
「………」
「えへへ…ちょ、ちょっと恥ずかしいけど…」
照れくさそうに笑いながらそんなことを言う日和。
「えへへ…」
「わかった…」
売店でオレンジジュースを購入。
そして2本の白いストロー。
「ほらっ…」
「あっ、オレンジジュース…」
「これで良かったか?」
「う、うん…ありがと。これ、好きなの」
「そうか…」
そう言っていつもの照れた顔を健二に向ける日和。
「悪いな…オシャレなカップじゃなくて…」
「う、ううん、ううん!」
プシュッ
軽いプルタブを開ける音。
自分のストローを咥えて、もう一方を日和に向ける健二。
「…ほら、早くしてくれよ」
「え、えと、え〜と…」
「…俺一人だったら恥ずかしいだろ」
「う、うん…」
そっとストローに口をつける日和。
息のかかる距離。
健二の頬に触れる日和の柔らかい髪。
「………」
「………」
「ほら、ちゃんと飲んでいるか?」
「う、うん…」
「…美味しいか?」
「は、はずかしくて…あ、味がわからないよぉ…」
「ははは」
「あ、こら、やめろよっ。ほ、ほら、恥ずかしいだろっ」
「えへへ…」
飲み終わったのに、まだストローだけを口に咥えている日和。
「ほら、もうストロー離せよ?」
「だ、だって…だってだって…」
「ちっ、しょうがない奴だな…」
「う、うん…えへへ」
♪
春の穏やかな陽射しの中。
口にくわえたストローを得意げに健二に見せびらかす日和。
そして…
静かに自分の手に持ってきたかと思うと…
…そのまま…
…くるくると…くるくると…
まるでスローモーションのように…
…ゆっくりと自分の指へと巻き始める…
「あっ…」
日和の指に巻かれたストロー……
「お、お前、そ、それはっ…」
「えっ…」
それは紛れもなく、かつて健二が作ってやったのと同じ…
日和の指に、幾重にも巻かれたストローのリング…
「あっ、あれ? …あれれ?」
「日和…お、お前?」
「ど、どうして…」
日和の目から流れる涙……
「わ、わたし…泣いているんだろう?」
「日和…」
「あれれっ…?」
「…ねえ?」
日和を抱きしめる。
強く。強く……。
いつまでも…離れぬよう…
もう二度と…流されぬよう…
…ぎゅっと…
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
何も…………
何も言うことは無い………………
いや…………
言うことができない…………
(余韻)
はぁ……。
もう何て言うか……。
何なんですか、これは…………
こんなの見せて…………
俺に何をさせたいんですか…………
何でもやりますよ…………
(余韻)
いや、もうホント…………
だから…………
…………叫びますよ?
日和ぃぃぃぃ!!!
日和日和日和日和日和日和日和日和!!!!!
ひよりぃぃぃぃぃぃ!!!!
HIYORYYYYYYYYYYYYYYYYYAAAAHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!
見づらい?
すいません。そんなこと気にしてる場合じゃないんです。
もう何て言うか『LOVE』です!!
LOVEなんです!!
日和LOVEなんですよ!!
もうLOVE!!
LOVE!!!
激LOVE!!!
超LOVE!!!!
爆LOVE!!!!!
超絶LOVE!!!!!
君のためなら死ねる!!!!
いや、人のために死ぬなんて詭弁だ!! 愛する人のために生きることこそが真の愛(byシティーハンター)!! ならば俺は君のために生きよう!! そして君と共に生きよう!! 俺はいつでも君の側にいる!! 辛いことがあったらいつでも振り向け!! 俺はそこにいる!!(←ストーカー) 君は俺の太陽だ!! 君を幸せにしてみせる!! そしてそれこそが俺の幸せ!! しいてはそれが世のため俺のた(以下略)
とまぁ魂の導くままに叫んでみました。
少々ウザかったかと思います。
ま、お気になさらず。
でも実際、ヤられちゃったんですよ。
はぁ……。
少しまとめてみましょう。
日和が健二の元に現れた理由。
それはまず日和が事故に遭ったことから始まりました。
死んでしまうかもしれない状況になった時、日和が考えたことは『悔い』についてでした。
頭では何も思いつかなかった日和ですが、心の奥底には静かな、そしてとても大きな『悔い』が残っていたのです。
その『悔い』とは小さい時に健二に渡すことができなかったチョコレート。そして同時に伝えることが出来なかった想い。
その後悔は消えることなく、ずっと日和の心に潜んでいました。
そして事故による入院と言う契機により表に現れたのが健二の元に現れた日和。
子供の頃の後悔が出現理由であるが故に着ている服は子供のもの。記憶も子供の頃のまま。
それだけに健二への気持ちもそのままだったのかもしれません。
何故クローゼットから現れたのかは言うまでないと思いますが、その『悔い』の象徴とも言うべき『健二に渡すことができなかったチョコレート』がそのクローゼットに入っていたからでしょう。
さらには自分の『気持ち』も一緒に押し込めてあったからだと思います。
入院していた日和はそんな『もう1人の自分』に気付くことはありませんでした。
そして手術が成功し、『もう1人の自分』と1つになることにより、その『想い』もまた1つになったのだと思います。
たとえ健二と過ごした日々を覚えていなくとも、その想いだけは消えることは無かった……。
あううぅ……ヤバい、ヤバいよ。
ここまで日和にヤられるとは思ってなかった……。
これまで俺はやってきたゲームの中で一番好きなキャラは「君が望む永遠」の遙でした。
そして最も完成されたストーリーだと思っていたのは「Kanon」のあゆルートだったんです。
でも……。
それらは一発で塗り替えられました。
日和です!!
俺の一番好きなキャラは日和です!!!
そして最も完成されたストーリーはこの日和シナリオです!!!
今後俺はこう公言してはばかることはないでしょう。
『HIYORI is No.1』
と……。
だって……だってですよ?
エンディングの言葉を書き取るために、俺が何回エンディングを見たと思いますか?
とてもじゃないですけど一桁じゃ収まりつきませんよ?
でもその度に震えがくるんですよ?
ダメだぁ……。
魂………抜かれちまったよ…………。