2002.1.9 「妹が欲しくなってきた」編


まゆに会うために孝之をバイトに行かせます。

孝之が『すかいてんぷる』に着くと雨が降ってきました。

「ぜは〜、お、おはようございますぅ〜」

とそこに入ってきたのは雨で濡れてしまった我らが玉野まゆ。

とりあえず頭を拭かないと。

 1、大空寺に行かせる

 2、自分で取りに行く

あゆに取りに行かせると妬いちゃうからここは自分で行くとしましょう。

人の頭を拭くのが下手な孝之のせいでまゆは目を回してますがここは我慢ということで。

孝之が自分でタオルを取ってきたにも関わらずあゆは不機嫌そう。

罪な男だ。

 

またしてもあゆに料理をぶちまけてしまったまゆ。

「本当にごめんなさい。いま、いま……ええっと」

「あたしのことはいいから、ここ片付けて……」

「でも、でも、先輩が〜」

「大丈夫だから、放っておいて」

「せめて、ええっと……布巾でお顔を」

「いいからっ!」

前回同様あゆに突き飛ばされ壁に激突するまゆ。

「くぅ…………」

叱りつける孝之にふて腐れるあゆ、そして大丈夫だと強がるまゆ。

捨て台詞を残して走り去るあゆですが、ここはまゆが心配なので追いかけません。

追いつけないことは知ってるし。

 

結局その後はバイト終了時刻までまゆは休んでままでした。

孝之と一緒に帰りながらもまゆは落ち込みっぱなしです。

「先輩……怒ってました」

「……そうだな」

「私のせいです」

確かに料理をあゆにぶちまけてしまったのはまゆですがちゃんと謝ってます。

孝之にはあゆがあんなに怒る理由がわかりません。

ただただ落ち込みっぱなしのまゆを心配した孝之は寄り道して帰ることに。

 

2人で海沿いの公園を散歩する孝之とまゆ。

多少は気分転換になったかもしれませんがやっぱり落ち込んだままのまゆの口から語られるまゆの笑顔の裏にあったもの。

「…………たくさん笑っていたいです」

すでに亡くしていた両親、そして仲の良かったお兄さん。


 

こんなこと…………。

こんなの嘘だろっ!

だって、いつもそんな素振り見せなかったじゃないかっ!

オレは何も知らなかったのに…………。


 

お兄さんはまゆと仲直りする前に亡くなっていた。

不安だった。

大丈夫だよ、って誰かに言って欲しかった。

震える肩を誰かに抱いて欲しかった。

そんなまゆの心を理解した孝之。

「大丈夫だよ」

 

ベンチに座ったまま孝之の隣で寝てしまったまゆ。

目が覚めたまゆが言うには翌日のバイトは休みをもらっているとのこと。

翌日は事故の日であり、おじいさんおばあさんと一緒にお墓参りに行くんだそうです。

「ま、大空寺のことは心配いらないよ」

「孝之さんがそう言ってくれるなら、心配しません」

うれしいことを言ってくれます。

お兄さん(俺)、思わずニヤけちゃいます。

「んじゃ、張り切って帰ろう」

「御意っ!」

 

そんな辛いことがあっても明るく頑張っているまゆ。

孝之はそんなまゆを見て反省します。

結局この日は病院に行けなかったので翌日は病院に行くことを決心するのでした。

 

ってことはお墓参りに一緒に行ってあげることはできないのか…がっかり。

 

翌日、遙の病室に行くと茜がいました。

そして水月が遙の見舞いに来ていたこと聞かされます。

昨日病院に来なくてよかった、と孝之。

孝之と水月が病院で会ったりしたら茜に病院で待ち合わせしていた、などと勘違いされかねないからです。

そのことで水月に夜にでも電話してみよう、と孝之が思いました。

そんな理由でもないと水月に電話ができなくなっていた孝之。

 

バイトへ。

まゆが休みなので1日中働くことになりました。

あゆはずる休みしようとしましたがなんとかやってきました。

でもやっぱり様子がおかしい。

まゆのことを話すことにした孝之はあゆを連れて海沿いの公園へ。

あゆは泣きながらまゆに謝る、と孝之に言いました。

なんだかんだ言ってやっぱりかわいいです。

 

そしてバイトが終了。

あゆが明日ヒマかどうか聞いてきました。

いやっほぉ〜う♪

じゃなくて!! 今回はダメなんだよ…スマンあゆ。

結局明日もバイトすることにしました。

そして明日はまゆも来るのであゆにヒマな時間に顔を出させることになりました。

仲直りは1日も早いほうがいいですよね。

 

あゆと別れるとそこに現れてのは水月。

一緒に帰る孝之と水月の2人。何となく腹の探り合いです。

会話の中で孝之は遙をお見舞いに行く理由がわからなくなってます。

そして別れ際の水月のセリフ。

「私は平気じゃない」

 

家に帰るとモトコ先生からの留守電が。

遙の意識が戻った、と。

そのことを水月に電話で教えますが水月は病院には行かないと言います。

水月も辛いんでしょう…。

 

病院へ。

前回目覚めた時からの記憶がなく、そして事故から3年経っていることを認識している遙。

とりあえずもう大丈夫そうです。

そして別れ際。

「……まだ…………」

「ん?」

「遙って呼んでもらえるのかな?」

…これはもう慣れるってことはありません。はぁ……。

この言葉に対して素直に、当たり前だろ、とか答えることができなかった孝之。


 

……どうして…………か……。

理由を探してばかりだ。

見舞いに行く理由。

電話をする理由。

会いに行く理由。

何やってんだろ、オレは…………。


 

孝之は悩むのでした。

 

翌日、店長の健さんに頼まれていたのでバイトに行く孝之。

すると既にまゆはバイト中で孝之を普通の客として迎え入れてます。

どうにも様子のおかしいまゆ。

やっと孝之であることに気付くとかなりホッとした様子です。

どうやら孝之とあゆがいない状態でのバイトは初めてだったので緊張していたらしいです。

「これで安心ですぅ〜」

孝之が来ただけで笑顔になるまゆ。いい。

「あとは先輩がいれば、完璧なんですけど…………」

「…………」

やっぱりあゆとのことは気になる様子。

ランチタイムの忙しい時間が過ぎたあたりであゆがやってきました。

まゆとあゆが謝りあって一件落着です。

 

なんかこの辺の流れってあゆをやった時のあゆがバイトクビになった後に謝りに来た時と全く同じなんですけど。

 

帰り際、健さんが孝之に明日はバイトを休みにしてもいい、と言ってくれました。

悩んでいるとそれを聞きつけたまゆが現れました。

「お休みにしましょうっ!」

「ん? なんで?」

「そ、それはですぅ……私もお休みにしてもらったからですっ!」

ぐっ(←手を握り締めた音)。

これはもうまゆからのお誘いと見ていいでしょう!!

1、休みにする

2、バイトする

ふっ…。

「お言葉に甘えて、明日は休みでお願いします」

という訳です。

 

一緒に帰る孝之とまゆ。

まゆはあゆと仲直りができたことがうれしくてたまらない様子です。

「もう嬉しくてはっちゃけそうですぅ〜」

心から嬉しそうなまゆ。

そんなまゆの姿を見て孝之は自分を振り返ります。

まゆの様に素直に物事を感じとったり、それに喜んだり悲しんだり。

自分は段々とそういうことができなくなってきている気がする、と。

「……あの」

「どした?」

「寄り道しませんか?」

「ん? いいけど。海でも見て行こうか?」

「はいっ!」

 

と言う訳で海沿いの公園に来た2人。

夜も暗くなってきていていい雰囲気です。

そんな中、お墓参りの時のことを話し始めたまゆ。

「いっぱい、いっぱい話したんですよ」

「うん」

「孝之さんのこともいっぱい話してきちゃいました」

「オレのこと?」

「はいっ! もうこれで1年は食いっぱぐれないぐらいはいきましたっ!」

「どんなこと話したの?」

「え〜っと、あ〜っと……いっぱいですぅ」

「……そ、そっか」

「お兄ちゃんみたいだって…………言っちゃいました」

「…………」

「もしかしてご迷惑だったでしょうか?」

「いや、そんなことないけど、お兄さん怒ってなかった? こんなのと同じだって言われて」

「孝之さんも大好きだから大丈夫です」

「…………」

「同じくらい好きだから、大丈夫です」

そんなまゆの言葉にあたたかいものを感じる孝之。

まるで妹でもいるみたいだ、と。

「そういうわけで、今年は大盛況のうちにお墓参りは幕を閉じたのです」

「よかったね」

「はいっ! 本当は毎年…………」

ふと涙声になるまゆ。

「玉野さん」

「だ、大丈夫です」

「約束したろ? オレの前では我慢しないってさ」

「ふぐぅ〜〜〜」

きっと毎年、お墓の前では泣かないようにしていたであろうまゆ。

笑えないまでも、絶対に涙は見せないように。

そうやって残された自分が幸せだと言うことを教えようとして。

「なんか、変ですぅ。悲しくないのに、涙が出ます。こんなに嬉しいのに」

「なら、なおさら我慢しなくていいだろ」

「はい……」

そしてまゆは涙を流すのでした。

 

別れ際(これ多いな)、まゆが言い出しました。

「あの〜」

「ん?」

「我が侭、きいてくれますか?」

「なに?」

「明日、お時間いただけますか?」

ぐぐっ(手を握り締める音)。

「いいよ。それで?」

「あ、あの、う、あ、と」

「落ち着いて」

「は、はひ〜〜〜。すぅ〜ふぅ〜。親方様に申し上げます」

「いや、別にオレは親方様じゃないけど」

「12時に柊町駅でお待ちしてよろしいでしょうか?」

孝之の突っ込みは無視してのまゆからのお誘い。

12時柊町駅って流行ってるんでしょうか? あゆもそうだったし。

「いいけど、それで」

「……」

「……玉野さん?」

「…………」

「…………」

「お兄ちゃんとの約束……守りたいんです…………」

 

帰りの電車の中で孝之はまゆが最後に見せた表情を思い出します。

これまでに見た中で1番悲しい顔。強がることさえせずに。

その理由はわかりません。

『お兄ちゃんとの約束』

それは一体何なんでしょう?

 

家に帰ると水月から電話がかかってきました。

遙のことを話す2人ですが当然話が弾む訳もありません。

むしろ穏やかな気分に、思いっきり水を差されたような気がしてならない孝之。

今までも水月とトラブったことはあった。

でもそのたびに怒りを押しとどめることでやってきていた。

怒ることもあって、呆れることもあって。それらを全部ひっくるめて水月を愛している。

そう感じていたから。

でも今の孝之は違いました。

これまでに感じたことのないようなモヤモヤが、心に覆い被さっていたのです。


 

明日になれば、それがきっと晴れる。

だて……明日は玉野さんと会うんだから。

彼女の無制限な無邪気さが、オレを癒してくれるさ…………。


 

そんなことをごく自然に考えている孝之でした。

 

でも果たしてそううまくいくかどうか…。

孝之は忘れているのでしょうか。別れ際、まゆが見せた悲しい表情を。

そしてまゆの笑顔の裏には孝之以上の悲しみや苦しみがあるということを。

 

翌日、まゆは待ち合わせに遅刻してきました。

昨夜はあまり眠れず、電車で座ったまま寝てしまったそうです。

反省しきりのまゆ。

「まことに申し訳ありませんでした」

「ほら、もう謝らない。いいって言ってるんだから」

「は、はい。ごめ…………ありがとうございますぅ〜」

「よろしい」

「えへへ」


 

心が和むね。


 

孝之は気楽なもんです。

そしてまゆの提案で遊園地に行くことになりました。

 

まゆが乗りたいと言うのでジェットコースターや垂直落下に乗る2人。

案の定まゆはフラフラです。

室内のアトラクションにしようとして入ったお化け屋敷。

ここでもまゆはかなりテンパってます。

何はともあれ元気にはしゃぎまわるまゆに孝之も楽しげな様子。

 

そして遊園地の後は例の海辺の公園に。

「……今日はありがとうございました」

「ん?」

「はちゃめちゃに楽しかったです…………」

「あのさ、ひとつ聞いていいかな?」

それは『お兄ちゃんとの約束』について。

「孝之さんのおかげで、ちゃんと守れました」

「オレのおかげで?」

「約束だったんです…………一緒に行こうって」

「……そっか」

「本当はもっと早くに行こうって言ってたんです。楽しみにしてたんです」

「……うん」

「けど、お兄ちゃんが急に行けなくなったって、それで、お兄ちゃんなんて、だいっきらいって言っちゃって」

「……それから事故で」

「はい…………ごめんなさいもできなくなっちゃいました。一緒に遊びにいくこともできなくなっちゃいました」

「…………」

「あ、でもでも、今は平気です。孝之さんがいてくれますぅ。えへへ」

「よしよし」

「一緒に遊園地来ることもできました」

「そうだね」

「はいっ!」

それが昨日の悲しい顔の理由。

孝之と来たことで『お兄ちゃん』との約束がついに守れたのです。

「そろそろ帰ろうか」

「あ、あの、もうすこしだけいいですか?」

「時間、平気なの?」

「はい、もうすこしだけ海を見ていたいんです」

「……わかった。好きなだけいいよ」

いつのまにかまゆのことを支えてあげたい、と思っている孝之でした。

 

いい雰囲気です。俺まで心が和みます。

…ホントにこのまゆとヤるの? こんなまゆと?

何か人として間違ってるような気が…。

 

家に帰ると水月がいました。

遙の見舞いに行ってきたそうです。

そして遙に会いに行かない孝之を責めます。

会えば口論になってしまう2人。


 

なんだよ、この気分の悪さ……。

ついさっきまではこんなんじゃなかったのによ。

……台無しだ。

 

翌日、病院へ行く孝之。

廊下で茜に出会いました。

少しは話ができるようになっていた茜と孝之ですがまた茜の態度は頑なになってます。


 

前はそんなんじゃ……あのころはもっと無邪気で…………くそっ!


 

でも茜をそう変えてしまったのは孝之自身なのです。

そして遙の病室に入る孝之。

遙は孝之を見ると泣き出してしまいました。

それは孝之に会えて嬉しいからに他ならないのですが…今の孝之には辛いばかりです。

「大丈夫かな? 私、ちゃんとやれるかな?」

「ああ、大丈夫だって」

「……見ててくれる?」

「ん?」

「私を見ててくれる?」

あべしっ。

「何言ってんだよ。そんなこと」


 

そんなこと聞くなよ。

……返答に困るようなことを…………。


 

「……ごめんなさい。おかしなことばかり言って」

「……」

「信じてもいいよね?」

たわばっ。

「悪い。オレ、そろそろバイト行かないと」

「……う、うん」

「また、来るからさ」

「うん、待ってる」

遙の言葉ひとつひとつが重く圧し掛かってくるように感じる孝之。

 

今日もまゆ皿を割りまくってます。

一緒にゴミを捨てに裏口からでるとそこには怪我をした猫がいました。

食べ物をあげたいと言うまゆ。

一応健さんに確認を取ったほうがいいか、と孝之は思います。

 1、自分で行く

 2、玉野さんに行ってもらう

…どっち?

なんか選ぶ基準がいまいちわからない選択肢なんですけど。

………………………………1でいいや。

 

結局孝之では健さんを説得できず、まゆから言ってやっとエサを手に入れることに。

それでもまゆはお礼を言ってきました。

ふうセーフ。

おいしそうに猫はエサを食べてます。

「にゃ〜」

「あ、もう行かれるのですか?」

「にゃ〜、にゃ〜」

「さよならで〜す」

猫と完璧にコミュニケーションがとれているまゆ。

「うるうる……」

「ま、腹が減ったらまた来るだろ」

「はい……」

「さ〜て、んじゃ……オレらも仕事に戻ろうか?」

「御意っ!」

 

バイト終了後。

2人は海沿いの公園にいました。

波の音を聞いて、まゆの笑い声を聞いているだけで『これでいい』と思える孝之。

だいぶまゆにはまってきているようですね。

猫好きだというまゆ。

以前飼っていた猫は兄が拾ってきた猫で、去年泣くなってしまったそうです。

それでも元気に孝之と話すまゆは健気で本当にいい娘です。

 

帰り道、繁華街がすごい人手なので、はぐれないように手を繋ぐ2人。

以前祭りの時に手を繋いだことを孝之は思い出してます。

その時にお兄さんのことを初めて知ったんだ、と。

 

そして駅のホーム。

電車の方向が逆のまゆは反対のホームにいるのですがここでも人が多く探せません。

「バイトはがんばってんだ」

そこに現れたのは水月。

突っかかってくるような水月の口調に孝之も穏やかではいられません。

それに水月はまゆと手を繋いでいるところも見ていた様子。

「手まで繋いで、なにがやりたいわけ?」

『ナニ』をやりたい訳です。

いやもちろん冗談ですが。

「ガキじゃねぇんだから、そんなんでいちいち突っかかってくるなよ」

「本気で言ってんの?」

「それはこっちが聞きたいくらいだな」

「……もういいや。やっぱ、帰る」

「おい、待てよ。言いたいことあるなら、言ってからにしろ」

「ほんと、私、なにやってるんだろ」

「なんだよ、それ」

「帰るね」

そう言って去っていく水月。

水月が何を言いたいのかが全くわからない孝之。


 

なんなんだよ、ほんとによっ!

 

2人の間の亀裂は確実に大きくなってきていました。ああ…。

 

翌日。

遙のところに行くといきなり質問されました。

「孝之くん、アルバイトしてるんだよね? それって、大学は諦めちゃったってこと?」

「……諦めたのとは、すこし違うけど」

「やっぱ…………私のせいだったのかな?」

孝之としてはあの頃のことは思い出したくない。

真実を言えば遙は傷つくし、嘘をついてもすぐにばれる。

わかりきったことは聞かれたくない。

自分を困らせるような質問はして欲しくない。

苛ついている孝之。

それは遙に対してでした。

でもそれは遙に対してではなくて、自分とそんな質問を遙にさせているような状況全てに。

そんな風に思うのは無理に取り繕った感情である、と思っている自分もいる。

「……ごめん。イヤなこと聞いちゃったね」

「別にそういうわけじゃ」

「ううん、いいの。私が悪いんだと思うから…………」

遙の声を聞くだけで首元から胸までが締め付けられるような孝之。

結局来たばかりだと言うのに孝之は病室を出て行ってしまいました。

そこに話し掛けてきたのは茜。

「姉さんを不安にさせるようなら、こんなことやめてください」

「いきなりだな」

「やってること、何も変わってないじゃないですか?」

「…………」

突っかかってくる茜。

「さっきみたいな態度が姉さんを不安にさせるんだって、どうしてわからないんですか?」

「わかってる。そんなこと」

「だったらっ!」

「…………言いたい放題だな」

「っ!」

「全部があのころみたいになるなんて思わないでくれよ」

あの頃は全てがこんなんじゃなかった。

水月も。茜も。遙も。慎二は…まあいいや。(←これは俺です)

「……ほんと、あのころはよかったのにな」

「っ! それを鳴海さんが言わないでくださいっ!」

「みんな思ってることじゃないのか?」

「言わない約束です。こんなこと言わせないでくださいっ!」

「…………」

「そんなの卑怯ですっ!」

「…………」

「……反省してください」

「…………」

「何を言ったのか考えてください」

「…………」

「……失礼します」

3年前はこんなんじゃなかったのに。

そう考える孝之もかなりぼろぼろです。

こんな孝之を救えるのは…まゆしかいないでしょう。

 

バイトに来ても孝之は全く仕事をする気になりません。

適当に流しているところにやってきたのは何と水月。

「今、時間とか空けられない?」

「ん? できなくもないだろうけど」

結構時間を自由に使えるぐらいには店長・健さんに任せられているようです。

「で、どうなのよ?」

「わかったよ。ちょい早いけど休憩にするから」

「孝之さ〜んっ!!」

そこにまゆ登場。

「……」

「どうした?」

「終わりましたっ! って、あ、うんっと……彼女さんです」

「どうも、はじめましてかな?」

水月の方は何度か見かけているはずです。それも孝之と手を繋いでいるところまでも。

何か微妙に含みを持たせた言い方。

「これはご丁寧に……」

「玉野さん、何が終わったって?」

「テーブル拭きです。忘れないで下さい〜〜〜」

「あ、ごめんごめん。よしよし、なら次はさっきオーダー取った7番テーブルの料理を運んでおいて」

「御意。お任せあれです」

走っていくまゆ。

「ぶつかるから歩いて行くっ!」

がつんっ!

「……ぐ、ぐおぉ〜」

「やれやれ、何やってんだか。水月、ちょい待ってろ」

「……うん」

「よよよ……いたいでふ〜〜〜げふげふげふ〜です〜〜〜」

「ったく、何をやってんだか。怪我してないか」

「侍ですゆえ」

「おでこが赤くなってるけど、大丈夫みたいだな」

「はいっ! 孝之さんが心配してくれたら平気です」

「痛かったら奥で休んでるんだぞ。オレはちょっと外に出てくるから」

「はい、わかりました。行ってらっしゃいませぃ〜〜〜、お早いお帰りを」

まゆに見送られて店から出て行く孝之と水月。

まゆは水月を見ても何とも思わないんですかね?

孝之のことは完全に『お兄ちゃん』としか見てないのでしょうか?

それはそれである趣味をお持ちの方々にはうれしいことだと思いますが俺はちょっと物足りなかったりして。

いや…そんなはずはありませんね。

 

海沿いの公園を歩く2人ですがぎこちなさは隠せません。

これは水月のせいだけではなくあきらかに孝之のイライラが募っているせいでもあります。

またしても口論になる2人。

最早完全に孝之の中では水月と終わっているかのような印象まで受けます。

「孝之はいいわよね。もう次を見つけてるから」

「次ってなんだよ?」

「だけど、私はそんなに簡単じゃないのよ」

わけわけかんねぇよ」

誤植です。今回は本当に。

と言うかこーゆーの多いです。テキストの量からして仕方ないことだと思いますが。

「さっきの子。あれはなんなのよっ!」

水月が言ってるのはまゆのことです。

「手を繋いだりしてさ。まるで恋人みたい」

「馬鹿言うなよ。あれは妹みたいなもんだろ」

「……」

「妹だよ、彼女は」

「……あ、そう…………」

納得したようには見えない水月。

「そろそろ昼休み終わっちゃうから行くね」

そう言って水月は去って行きました。

もう2人は修復不可能なイメージです。ああ…もうだめなのか……。

 

店に戻るとまゆがいません。

と思ったら後ろから入ってきました。

健さんの話によると孝之を迎えに行ったらしいのですが、どうやら行き違いになったようです。

そして何か孝之に言いたそうにするまゆですが何も言いません。

孝之はまゆと一緒に帰る約束をして仕事に戻って行きました。

 

バイトが終了して帰ろうと思ったらまゆはいませんでした。

あゆによるともう帰ってしまったという話です。

約束を忘れるような娘じゃないはずなんですが。

孝之も不思議そうにしてますがとりあえず1人で帰ることに。

 

そして帰り道。

歩きながら考えるのは遙や水月のことではなくまゆのことでした。

明日にでも焦りまくって謝りにくるかもしれない、なんて思いながら家に着いた孝之。

待っていたのは留守電1件。

『速瀬ですけど…………会うとまたケンカしちゃうと思うので電話で用件を言います』

『なんか、もう疲れたからやめにしよう?』

『孝之もそのほうがいいと思うから』

『どうせもう長続きしないような気がしたから、私からふってあげる。いい気味』

『以上、速瀬水月の絶縁宣言でした……』

…………。

言葉面でけ受け取るとかなりムカつく留守電です。

でもこれは本当に水月の本音なのでしょうか。

もしかすると辛い気持ちを隠すための精一杯の強がりなのかもしれません。

真相は不明ですが、確かなことが1つだけ。

孝之と水月は終わりました。

 

それにしても気になるのはまゆのこと。

一体何を言い出そうとしたのか。

何故先に帰ってしまったのか。

思うに水月を会っていた時の話を聞いてしまったとか?

そして自分が原因で2人が別れるようなことになったと勘違いしたとか?

その辺の真相は全て明日明らかになるでしょう。

おやすみなさい…


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