2002.1.2 「茜一直線」編


今年もやりますか。
 
 

水月と偶然会った孝之。

遙には最近会いにいってないと言う水月ですが、その原因は茜にあると孝之は考えます。

さて明日あたり水月と一緒に行くべきか、行かぬべきか。

 1、誘う

 2、誘わない

うーん、ここは茜もきっと水月と昔のような関係に戻りたいと思っているに違いない。

と言う勝手な推測のもと1を選択。

水月は何とか承諾してくれました。

会社が終わったら電話をしてくる、と言うことになって別れる2人。

ぎこちない2人です。
 
 

帰り道、孝之はフラフラです。自分の家に帰るのも辛い。

途中の道で力尽きそうになって座り込む孝之。

そこに現れたのは茜でした。

茜の肩を借りて何とか孝之は自分の家までたどり着きます。

部屋の中に入ってきて色々と世話してくれる茜。いい娘や…。

孝之が自分で寝ていたのかどうかもわからず気が付いたのは夜中の1時半。

まだ部屋にいた茜に帰るよう言います。

「それじゃ……帰りますね」

「うん……送っていこうか?」

「…………冗談でも……あんまり優しい言葉は……駄目です」

「ごめん…………」

「お休み……なさい」

「ああ……」

そしてドアが開いて閉じる音。

微妙にさっきの会話の意味がわかりません。

優しい言葉は駄目? どゆこと?

孝之が優しくするのは遙だけでいい、ってことかな。

もしくは茜は実は孝之が好きでそんなこと言われたらもっと好きになっちゃうから、とか。

うーん、わからん。

とりあえずそのまま眠りに落ちる孝之でした。
 
 

翌朝、何とか体調がよくなっていた孝之。

バイトの後で水月から連絡が入り、待ち合わせることになりました。

途中花屋によって茜が選んだ真っ赤なバラを受け取って病院へ。

どうやら水月からその花は渡すことになったようです。

水月が遙や茜と話すきっかけにでもなれば、と言う理由で。

ああ…素直に孝之が渡したほうがいいんじゃないのかぁ。 またこじれる予感。

病院につくととりあえず面会はできる状態とのこと。

モトコ先生に写真を渡して遙の病室へ向かう2人。

病室に入ると茜は白陵の制服を着ています。どう言うことでしょう?

水月からバラを渡すと茜の目つきがやや険しくなった感じがしました。

そしてその花を活けてくる、と言って病室から茜は出て行きました。

何やら様子のおかしい水月と茜を見て遙も不審に思って水月に何かあったのかを尋ねました。

「だって、いつもなら飛んで抱き付くのにね」

どうやらまだ遙の記憶は正常にはなっていない様子です。

そこに茜が帰ってきました。

「綺麗なバラ…………ありがとうね、水月」

「あ、う、うん」

「赤いバラの花なんて、もらうのはじめて」

「…………」

突然花瓶が倒れる音がしました。

花瓶を直しながら、茜が耐え切れなくなったように言葉を紡ぎ始めました。

「……いつまで…………」

「茜?」

「いつまで続ける気ですか?」

花を握りつぶす茜。

「こんなことは…………もうたくさんですっ!」

花瓶からバラの花を抜き取り床に叩きつける。

茜がキれた!!

それも床に叩きつけた花をさらに踏みにじるほどに。

「やめるんだ、茜ちゃん」

「鳴海さんがそれを言わないでくださいっ!」

「…………」

「誰のせいだと思ってるんですか?」

「…………」

「やめて! 遙がいるのよ」

「姉さんのためですか? もう、ウソはやめてください! 本当は自分のためなんじゃないんですかっ!」

「……それは……違う……」

「なにも、なにも違ってませんっ!」

「茜ちゃん、いいかげんにしろ!」

「やっぱり、庇うんですね。姉さんの前でも……」

「そういう問題じゃないだろ!」

「姉さんが何も知らないからって! 知らないからって! いつまでもこんなこと続けてたら、惨めなだけじゃないですか……」

「茜? なんのこと? 知らないってどういうこと? どうして怒っているの?」

「この花だって、私が選んだのに……どうして、この人が持ってくるんですかっ!」

「…………」

「鳴海さんから手渡すものだと思ったから、だからこの花を選んだんです。それなのに……」

「……もう、よすんだ……」

だから言ったのに…。

胸がただひたすらに痛い孝之。

「いつまでも、同じでいられるわけじゃないです…………私、間違ったこと言ってますか?」

「茜、もうやめて……」

「私が言わないと誰も言えないじゃないですかっ! それとも、自分で言えますか?」

「……それは……」

「言えませんよね? 鳴海さんと付き合ってるなんて?」

「茜ちゃん!」

「茜……? どういうこと?」

言っちゃった…こんなタイミングで言っちゃうなんて……。

「駄目だ、茜ちゃん!」

「姉さんが事故にあってから、もう3年も経ったの。見てわからない? みんな違うはずだよ」

「…………」

「やめるんだ、茜ちゃん」

茜が白陵の…高校の制服を着ているのはそう言う訳だったのか。

つまり最初から今日全てをはっきりさせるつもりでいたってこと?

「どうしてわかってくれないの?」

「…………」

「水月、ナースコールを!」

「あ、うん」

今の遙にこんなことを一遍に伝えたらどうなるかわかりません。

「3年……私…………あれ? …………ほんとう?」

「本当なのっ!」

「…………」

「だけどね。姉さんが全部悪いんだからっ! ずっと起きなかったから……姉さんがいけないんだからっ!」

「もうやめるんだ」

「はなしてください!」

「あ……あ…………」

「遙、オレを見ろ」

何とか遙の気を逸らさせようとする孝之ですが茜には通用しません。

「姉さんがすぐに目を覚ましていれば、姉さんが事故に遭わなければ、こんな風にならなかったんだから!!」

「もうやめるんだ! 茜ちゃん!」

「姉さんのせいで、みんな傷ついたんだからっ!」

茜の目を見た瞬間、孝之の中で何かが凍りついたような感じがしました。

自分より、水月より、遙より、茜が可哀想に見えた孝之。

「うぅ……もう…………」

「待って、茜!」

病室を飛び出す茜。

「……私…………変わっちゃったよね?」

「……」

「…………」

「どうしちゃったんだろう…………これって変だよ?」

遙が…目覚めようとしてる?

そこに入ってきたのはモトコ先生でした。

孝之と水月を病室から出して遙の様態を見るモトコ先生。

こんなことになるなんて…遙は、茜はどうなるんでしょう…。
 
 

遙のことはモトコ先生に任せて、孝之は茜を探しに行きます。

水月はさっきの茜の言葉に相当まいっているらしく遙の病室の前に置いたまま。

駅まで行っても結局茜を見つけることはできずに結局病院に戻ってきた孝之。

ですがこの時孝之は気付いてしまいました。

遙に自分で言わずにすんでほっとしている自分に。
 

……最低だ。
 
 

突然降ってきた雨に打たれながら病院裏の海岸に佇む孝之。

そこにいたのは茜でした。

「どうして、あのひとを連れてきたんですか?」

「…………」

「どうして、あのひとが花束を持ってきたんですか?」

「…………」

「私は、そんなつもりであの花を選んだんじゃないです」

「…………」

「姉さんのために…………だから、あの花だったのに…………」

結局自分の痛みしかわかっていなかった、と孝之は自分を責めます。

「…………」

「オレは……」

「何も聞きたくありません」

質問しといてそれかよ。

いや今の茜にそんなこと言っても無意味。

「……オレは誰も傷つけたくなかった」

「…………」

「だけど、それがどういうことだったのか、やっとわかったよ……」

「…………」

「自分ひとりのためだけに何かするのが恐くて、理由を作っていただけなんだ」

「…………」

「痛い思いをするのはやっぱりイヤだから、辛い思いをするのはイヤだから」

「…………」

「そうやってごまかしながら、誰かが手を差し伸べてくれるのを待っていただけかもしれない」

「…………」

「いちばん安心できる選択肢を選んでいただけかもしれない」

「…………」

「あの秋に、茜ちゃんのお父さんから話があったときもそう…………」

「あ……」

『あの秋』。

それは茜の、遙の父親に自分を犠牲にしないでくれ、と言われた時。

もう目覚めないかもしれない遙のところには来るな、と言われた時。

茜に告白しながらただひたすらに自分を責める孝之。

「遙のこと心配しておきながら、水月のことを気づかないながら…………こうして、茜ちゃんを探しにきておきながら、頭んなかじゃ、これだよ」

「もうやめてください!」

ゆっくりと孝之に近づいてくる茜。そして孝之の胸におでこをのせる。

「……ずるいよ…………。そんなこと言われたら、なにも言えないです…………」

そう言って茜は孝之のシャツの裾を握り締めます。

「……私…………」

「茜ちゃんは悪くないよ」

「……姉さんに、ひどいこと…………」

「…………」

「私が悪いのに……姉さんのせいなんだから、って……言って………」

「…………」

「どうしてあんなこと言っちゃったんだろ…………」

「茜ちゃんは悪くないから」

茜を抱き寄せる孝之。

「…………私、姉さんを傷つけた…………」

「茜ちゃんは悪くないから」

「…………」

「大丈夫だから……」

「違うんです……違うの…………」

何も言わせまい、とさらに強く茜を抱き寄せる孝之。

しかし茜は話し続けます。

「……だって、私、ずっと姉さんを裏切ってた。あのひと……水月先輩のこと責められないです」

「…………」

「だけど、たくさん辛い想いしてきましたよ?」

「茜ちゃん……」

「私…………何かいけないことしましたか?」

「…………」

「教えてください…………」

「…………」

「なんで、こんなに辛いんですか?」

「…………」

「ずっと姉さんを裏切ってきたからですか? 鳴海さんに酷いこと言ったからですか?」

突然孝之の携帯が鳴り出しました。

おそらく遙の状態をモトコ先生から聞いた水月でしょう。

しかし孝之はそんなことに構わず茜を抱きしめ続けます。

「それでも私がしたのは…………」

鳴り続ける携帯電話。

そして…。

「…………鳴海さんを好きになっただけじゃないですか!」

溢れ出す涙。

孝之の唇にふれる茜の感触。

それ以上は何も言わず茜は走り去っていきました。

そうか…やっぱりそうだったのか…。

茜は孝之のことが好きだったんだ。

でも孝之は眠ったままの姉・遙の恋人。

辛かったんだろうなぁ…悲しかったんだろうなぁ……。ううう……。
 
 

水月と病院の外で合流し、駅に向かう孝之。

遙の様態は……悪くなってる、とモトコ先生は言ったそうです。

そして別れ際、水月を部屋に誘うかどうかの選択肢が出てきました。

 1、部屋に来ないか?

 2、……。

茜がどこかにいるかも、ひょっとしたら部屋の前とかにいたりして。

なんてことを考えたら誘えるはずがありません。スマン、水月。

何も言わず普通に別れる2人。

ちなみに茜はどこにもいなかったみたい。残念。
 
 

家で1人になるとどうしても頭に浮かんでくるのは遙のこと。

自分で言えなかったこと。

茜に言わせてしまったこと。

そして…茜のこと。

その時不意にかかってきた1本の電話。

もう真夜中で留守電に任せていたら聞こえてきたのは茜の声。

慌てて電話に出る孝之。

遙が目を開けてくれない。

自分が言ってしまったから。

一体自分はどうすればいいのか。

涙声で相当に取り乱した様子の茜にすぐ自分も病院に行く、と行って部屋を飛び出す孝之。
 
 

タクシーを拾うこともできず、孝之はチャリンコを盗んで病院へ駆けつけました。

モトコ先生に詰め寄り落ち着くように言われました。

医局でのモトコ先生の話。

昨日のこと。

遙が孝之達に会わせて欲しいと言っていたこと。

何度も孝之の名前を呼んで、突然崩れ落ちたこと。

極めて危険な状態にあること…。

遙はICUにいるため会わせることができない、とモトコ先生は言います。

前回は会わせてくれたのに。やはり遙狙いじゃないと信用度が低いのかな?

茜がさっき中庭の方に歩いていくのを見た、とモトコ先生から聞いて孝之はそっちに向かいます。

そして海岸で茜を見つけました。

1人震えながら、自分を責め続ける茜。

そんな茜をそっと抱き寄せ「大丈夫だ」と孝之は言い続けます。

茜は大声で泣き出すのでした。
 
 

そして孝之は夢を見ました。

遙が事故に遭って目を覚ませなくなっていた頃の夢。

雨に濡れながら遙の病院の窓を見上げる孝之を励ますのは茜でした。

遙はきっと目を覚ます。

だから孝之は元気にしていないと駄目だ、と。
 
 

目を覚ますと朝になっていました。

結局茜と海岸で2人、夜を明かしてしまったようです。

茜は目を覚ますと昨日あれだけ泣いたにも関わらずまた泣き出してしまいました。

そしてひたすら「ごめんなさい」を繰り返します。

今日はもう帰ろう、と言う孝之。

「遙はきっと大丈夫だから…………」

「……うぅ……えっく…………」

「送るから、帰ろう」

「…………はい」

「…………」

「……もう1度だけ、言ってください」

「……大丈夫だから」

「…………」

そして2人は帰っていきました。
 
 

家に帰って一眠りした後バイトへ。

前日は孝之が無断欠勤したおかげでめちゃくちゃだった、とのことです。

あゆもまゆもやはり孝之(=俺)がいないとダメのようです。

今日も出勤したのはいいものの全く使い物にならない孝之。

そこはあゆに鬼の働きで凌いでもらうことに。

そしてバイト後は病院へ。
 
 

遙は様態はよくはなってきているもののいまだにICU。

屋上に行くと茜がいました。

また泣いていたようで目が赤い茜。

遙は孝之に会いたくても会えず、声を聞きたくても聞けない状態なのに。

そんな状態にしたのは自分なのに。

孝之にずっとそばにいて欲しいなんて思っている、と茜は自分を責めます。

何か声をかければそれだけで茜が泣き出してしまうのはわかっていても声をかけずにはいられない孝之。

モトコ先生に呼ばれていた茜は孝之にも一緒に来て欲しい、と言うので2人で医局へ行くことに。
 
 

モトコ先生の話では遙は最悪の事態、つまり『死』は免れた、とのことです。

でも状態としては目覚める前と同じに戻ってしまった、とも。

ショックを受けながらもモトコ先生にお礼を言って医局を出て行く茜。

モトコ先生は孝之に茜を支えてやれ、と言います。『今度』は。
 
 

駅から1人で帰る孝之。

本当は茜を家まで送ろうとしたのですが茜に断られてしまったのです。

自分に優しくしないでくれ、と。

気をつけて帰れ、と言う孝之の言葉も駄目だと言われてしまいます。

つまり黙って見ていろ、とそう言うことなのです。

そんなことができるはずがない孝之。1人悩みながら歩きます。

家に帰ると水月がいました。

遙のことを説明すると水月も冷静に見えますがやはり思考は駄目な方へ駄目な方へと流れていってしまうようです。

それは孝之も一緒。

水月は孝之の部屋に来てまでして何か言いたかったことがあったはずなのですが何も言えずに帰っていきました。
 
 

翌日。

ボロボロのままのバイト後、病院へ。

ひょっとしたら遙は目覚めているんじゃないか。

声をかけてきてくれるんじゃないか。

そんな淡い期待をしながら遙の病室へ向かいますがやはり…。

病室には茜もいました。

孝之が来たから目を覚まさないとダメだ、と遙に声をかける茜。

しかし遙はそれで起きるはずもありません。

あまりに痛々しい茜の姿に孝之は茜の両肩を抱き寄せます。

そして話があると茜が言い出しました。

それはおそらくこの間のこと。

雨に打たれながら孝之のことを好きだと言ってキスしたこと。
 
 

あの海岸を歩く孝之と茜の2人。

徐々に茜は話し始めました。

3年前、遙と孝之が一緒にいるのを見るのが本当に好きだったこと。

遙を好きでいてくれた孝之のことを好きになってしまったこと。

毎日遙のお見舞いに来ていたのは孝之に会えたからだろう、ということ。

孝之が見舞いに来なくなって水月を付き合いだしてからも遙のお見舞いに来続けたのは2人への復讐だったこと。

「……忘れてください」

「…………」

「あの日のことは忘れてください」

あきらめるのも、好きでいるのも苦しい。

今はその両方があってもう耐えられない、と茜は言います。

だから忘れてくれ。そして遙の側にいてくれ、と。

「これ以上は駄目です」

「…………」

「駄目なんです」

「……何が駄目なんだ?」

「鳴海さんやさしいから……ひどいことたくさん言ったのにやさしいから…………」

「そんなこと…………」

「ずっとこうしていたら…………私のこと好きになっちゃいますよ?」

「っ!」

自信過剰? いや、そんなことは言っちゃいけない。これは単なる強がりなんだから(きっと)。

「今なら私があきらめればいいだけですから簡単です」

「…………」

「簡単なんです」

「全然簡単そうに見えないよ」

「お願いですから、もうやさしくしないでください」

「…………」

「私も勘違いしたくなります」

「…………」

「今日はありがとうございました」

「そんな他人行儀な……」

「すぐんは無理だと思うけど…………ちょっとずつ普通に話せるように努力するから…………」

「茜ちゃん」

「……今日は私に見送らせてください」

「……今の茜ちゃんを放っておくことはできないよ」

「…………水月先輩とはどうなりましたか?」

「それは…………」

「これ以上、言わせないでください」

「…………」

「これ以上、自分のこと嫌いになりたくないんです」

「……ごめん」

「もう、イヤなんです…………ひどいこと言わせないでください」

「……わかったよ。今日はもう帰る」

「最後にひとつだけお願いしてもいいですか?」

「……なんだ?」

「振り向かないでください」

「……わかった」

「…………」

「…………」

「…………さよなら」

茜の元から離れていく孝之。

その耳には波の音が。そしてそれ以上に茜のすすり泣く声が…。
 
 

痛ぇぇぇぇぇ!!!!
 
 

夜。眠れない孝之。

このままでいいなんて思えない。

でも自分が近づくことで茜が罪悪感に駆られてしまう。

なら大人しく何もせずに傷ついていく茜をみているしかないのか。

それが茜をああまで追い込んでしまった自分への罰なのか。
 

……そんなの……そんなのたまらねぇ〜よ。
 

『ねぇ〜よ』………じゃねぇぇぇぇぇんだよ!!

いやちょっと気になったもので。

とにかく後悔するしかない自分を戒めつつ、自分の知らないところで誰かが傷ついていくのには耐えられない孝之でした。
 
 

翌朝目覚めると泣いたまま寝てしまったためひどい顔をしていた孝之。

シャワーを浴びてでてくると留守電のランプがついていました。

留守電は茜から。遙が目覚めた、と言う連絡でした。

ただ『涼宮と言いますが…………』に始まり、とても他人行儀な電話の話し方が気になります。

先日言っていたことを実行しているのでしょう。

そして何かを言いたそうに黙り込みますが結局何も言わずに切られる留守電。

バイト先に孝之は電話します。

店長の健さんは来られるようになったら電話してくれ、と言ってくれました。

孝之に抜けられると痛手だがそれどころではない時というのがある、と。

店長…あんた漢だぜ……。
 
 

孝之は全てを知られてしまった遙に何を言われるか不安になりながらも病院に向かいます。

モトコ先生の話によると遙はもう大丈夫とのことでした。

そしてここ半月の記憶は無く、事故後3年経ったことは認識している、とのことです。

それはやり直しがきく、ということ。

今度は茜の口からなんかじゃなく、自分の口で伝えることができるということ。

遙は寝ていましたが孝之が病室に入ると目を覚ましました。

「…………」

「……遙?」

「…………」

「起こしちゃったかな?」

「……あ、あ…………」

「オレのこと忘れちゃったか?」

「……ううん、忘れるわけないよ」

「…………」

「孝之君」

「……そうだ」

「孝之君だよ……」

「遙…………」

「……孝之君」

「それはわかったよ。他の言葉、忘れちゃったのか?」

「だって…………だって…………孝之君がいるんだもん」

遙最高。

ヤバいな…今後遙を捨てて茜を狙い続けることなんてできるのかな、俺。

まぁやるしかないけど…辛いなー。

遙は茜の変わり様に一番驚いているようです。

そして自分も髪の毛が伸びていて。

孝之におかしくないか聞いてきました。

 1、綺麗になった。

 2、おかしくなった。

迷うことなく1。

いやしかし…今は茜を……ぐわぁぁぁぁぁ。

ええい、2だ!! はぁ…。

遙の話によると茜は部活に行ったらしいです。

孝之を避けているのでしょうか?

遙が疲れてしまったので孝之は帰ることにしました。

水月や慎二達にも会いたいという遙。

孝之はそのことを考えないといけません。

そーいや慎二は何やってんだ? 最近全く姿を見せないけど。
 
 

孝之は茜のいる白陵へと向かいます。

『私立 白陵大付属柊学園』

今気付きましたが『高校』の文字がありません。

これはやはり18禁ゲームとしての宿命か…。

だって2年生だ3年生だって言う言葉は何度も出てきてますが中学高校を表すような単語は出てきてませんもんね。

大学は出てきますがそれは年齢的にOKってことで。

この業界も難しいんですね…。

それはともかく白陵に着いた孝之。

ですが茜の姿はありません。

遙が嘘をつくはすが無いので茜が嘘をついた、と言うことになります。

一体茜はどこに…?
 
 

会社も終わった時間になったので水月に電話をしました。

ですが水月は駅のホームにいたのですが電車が来てしまいました。

「あ、ちょっと、電車来ちゃった」

「……なら、柊町の駅で会うか?」

「孝之の部屋じゃあ駄目?」

「…………わかった。そうしよう。けど、面倒じゃないか?」

「今までずっとそうしてきたよ」

「…………」

「ごめん、切るね」

ツー、ツー……。

こんなところにも今の状態が反映されてしまうようですね…。
 
 

孝之の家まで来た水月に今の遙の状態を伝えました。

また戻ってしまった状況。

今度は自分達で伝えなくちゃいけない。あんなことは繰り返しちゃいけない。

「また、茜ちゃんに言わせるわけにはいかないだろ?」

「そんなの私だってわかってる!」

「なら……」

「私を選んでくれるの?」

「…………」

「遙にごめんって言うの? それとも…………」

「……少し時間をくれ。今日、遙に会って頭の中が真っ白になった」

遙には『ごめんなさい』だけど水月にも『ごめんなさい』なんだ、とは言えない。

いやそれは『俺』の話なんだけど。

そして親友としては孝之と一緒に見舞いに行けない、と言う水月。

それは遙の幸せそうな顔を見るのが恐いから。

水月が帰った後自分の気持ちを考える孝之。

自分は果たしてどう思っているのか。

答えはでないのでした。
 
 

遙が目覚めてから5日後。どんどん遙はよくなってきていました。

慎二からかかってきた電話によると病院で水月に会った、と言います。

っつーか慎二いたの?

今回やけに影が薄かったもんで…。

慎二はどんな結論を出すにしろあまり待たせるなよ、と言って電話を切りました。

たしかにあんまり待たせては遙も水月も可哀想です。
 
 

孝之は病院へ。

あの日以来茜に会えないままの日々が続いていました。

明らかに避けられてる様子です。

そして孝之はいつの間にか遙に会いに来ていながら、茜を探している自分に気付いていました。

会えないことが苦痛になりつつある孝之。

それは愛です。間違いない。

病室をノックしても返事がありません。

ドアを開けるとそこにいたのは…茜。

しかしひたすら遙がリハビリに行っていること。

頑張っていること。

そして誉めてやってくれ、と孝之と会話する気配を見せずに噛み合わない会話をしてきます。

避けるのはやめてくれ、と孝之。

避けてなんていません、と茜。

そこに遙が帰ってきました。

車椅子に乗ってやってきた遙はまだ1人でベッドに戻ることができません。

「鳴海さん、姉さんをベッドにあげてください」

「ん、ああ、それはいいけど」

「あ、あのね」

「…………それで、これはどうすればいいんだ?」

「……お姫様だっこ」

遙が言うと異常にかわいい感じがする…。

しかし孝之はそれを茜の前でやることに抵抗を覚えます。

そして帰ると言い出す茜。

孝之と遙はそれを引き止めます。

そして遙をベッドに移すためにお姫様だっこを。

「…………」

「あんま見るな。オレも恥ずかしい」

「う、うん……ご、ごめんね」

「私が1番恥ずかしいと思うんですけど…………」

「あははっ、それは言えてるかも…………遙、下ろすぞ」

「う、うん」

「姉さん、もうちょっとそのままがいいって言ってますよ?」

「…………」

「あ、茜ぇ〜、う〜〜言わないでよ〜〜〜」

超可愛い。

そして超痛え。

楽しげにお姫様だっこを堪能するだけの孝之がムカつく。
 
 

楽しげに会話する孝之と遙。

車椅子で病院内を連れて行ってやる約束をします。

屋上や中庭。そして砂浜。

本当に楽しみにしている様子の遙。しかし…

「そのときは、茜も一緒に………………茜?」

「…………」

「……茜? 泣いてるの?」

「え? ……私…………」

自分で泣いていたことに気付いていなかった茜。

「あ……あれ?」

「茜? どうして泣いてるの?」

「…………ごめんなさい!」

「茜!」

「茜ちゃん」

部屋を飛び出していく茜。

水月が言っていた『幸せそうな遙を見るのが恐い』ということ。

それはこういうことだったのか、と孝之は悟ります。

と言うかそのくらい気付けよ。

遙は自分がひどいことでも言ったのかを悩みます。

そして茜とはうまくいなかい、と。

さっきまで普通にしゃべっていたのに、と孝之が疑問に思いますがそれは孝之がいたからなんでしょう。

孝之は帰る、と言って遙の病室を出ました。

モトコ先生から茜は階段を上がっていったと聞いて屋上へ向かう孝之。

そこに茜はいました。

そして茜に優しくしようとする孝之を拒絶します。

「お願いですから、私を困らさせないで下さい!」

「…………」

「これ以上、苦しめないで下さい!」

「……そんなつもりは」

「辛いのも苦しいのも、もうたくさんなんです!」

「…………」

「忘れさせてくれてもいいじゃないですか?」

「…………」

「どうして、あきらめようと決めたら、やさしくするんですか?」

「…………」

「こんなのひどすぎます!」

「オレはただ茜ちゃんが心配で」

「それだけなら、こんなことやめてください」

「…………」

「こんなところにいないで姉さんのそばにずっといてよ……」

「…………」

「ずるいよ…………こんなのないですよ」

「……茜ちゃん」

一歩ずつ近づいていく孝之。

茜の涙を拭ってあげるために。

「やめてください…………」

「……こうしないと届かないだろ?」

何かジゴロっぽい孝之。

「……会わないように努力したのに…………」

頬を伝う涙を指で拭ってあげる。

「…………もう忘れるなんてできないよ」

でました、ドアップ。

やっぱり茜にもあったのね。これはもう全員にあると見ていいでしょう。

体を預けてきた茜の背中にそっと両手を回す孝之。

強く抱きしめる孝之とそれを望む茜。

そして茜は自分の目の前で遙と楽しそうにしないでくれ、と言います。

それは遙を怨んでしまいそうになるから。

「あきらめるって決めたのに…………その逆になっていくだけで…………」

「…………」

「全部自分じゃないみたいになっていくのは恐いんです」

「…………」

「違う、違う、って思っているのに、この場所にいたいんです」

「…………」

「ごめんなさい…………私、何やってるんだろ」

「…………茜ちゃんはもっと我が侭になっていんじゃないのか?」

「……うぅ…………」

孝之を突き飛ばす茜。

「ごめんなさい!」

そして孝之から離れる。

「茜ちゃん!」

「思い出に、あの日の返事を聞かせてくれますか?」

「…………」

「……ごめんなさい。そんなのもうどうでもいいんだった…………それじゃあ」

走り去っていく茜。

謝らなくてはいけないのは自分なのに。

苦しまないといけないのは自分なのに。

何もできない自分。
 
 

夜、眠ることもできずに悩み続ける孝之。

やりたいことはわかっていた。

あんなに傷ついている茜を放っておくことなんてできない、と。

しかし自分がそう思うことで茜がさらに傷ついてしまう。

そして茜が聞いてきた『あの日の返事』。

今の自分は一体どう答えるつもりなのか…。

とそこでインターフォンが鳴りました。

やってきたのは酔っ払った水月。

昨日遙の見舞いに行ってきた、と孝之に報告します。

「元気な遙を見てたら…………恐くなった」

「……水月」

「あのころと同じ目で、孝之のこと見ようとしてるよ」

「…………」

「……あんな姿見せられたら…………一緒に行かなくてよかった」

「…………」

「たぶん、私は堪えられなかったから」

それを茜に対してやってしまった孝之。

「私たち…………大丈夫だよね?」

「…………」

「ね? 孝之、安心していいんだよね?」

「…………」

「どうして何も答えてくれないの?」

「悪い…………なんて言えばいいのかわからない」

「…………」

「……水月? あ、おい!」

孝之に抱きついてくるてくる水月。

ってゆーかヤバいです。

何がヤバいって俺ってば水月がウザくなってきてます。

水月の気持ちはよくわかる。不安なのはよくわかる。可哀想だと思う。

でも別れようと思っている俺にとってはただただ邪魔なだけ…。

こんなはずじゃなかったのに…最初は水月と仲良く暮らしていければそれでよかったはずなのに…。

これはこのゲームの設定のせいです。

やはり最初から彼女がいるのがいけない。

「ときメモ2」で光がやたらとときめくのがウザいのと同じです。

この先他の誰狙いでやるにしても(水月以外)、この展開・感情が続くのでしょうか…。
 

それはともかく水月を邪険に扱うなんてできるはずもない孝之。

なぜなら水月も孝之にとって大切な人だから。

こんな風に何人もを同時に大切に思ってしまえる自分の優柔不断さに憤る孝之でした。
 
 

朝起きると泊まっていった水月の姿はありません。

とりあえず病院に向かいます。

とても不安がっている遙。自分はひとりぼっちなんじゃないか、と。

遙は1人なんかじゃない、自分も毎日見舞いに来る、と孝之は遙を励まします。

孝之が話の中で思い切り『水月』と水月を呼んでましたが遙も孝之も何も感じていない様子。

誤植?

そこにモトコ先生と茜がやってきました。

孝之を借りていいか、とモトコ先生。

「心配しなくても平気よ。とって食べたりしないから」

いや、その乳首は明らかにとって食いそうですよ。

ちなみにモトコ先生の用事と言うのは借りていた4人の写真を返すだけでした。

ところが病室の前まで戻ってくると中から遙と茜の声が。

「もう…………姉さんに黙ってるなんてできない」

聞き耳を立てる孝之。

「もっともっとずるくなって行くのはイヤなの……」

「茜、何を言ってるのかわからないよ」

「私ね…………鳴海さんのことが好きなの」

「っ!」

「ずっと、ずっと好きだった。姉さんが眠っている間も…………」

「…………」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

「…………」

「もう、わからないんだよ」

自分が茜の何もわかっていなかったことに気付いた孝之。

「ごめんね。姉さん…………」

「…………」

「ごめんなさい…………」

「茜…………お願い。出て行って…………」

「ごめん…………」

「早くひとりにして…………お願いだから!」

病室をでたところで孝之と目が合った茜はそのまま走り去っていきました。

と言うか孝之、何ボーっとしてんだよ。アホか、お前は。

そして病室の中からは遙の泣き声が…。

自分はまた同じことをやったのか。

茜を追い詰め、一番辛いことを言わせてしまった。

自分を責める孝之。

「……うぅ……うぅ……孝之君…………」

聞こえてくるのは遙の泣声。

「孝之君……孝之君…………」

そして選択肢。

 1、入る

 2、出来ない

入りてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!

遙に1人じゃないんだ、と言ってやりてぇぇぇぇぇぇぇんだよ、俺は!!!!!!

でも! でもよぉ!! 茜も追いかけてやらないといけないじゃねぇかよ、こんちくしょう!!!!

ここは血涙を流しつつ2だ! 2なんだよ、こんちくしょう!!!!
 
 

屋上に上がる孝之。

ひたすら黄昏る孝之に声をかけてきたのはモトコ先生でした。

「悩んで涙を流せるのはこころがやさしい証拠よ」

暖かいモトコ先生の言葉。

それに励まされて孝之は前を見ないといけないことに気付かされます。

いつまでも立ち止まっているわけにはいかない、と。

顔を洗って遙の病室へ。

って茜追っかけないのかよ!!??
 
 

モトコ先生に返してもらった写真を遙に渡すと遙は「懐かしい」と言いました。

遙の体感時間で言えばまだ1ヶ月もたっていないはずのその写真。

遙も3年前は3年前なんだと思うとしている証拠です。

それはつまり遙は前を見ていると言うこと。

孝之は遙に謝ります。事故の日に遅刻したことを。

本当は目覚めた日にでも言うべきことだったけど、まだ事故のことを振り返るのは恐かった孝之。

これは孝之の前を向いた行為。

孝之はこれで前に進んだんだと信じてあげたいです。
 
 

翌日、病院に行くのが遅くなってしまった孝之。

原因は昨日の遙と茜の会話です。

病室には遙1人。

いつもにまして不安そうな遙。

みんな3年前と変わってしまったのがわかるだけに遙は不安なのです。

特に昨日の茜とか…。

「正直、自分がどう変わったかなんて、オレにはもうわからないくらいだからな」

「…………」

「遙はそれがわかってしまうから、つらいんだよな?」

「……ん」

「だけど、それが今の遙だから……オレが代わってあげることもできないし、わかってあげられるなんて言えない」

「…………孝之君」

「その代わり…………こうやって弱音を聞いたりはできるから」

「…………」

「ごめんな。こんなことしか言えなくて」

「ううん、ありがとう」

「…………」

「よかった…………孝之君を好きになって」

痛い。痛いですよ、これは。

星乃さんがやってきて遙をリハビリに連れて行きました。

自分で車椅子に乗ってみせた遙は確実に前向きに生きようとしています。

孝之も続かないとなぁ。
 
 

1人病室に残っていた孝之。

そこにやってきたのは…茜でした。

遙の着替えを持って誰もいない時間を見計らいつつやってきた茜。

孝之ともろくに言葉を交わそうともせずに出て行こうとする茜を孝之は引き止めます。

茜は遙に自分の気持ちを言ってしまったことで自分を責めていました。

それと同時に、それでよかったんだ、と思う自分もいる。

もう自分がわからない、と。

「わからない…………自分のことなのに、おかしいですよね?」

「そんなことないよ」

「駄目ですよ。おかしいって言ってくれないと」

「…………」

「鳴海さんだけは、おかしいって言ってくれないと駄目なんです」

「…………」

「そうじゃないと、本当にわからなくなっちゃう」

「茜ちゃんはそれでいいんだよ」

もう茜1人で悩ませるのは限界にきていました。

「そんなのウソです」

「……ウソじゃない」

「ウソにしてください!」

「後悔してないなら、それでいいだろ?」

「……鳴海さん、意味わかって言ってますか?」

「…………」

「私……こういうの慣れてないから本気にしちゃいますよ?」

「…………」

「そうしたら、もう誰にも渡さないんだから」

「…………」

「……だから、駄目ですよ。そんなこと言ったら」

ついに孝之も自分の気持ちを決める時がきたのか。

「遙? 入るよ?」

そこにノックの音と同時に聞こえてきたのは…水月の声。

水月が茜に『水月先輩』と呼ばれたことを喜んでます。

でもこれで許してもらったなんて思ってない、と水月は言います。

「昔みたいに戻れるなんて思ってないから」

「……当たり前です」

「そうだね」

「だけど…………先輩の気持ちもわかりましたから」

「茜?」

「……私も人を好きになってわかりました」

「…………」

「…………」

そこに遙が星乃さんに連れられて帰ってきました。

水月は遙にわざわざ呼び出されたんだそうです。

そして水月と2人だけで話がしたい、と遙。

孝之は茜と2人で帰ることになりました。
 
 

駅で電車を待っていると水月から電話がかかってきました。話がある、と。

茜も一緒に話がしたい、と水月の申し出に茜も一応承諾します。

場所はとりあえず孝之の部屋ということになり先に部屋で水月を待っている孝之と茜。

そして水月もやってきました。

話というのは当然あのことについてです。

茜が遙に言ったこと。

「今の遙に言うなんて、何考えてるのよ!」

「…………」

「遙、ずっと泣いちゃって…………何言ってるのかもよくわからないくらい混乱してた」

「…………」

「どうして、なんともないって顔していられるの?」

水月も鈍いって言うか何て言うか…。

「先輩はどうして怒ってるんですか?」

「っ!」

「私が姉さんに言っちゃったからですか?」

「……それは」

「きっと違いますよね? 私もそれで先輩がすごく嫌いになりましたから」

「…………」

「私が鳴海さんのことを好きになったのが許せないだけじゃないんですか?」

「今は、そんな話はしてないわよ」

「私はしてます」

「…………」

「姉さんが傷ついたのが許せないんじゃなくて、そういうことですよね?」

「話をそらさないで」

「逃げてるのは先輩のほうだよ?」

「…………」

「それに私が先に言っちゃったから、言えなくなっちゃったんですよね?」

「…………」

「私が悪いんですか?」

「…………」

「でも最初に裏切ったのは、水月先輩のほうだよ?」

「裏切ったなんて」

「好きになっちゃいけないひとを好きになったのは、私だけじゃないです!」

「…………」

「私のほうがあとだから、姉さんよりも水月先輩よりもあとだから…………いけないんですか?」

「……それは」

「だったら、水月先輩だってだめなんですよ?」

「…………」

「どうなんですか?」

「子供みたいなこと言わないの」

「…………」

「わかってても、その通りに行かないことだってあるのよ」

「……なら、私はだめでも水月先輩はいいんですか?」

「そうは言ってない…………いいとか悪いとかじゃなくて」

「話をそらさないでください」

「…………」

「私……何か間違ったこと言ってますか?」

「自分のやってることわかってるの?」

「……わかってなくて、こんなこと言えません!」

「茜!」

「っ!」

「……そんなことだと後悔するよ」

「もう、後悔ならたくさんしました」

「…………」

「ずっと我慢してきたこと。自分にウソついてきたこと…………」

「…………」

「だめなんだって言い聞かせてきたこと…………全部、後悔してます」

「……茜」

「好きなひとのことだけ見て何がいけないんですか?」

「…………」

「先輩も同じだったじゃないですか!」

「茜!」

「だから……だから…………先輩には渡しません!」

「っ!」

「渡さないんだから!!」

「茜!」

「茜ちゃん!!」

ここまで孝之見てるだけ。

この言葉(↑)が言いたくてこの長い会話を書いてきたんですが。

茜は部屋を飛び出していきました。

残された孝之も水月も自分の気持ちを整理できてません。

何か言いたそうにしながらも水月は帰っていきました。

それにしてもついに茜が吼えました。

かと言って積極的に孝之にせまってくるとは思えないし…。
 
 

翌日、孝之が病院に行くと廊下に水月の姿がありました。

遙にどんな顔して会えばいいのかわからない、と言う水月は遙に会わずに帰ろうとしています。

一緒に帰るから待ってろ、と言い残して孝之は遙の病室に入っていきました。

遙は元気が無い様子です。原因は茜のことでした。

目覚めないでいた間、世話をしていたのは茜だったということを知った遙。

そして水泳に力を入れなくてはいけないのでしばらく来られなくなってしまったと言う茜。

でもどうやら水泳には行っていないらしいと言うのです。

茜のことを心配しつつも、どんどん成長していく茜に対する自分への不安が募る遙。

孝之は必死で励ましますが遙の不安は消えるわけもありませんでした。
 
 

帰り道、遙と茜について話をする孝之ですが水月の様子が明らかに変です。

「……こんなの早く終わればいいね」

そんな水月の言葉が孝之の心に刻まれます。
 
 

孝之が白陵に行く、と言うと水月は帰っていきました。

でも去り際に残していったセリフ。

「だけどさ。茜のこと心配するのはどうして?」

「…………」

「……答えが出たら、教えてね」

「……ああ」

本当はもう答えなんて出ているのかもしれない。

水月もそのことを感じ取っているのかもしれない。

そう孝之は思います。

そして1人で白陵へ向かう孝之。

室内プールでは誰も泳いでいませんでした。

でもそこには制服姿の茜が。

茜は泳ぐ理由がもう無い、と言います。

でも好きだからやれることなんだろう、と孝之。

「これはオレの身勝手な言い分だってわかってるけど」

「…………」

「今の茜ちゃんは見ていられない」

「…………」

「そんな状態で、大切なことを忘れて欲しくない」

「…………」

「今の茜ちゃんは、きっと水月と同じだよ」

自分のことより他のことを優先させようとしている茜は水月と同じだ、と孝之は言います。

「……鳴海さん」

その時孝之は気付きました。

水月はそんなこと無かったはずだ、と。

自分で真剣に悩んで、これからの人生を考えて水泳を捨てたはずでした。

「……あのころ、鳴海さん、姉さんのことで……」

遙のことで他には何も考えていられなかったあの頃。

そして水月はそんな孝之を放っておくことができなくて。

全てを投げ打って孝之の側にいることを選んだ。

水泳の夢を捨てたのは、記録の世界がどうのこうのなんて言う理由ではなくて。

全ては孝之のため。

孝之はそのことに気付いてしまいました。

そして茜はそんな真っ直ぐな水月の感情を許すことができなかった、と語ります。

「先輩の気持ちもわかっちゃいましたから…………責められないのがつらかったんです」

孝之は自分を責めます。

やっとわかった水月の気持ち。

水月が自分にしてくれたこと。

水月が自分のために捨てたもの。

何故もっと早くそのことに気付かなかったのか。

茜がそのことに気付いたのはきっと…水月と同じ気持ちになったからなんでしょう。

「……私のこと責めてください」

「…………茜ちゃん」

「私……こんな風にならなかったら、ずっと知らなくて済んだかもしれないのに」

「…………」

「鳴海さんが苦しいの見られません!」

「…………」

「だから、私のこと思いっきり責めてください。憎んでください」

「……そんなこと」

「それで、私もあきらめられますから」

「そんなことできないよ」

「……どうしてですか?」

「泣きながらそんなこと言われても、無理に決まってるだろ?」

「あ…………」

「それに、悪いのは茜ちゃんじゃない」

「だめ! 自分を責めないでください!」

「…………」

「……うぅ…………」

「ごめんな…………オレが取り乱したから」

「…………」

「恐くなっちゃったんだな」

ただただ自分を責める孝之。

「茜ちゃんは何も悪くない…………何も悪くないから」

「……本当に?」

「ああ、だから、そんなに悲しいこと言うな」

「……うぅ…………」

「……もう大丈夫だから」

茜の頭を胸に抱く孝之でした。
 
 

夜。

水月の真実に気付いてしまった孝之は煩悶とします。

ウソをついてまで一緒にいてくれた水月にどんな顔で会えばいいのか。

一体自分はどうすればいいのか。
 

オレは……オレは…………。

…………そうするしかないのか?

ふたりがこれ以上、傷付かないように……。

これ以上……笑顔が曇っていかないように…………。

だめなんだな…………もう…………。

……終わらせることが、やさしさだってこともあるんだ…………。
 

やさしさの形はひとつじゃない。

それはモトコ先生の言葉。

1人では重過ぎる。

慎二に相談しようと電話すると慎二もちょうど連絡しようとしていた、と言います。

さっきまで水月と話をしていたらしい慎二は既に孝之の部屋に向かっている途中でした。

そして孝之の部屋に2人。

慎二は水月が水泳をやめた理由を知っていました。

何度も孝之に言おうと思ったらしいのですが、それは水月に止められていたに違いありません。

慎二が水月から受けた相談もそのことに関してでした。

つまり孝之がそれに気付いてしまいそうだ、と。

孝之が茜を見ていたら気付いてしまうのが水月にはわかっていたようです。

できれば一生気付かないままでいて欲しかったけど、それでも気が付いてよかった、と慎二は言います。

「一生、同じ場所にいるわけにはいかないだろ?」

「そうだな」

「今度こそ、あんまり待たせるなよ」

「…………」

「時間が経てば、それだけしんどい思いをするぞ」

「わかってる……つもりだ」

全部終わったら4人で酒でも飲みに行きたい、と慎二。

そうして慎二は爽やかに帰っていきました。

いい奴だ…相変わらず美味しいところ取りだな。

そしてこれで孝之も前を向くことができるのでしょう。

どんなに辛くても。

水月に伝えること。

それは…茜を選ぶ、ということなのでしょうか?
 
 

翌朝、水月に電話をする孝之。

留守電になってしまったので連絡を待つ、とメッセージを残しました。

そして遙の病室へ。

最初誰もいなかった病室ですがそのうちリハビリから遙が帰ってきました。

孝之の手を借りずにベッドに戻ろうとする遙。

やっとベッドに戻ると遙は今日は立ち上がる練習をしたんだ、と孝之に言います。

でも結局1度も立ち上がることができなかった、とも言いました。それも涙交じりの声で。

孝之と一緒に歩きたいから、孝之と一緒にやりたいことがたくさんあるから。

そんなことを言う遙を思わず抱きしめる孝之はただ「ごめん」としか言えません。

遙が何を言っても「ごめん」としか言わない孝之。

それは遙に対する謝罪。

遙には…別れを告げなくてはいけないことへの…謝罪。
 
 

翌日も来ることを告げて病室を出るとそこには茜がいました。

茜は孝之の胸に倒れこみ、握り締めた右手で孝之の胸を打ちます。

ここで声を上げたら遙に聞こえてしまうので声を殺して無くしかない茜。

自分の想い、そして遙の想い。

その全てが茜を苦しめます。

「……もうだめです」

「わかってる」

「姉さんを…………ひとりになんてしないでくださいね」

「……茜ちゃん、それは」

「…………ひとりになんてしないでくださいね」

「…………」

「何も言わないで下さい」

「…………」

「姉さんに聞こえちゃいます」

……違うんだよ。

「……うぅ…………」

「オレは……」

オレは…………もう遙のことを…………。

「……言わないでよ」

「…………」

「可哀想って思うなら、言わないでよ」

「…………」

「……うぅ……うぅ…………」

……けど……気づかせてくれたのは茜ちゃんだよ。

遙をこんな風に、抱き締めてあげることができないって…………。

茜ちゃんなんだ……。

こうやって抱き締めてあげたくなるのは…………。
 

孝之は自分の気持ちが茜に向いていることをはっきりと認識しています。

そしてそれを水月や遙に伝えなくてはいけないことも。

辛いだろうなぁ…………。
 
 

夜になっても水月から連絡は入りませんでした。

これは避けられているに違いありません。

でもこれは水月に言わなくてはならないこと。

逃げてはいけないこと。

最後の電話と決めてかけた電話もやはり留守電。

そこに翌日の12時に柊町駅へ来てくれ、とメッセージを残しておきました。

このメッセージが水月に届くことを祈りつつ電話を切る孝之。

全ては明日。

水月の誕生日。

そして遙が事故にあった日。
 
 

翌朝。

ふりしきる雨。

これでは遙のところに行っていたら水月との約束に間に合わないかもしれない。

でも遙とも約束した。明日、つまり今日も来ると。

果たして遙のところに行くべきかどうか。

 1、行く

 2、行かない

これは…行くしかないでしょう。

そして孝之は遙に全てを伝えるのが今日かもしれない、と予感します。

水月とのことも全て。

出かけようとした時に不意に目に入ってきたものがありました。

それは水月のお気に入りだったイルカのコーヒーカップ。

こいつは今回も重要な役割を果たすようですね…。

これはもうこの部屋にいちゃいけない。

そう水月に言わなければならない。

孝之はそう心に決めてまずは病院へ向かいました。
 
 

遙の病室。

この雨の中、孝之が来たことを喜ぶ遙を見て孝之の心は揺らぎます。

しかし、今言わないといけない。

ここで何も言えないと、この後水月にも何も言えなくなってしまう。

「遙…………ずっと言わないといけないって思ってたことがあるんだ」

「…………」

「だけど、もうこれ以上言わずにいたらいけないって思うから…………聞いて欲しいんだ」

「……あのね。それを聞いたら、私は笑うのかな? それとも泣いちゃうのかな?」

「……遙」

「……ごめん。いいよ、言って」

「……遙が事故にあってから、オレ…………水月と付き合ってた」

「…………」

ついに……言った。遙に伝えた。

「……やっぱり、そうだったんだ」

やっぱり、という言葉に反応する孝之。

「私も聞こうかどうかずっと悩んでた…………やっぱ知らなかったんだ」

「知らなかったって?」

「前に…………水月って呼んでたから。速瀬って名字で呼んでたのに」

アージュ様。すいません。誤植でも何でもなかったんですね。

全面的に私が悪うございました。

でもこの伏線は長くて、かつわかりづら過ぎだったと思いませんか?

そしてこんな時でも時間を気にしなければならない孝之。

「……何か用事?」

「ん…………うん」

「もう行っていいよ」

「え?」

「私はね…………こんな日にも心配で来てくれただけで十分だから」

「…………」

「それだけで十分だから」

「…………」

「ごめんは禁止だよ?」

「……わかってる」

「ほおら、急いでるんでしょ?」

「なあ、オレはまだここに来てもいいか?」

「え?」

「……今から、水月と約束してるんだ。たぶん、来てはくれないと思うけど」

「……孝之君?」

「ちゃんと、全部話しておきたいから」

「それなら、遅刻なんてしたらダメだよ」

「…………」

「早く!」

「……わかった。行くよ。じゃあ、今日はこんなでごめんな」

そう言い残して病室を出る孝之。

果たして遙の気持ちはどんなものだったのか。

それを推し測ることはできませんが…辛かったことでしょう。

くぅ…。
 
 

待ち合わせ時間を過ぎても現れない水月。

ひたすら待ち続ける孝之。

このまま水月が来ないままでは…2人は完全に終わってしまいます。

終わらせるために待っているのに矛盾があるかもしれません。

しかし…なんて言うか……。

孝之が待っているのは水月との仲を「フィニッシュ」させるためであり「ジ・エンド」ではない。

俺はそう思うんです。

そして雨も止み、日付も変わろうと言う時になって…水月は現れました。
 
 

あの丘へ向かう2人。

そこは大切な思い出の場所。

変わってしまった自分達。でもここは変わっていない。変わらないで欲しい。

そう思える場所。

もうずるずるとやってはいけない、と水月に孝之は語ります。

水月が自分にしてきてくれたことに気づいた、とも。

それでもやっていける、と水月は言いますが孝之にはそれがウソだとわかっていました。

そして孝之が差し出したもの。それは水月のお気に入り。イルカのコーヒーカップ。

「これ、お前のお気に入りだろ?」

「…………」

両手で受け取る水月。

「……もらっていいの?」

「何言ってんだよ。お前に買ってやったもんだろ?」

「……あ、そうか」

「それに……」

「…………」

「オレの部屋には、もういらないから」

水月にもついに……。

「……あ……うん…………そうだよね」

「…………」

「もういらないんだ」

「…………」

「いらないんだね」

「…………」

「あはは…………終わっちゃった」

「……水月」

「嫌いになってくれればよかったのに」

「…………」

「嫌いにしてくれればよかったのに」

「…………」

「遙のときは、もっとちゃんとやりなさいよ」

「…………」

「ほんと、どうしようもないんだから」

水月は泣いてます。

そしてその気持ちに応えるのは『何も言わないこと』。

辛いよな…。

そして遙にもこれは言わなくちゃいけない…。

正直言うのが辛いッスよ…。
 
 

家に帰ると部屋の前に誰かがいました。

それは…茜。

ずぶ濡れで、髪も張り付いてて、床に体育座りしてて、パンツ見えてて。

泣きたいのを我慢していた茜。

「やっぱり、ここにいたいです」

もう孝之に茜を1人で泣かせるなんてできなかった。

やっぱ、ここにいたいよ」

「……うん」

「……やっぱ、もうそばにいてくれないといやです」

「…………」

孝之もやっぱり『やっぱ』って言葉が気になって黙り込んだ…わけじゃないよね…。

「忘れるなんて出来るわけない!」

「わかってるから」

「姉さんを傷付けてもいいよ…………それでもいい…………」

「……うん」

「だから……だから…………」

「…………」

「好きでもいいんですよね?」

「ああ、それでいいんだよ」

「好きって言ってもいいんですよね?」

「いいんだよ」

「…………」

「なに?」

「……不安、消してください」
 
 

と言う訳で茜とヤった孝之。

もちろん茜は処女。

それも2回。

しかも2回目は「自分で入れろ」と言う指示付き。

これはこれで鬼畜な感じがしないでもないですが茜が幸せそうなのでOK。

Hの最中に互いの呼び方を『茜』『孝之さん』にしました。

いや俺がしたわけじゃないんだけど。
 
 

水月と別れてきたことを告げる孝之。

翌日、2人で遙のところに行く約束をして寝る2人。
 
 

でも翌朝、孝之は寝ている茜を起こさずに1人で遙のところへ向かいました。
 
 

果たして孝之は遙にどのように告げるのか。

そしてそれに対する遙の返答は…。


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