2001.12.29 「呆れてきた感じ」編
果たして記憶を戻した遙と孝之は一体…。
意を決した様に遙の部屋へ向かう孝之。
寝ている遙以外誰もいない病室。
孝之がたてたちょっとした物音で目覚める遙。
「孝之……君?」
「うん……オレだよ」
少し黙った後に孝之が声をかける。
「……おはよう、遙」
遙が静かに涙を流し続ける……。
孝之が大人っぽくなった、と言う遙。
「やっぱり……夢じゃないんだよね……」
「ああ……」
「でも……安心した……」
「え?」
「……孝之君は……孝之君だったから……」
痛ぇ…。
違う、違うんだよ遙、と俺。
もう孝之は変わっちゃったんだよ…。
そして水月や慎二はどうしたと聞いてきたので孝之がそれに答えると遙が不審げに言いました。
「孝之君……水月のこと、名前で呼ぶようになったんだね」
「え!!?」
お前バカ? ねぇバカ?
でも幸か不幸か遙は3年の間に起きた小さな変化としか受け取りません。
覚醒して何故かニブくなってしまった遙。
茜が部屋に入ってきましたがすぐにモトコ先生を呼びに出て行ってしまいました。
どうやら精神的には同い年になってしまった茜とは話がし辛いようです。
そしてモトコ先生が入ってきて少し話をすると孝之は帰ることに。
すっかり遙は元の遙です。話し方もいたって普通。
しかし孝之は素直に喜べません。
むしろこれからのことに頭がいっぱいの様子。
俺はマジで嬉しいけどね。
翌日、久々にバイトへ。そして夕方には病院。
すれ違ったモトコ先生は意味ありげな顔して去っていくし、茜は黙って通り過ぎて言っちゃうし。
またまたヤな予感…。
病室に入ると遙までもが含みのある顔をする始末。
流石に問いただす孝之ですが遙には答えてもらえません。
遙の話によると孝之が今何をやっているのかを誰かに聞いたようです。
白陵大に行かずフリーターをしている、と。
「昨日ね……考えたの。当たり前のように感じてたけど……どうして孝之君がここにいるのかな……って」
「え?」
「3年も経ってるんだよ? 学校も卒業して、いろんなことがあって、何もかも変わったはずなのに……」
「…………」
「いても……おかしくないよね?」
「え? ……何が?」
孝之はわかってませんがこれはおそらく「彼女」がいてもおかしくない、と言うことでしょう。
それが流石に水月であることまではわかっていないようですが。
1人で考えたいことがある、と言う遙を置いて孝之は帰りました。
それから毎日病院に通う孝之。しかし遙に元気はありません。
ぎこちない態度で迎える遙。
そして大きな原因はおそらく「見た目」であろうと孝之は考えます。
つまり遙にしてみればいきなりみんな3年後の姿になって現れたようなもの。
心は3年前のままだけど現実はわかっている。そのギャップ故に。
解決するのは時間しかない、とモトコ先生。
そんな時モトコ先生から、6時に病院に来てくれ、と言う妙な電話がきました。
遙の頼みだと言います。何故わざわざ時間を指定してきたのか?
6時ちょっと前に医局へいくとそこにいたのは何とモトコ先生と水月。
しかも水月も毎日のように見舞いに来ていたのだと言います。
そんなことは一言も言っていなかった遙。
モトコ先生は2人を同じ時間に呼んで欲しい、と頼まれたんだそうです。
孝之と水月、2人で遙の病室へ。
どうしても3人で話がしたかった、と言う遙。
ついに…ついにその時が来たのか…?
「…………孝之君と水月は……付き合ってるんだよね?」
いきなりそう来るか!?
顔を見合わせる孝之と水月。
誰かに聞いた訳でもなく話しててわかった、と言う遙。
「あっ! 別にね……もうしそうだからって、責めようとか、怒ろうとかそういうんじゃなくて……えっとええっと……」
「…………」
「そ、そう! 私たち友達じゃないっ! この3年で何が起きたのか……知りたがったって……だめ?」
決して暗い口調じゃない。むしろ明るいぐらいの口調。
でも何も言えない2人。牽制しあう3人。
黙り込む孝之。
今をそれを言うべき時なのかどうか。
無理だよ。
今は無理だよ。
「……ごめんなさい。そんな風に悩まれると……思ってなかったの……」
「遙……」
「何も言わなくて……いいよ。もう十分わかったから。あはは……覚悟してたんだけどな……ちょっと……」
段々涙声になっていく遙。
勘弁してくれ、マジで。
「……ごめん……ひとりに……なりたい……」
そのまま足早に病院をでる孝之。
やり場の無い怒りが込み上げてくる。
「遙のこと……考えたら言えないよね……」
責められると思っていたところに意外な言葉。
「あそこで私たちのこと言っちゃったら、遙はどうなるのかって……考えちゃうと思うよ……」
「…………」
「ねえ? 聞いていい? ……それだけなの?」
「え?」
「そう言う心配だけなの? タイミング見てるだけなの?」
「…………」
「……どうしてちゃんと言ってくれなかったのか……孝之の口から理由が知りたい」
「…………」
「それも言えないの? 私にタイミングなんか必要ないよね? けど……教えてはもらえないの?」
穏やかな口調。でもその言葉は確実に孝之を責め、心の奥底にあるものを引き出そうししていた。
「……結局孝之は……遙のことが好きなんだよね……」
「!?」
この2年間は遙のことに目を瞑り、心の中の一番大きな物を見て見ぬフリをしていただけだ、と水月。
「……別れよう?」
「……え?」
ついに…この言葉が…。辛い…。
「私がいる限り、孝之が苦しみ続けるって思えば……私も耐えられないよ……」
「水月……」
「邪魔者はさっさと去るから、そしてらとっとと病室引き返して、遙のこと抱きしめてあげて」
「水月」
「……じゃ」
「待て水月っっ!!」
思わず手を伸ばす孝之。
「……私、孝之の何?」
水月の瞳から流れる大粒の涙。
そして孝之の手を振り切って走り去る水月。
言うべきことはわかっていた。でも何も言えなかった。
目の前から大切なものが消えてしまった。
手を伸ばせば捕まえることはできるが、そのためには他の大切なものを諦めなければならない。
掴んでおける大切なものは……たったひとつ。
過去の夢。
付き合いだした当初の孝之と水月。
まだ水月のことを「速瀬」と呼んでいるため名前表示も「速瀬」です。
水族館でデートした後乗った電車で昔の知り合いに会った2人。
水月を紹介するときに名前で紹介する孝之。
そのことを喜ぶ水月。
同時に変化する名前表示。「速瀬」から「水月」へ。非常に分かりやすいこだわりです。
水族館で買ったイルカとタコのマグカップは2つとも孝之の部屋に置かれることになりました。
きっと水月とならやっていける。そう思う孝之。
目覚めて夢を思い返しながら改めて思う孝之。
…………オレ、水月と別れた……んだな。
あの…どう考えてもこれ…ハッピーエンドじゃありませんよね?
いや、まだ当然終わってませんがどうしてもハッピーな終わり方が浮かんでこないです。
どっちと付き合うことになっても、残された方は救われない。きつい…。
1人で苦しむ孝之。
わからない。
これでよかったのか。
わからない。
何でこんな自分のことを遙も水月も好きだと言ってくれるのか。
それは俺にもわかりません。
ふと携帯が鳴りました。切れてしまいましたが相手は…慎二。
そして自分に友達がいないことに気付く孝之。
全てを拒絶して…それでも見守ってくれたのは慎二と水月だけだったのです。
自分の気持ちを打ち明けられるのは慎二しかいない、と電話をかけますが何故かつながりません。
何度かけても留守録になってしまいます。
何故? 孝之と水月のことを聞いて呆れたとか? でもあっちから電話してくれたばかりだしな…。わからん。
なんか……ひとりだな、オレ。
翌日。バイトでも調子のでない孝之。
たまたま帰り道で一緒になったまゆに例え話で質問をします。
寝たきりの昔の彼(つまり遙)と慰めてくれた今の彼(つまり水月)、どっちをとるか、と。
まゆは昔の方を選択しました。
きっと自分はその人が好きで、慰めてくれた人はその人と比べてるんだ、と。
そしてもう1つ質問を。
「新しい彼がね、オマエのために別れてやるよ! って泣きながら走っていったら……どうする?」
「それは大変ですねぇ……謝りますよ」
「けど……玉野さんはそいつと別れるんだろ?」
「でもぉ……そういうの……嫌じゃないですか。ちゃんとお別れしないと……」
まゆの話を真に受けて真剣に考えてる自分に焦る孝之ですが多少元気は出たようです。
駅でまゆと別れて電車に。
慎二ならどう言うか。
そう思って電話をしてみますが…留守電。
気付いたら足が向いていた場所…病院。
遙の病室には遙しかいませんでした。椅子に座るもぎこちない孝之。
「凄く……困った顔してる……」
「そうかも……な」
「この間のこと……気にしてるの?」
「…………」
「あ……あははっ……そんなの全然なのに……」
「……遙……」
「うんとね……その……うすうすそうじゃないかなあ……なんて思ってたの……」
そして2人にはずっと友達でいて欲しいと言うつもりだった、と遙。
「……来てくれて……ありがとう。もう、二度と会えないかと……思ってた……」
「遙……」
抱きしめたい衝動を抑える孝之。
「あはっ! いきなり3年も経ってて……やっぱり……怖いんだあ……誰を頼っていいのか……全然わかんなくって……」
「遙……心配するな……誰も……離れてなんかいないさ。どんなに時間が経ったって、みんな仲間だ」
「うん……うん……」
泣きながら頷く遙。
しかし孝之はその大切な「仲間」を失おうとしています。
そして孝之と水月の仲を認める遙。
しかし肝心の2人は…。
しかも孝之は水月との仲を取り戻すより遙に会いたい、と思うようになってました。
これは同情なのか。わからない。
翌日、遙の病室に行くとモトコ先生と星野看護婦もいました。
どうやら車椅子の説明をしていたようです。
天川さんがいないことに気付いた孝之。なんと病院を辞めたんだそうな。
きっとそこにもドラマがあったに違いない。俺が行くまで待っていてください。次の次の次の…ぐらいにはきっと。
孝之も車椅子の説明を受けます。
お姫様だっこだなんだとひやかす星野さん。
2人が出て行った後には遙を2人きり。
さっそくお姫様だっこでもして車椅子に乗ってみようと言う孝之。ってゆーかやれ。
「ええっっ!!? だだだだだだめっっっ!!!」
「何でよ?」
「だだだだだだだってぇ……私……重いしぃ……」
「はあ? 心にもないこと、言うんじゃないよ?」
「は、恥ずかしいしぃ……」
「照れるな照れるな!」
「……水月に……悪いし……」
「…………」
やっぱりそれか…。
「ね? 孝之君は水月の彼で、私はお友達なんだからぁ……そういうのは誤解されちゃうよ?」
「…………」
無理をしているのか、本当にそう思っているのか…わからない。
ちゃんと今の水月との状態を言うべきかどうか。
1、言おう
2、まだ黙っていよう
…きっ、厳しい…。
どっちだ? どっちが正解だ?
遙狙いの俺としては素直に1か?
しかしまだ早急かも…くっ、これじゃ孝之と同じじゃないか、俺!
どうする…どうする……。
ここは…言おう!!
意を決して(俺が)、言おうと決断しまさに言葉が出ようとしたその瞬間!
部屋い入ってきたのは茜でした。
「あ……」
「あ……」
「お帰り……」
アイスを買ってきた茜。
2個しかないアイスを孝之にもあげようとする茜ですが孝之は強引に茜を座らせます。
そして自分は自分の分を買いにいくふりをして部屋の外から様子をうかがう孝之。
これで2人の間のわだかまりが少しでもなくなってくれたら……。
思惑通り楽しげな雰囲気になる2人。孝之の考えと隠れてたことはバレバレでしたが。
和やかな雰囲気。
っつーか結局言おうとしなくても同じだったってこと? 言わずじまいだし…。
翌日。
久々登場のメガネっ娘看護婦・穂村さんに会った孝之。
一度も名前出てきてないのに名前表示が「愛美」になってます。基準がよくわからん。
穂村さんから病院の裏は海岸になっていることを聞いた孝之は遙に海に行きたいかどうかを尋ねます。
行きたいという遙を連れ出そうとする孝之。
そんな孝之を遙は止めようとします。
「んもう……そんなこと言って……ダメだってば、水月に怒られるよ」
「え? 水月?」
「そう。水月に知られたら、孝之君絶対怒られるよ?」
しかし孝之はそんなこと聞きません。
それとも水月のことは心から振り切ったのか。
海岸に車椅子を置いて海岸線を歩く2人。
とは言っても遙は孝之に抱きかかえられたまま。
一緒に歩くか抱っこするかを選ぶ自由すらない2人。
しかし孝之は自分を振り返り憤りを感じます。
3年間待ち続ける、待ち続けない、を選ぶ自由。
目覚めた遙の見舞いに来る、来ない、を選ぶ自由。
そして遙か、水月か、どちらかを選ぶ自由。
そんな自由を与えられた自分が一体に何をやってきたのか。
砂浜に座る2人。
「3年って、短いんだか長いんだか……わからないよね」
「……どうして?」
「景色を見てるとね……孝之君が言った通り、大して変わってないのかも……って思うの」
「…………」
「でもね、そこに暮らしてる人の気持ちを考えてみると……決して短くないよね……」
「遙……?」
「私たち、人間だよね……建物じゃないよね……」
「…………」
「私たちにとって3年は……長いと思うんだ……」
決して孝之の方を見ようとしない遙。
「だからね……水月のこと……」
「…………」
「今度からね、お見舞いに来てくれるときは……水月と一緒に来て欲しいの」
「遙……」
「そのせいで毎日来られなくてもいい。ううん、今だってそれは望んでるわけじゃないけど……」
「…………」
「望んでないっていうか……それは嬉しいけど……な、何て言ったら……いいのかな……その……」
「遙……」
「ふたりで会うのは良くないって言うか……いくら友達でも、私たちは……」
「遙」
「私たちは……あ……!?」
遙を抱き寄せてキスをする孝之。
遙は泣いていた。それを見てさらに遙を抱き寄せる。
「ん…………だめ……」
孝之は身体を離して遙を見つめる。
「どうして……こんなこと………………」
その時向こうからやってきた穂村さんに背負われて病院に帰る遙。
孝之はその後ろを着いていく。
どうしてキスをしたのか。どうして抱きしめたのか。
その答えは既にハッキリしていました。
俺はとっくに決めてましたが。
モトコ先生に怒られる孝之。そりゃいきなり海になんて連れ出したんだから当然。
茜も呆れ顔。
モトコ先生も出て行った後、帰ろうとした孝之を遙が引き止めます。
気をつかって部屋からでていく茜。
椅子に腰掛けなおす孝之。
「どうして……あんなことしたの?」
「…………」
「孝之君には……水月がいるじゃない。私はもう……いいんだから」
「違う、そうじゃない」
「同情なら……やめて欲しい……」
「そうじゃないんだっっ!! そうじゃ……」
「じゃあ……」
「愛してる」
遙には3年前も使ったことのない言葉。ついに言った言葉。
「オレ……今でもオマエのこと……愛してる。忘れることなんてできないよ……」
「孝之……君?」
「3年待った……なんてことは言えない。オレは待ってなかったから。そうさ、オレは水月と付き合ってて……オマエのことを封印しようとしてた」
「…………」
「オマエはもう死んだんだって……目を覚ますことはないんだって……そうやって無理矢理自分を納得させてたんだ」
「…………」
「……気が狂いそうになったことだってある。死のうと思ったこともある。そうやって自分を納得させなきゃ……生きていけなかったんだ……」
「孝之君……」
「そんな時、水月がいつも傍にいてくれて。ぽっかり開いた心にさ……あいつがスッ……と入ってくれたんだ」
涙声の孝之。
「隠したってしょうがない。オレは水月のことを……愛したよ。オマエよりもたくさんの時間を過ごして……理解しあって……」
「…………」
「でもオマエはここにいるんだよ! 目の前にいて、オレのこと見てるだろ? 死んでもないし、眠りっぱなしでもないだろ!?」
「…………」
「何言われても仕方ないよ……でも……オレ駄目だ。そのことに目をつぶって、水月と一緒には……いられない」
「そんなっ! じゃあ……水月は?」
「……はっきり言うよ。オレが…………ずっと傍に……いたいのは……遙だって」
「!?」
「……遙……愛してる」
ただ泣いている遙。その時が過ぎるのを待つ孝之。
不安だった、と語る遙。
でも孝之と水月のことに気付き、夜も眠れなかった。
「ホントは私も……孝之君とずっと一緒にいたかった……いたかったんだからああっっ!! うわあああ……」
立ち上がって遙を抱きしめる孝之。
遙……遙……遙……遙……
「オレだって……オレだって……この日をどんなに待ったか……やっぱりオレは……待ってたんだよ……この日を待ってた……」
「孝之君……孝之君……」
「水月にはちゃんと言うから……わかってもらうから。全部言うから。ずっと傍に……いて欲しい。オマエに……いて欲しい」
「……うん……うん……」
抱き合ったまましばらく泣いている2人。
でも何か…素直に喜べません。
これで2人は幸せになるかもしれないけど水月は明らかにダメじゃないですか。
確かに俺の望んだ結果になりましたけど…スッキリしません。
こうなったら水月は慎二と付き合ってもらって…ってそれもなんかダメだなぁ。
確かに慎二はいいヤツだけど水月を渡す、ってのはちょっと…。まぁ単なるわがままなんですが。
「……あ、茜……遅いね」
「あ、オレ、今日は…………帰るよ」
「…………うん」
「それじゃ……」
「……うん」
「…………明日も来るから」
「うん」
嬉しそうな声。それは俺もうれしいんだけど…。
部屋の外には不自然に距離をおいたところに茜が。
2人の会話を聞いていた茜。
「……あの人と……別れるんですか?」
「そのつもりだよ。今夜にでも電話してみようかと思ってる」
「…………」
「色々迷惑かけたけど……」
「…………」
「そのつもりだから……茜ちゃんも……」
「え?」
「せめて水月のこと……『あの人』って呼ぶのは許してやって欲しいんだ」
「…………」
「それだけでも頼むよ。それじゃ」
そう言い残して去っていく孝之。
水月に電話しようとした孝之ですがうまくつながりません。
しばらくして慎二から電話がかかってきました。どうやら酔っている様子。
駅前まで来てくれ、と慎二。
ってゆーか別に慎二は孝之に愛想尽かしてた訳じゃなかったのか。
てっきり事情を知って(水月と別れた)孝之に愛想でも尽かしてたのかと思ってました。
駅前に着くとそこにいたのは慎二と…完全に酔いつぶれた潰れた水月。
何度止めようとしても暴れて酒を飲んでいたらしい。
何とか水月の家まで連れて帰ろうとする孝之の手を水月は払います。
孝之の言うことは聞かない、と言う水月。
そして水月がここまで荒れている理由を慎二も知っている様子です。
つまり孝之に別れを告げた、と言うことを。
そしてあろうことか慎二に甘え始める水月。
「…………何さ、何で慎二君がおどおどしてんのさ。
もう私は孝之の女でも何でもないんだから、いくら抱いたっていいじゃない……
ふふ……慎二君上手だったよ……」
なにぃ!?
いきなり俺がさっき言った通りの展開? いやしかし…でも…。
力無く笑って地面に座り込む水月。
語気も荒く慎二を問い詰める孝之。
でも慎二は淡々と認めました。
「オレは速瀬を……抱いた」
口論になる2人。
「そうやって独占欲むき出しもいいけどなあ、それに見合ったこと……オマエやってるのか!?」
「う……うるせぇっっ!!」
衝動的に振り上げた拳を慎二めがけて振り下ろす孝之。
しかしそれはいきなり割り込んできた水月の二の腕に当たる。
吹っ飛ぶ水月。
うつぶしたまま泣き出す水月…苦しい…。
「な……何で……何でこんな奴と!! 何で慎二となんかっっ!!!」
胸ぐらをつかまれる孝之。
「こんな奴? ……言ってくれるな孝之。オマエがオレをどういう目で見ていたか……よくわかったよ」
激しく孝之をなじる慎二。
そんなつもりじゃなかった、と何も言えなくなる孝之。
そして慎二が手を離しました。
「……すまない」
「…………」
「けど……もしオレが突っぱねたら……速瀬は誰か他の奴と……ってそう思った」
「!? そんなことが……」
「あるって思えたんだよ。あの速瀬を見てないオマエには、どうやっても信じられないと思うけどな……」
「…………」
「でも……どんな理由があっても、あんなことはするべきじゃなかった……それは……わかってる。オレも矛盾してる」
っつーか本当にヤっちゃったんですか?
てっきり酔っ払いの腹いせと売り言葉に買い言葉だと思ってた…。何気にショック。
「けど、オレを殴り倒すより先に、速瀬の気持ちをもう一回考えてやってくれないか?」
「…………」
そう言って去っていく慎二。
この間水月は吹っ飛んだまま。
孝之は水月を自分の家に連れていきました。
それにしても…まだまだ泥沼ですか?
せっかく『決まった!!』って思ったのに…。
部屋に来てもなかなか入ろうとしない水月。
強引に入れて風呂に入らせる孝之。
自分は水月に同情してるんだ、と言い聞かせる。
あきらかに決心が鈍る孝之。
確かにこんな傷ついた水月を見たら…気持ちはわかります。
風呂から上がって床に寝ていた水月をベッドに寝させようとしますが水月はそれを拒もうとします。
自分は汚(けが)れているから、と。
自分を責め続ける水月。そして…。
「お願い……抱いて……」
やっぱそうなるのか…。
悩む孝之。
「このままじゃ……おかしくなっちゃうよ……」
悩みに悩みつづける孝之。
水月と過ごしてきた時間は遙への気持ち、遙への言葉だけではねつけられるようなものじゃなかった。
……もう少しだけ時間をくれ、遙……
…………………………………………………………………………はぁ。
結局コレかよ。
水月は孝之何をしてもいいと言います。
飲んでもいい、顔にかけてもいい、中に出してもいい、お尻でもいい。
非常に魅力的なお言葉です。
「こんな身体だもん……もう孝之になら……壊されてもいいよ……好きに使って……」
慎二がヒドい言われようですが水月にとっては孝之以外の人間に体を預けた時点で相手が誰でも同じってことか。
そして2択。
1、いいんだな?
2、馬鹿野郎
1を選びたいのはやまやまです。
実生活では確実にそっちです。
しかし。今の俺(=孝之)は違います。
「馬鹿野郎……」
そう言って水月の体を離し…ません。
結局ヤっちゃいました。マジかよ…。
夜。
水月をベッドで寝ている孝之。
水月と別れる覚悟を決めて、そう遙に伝えたばかりでこんなことに。
そんな自分に自己嫌悪を感じない孝之。そのことに自己嫌悪を感じる孝之。
…………水月の体温が心地よい。
…じゃねぇぇぇぇぇぇぇんだよ!!!(by キタカタ先生)
確かに心地よいだろうさ!! うらやましいさ!!
でもそうじゃねぇだろ!!??
てめぇ!!! 遙はどうすんだ!!!
確かに水月のことはわかる!!!
しかし!!! しかしだなぁ……。
はぁ…。
孝之にやや呆れがち。希代の優柔不断っぷりです。
むしろムカついてきたかも。
今日はもう寝る!!