2002.3.27 「そして最終章へ……」編
『今を生きる』編、続きです。
加奈が死んでからしばらくして。
加奈の残した日記をパソコンに打ち込む作業を続ける隆道。
そこに綴られていたのは加奈の『死』に対する気持ちとそれを迎え入れる気持ち。
『願わくば、明日のわたしが、今日のわたしより優れた人間でありますように……。』
『今日、海を見た。もう恐くない。』
思うがままに慟哭する隆道。
その涙が加奈への見送りの涙であり、自分への区切り・けじめの涙。
願わくば、明日の俺が、
今日の俺より優れた人間でありますように。
その後香奈の手術は成功。
隆道は無事大学に復学しました。
自分の目指す道を見つけた隆道は非常に前向きに生きています。
そんな秋のある日のこと。
大学構内で壁際によりかかっている人物が隆道の視界に止まりました。
「……」
その人物はジーンズを履いて、校舎に背をつけ読書にふけっています。
その読んでいる本は……
「……」
通り過ぎようと思った隆道。今まではそうしてきたらしいのです。
でも最近はそうすることさえ『逃げ』であると隆道は思うようになっていました。
毛嫌いしているわけではなく、むしろ悪いのは自分の方だから『その人物』の顔を見るのが辛かったのです。
まるで自分の罪を突きつけられているようで。
そこまで言えば『その人物』が誰だかわかっていただけたと思います。
本からゆっくりと顔をあげたその女性。
静寂を宿したような表情。
こころなしか、前より化粧が大人しくなっているようで、そっちの方が『彼女』にはよく似合っていると思いつつもそれを告げることはしない隆道。
「……よお」
「うん」
当然その女性は夕美。
まだ正面から夕美の顔を見ることができず、それ以降何も言えないでいる隆道に夕美が口を開きました。
「これ、読んだよ」
夕美がそう言って顔の前に掲げたのは『命を見つめて』と題された本。
それは加奈の日記を隆道がまとめたものでした。
移植コーディネーターの薦め、叔父と香奈の承諾、そして臓器移植推進のために発刊してもらうことにした本。
最初は一部の人間にだけ話題となっていたその本も、口コミやインターネットで話題になったため、今では第五刷まで増刷されているとのこと。
でも隆道は印税の全てを医療関係に寄付していました。加奈のことで商売なんてしたくなかったためです。
「わたしのことも……ちょっと出てたね」
「……」
「いろんなことがあったんだね……隆道君」
「……大学は?」
「行ってるよ、ちゃんと。私、弁護士になるんだもん」
「そうか」
弁護士、と言う瞬間の夕美の瞳はほんの少しだけ誇りがこもっていました。
そんな話は一切出てきてなかったと思いますが。
「……あー、よかった、やっと口きいてもらえた」
「手厳しいな……自分のことで精一杯だった、なんて言い訳になるか?」
「ごめん、そういう意味じゃなくて。私もいいかげん未練がましいし」
「夕美は悪くないよ。悪いのは俺だ」
「うん……私もずっと恨んでた」
唐突にそんなことを切り出してくるのは夕美の得意技でした。そんな夕美の語り口を懐かしい、と思える隆道。
「呪ってやろうかって思った」
「……」
「でも、時間が経つとね、ちょっと冷静に考えられた。あとは顔を見て考えようって……もうやって感度も様子見に来たんだけど……」
「……」
「なんか、葛藤してるみたいだったから……わたしの方からは話しかけないでいたわけ」
「……」
今まで構内で夕美を見かけても素通りしてきた隆道。そんな隆道の気持ちを夕美は全てわかっていたのでしょう。
「で、この本を読んで……最近かな。やっと納得できたのは」
「納得?」
「まあ、許してやってもいいかなって」
それは隆道にとっては思いも寄らない言葉でした。
「許して……くれるのか?」
「……こんなの読まされて、まだ恨みを捨てられなかったら……私、鬼ばばだよ」
そう言いながら夕美は目元をこすります。
「知らなかった……隆道君と加奈ちゃんが、こんな苦しい想いをしてたなんて」
「夕美……」
「だから、私が口出しする余地なんてなかった……それが、わかったから」
「ありがとう、夕美」
隆道には夕美にひどいことをしたと言う自覚がありました。
義妹と彼女を天秤にかけて、義妹を選んで、捨てて……。
隆道は許してもらえるとは思ってなかったのです。
「……ありがとう」
2度目の感謝の言葉ににっこりと満面の笑みを浮かべる夕美。それは懐かしい、夕美の笑み。
車の免許を取った、と言う夕美は隆道を送ってくれると言い出しました。
隆道の返事も待たずに隆道の腕を引いて歩き出す夕美。
でも腕にかかる力はほんの少しで、それは隆道に選択の余地を与えてくれているかのよう。
昔の夕美にはなかった気遣い(失礼な)。
「そういえば、鹿島先生にも会ってないな……元気か?」
「時間ある?」
「は?」
「今日ね、病院でね、亡くなった患者さんたちの思い出会があるの」
「思い出会か……そんな葉書がきていたなあ」
行く予定はなかったけど、先生や美樹さんの顔が見たくなってきた隆道。
自分が元気なところを見て欲しいという顕示欲もあります。
「みんなで紅葉狩り」
その一言で隆道の今日の予定は決定。
「じゃあ……行くか」
「うん!」
そして共に歩き出す2人。
死を見つけることで、はじめてわかることもある。
今、俺の目に映る世界は、確実に変わりつつある。
加奈とととも生きて、学んだことは、その意思とともに俺の心にある。
『昨日はできなかったことが、今日はできたりするんだよ』
それは加奈の言葉でした。
その言葉を胸に日々を生きている隆道。
だから……おまえの死は、悲しい終わりなんかじゃなかったよ。
なあ、そうだろう、加奈?
[ Fin ]
と言う訳で『ED6 知的ルート第三エンド 今を生きる』でした。
エンディングのラスト5分以外はほぼ完全に『ED5 おもいで』と同じでした。
つまり夕美が隆道を許すかどうか、だけの違いです。
そして当然俺がどちらを好きかと言うと『今を生きる』です。
でも『おもいで』もいいんですよ、隆道がすごい前向きで。
ただ『今を生きる』はそれに加えて夕美もいますからねぇ……。
と言う訳で感想は殆ど『おもいで』と同じなので言うべき事がありません。
ただ、わかったことがあります。
『おもいで』にも出てきていた通りすがりの学生が読んでいた『命の見つめて』と言う本。
これはやはり加奈絡みの本でした。と言うより加奈の残した日記そのものでした。
『おもいで』でこのことを一切隆道が口にしなかったのはむしろ不自然だったのでは……。
とにかく、これによって臓器移植が推進されることを祈っています。
と言いますか。
「加奈」をプレイしたことによってドナー登録をした人って結構いるんじゃありませんか?
げんに俺も今、登録を本気で考えてますからね。
どこにいけばドナーカードって手に入るんだろう……。
何はともあれ、これで6つのエンディングのうち5つを制覇いたしました。
残るは1つ!!
これで加奈が死んだら暴れるぞ!!
それではスタート!!
と言ってもこれは『知的じゃない加奈』を目指した時と選択肢と展開がほとんど同じです。
加奈を守ったハイキング。
夕美との辛い初恋。そして失恋。
今回『夕美ちゃん人形』は捨て……捨て……捨られねぇ!!
駄目だぁ。夕美の想いを知ってると辛く当たれないですよ……。
まぁ今回目指すエンディングには関係ないみたいだからいいか。
とすいません。こんな中途半端なところで今日はお終いです。
最近ゲームの時間減ってるな……。