2002.3.25 「ヤバい……ヤバいってマジで」編


 

さて。

頭を夕美から加奈に切り替えましょう。あんまり伝わってないかもしれませんが、俺は加奈も好きなんですよ。

 

前回の『夕美エンド』の途中データをロードします。

隆道が加奈への移植を申し出て両親に反対されたシーンからです。

  夕美に頼る

  自力で考える

前回は夕美に頼りましたが、今回は自力で考えてみます。

どう考えたところで結果として加奈が生き残るとは思えないのですが……。

 

隆道も夕美も、何も話さないまま過ぎていくだけの時間。やがて。

「……行くね」

「……」

「別人みたい」

「……」

「そんな藤堂君……見たくなかったな」

「……」

「そんなに大切なんだね……あの子のこと……」

「……」

「……」

「……」

「……さよなら」

そうして夕美は去っていきました。

「……ごめんな」

もういなくなってしまった夕美に謝罪する隆道でした。

 

結局今回も隆道が移植を諦めないため、両親が断念した形で移植が行われることになりました。

「ミスマッチワン……か」

あれ?

隆道と加奈のHLA型はミスマッチゼロじゃなかったの?

選択肢によってそんな遺伝子レベルの変化が起こるなんて……愛の力は偉大だ。

……じゃなくて。そりゃ無いんじゃない? 結局確率下がってるし。

そして移植は行われました。

麻酔により、意識の無い隆道が見た夢は前回と同じ。

大学の構内で元気な姿を見せる『』付きの加奈。

手術は終わりました。

 

3週間後。

加奈はまだ徹底的な管理体制の中にいました。見舞いすらままならないほどの。

そして4週間後……7週間後……8週間後……。

 

加奈は亡くなりました。

 

でもそれを理解しようとしない隆道。

ただ加奈が生きていると信じて、いや信じ込もうとして廃人のように暮らす毎日です。

そしてそこから隆道を救ったのは夕美……ってつまり『夕美エンド』に到達。

 

ぶっちゃけた話、あの選択肢は関係無いようです。

と言う訳で次なる選択肢へと参りましょう。

加奈と隆道が抱き合って、キスして、ナニに突入しようとした時に夕美が現れたシーン。

あそこで夕美にどう言うかは明らかに夕美との関係に影響を与えるはず。

つまりはエンディングにも影響がある……はず。

と言う訳でそこからスタート。

 

妹を抱いた身体で自分を抱いたのか、と言う夕美に隆道が何て答えるか。

  俺は加奈が好きなんだ

  そんなことはしない

前回は後者でした。今回は前者で。夕美……すまん。

 

「……っ!?」

口を押さえて一歩下がる夕美。その視線は理解できないものを見る視線。

「妹だけど……好きなんだ」

「嘘……そんなのって……」

「ごめん」

「やだ、やだやだ……不潔……不潔じゃない……」

「そうだな。そうかも知れない。けど、俺は加奈のことが……」

「いやっ、聞きたくないっ!」

そう言って走夕美はり去っていきました。グッバイ夕美……。

隆道はと言うと憂鬱ながらも、どこかすっきりとした気持ちで加奈の髪を撫でていました。

…………なんか納得いきませんが。

「お兄ちゃん……」

「いいんだ、これで」

「わたしでいいの? だって、夕美さんの方がキレイで……」

「加奈の方が……」

言い淀む隆道。それは最後の理性でした。それでも……

「……好きみたいだ」

「嘘……みたい……」

抱き合う2人。もはやそれは兄妹の抱擁ではありません。

「わたし……今死んでもいい……」

「死ぬなよ……」

「だって……顔が熱くて……死にそうなくらい熱くて……。……胸も……あ、ああぁぁぁ、痛い……痛いよ……いた……」

不自然に強ばる加奈の身体。ここだけ見てると隆道が痛めつけたみたいですが、もちろんこれは……。

「加奈?」

「……おに……ちゃ……」

そして痙攣しだした加奈は、そのまま病院へと戻ることになったのでした。

 

夕美をどん底まで叩き落しておきながら、妙にスッキリした感じの隆道にどうも納得できませんが、これも仕方ないことなんでしょう。

加奈への気持ちは最早ごまかせないところまできていたのです。

でも加奈の運命は果たして……。

 

悪化する加奈の病状。待つのは『死』のみ。

そこで隆道が腎臓移植を申し出ますが両親の反対に遭います。

理由は……加奈とは血の繋がりが無いから。

両親の口から告げられた衝撃の事実。

中庭でぼんやりしていた隆道のところに現れましたのは夕美。

父親である加奈の主治医の鹿島医師から聞いて夕美は全てを知っていました。

よくよく考えると患者のプライバシーを何だと思ってるんでしょうか、鹿島医師は。

  夕美に頼る

  自力で考える

むぅ。とりあえず『夕美エンド』の時とは違う選択肢でいきますか。自力で考える方向で。

さっきと同じ展開で夕美は去っていきました。

 

結局、移植は行われることに。

決して移植を諦めない隆道に両親が折れる形で。

HLA型は今回もミスマッチワン。

『ミスマッチゼロ』は夕美の隆道に対する愛の力なのでしょうか。

そして移植手術は始まりました。

麻酔の効く中、隆道が見た夢は大学構内で元気な姿を見せる加奈との邂逅。

手術は……終わりました。

 

 

 

 

夏。

 

 

 

 

……はい?

い、いきなりですか!?

 

峠の坂道を自転車で登る隆道。

一見元気な隆道ですが、『あのつらい出来事』の傷跡からは、未だに立ち直れていないとのこと。

『つらい出来事』……それは加奈のことに違いありません。やっぱり死んじゃったのか……。

隆道の自転車の隣に自動車がピタリとつけてきました。ウィンドウから飛び出してきた顔は馴染みの顔。

「はろー」

「なんだ、夕美か……」

「どこ行くの?」

「ちょっとな……」

「墓参りでしょ」

言葉を濁す隆道ですが、あっさり看破してしまう夕美。

「乗っていけば?」

「いや、いい」

「……別に怒ったりしないってば。送ってあげるだけ」

隆道と夕美は微妙な関係が続いていました。

恋人ではなく、でも他人ではない。何となく意識している反面、十分に距離を取った関係。

諦めが悪く積極的な夕美に対して、および腰な隆道でした。

だけど今はこれでいい、と隆道は思います。

将来、この関係に変化が生じることがあるとしても、今の自分にはこれが精一杯だから。

そんな予感があるのだ、と。

「やっぱり、遠慮しておく」

「……そ」

あからさまに残念そうな顔をする夕美ですが、すぐにぱっと表情を輝かせると

「ちょっと待ってて!」

そう言って車を発進させました。

 

加奈の墓に手を合わせる2人。

この後一緒にお昼でもどうか、と隆道を夕美は誘ってきました。

距離をとっているつもりでも、最近の夕美はその距離を詰めに入っているようで、こうして誘ってくる回数も多くなっているそうです。

さっきも車を路肩に停めて、隆道と一緒に歩いてここまで同行してきたぐらいですから。

あんな終わり方をしたにも関わらず夕美は隆道を許してくれていたのです。

でも隆道はと言うと、依然として整理がついていないまま。

結局夕美に押し切られるような形で誘いに乗ることになりますが、もう少しここに残る、と隆道は言いました。

隆道自身も少しずつではありますが変わってきていたのです。

「ちょっとは笑えるようになったんだ」

「……時間、経ってるしな」

「時間じゃ解決しない悲しみもあるんだけどね」

「そうだな、解決……はしてないのかもな」

「……」

「でも、そろそろ解決しないとなって……最近、そう思うようになってるんだ」

何かが足りない。そう思う隆道。

自分の蘇生のためには、何かが足りていない、と。

それは踏ん切り。あるいは大きく1歩を踏み出すきっかけのようなもの。

 

先に夕美を車に戻らせて加奈の墓の前に1人残った隆道。

「加奈……」

隆道は加奈を失って、最初は食事も喉を通らず、夢遊病患者のような状態でした。

少しずつ回復し、事態を冷静に見つめられるようになり、こうして墓参りに来れるようになるまでは半年近くかかったのです。

「けど……なんとか自分を取り戻すことができたよ、加奈」

ポケットを探って、隆道が取り出したのは小さなペンダント。

それはかつて加奈に送って、再び隆道の手元に戻ってきたペンダントでした。

「……返すな、これ」

墓前に置く隆道。

夕美はよくしてくれるし、家もやっと落ち着きを取り戻しつつありました。

これから少しずつ加奈のいない生活に馴染んでいくのでしょう。

それはとても悲しいことですが、必要なことでもあることを隆道は知っています。

大学にも行かなくてはならない。自分の人生を歩まねばならない。

そんな決意をするために、ここに来たのです。

「じゃあな……俺の人生で一番大切だった、加奈」

そして踵を返そうとした瞬間、ふと1つの考えが隆道の頭をよぎりました。

このペンダントには録音機能がついていたことを思い出したのです。

隆道はこれを加奈にプレゼントした時、加奈の合格を録音してプレゼントしていましたね、確か。

まさか。いや、もしかすると。

そんな思いに駆られてペンダントに手を伸ばし、うろ覚えでボタンを操作すると、メッセージの再生モードに。

そこから流れてきたのは……死ぬほど懐かしいソプラノの声。

 

『……えーと、藤堂加奈です。遺書を書くのも仰々しいので、簡単にメッセージを残しまーす……あん、これじゃ軽すぎるかな……やり直しっと……』

 

加奈の声。

指が震える。

まぶたが震える。

心が震える。

涙腺が一気に倒壊してしまいそうなほどの衝撃。

これは……遺書だ。

加奈の……遺書だ!

メッセージは5つまで録音可能。2つ目を再生する隆道。

 

『わたし、藤堂加奈。お父さんお母さん、短い間でしたがお世話になりました。先立つ不幸をお許しください。えと……私が死んだら、私の本棚にある本をお兄ちゃんに返しておいて下さい。それと……うーん、ちょっとこれもクールかなー……』

 

明るい声。

それは自分の身に怒る事柄を全て受け入れたような達観した明るさでした。

3つ目を再生。

 

『……移植が終わって……けど、体調が悪いです……指先が氷みたいに冷たくて……足がなかなか動かなくて……だから、もう筆は取れそうにないので、こうやって遺書を残します。えっと、まずお兄ちゃん、今までいろいろありがとう。加奈は感謝してます。いっぱい助けてくれて、励ましてくれて……でももう駄目みたい。ごめんなさい。先立つ加奈をお許し下さい。えっと……えーと……あ、あとお父さんとお母さんにも……あ、切れちゃ−−−』

 

残された未完成の遺書たち。それは加奈が残した最後のメッセージ。

一字一句に胸が締め付けられるように痛む隆道。

そこには隆道に語られることのなかった加奈の真実の言葉があったのです。

「加奈……どうして……」

震える指で4つ目を再生。

 

『……………………』

 

無音。

4つ目は無しか、と思いきや、かすかな息遣いが録音されていました。

 

『……………………』

 

長い沈黙。

言うべき言葉がまとまらなかったのか。

そう思っていると、やがて押し殺したような悲鳴のようなメッセージが流れ出しました。

 

『……………………うわ……うわあぁぁぁん……死にたくない……死にたくないよおぉぉ……わたしまだ死にたくないよぉぉぉ………』

 

頭を岩で殴られたような。そんな苦痛。

目頭が燃えるように熱くなり、胸が万力で締め付けられるよう。

「加奈……加奈っ!」

 

『……いやだぁぁ……恐いよぉ……たすけてよぉ…………』

 

泣き叫ぶ加奈。

病院のベッドで。誰もいない時間に。

1人、死への恐怖に怯えていたのです。

逃げ出したくなるくらいに痛い隆道。

自分は加奈を助けることができなかった。安心させてやることができなかった。

「ごめん……ごめん、加奈……許してくれ……」

膝をついて胸を抱える。涙が溢れて止まらない(俺も)。

墓の前に土下座するようにうずくまり、涙を流し続ける隆道。

 

『…………えーと。ずっと考えて、今、少し楽になってます。死ぬのは怖いけど、なんとか我慢できてます。このメッセージは、お兄ちゃんにだけ残します。お父さんかお母さんが聞いていたら、ごめんなさい。どうかここから先はお兄ちゃんにだけ聞いてもらって下さい。加奈の最後のお願いです』

 

はっと顔を上げる隆道。いつのまにか4つ目のメッセージは切れていて、5つ目……つまり最後のメッセージが流れ出していたのです。

その声は、さっきとはうって変わって落ち着き、慈愛に満ちた声でした。

4つ目から5つ目の間に、どれだけの時間があったと言うのか。そうはなかったはずです。

短い期間に、こうも落ち着きを取り戻せるものなのか。

でも加奈はそうしたのです。

隆道は目の前に転がっていたペンダントを両手で拾い、加奈の最後のメッセージに耳を傾けます。

 

『…………いいですか? まず……今まで面倒を見てくれてありがとう。加奈は幸せでした。お兄ちゃんのおかげで、ううん、お兄ちゃんそのものが加奈の幸せでした。どうか、加奈がいなくなったら自分の好きなことをやってください。今までわたしのせいで何もできなかった人生を、取り戻して下さい。応援してます。自分を責めないでください。お兄ちゃんは何も悪くないと思うから……』

 

『あと……お父さんとお母さんをよろしくお願いします。あとは……えーと……言いたいことはいっぱいあったのに、思いつきません。けど……そう、一つだけ言い忘れていた言葉があります。あの夜も……ずっとずっと言いたくて、けどなんだか言えなくて……結局言えないまま終わっちゃいそうなので、ここで一度だけ言います』

 

 

 

 

『愛しています』

 

 

 

 

愛しています。

アイシテイマス。

言葉がじんわりと隆道の脳にしみていきます。

 

知っていたさ、そんなこと。

今さら、言わなくたって……。

けど、おまえはそれを最後の言葉に選んだんだな。

 

「馬鹿だよ……おまえ、馬鹿だ……でも一番の馬鹿は……俺だった…………」

 

音も無く、何かが砕けました。

隆道を拘束していた見えない何かが。

 

小さかった加奈。

弱々しかった加奈。

温かかった加奈。

寂しがり屋だった加奈。

心配性だった加奈。

臆病だった加奈。

かけがえのない加奈。

……たいせつな加奈。

いろんな加奈がいて、どの加奈のことも等しく愛していた。

ずっと守ってやりたかった。

救ってやりたかった。

だけど救えなかった。

ずっと、後悔していた。

どうしようもないことだとわかってはいても、自分を責めずにはいられなかった隆道。

だから隆道は前に進めまなかった。

自責の念が隆道を縛り付けていたから。

けど、その縛鎖が……ようやく砕けました。そんな気がしたのです。

思いっきり泣いたからだろうか?

加奈の最後の言葉を聞いたからだろうか?

 

「隆道君、まだーっ?」

遠くで夕美の呼ぶ声が聞こえました。

ゆっくりと立ち上がり、涙を拭く隆道。

 

さあ、行こう。

 

足りなかった『何か』は補われ、

 

今、半年という時間を経て、ようやく俺の時計は動きはじめる−−−

 

 

 

 

[ Fin ]

 

 

 

 

 

 

加奈は亡くなってしまいました。

表面上は徐々に回復していったかのように見えた隆道でも、自責の念から前に進むことができなくなっていたのです。

そこから救ったのは加奈が残した最後の言葉。

『愛しています』

加奈の気持ちは……この一言に全て込められていました。

だからこそ、隆道はこの言葉に救われたのだと思います。

 

今後、隆道は胸を張って前に進めることでしょう。

そして加奈はそれを見守り続けてくれると信じています。

 

…………泣いた……。

いい加減、加奈が死ぬのもこれで4回目なので慣れたと思っていたのに……。

あれは反則でした。加奈のメッセージが残されたペンダント……。

あんなのオープニングでちょっと出てきただけのアイテムだと思ってましたよ。

受験の合格結果を吹き込んでプレゼントしたペンダント。

隆道は『あれは受験前のことだ』なんて言ってましたが。

加奈を失ったショックでちょっと記憶が混乱しているんだ、と言うことにしておきましょう。

なにはともあれ、これで隆道は自分の人生を歩んでいくことができます。

加奈への想いを胸に。でもそれに決して縛られることなく……。

 

ちなみに今回のエンディングは『ノーマルエンド 追憶』

・・

・・・

・・・・

・・・・・

『ノーマル』で加奈を殺すなよ!!

っつーか、加奈死ぬのがデフォかよ!?

と叫びたくなる俺の気持ちはわかっていただけるかと思います。

 

参考までに、現在のクリア状況はこんな感じです。

『ED2 ノーマルエンド 追憶』

『ED3 夕美エンド 迷路から』

『ED4 知的ルート第一エンド 雪』

『ED5 知的ルート第二エンド おもいで』

エンディング鑑賞の位置関係は以下の通り。


ED2ED3
ED4ED5

どうやら残るエンディングは2つのようです。

いい加減加奈に助かってもらわないと俺の身がもちません。

しかし……残る両方とも加奈が助かるとは思えません。

位置関係からしてED6はどう考えても死んじゃうだろうし。

しかも場所からして『知的ルート』だと思われます。

『知的ルート』の加奈って……ある意味死相が浮かんでいるので助かるとは思えないのです。

となると加奈が助かるルートは(あるとしたら)ED1でしょう。

これは場所からして『知的じゃないルート』です。

精神衛生上加奈が助かるのは最後にしたいと思います。

せっかく助けた後でまた殺しちゃったらきっと心が痛いと思われますので。

 

ED1は比較的簡単だと思われます。

ひたすら加奈を『知的じゃない』加奈にして、夕美とは距離を保って、加奈に可能な限り優しくすればいいんじゃないでしょうか。

とするとED6は?

夕美に近づけばいいのかな。でもED4・5の時だって夕美には優しくしてたつもりなんだけど。

 

まあいいや。なるようになるだろ。

と言う訳で今日はここまで。

以下次回!!


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