2002.3.12 「まっ、マジで!?!?」編
加奈は残り半年の命……。
隆道は一体どうするのか……。
隆道は大学に入学。強引に加入させられた文学サークルの新歓コンパに出席です。
本当ならこんなのに出たりせずに、全ての時間を加奈のために使いたかった隆道。
ですがそれでは加奈にいぶかしまれる、といやいやながらの飲み会でした。
女子大との合同コンパで盛り上がる周りをよそに冷めまくりの隆道の隣に座ったのは新人キラーのお姉さま。
「キミ、名前は?」
「……藤堂です」
「え……藤堂君っ!?」
どこかで聞いた声。
声のした方を見ると……そこに居たのは夕美でした。
夕美がここにいたのは偶然でした。夕美も強引に加入させられたサークルのコンパに連れ出されていたのです。
夕美のお酌で飲み続ける隆道は確実に酔っていきました。あれほど憎んでいた夕美とも普通に会話できる程に。
「……なあ、俺って間違ってたのかな」
「え?」
「手紙のこと……俺、鹿島のこと……誤解して……たか?」
「……」
「どうなんだろう?」
「……出よ?」
「は?」
「藤堂君、ちょっと酔ってる。風に当たった方がいいよ。そしたら話す」
夕美にそう言われて素直に飲み屋を一緒に出る隆道は相当酔っていました。
風に当たるだけと言いながら隆道の分の荷物まで持って店を出る夕美に気付かないほどに。
気がつくと見慣れない天井が。聞こえてくるのはシャワーの音。
まだ意識がはっきりしない隆道に話しかけてきたのはバスタオル1枚の夕美でした。
「か、鹿島……っ!」
「藤堂君!」
そのまま飛びついてきた夕美。
「藤堂君が悪いんだよ……吹っ切ったつもりだったのに……また……」
そう言って夕美は唇を押し付けてきました。必死で抵抗する隆道ですが夕美はやめようとしません。
ずっと昔から。小学校の頃から隆道のことが好きだった、と。
迫ってくる夕美に加奈の面影を見る隆道。
頭の中の加奈を振り切るように。
隆道は夕美を抱くのでした。
と言う訳で2人は結ばれました。
初回から大いに盛り上がったようです。よかったよかった。
ようやく報われた想いに涙まで流して喜ぶ夕美がかわいいのなんの。
とにかく2人は付き合うことになった訳ですが……隆道と加奈の関係はどうなるのでしょうか。
その後は入退院を繰り返すことになった加奈。
隆道がお見舞いに行くのは当たり前ですが、今まで足が遠くなっていた両親もよく見舞いにくるようになりました。
態度を変えるのは加奈に気付かれる心配がありますが、それでも娘の顔を少しでも見ておきたいという両親の気持ちはよく判ります。
そんなある日、加奈の見舞いにやってきた隆道は病室の前に佇む勇太を発見します。
病室に入りづらそうにしている勇太を連れて病室の中に。
微妙に加奈と距離を置いて話を始める勇太から隆道はその真剣さを感じ取ります。
加奈に向かって数多くの話題をもって話しかける勇太ですが、加奈の視線は違うところを見ていました。
勇太の肩を越えてその後ろ。隆道を見ていたのです。
勇太を不憫がりながらも、もし勇太の想いが加奈に通じれば加奈は恋を知らずに死ぬことは無い、そんな考えが隆道の頭に浮かんできました。
そのことを考えるとチクリと痛む自分の胸。
隆道は考えることをやめるのでした。
『彼女』である夕美と楽しい遊園地デート。
夕美はどこまでも明るく、そして開けっぴろげに隆道に気持ちを伝えてきます。
夕美を見ていい奴じゃないか、と隆道。そんなの判りきってただろ?
そんなある日のこと。
両親が祖父母の家に加奈のことを伝えるために家を空けた時、夕美がやってきました。
加奈も入院中のため家には隆道1人きりです。
たまたま家のそばまで来たから、と言う夕美を家の中へと誘う隆道。夕美もそれが目的だったため喜んで承諾。
夕美が言うにはなんと都内で住んでいたマンションは引き払ってしまったそうです。
それもそこに住んでいると隆道とあまり会えないから、という理由でです。
「……だってさあ」
しゅん、と夕美は肩を落として言います。
「私たちって、もしあの時から付き合ってたら、もっと別の関係になってたと思うのね。それを考えるとさあ、何年も損してるような気がして……」
「……馬鹿」
「だって、すごいよー。……自慢できるよー」
「自慢なんてし・な・い」
「藤堂君ってクールだもんね」
そう言ってからぼそっと付け足す夕美。
「……夜はけだものだけど」
「こらっ!」
「きゃあ! だ・か・ら……ね? 穴を埋めなくちゃいけないだわさ」
「何それ」
「あ、朴念仁丸出しの発言」
「追い返すぞ」
何だかんだ言ってもラブラブの2人です。
自覚してませんかもしれませんが、クールと言うよりやや暗めの隆道には夕美みたいな娘がピッタリなのかもしれませんね。
もっとも隆道をそんなにした原因も夕美なんですが。
ビールを飲んで隆道の部屋に。
そこで夕美が見つけたのは隆道と加奈で撮った写真です。
それは加奈が制服姿を披露した時に、隆道も制服に着替えて一緒に撮った写真でした。これは焼き増ししてあってもう1枚は加奈の病室に立てかけてあるそうです。
それを見て他の女かと思って一瞬声を荒げる夕美ですが妹と聞いて安心した様子。
ベッドに座って隆道を『誘う』夕美ですが、加奈のことを考えるとどうも気分が乗らない隆道。
自分だけがこうして幸せになることに対して罪悪感を感じているのです。
それはともかく隆道も夕美と一緒にいることを『幸せ』だと感じているのはいい傾向ですね。
「ザ・チラリズム」
そう言ってスカートの端を持ち上げて下着を見せる夕美。笑った。っつーかやっぱ夕美いいねぇ。
そして夕美に押し切られるようにHに突入しますがやっぱり隆道は気が乗らない様子です。
『新テク』まで披露しながらも一向に元気にならない隆道の『息子』に諦めたのか、風呂に入って今日はもう帰れという言葉に素直に頷く夕美。
その仕種が加奈と重なりました。
性格は正反対ながらも夕美と加奈は仕種が似ているそうです。
夕美との行為の最中に加奈の面影を投入したのも一度や二度ではありませんでした。
ぼんやりと加奈のことを考えていると……。
「あ」
そう言って上半身を起こす夕美。
「元気になってる」
何故か隆道の『息子』は隆々とそそり立っていました。
『何故か』……ってことは無いですね。理由は1つしかありません。
とにかく試合再開です。
自分でも不思議なくらいの持続力を持って夕美と交わる隆道。
夕美がイったその瞬間。
きぃ……
扉の開く音。
「え……?」
「お……兄……」
う……わ…………ぁ……………………。
ま…………マジ?
加奈に気付いた夕美が布団に潜り込みますが時既に遅し。
「あの……わたし……」
「加奈……」
「下着……着替えの……なくて……」
ぎこちなく言葉を綴る加奈。
「それで……取りに来て……」
「もしかして……妹さん?」
夕美が布団から顔を出して訊ねてきた途端、加奈は目を覆って走り去ってしまいました。
「おいっ!」
加奈の部屋の閉まる音。
謝る隆道に、フォローしてやってね、と夕美。
加奈の部屋の前に来た隆道ですが何を言っても反応はありません。
これ以上は何を言っても無駄だ、と部屋に戻ると夕美はすっかり着替えを終えて待っていました。
「……帰るね」
「ああ……」
夕美を玄関まで見送った後自分の部屋に戻った隆道。
そのうち廊下を歩く気配を感じてドアのノブに手をかけますがそれをひねる勇気はありませんでした。
しばらくしてから階下に行くと加奈の姿はありません。おそらくタクシーでも待たせていたのでしょう。
残されていたのは1枚のメモ。
『ごめんなさい』
あああ…………、な……なんてことに…………。
隆道は自分を責めますが、これは隆道が悪い訳ではありません。
もちろん夕美が悪い訳でも、ましてや加奈が悪い訳でもなく。
ただただ運が、タイミングが悪かった……。
うわぁ……。
加奈の見舞いへ。
病室の前にいた勇太と一緒に加奈の病室に入る隆道ですが、当然そこにあるのは気まずい空気。
正直つらい、と隆道。
でもこのまま放置しておくわけにはいきません。
そんなことをすれば二度と円満な関係に戻れなくなってしまいます。
「……ただいま」
「お……おかえり」
何とか普段通りの会話でいつも通りの空気にしようと頑張る隆道。
勇太も交えて、と言うより勇太と隆道が主に話しているだけで、加奈は黙って聞いてるだけでしたが。
「あら、最近、このトリオはよく見るわねえ」
そこにやってきたのは看護婦の美樹さん。いい報せがある、と。
「外泊許可が降りましたあ」
「美樹さん、ホント?」
「ええ、もっちろん」
「……嬉しいな。なんだか最近、外泊許可が取りやすくなってるみたい。ちょっとは健康になってきてるのかな、ね、お兄ちゃん?」
そんな加奈の言葉を聞いて、それまでは満面の笑みを浮かべていた恵美さんの顔が凍りつきました。
「そうだな」
一方、平然と返す隆道。
昨夜のことで自己嫌悪中の隆道にはあまり効果が無かったようです。まさに災い転じて福と為す。
「藤堂、また退院するんだな」
「……(こくん)」
「じゃあさ……」
勇太が思い切って口にしたその一言は……
「デートしない?」
「………………………え?」
「だから、デート。俺と藤堂で。今度」
「……えっと……え?」
「だから、デート。俺と藤堂で。今度」
「でーと……」
俯いて考え込んでしまう加奈。
そして加奈は隆道を見ました。まるで助けを求めるかのように。
いいじゃないか、行ってこいよ。いい経験になるぞ。
そう言おうとするのですが口が動きません。
得たいの知れない衝動が隆道の心の奥に渦巻きます。
「あら、いいじゃなーい。楽しんできたら、加奈ちゃん」
そんな隆道の葛藤も知らずにそんなことを言う美樹さん。もちろんこれは残った時間の少ない加奈のためを思ってのことなのでしょう。
そのことには隆道も全く同感なのです。でも……。
そうだな……デート、してみれば。
いや、やっぱり家で安静に。
くっ……。
美樹さんの気持ちもわかる。デートさせてやった方が加奈のためなのかもしれない。
きっと勇太は持ちうる限りの力を尽くして加奈のために頑張ってくれるでしょう。
でも……でも…………。
俺が選んだのは前者でした。
「……えー?」
前に連れ出した時に加奈は体調を崩してしまったので、今回は自宅でゆっくりさせてやりたい、と隆道は言います。
「……そう。残念だったわね、伊藤君」
「いえ、いいんです」
あくまで落胆した様子を見せない勇太は偉いと思います。
「……」
隆道以外には気取られないように少し微笑みつつ、加奈は隆道を見つめます。
「……」
「……」
どくん。
急に訪れた衝動をひっして振り払う隆道。
その後は面会時間の許す限り雑談に興じたましたが、勇太は頻繁に見詰め合う隆道を加奈にやや疑念を抱いた様子。
その帰り道。
口数の少ないまま隆道と肩を並べて歩いていた勇太が話しかけてきました。
「先輩と藤堂って」
とそこまで言って、何でもないです、と口を閉ざす勇太。
「俺、彼女いるんだ」
「え?」
勇太の言いたいことはわかっていました。だからこそそんな事を言い出した隆道。
「青心女子大の彼女」
「……そうなんですか。知りませんでした」
「話さなかったからな」
「……わかりました」
そう言ってやんわりと微笑む勇太。きっと安心したのでしょう。
こんな風に夕美のことを勇太に話したのは勇太の疑念を晴らしたかったのが第一の理由。
でもそれだけとは思えません。
隆道は自分にもそう言い聞かせたのだとしか思えないのです。
自分には『彼女』がいる。加奈は『妹』なんだ、と。
その後勇太と別れた隆道はその足で夕美の家に向かいました。
父親が大病院を開いていると言う夕美の家は一昔前の豪邸、と言った感じでした。
……ん?
『病院を開いてる』?
まさか……加奈の入院してる病院?
いや、わかりませんけど。
チャイムを鳴らすとすぐに夕美が出てきました。
隆道が家に来たのなんて初めて、と笑う夕美に隆道は告げます。
「好きだ」
「え?」
「夕美、好きだ」
「と、唐突に……な、何?」
「そっちは? 俺のこと……」
「そんなの……好きに決まってるじゃない……」
「本当に?」
「……(こくん)」
その仕種に加奈の顔が浮かんできました。その場で夕美を抱きしめる隆道。
そのまま家の中に連れ込んで夕美の部屋に行くまでもなく、行為に及ぶ2人です。
激しく隆道を突き動かす得体の知れない激情。
本当は自分で気付いているのかも知れない。それを直視するのが怖くて、蓋をしているのかも知れない。
それでも隆道は夕美と激しく交わり続けます。
本当に自分は夕美を愛しているのかどうか考えながら……。
加奈が退院しました。
もちろん仮の退院。単なる外出許可ではありますが。
嬉しいはずなのですが、どこは腫れ物に触るようにしか加奈と接することができない家族達。
それは隆道も例外ではなく、早いところ寝てしまおうとしたその時。
加奈がパジャマ姿で部屋にやってきました。
何と一緒に寝ようと言うのです。
まずいだろ……それは
わかった……おいで
カモナマイハウス!!!(ベッドですが)
と言う訳でお兄ちゃんと一緒に寝ることにしましょう。
嬉しそうに寄ってきた加奈は枕持参でした。何があっても一緒に寝るつもりだったのでしょう。
一緒の布団の中で無邪気に笑う加奈ですが隆道はそんな無邪気になることなんてできません。
加奈の顔を見てられずに寝返りを。一瞬加奈の残念そうな顔が見えましたが無視して。
「早く寝ろよ。夜更かしは身体に悪い。俺も寝る」
「……はぁい」
目を瞑ると一気に眠気が襲ってきましたが……
つー……
背中を指先でなぞる感覚がありました。
それも何度も何度も。
「……もう……寝ちゃった?」
「……」
もう眠気など吹き飛んでいましたが返答できない隆道。
ただひたすら息を殺して加奈の興味が去るのを待つのみです。
「……そっか」
そう言って最後にもう一度、加奈は指先を走らせました。
それは『女』、『子』、ひらがなの『き』。
『好き』……。
「おやすみなさい……お兄ちゃん……」
ぽす、と音がしてから30分後、加奈の寝息が聞こえてきました。
ほっと息をついて首を回して後ろうかがう隆道。
「うぅん……」
白く、細く、キレイな首筋。
思わず引き込まれてしまい、繊細な肌に唇を寄せようとして……
「お兄ちゃん……」
我に返る。
俺は今……何を……?
ベッドから逃げるように起きて、シャワーを浴びに1階へ。
肌を刺すような冷水シャワー。
「加奈は……俺の妹…………妹なのに……っ!」
そうして隆道は1階のソファーで寝るのでした。
徐々に自覚されてきた加奈への気持ち。
でもそれは抑えなければならない気持ちです。
辛いよなぁ、隆道。
っつーかまさか夕美とヤってる時に加奈が来るとは……。やられました。
ドアの外までは夕美の声は聞こえてなかったのでしょうか。しかもノックもせずに加奈は部屋に入ってきてます。
もしかするとドアは開いていたのかもしれませんね。ドアのノブを回す音がしませんでしたし。
そして隆道と夕美の姿を見るか何かしてしまった加奈の手がドアに触れてしまい……と言う展開で。
病院で隆道が両親と医師の会話を聞いてしまった時のような感じです。ま、予想ですけどね。
果たして隆道と加奈はどうなるのか?
そして夕美は?
俺、夕美好きだから別れないで欲しいんだよなぁ……。
以下次回。