佐々井 夕奈
(ささい ゆうな)
両親を失い、残された妹と店を支えるために全てを捧げた女性。しかしその最期は……。
彼女はいわゆる「ヒロイン」ではありません。ヒロインである妹の朝奈の姉として登場します。しかし、第三章で一番印象的なキャラクターは?と聞かれればほとんどの方が夕奈さんの名前を出すのではないでしょうか。それほどまでに強烈なキャラクターの持ち主です。でもそれはいい意味での「個性」ではなく、明らかなマイナスイメージが彼女にはつきまといます。
嫉妬に狂い、愛すべき妹にまで手をかけようとした彼女ははっきり言って「恐ろしい存在」です。
志朗に優しくされる朝奈を精神的に追い詰める夕奈さん。
銀糸の力で志朗を傷つけてまでその心を得ようとする夕奈さん。
裏切られたことにより、何より大切にしていた店を捨ててでも復讐を誓う夕奈さん。
朝奈の首を締め、ルートによっては朝奈と志朗の命を奪ってしまう夕奈さん……。
そう、選択肢によっては夕奈さんによって朝奈と志朗は殺されてしまうのです。その最期に浮かぶのは夕奈さんの笑顔……。
「ねこねこ」さんも明らかに夕奈さんを『恐ろしいキャラクター』として扱っています(ギャグ的にとは言え)。それだけにプレイヤーの心には怖い夕奈さんの印象がどうしても残ってしまうのです。
でも違うのです。それらは夕奈さんの本質を何も表してなどいないのです。朝奈に向けられていた笑顔。それこそが夕奈さんの本質なのです。
彼女はただ不憫なだけだった。愛し方を知らなかった。愛され方を知らなかった。愛に狂ってしまった。ただそれだけだったのですから。……いや、「愛し方を知らない」と言うのは間違いです。彼女は愛し方を知っていました。何故なら心から妹である朝奈を愛していたのだから。他人に厳しく、でも誰よりも自分に厳しい夕奈さんでしたが、その愛は確かに朝奈に伝わっていました。そんな夕奈さんだからこそ、朝奈も心から尊敬し、愛していたのです。それなのに……それなのに……。
愛に、嫉妬に狂っていく夕奈さんの姿は本当に見てて辛かったです。でも考えようによってはそれすらも夕奈さんの愛の深さを表しているということになります。ただ不器用だった。表現の仕方を知らなかった。それだけです。
朝奈を殺そうと思うまでになったのも、それまで朝奈を信頼し、それ以上に愛していたからこその反動です。決して朝奈は夕奈さんを裏切ろうなんて思っていませんでしたが、夕奈さんは「結果が全て」という人。そして結果だけ見れば確かに朝奈は夕奈さんを裏切っていました。不器用、あまりに不器用です。でも夕奈さんが結果重視になってしまったのにも理由があります。若くしてその全てを背負わされた店「佐々井亭」。この店は夕奈さんが尊敬し、愛していた父親から受け継いだものであり、犯すべからず聖域とも言うべき場所です。そんな店を守るのに必要なのは過程でも気持ちでもなんでもなく『結果』のみ。それに店を守ることはひいては妹との生活を守ることです。
そう……全ては愛、その深い愛故にあのような結果に……。
エンディングに出てきた仲睦まじい姉妹の姿。あれこそが2人のあるべき姿です。あんな未来もあるんだ、と心から信じたいです。
……そう言えば何で夕奈さんって「ねーちん」って呼ばれてるんですか?