狭霧

(さぎり)


自分の『役目』と言うものを失うことを何より恐れる少女。そのためなら自分の命すらも……。

 

彼女は自分の存在意義というものを貪欲に求めます。そしてそれが例え仕組まれていたものでも、悪意によるものでも、自分の命を捨てることになっても受け入れてしまうのです。そんな狭霧が自分にしか出来ないこととして見出したのは水害から里を守るための『人柱』でした。当然頼人はそんな狭霧を止めようとします。しかし狭霧は頼人を振り切って自らの命を捧げてしまいました。

他人のために、里の皆が幸せに暮らせるために自分の命を捧げた狭霧。その願いは叶えられました。ならば狭霧の行動は正しかったのか……いや、そうは思いません。何故なら狭霧を必要としていた人間が確実にいたのだから。狭霧を慕っていた里の子供達。両親を失った狭霧をずっと育ててきた神主の一輔。そして狭霧を愛した頼人。悲しむ人間を作りたくないと言う理由で狭霧が命を投げ出したのなら、それは確実に矛盾した行動と言えます。

その矛盾した行動にはある種の「逃げ」の姿勢が見て取れました。里のために身を投げ出した、と言えば聞こえはいいですが、それによって狭霧はもう役立たず呼ばわりされることも無くなる、と言う願望があったように感じてしまうのです。例えそれが仕組まれていたことでも、それで水害が無くなればもう狭霧を役立たず呼ばわりする人間はいないでしょう。狭霧はその安心感を得たかったのでは? 少々穿った見方かもしれませんがそう感じてしまいました。

もちろん狭霧の行動には感動しました。涙を流しました。見ていてかなり辛かったです。でも目の前で身を投げ出した頼人の辛さは計り知れません。そこまでして行った狭霧の行動がどうしても納得できないのです。あの明るい笑顔の裏に潜ませていた重く、大きな決意。狭霧のその時の気持ちを考えると涙を禁じえませんが、自分には疑問符を消すことはできないようです。それこそ狭霧の気持ちを理解できなかった頼人と同じような気持ちですね。

 

明るい笑顔と悲壮な決意。それこそが狭霧の魅力であり、欠点でもあります。自分の『役目』が欲しいのなら、自分の力で勝ち取ろうとして欲しかった。それは出来うるならば頼人に必要とされるところに自分の居場所を見出し、自分自身も幸せになる道を歩んで欲しかった。エンディングでの狭霧と頼人の会話が実現することを望んでやみません。


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