あやめ(過去)

(あやめ)


大井跡と共に銀糸を作り、大井跡のために命を捧げた女性。

 

第四章にて登場。第四章のヒロインは現代に生きる「篠崎あやめ」であることは間違いありませんが、ではこっちのあやめはサブヒロインか、と言われるとそうではありません。あくまで本編である現代編。そしてその補完的存在であり、物語の中核を担う物語でもある過去編。その重要さは計り知れないでしょう。その過去編のヒロインであるあやめもまた「銀色」の物語には当然かかせません。むしろ彼女がいたからこそこの物語は生まれたのですから。

旱魃(かんばつ)から皆を救うために大井跡の銀糸作りを手伝い始めたあやめ。あくまで前向きに手伝いに励んでいたあやめに迷いが生まれたのは大井跡を待ち構えていた運命を知った時。銀糸を作るには、旱魃から皆を救うには大井跡の命を捧げなければいけない。あやめは悩みます。いや、そんな生易しい表現では表しきれないほどに苦しんだでしょう。一度は大井跡に向かって逃げることすら提案しました。でもそれはあやめの本心だったのでしょうか。もしそこで大井跡があやめと共に逃げることを望んだら……きっとあやめはそれでも悩んだでしょう。大井跡が逃げると言うことは皆が助からないと言うこと。その中には自分の家族もいる。そして皆が助かると言うことは大井跡が死ぬと言うこと……。これほどまでに苦しい立場に立たされた人間がどれだけいるのか、と思うとやりきれない思いです。

あやめが選んだ結論は大井跡と結ばれること。つまり夫婦になること。たとえ短い間、たった一晩でも大井跡の妻になることでした。そしてその言葉を発した時にはもう決心していたのでしょう。大井跡のために、皆のために自分の命を捧げることを。大井跡を騙すような形で自らの命を絶ったあやめ。ほとんど予想していた通りとは言え……辛かったです。そしてもっと辛かったのはあやめの死に意味は無かったということ。銀糸の完成に必要なのは大井跡の命であって、あやめの命を捧げても意味が無かったのです。ただただそのことに涙を流す大井跡……その悲しみもまた計り知れません。

そんなあやめのために自分の使命を全うする大井跡。旱魃から民を救うためではなく、銀糸作成を依頼した領主・久世のためでもなく。自らの命を捧げてまで銀糸を完成させようとしたあやめのために大井跡は自らの命も銀糸に捧げます。ただ『あやめ』という名を持つ者のために……。

その想いが現代にまで残っていたことからも大井跡とあやめの想いの深さがわかります。そして「あやめ」の願いをかなえ、一緒にあやめの花を見ることが出来た時、大井跡とあやめの想いも成就したのです。

エンディングにて空に浮かんだのは満面のあやめの笑顔。

よかった……本当によかった……。

 

どうか、どうか成就された想いの先で大井跡と幸せになっていて欲しい……。


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