2002.5.14 「ぐはぁっ!!(吐血)」編


救われねぇぇぇ!!!!

 

 

 

あんなに頼んでおいたのにぃぃぃ!!

 

少しは救われる話であった欲しかったのにぃぃぃ!!!

 

 

 

第二章…………。

 

第一章よりもダメージでけぇじゃねーかよ!!!

 

前半が何となく明るい雰囲気だっただけに後半のダメージがでか過ぎる……。

 

 

それではどうぞ……

 

 

 

−−−第二章 踏鞴の社(たたらのやしろ)−−−

 

山合いの里に、今日も鉄を燃やす踏鞴の煙が広がる。
特に何かを祭っている訳でもない神社にやってきた、地方領主の息子の主人公。
そこで主人公は一人の斎宮と出会うのだが…

(以上、公式サイトより)

 

地方領主の三男である久世頼人(よりひと)。

長男・次男との望まない跡継ぎ争いにより、領主である父親の命で山間の村へ。

世話になる鷺宮神社には1人の神主と1人の巫女がいた。

神主の名前は一輔(かずすけ)。

巫女(と言っても本当の巫女ではない)の名は狭霧(さぎり)。

明るく、そして少しドジなところのある狭霧と頼人の生活が始まった。

 

毎朝元気に掃除をする狭霧の音で目が覚める頼人。

領主の息子であることは神主以外には話していないためか、狭霧は屈託無く頼人に話しかけてくる。

仕事の邪魔にさえなりうる狭霧。

はじめはそんな狭霧を邪険に扱っていた頼人。

うるさい朝。

たまに失敗する料理。

しかし、いつしか賑やかな日常が頼人にとって当り前になっていった。

 

ある日、頼人は一輔より神社に伝わるひとつの話を聞いた。

この神社にはどんな願いでもかなえる物があると、と一輔は言う。

興味を惹かれる頼人。

しかしそれがどんな物で、どこにあるのかも知らない、と一輔。

それを聞いて呆れる頼人に一輔は言った。

願いが叶うには何か代償が必要になるのが世の常、と。

 

ある夜、頼人は琴の音色を聞いた。

音をたどっていくと、琴を弾いていたのは狭霧だった。

神社の蔵にしまってあった琴を一輔に頼んで借りているのだと言う。

拙く、そして独学なので里の小唄ぐらいしか弾けない狭霧だがその音色は優しかった。

また聴きに来てもいいか、と頼人。

狭霧は元気よく頷いた。

 

翌朝、一輔から狭霧の弾いていた琴は数代前の当主、つまり頼人の先祖が寄贈したものだと言うことを聞いた。

 

頼人の仕事は父親の統治管内である村の様子を調査すること。

仕事を進めるうちに村で大掛かりな堤防を作っていることを頼人は知る。

そして10年前に堤防が決壊し、多大な被害がでたことも。

里の者達は今作っている堤防を『特別』だと言っている。

狭霧が神社に引き取られたのは10年前。

その事が頼人には気になった。

 

狭霧は村の子供達とよく神社で遊んでいた。

頼人もそれに巻き来れてしまうことも。

ある時、1人の少女が仲間外れにされていた。

狭霧はその少女を役立たず呼ばわりした少年に手をあげてしまう。

怒りに我を忘れたような狭霧は頼人の声に自分を取り戻すと涙を流して謝りながら走り去っていった。

 

狭霧はその少女に自分を重ねていた。

昔、狭霧もいじめられていたから。

でもいじめっ子についてまわっていた。

それは「いじめられっ子」と言う『役目』が欲しかったから。

いじめられる事よりも、相手にされない事の方が怖い。

誰からも必要とされない。

狭霧は何よりもそれを恐れていた。

 

琴を弾きながら狭霧は言った。

「自分にか出来ない役目があるとしたら、とても素敵な事だと思いませんか?」

自分にはある、と狭霧。

それは何かを聞いても狭霧は答えない。

もうじきわかるかもしれない、と狭霧は言う。

そして琴を弾きながらただ一言。

「…里の皆が、ずっと幸せに暮らすためです…」

 

そして平穏な日々がしばらく続いた。

短い春が終わり、雨季を迎えようとしていた里。

その頃には頼人もこの里での暮らしが気に入っていたが雨季を迎える前に帰ろうと思っていた。

この里は自分を活かせる場所ではないから。

ただ。

毎朝狭霧の掃除の音で起こされる事も、失敗混じりの手料理を食べる事もなくなる。

頼人はそんな感傷を笑い飛ばそうする。

 

最後の様子見でやってきた堤防。

そこで目にしたのはぽっかりと開いた大きな穴。

聞いてみるとそこには贄(にえ)が入るのだと言う。

『今年は特別』と言う里の者の言葉が頼人によみがえる。

水害を無くそうとする重要な儀式であることは頼人にもわかっていた。

だがあまりいい気分もしなかった。

 

その夜、頼人は狭霧に尋ねた。

堤防に人柱を立てるらしいな、と。

そしてそれが誰なのか、と言う質問に狭霧は笑顔で答えた。

「どこの誰でもありませんよ」

「何?」

 

「私です」

 

気が動転しながらも頼人は狭霧から色々なことを聞き出した。

村の娘達の代表であること。

頼人が来る大分前にそれは決まっていたこと。

 

その夜は琴の音が聴こえてきても狭霧のところに行く気にはならなかった。

 

翌朝。

頼人は一輔から狭霧が人柱となる日が近いことを聞かされる。

一輔は頼人が何も知らないままに都へ戻ることを願っていたのだと言う。

だが頼人は知ってしまった。

もう何も知らなかった頃には戻れない。

人柱は籤引きで決まった、と一輔。

一輔も辛そうだった。

しかし狭霧はそうではなかった。

いつも明るかった。元気だった。

その理由を狭霧はこう言ったという。

『こんな粗忽者が、村の皆の役に立てるのならば』

 

その夜。

琴を弾く狭霧のところへ赴く頼人。

狭霧は屈託の無い顔で「褒めてください」と言う。

頼人に人柱のことを言ったのは褒めてもらいたいから。

しかし頼人はそんな気にはなれない。

狭霧は言う。

自分は10年前の洪水を両親を亡くしていた。

もう二度と自分のような想いをする子供が出ないように、と。

自分が選ばれた。

だからそれは自分にしか出来ないことなんだ。

狭霧はそう言ってまた琴を弾き始める。

 

頼人は気の晴れないままに日を過ごす。

そして夜、頼人は狭霧にひとつの提案をすることにした。

おそらくは受けてもらえないであろうその提案。

琴の演奏を終えた狭霧に頼人は言った。

一緒に都へ来ないか。

狭霧はそれを拒否。

仕事ならいくらでも世話をする。何なら……。

頼人はその後の句を告げることが出来ない。

何とか口にしたのは「自分の下で働かせてもいい」。

それは頼人の言いたい事ではなかった。頼人もそれに気付いていた。

そして狭霧は頼人に言う。勘違いをしている、と。

自分は嫌々ながらに行くのではない。

皆に望まれて、そして望んでいく。

狭霧は自分が何かの役に立つのだということを示したいだと言う。

その神々しくすら見えた狭霧に頼人はもう何も言えなかった。

だから言った。

「お前は偉い。大した奴だ」

狭霧は元気にお礼を言った。

そして琴の音が流れ始める。

その中で頼人は自分が領主の息子であることを告白した。

しかし狭霧はそのことを知っていたのだと言う。

互いに内緒にしていたことを謝る2人。

いつしかおかしくなってどちらからとも無く笑い出す。

以前狭霧は言っていた。

内緒の事を教えてもらうのは嬉しい。

それはその人に近づけた気がするから。

その言葉を思い出しながら頼人は思う。

俺はお前に近づけたろうか。

頑なで純粋で真っ直ぐな狭霧の心に。

 

頼人は堤防が完成するまで里に残ることにした。

気は進まないものの、関わった人間として狭霧を最後まで見届けようと思った。

そして狭霧が召される前日。

そんな日も狭霧は朝から掃除をして、その音で頼人を起こしていた。

いつもと変わらない朝。

 

子供達が遊びに来た。

変わりなく子供達に接する狭霧を見て、嬉しくもあり、たまらなく切なくもあった頼人。

日が暮れるまで一緒に遊んだ。

子供達の帰り際、もう一緒に遊ぶことが出来なくなった、と狭霧は説明した。

悲しみを叫び、抗議し、泣き出してしまう子までいた。

それをなだめる狭霧も涙をにじませる。

最後に一人の少女が狭霧のところにやってきた。

それはいじめられて、いつも一人で遊んでいた少女。

その子が差し出してきたのはいつも大事に持っていた鞠。

狭霧ならきっと大事にしてくれるから、と少女は言う。

鞠は既に少女には必要の無いものだった。

もう皆が遊んでくれるから。

そう言って元気に仲間の背中を追って走り去っていった少女。

狭霧は鞠を抱きしめたまま唇を噛んで嗚咽していた。

それは悲しいからか。嬉しいからか。

狭霧にはそれがわからない。

嬉しいということにしておいたらどうだ、と頼人。

狭霧もそう思うことにした。

そんな狭霧が頼人に差し出してきたのは少女にもらった鞠。

頼人は自分に渡す理由を尋ねた。

あの子と同じ理由です、と狭霧は言った。

頼人ならきっと大事にすると思ったから。

それはきっと、と頼人は思う。

今まで受けこなしてきたどんな仕事よりも重い務めだろう。

 

その日の夕食は最後の狭霧の料理。

頼人はすすっていた吸い物を狭霧に差し出した。

何の味かもわからないような吸い物。

とぼとぼと作り直しに部屋を出て行く狭霧。

呆れながらも頼人は狭霧らしいと思った。

 

夜。

月夜に溶けていく琴の調べ。

やがて頼人は妙な事に気付いた。

琴の弦の中のある一本だけが他と違う色をしていたのだ。

銀色に輝く弦。

その事を尋ねると、蔵から持ち出した時からこうだったので理由はわからない、と狭霧は言う。

そして狭霧は言った。

神社に伝わる品について。

それは願いが叶う何か。

狭霧はそれをこの琴だと思っているのだと言う。

それには何の根拠も無い。

でも狭霧は信じていた。

それに例えそれがこの琴ではなくても、と狭霧は続ける。

この神社のどこかにあるのだとしたら。

それは琴の音と一緒に願いを聴いてくれているかもしれない。

頼人は面白いことを考えるやつだ、と思いながら狭霧の願いを尋ねた。

狭霧は言った。

 

『里の皆が、ずっと幸せに暮らせるようにと』

 

何かで思い切り殴られたような衝撃。

狭霧は里の幸せと、自らの決意をこめながら毎晩琴を弾いていたのだった。

そのことに打ちひしがれる頼人は、自分でも気付かぬうちに涙を流していた。

頼人は狭霧を抱きしめる。

明日に人柱になってしまう狭霧はこんなにも気丈だと言うのに。

何一つしてやることが出来ない自分を責める。

狭霧は言う。

頼人はいつも自分の側にいてくれた。

いつも自分の琴を聴いてくれた。

それだけで嬉しくて、と狭霧もいつしか泣いていた。

頼人の胸で涙を流していた。

もし頼人が自分に何かをしてやりたいと思っているのであれば、と狭霧は言う。

 

「…頼人様のその情愛を…私にくださいませんか…」

 

 

結ばれた後。

狭霧は涙が嬉しい時に出ることを知った。

 

 

頼人は狭霧の強い心を知っていた。

だからもう一緒に都へ、という言葉は言えなかった。

 

 

翌日。

儀式は滞りなく終わった。

人柱が入る部分には空気穴があけられていた。

生きたままで川を治める龍神に捧げるのだという。

 

頼人は儀式を見届けた後、そのまま帰路に着くつもりだった。

儀式を務めた一輔と話す。

狭霧は立派だった。

見ている頼人は足が震えてしょうがなかったと言うのに。

そして最後に別れの挨拶をして一輔と別れた。

 

そのまま頼人は都に帰るはずだった。

 

 

 

しかし聞いてしまった。

 

 

 

山道ですれ違った二人の男。

おそらくは里の者であろうその二人の会話を。

2人が話していたのは人柱、つまり狭霧のこと。

 

あんな細工にだまされるとは、と一人の男は言った。

どれを引いても狭霧に当たるようになっていた籤。

狭霧がいなくなっても誰も困りはしない。

せいぜい神主が飯炊きに困るぐらいだ。

 

笑いながらそんな事を話す男達。

頼人は自分を抑えることなどできなかった。

後ろから踊りかかり、締め上げ、短刀を喉笛に当てる。

「人柱の話は本当かと聞いているんだ。答えろっ!!」

里の者はほとんど知ってる、と男達は勢いよくうなづく。

それを聞いた頼人は里へ向かって一目散に駆け出した。

 

狭霧の名前を呼びながら走る。

狭霧は陥れられたのだ。

崇高な役目だと信じていた。

しかしそこには人々の思惑が入り混じり、汚れきっていた。

 

『里の皆の幸せのためです』

 

狭霧の言葉を思い出す。

そんな連中のために狭霧は命を投げ打った。

頼人は全力で駆けた。

激しい怒りと憎悪だけに突き動かされていた。

 

堤防に着いた頃には大雨になっていた。

狭霧が埋められたところは盛り土に固められ、土嚢が敷き詰められていた。

必死に狭霧を助け出そうとする頼人の回りに里の者が集まりだす。

頼人を止めようとする男達。

やがて後ろから棍棒のようなもので殴られ地面に転がされた。

里の都合、と里の者達は言う。

そんなもののために狭霧を騙したのか、と頼人は怒りに打ち震える。

 

いつしか。

自分でもわからないうちに神社に来ていた頼人。

向かったのは狭霧の部屋。

そこにあったのは銀の弦をもつ琴。

狭霧が願いを叶える品だと言っていた琴。

頼人は自分でも何故こんなところに来たのかがわからない。

ただ琴に話しかける。満足か、と。

そして頼人は理解した。

狭霧は『里の皆の幸せ』を願った。

それは狭霧自身の不幸と引き換えに叶おうとしている。

しかし狭霧は人の役に立つ事が幸せだと言った。

だとすると、今の狭霧は不幸どころかこの上なく幸せだということになる。

卑怯者達に騙され、陥れられた結果で。

そんな自分の考えに舌打ちする頼人。まともな理屈ではなかった。

そして一輔に狭霧を助ける協力を頼めないか、と廊下に出ようとした時。

 

激しい雷が落ちた。

そして雷光を受けて銀の弦がきらめく。

 

それを見た頼人の心に黒い感情が沸いた。

怒りでも恨みでもない。

ただ琴が憎らしかった。

狭霧はこの琴が願いを叶えると言っていた。

頼人はそれだけでも否定したかった。

琴の力などではなく。

狭霧は自らの力と運命で。

そして自ら望んでこの里を救うのだと。

 

「貴様の力などではない…狭霧が…自ら、己が力で…!」

 

琴を持ち上げ、力任せにたたき付ける。

砕け散る琴。

それと同時に弾けた弦が頼人の手に当たった。

 

そしてまた激しい雷鳴が轟いた。

落雷。

 

予感がした。

頼人は意思とは関係なく駆け出していた。

 

堤防に着いた時。

既に水位は限界にまで達し、狭霧が埋められた辺りには巨大な丸太のようなものが横たわっていた。

雷に倒された巨木に人々は騒然としていた。

混乱に乗じて頼人は狭霧を掘り出す。

やがて穴から引きずり出された狭霧。

体は冷え切っていたが狭霧は何とか生きていた。

しかし里の者に見つかってしまい、頼人は堤防の上まで必死に駆ける。

追っ手はまいたものの、堤防は既に決壊が間近に控えているように見えた。

そして狭霧が目覚めた。

 

頼人は一部始終を話してきかせた。

狭霧が人柱となった経緯を。

すると狭霧はうつむきながら言った。

その言葉と行動は頼人には予測できないものだった。

 

「なんで…なんで、私を出したりしたんですかっ!?」

 

そう叫んだ狭霧は頼人の腕を振り解いて立ち上がった。

頼人は何もわかっていない、と狭霧は言った。

はめられたのだぞ、と頼人は叫ぶ。

その後の狭霧の一言は完全に頼人の想像を超えていた。

 

「…存じておりました」

 

狭霧は駆けた。

そして川を背に立つ狭霧。

そのすぐ向こうには轟々と渦巻く黒い濁流。

狭霧は少し離れたところに立つ頼人に尋ねた。

自分がいなくなって悲しかったか、と。

悲しかった、と頼人は正直に答える。

ありがとうございます、と言いながら微笑む狭霧。

狭霧は言う。

もし自分がこの役目を断っても、結局は他の誰かがこの役をする事になる。

そしてその人を愛している誰かが、今の頼人のように悲しむことになる、と。

頼人には理解できない。

それでは狭霧は損しかしていない、と頼人は叫ぶ。

損得ではなく自分がそうしたいんだ、と狭霧。

心残りはないのか。

そう頼人は尋ねた。

一つだけある、と狭霧は言った。

頼人に謝らなくてはならないことがある。

昨夜の吸い物。

あれはわざとだった。

人々の心に残りたいとは思わない。

ただ一人、頼人にだけは忘れて欲しくなかった。

 

「たまにでも思い出してください。奇妙な味の吸い物を作る、変わり者の娘がいたと」

 

すいませんでした、と狭霧は謝る。

頼人の全身から力が抜けた。

どうとも表現できない感情があとからあとからこみ上げる。

 

「どうでもいいっ! いくらでも許してやる!! 早く、こっちへ戻って来い!!」

 

豪雨の中、声の限りを尽くして叫ぶ。

 

「お言葉はありがたいのですが…もう、心残りが無くなってしまいました」

 

そう言って狭霧は静かに微笑む。

そして自分の後ろをちらと見て言った。

 

「…それに、そろそろ頃合かと思います」

 

川の水かさは既に限界だった。

狭霧の足は溢れかけた水に浸かっていた。

 

 

狭霧は半歩後ろへ下がった。

 

 

「さようなら、頼人様。どうか…」

 

 

そのまま背後に向かって倒れこむ。

 

 

狭霧の身体が浮いたように見えた。

 

 

「狭霧っ!!」

 

 

頼人は駆け出して、地を蹴り、手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

「お達者で」

 

 

 

 

 

 

指の先が狭霧の着物に触れた。

 

 

でも掴めなかった。

 

 

 

狭霧は頼人の手をすり抜け、そのまま濁流の中へ吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

「狭霧いいいいぃぃーーーっ!!!!」

 

 

 

 

その後。

狭霧が川に身を投じるとすぐに雨の勢いは弱まり、堤防は決壊寸前のところでどうにか持ちこたえた。

狭霧は人柱として里を救ったのか。

頼人は夜が明け、明るくなったらすぐに川を注意深く見ながら何度も何度も堤防を往復した。

しかし狭霧の姿を見つけることは出来なかった。

 

夕暮れ時。

頼人は岸に座って川を眺めていた。

何事も無かったかのように穏やかな川面。

 

(狭霧…)

 

指先には一瞬触れた狭霧の着物の感触が残っていた。

 

狭霧は見事に里を守った。

いや、琴が願いを叶えたのか。

様々な者を失い、里の平和が残った。

狭霧はこれからもずっとこの堤を守っていくのか。

 

 

 

『代償を払うからこそ、得る物に価値が生まれるのです』

 

 

 

いつか聞いた一輔の言葉。

 

 

 

「狭霧…」

 

 

 

頼人は呟く。

 

 

 

 

「…お前のことを忘れまい。たとえ、どれほどの時が過ぎようと」

 

 

 

(了)

 

 

 

 

さ……ざぎりぃぃぃぃ…………。

 

 

やばい……やばいって…………。

 

 

 

 

 

 

こんな辛い話ってないですよ…………。

狭霧が……狭霧がぁ!!!(慟哭)

 

どういった経緯で「銀糸」が鷺宮神社の琴の弦となったのかはわかりませんが、そんなことはどうでもいいです。

ただ……ただ……ただひたすらに狭霧が切なくて…………。

 

子供の頃から必要とされないことを恐れ続けてきた狭霧。

そんな自分にだけ果たすことができる役割。

それが「人柱」だった。

 

里の皆の幸せのために。

ただそれだけを考えて。

例え周りから陥れられた結果だとわかっていても狭霧はその役目をまっとうしようとした。

そしてそれは見事に果たされた。

 

あとに残ったのは堤防の決壊から守られた村と、頼人の中の深い悲しみ。

あまりにも得られたものに対する犠牲は大きかった。

 

やばい……やばいですよ…………。

 

狭霧が琴に願ったのは『里の皆の幸せ』。

しかし、最後の最後で狭霧が願ったのは頼人の心に残ることでした。

そしてそれは果たされました。

でも俺はそれが琴の、「銀糸」の力だとは思いたくありません。

狭霧は自分の力で里を守ったのだし、自分自身の力で願いを叶えたんだと信じています。

 

ついでに言いますと。

狭霧の声優さんは「みずいろ」の日和と同じなんですよ(聞いた限りでは)。

何となく日和っぽい雰囲気もありました。

「う〜」とか「じ〜」とか。

意外に思われるかもしれませんが全然嬉しくありませんでした。

日和と同じ声優さんだからと言ってそんなところまで似せる必要はありません。

そこに何となく不快なものを感じてしまいました。

同じ声だから同じような雰囲気になっただけだ、と言われればそれまでなんですけどね。

っつーかそもそも「銀色(完全版ではなく)」の方が「みずいろ」よりも先だし。

 

 

 

それにしても辛かった。

あまりに健気な狭霧が痛くて辛くて。

 

狭霧。

 

ただただ皆の幸せのために自らの命を捧げた狭霧。

 

頼む……頼むからもうこんな辛い話はやめてくれ…………。

 

もう…………痛いのは………………いやだ…………。

 

 

頼むよ、第三章!!!

以下次回!!


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