2002.2.23 「がんばれ…がんばれ冬子さん!!」編


自分は汚れているから……と冬子さん……。

果たして、こんな冬子さんを救ってくれるのは一体誰なのか……。

 

少なくとも恭生では無いでしょう。

どうやらこの冬子さん編、恭生は貴理ルートをたどっているようですから。

となると彼女と……そしてあの子達ですね。……英輝も……かな?

 

【8/11】

二日酔いで朝食を食べることもできずに正午近くまで布団で寝ていた冬子さん。

そこにおばさんがやってきて優しく嗜めながらも心配してくれます。ううっ、いい人だ。

 

顔を洗っておばさんが持ってきてくれたご飯を食べます。

泣いていたことが一目でわかる顔をおばさんから逸らしつつお礼を言う冬子さん。

浴衣を汚してしまったのでクリーニングに出してから返す、と冬子さんは言うのですがおばさんは浴衣なんて自分で洗うものだからいい、と遠慮します。

渋る冬子さんに、それでもどうしても気になるのなら、とおばさんは言いました。

「ご自分で洗ってごらんなさい。洗い方も、繕い方も、教えてさし上げますから」

 

と言う訳で自分で浴衣を手洗いすることになった冬子さん。しかも自分の着た浴衣だけでなく、他の人の着た物も合わせて六着も。

夕方までかかって洗濯を終えると食堂で一休み。

「お疲れさま。どうもありがとうね」

おばさんはそう言って麦茶を出してくれました。

「もしかして、ビールのほうがよかったかしら」

「……お酒は当分いいです」

あわてて手を振る冬子さん。それをみてプッ、とおかしそうに吹き出すおばさん。

「……少しは、気晴らしになったかしら?」

「はい?」

「……いいえ、なんでもないのよ」

−−−もちろん、その気遣いはよく判っていた。

もちろんおばさんは気落ちしていた冬子さんの気を紛らわせてあげるために仕事をあげたんですね。

い、いい人だ……おばさん。

 

【8/12】

朝。食堂は明らかに人が少なくなった様子です。祭りが終わったのでみんな宿を引き払ったのでしょう。

自分も祭りまで、と考えていた、と冬子さん。

英輝ももうすぐ引越し。恭生ももうすぐ帰るだろう。貴理だっていずれ引っ越す。

−−−わたしが居たって、なんの意味もないものね。

帰ろう、と冬子さんは思います。

……ここに居て、昔を思い出しても、汚れていなかった頃に戻れるわけではないのだから。

そう決心しておばさんに声をかけようとするのですが逆に大声で呼ばれてしまいます。

「お客様が、いらしてるわよ」

 

あの男だったらどうしよう、とビクビクしながら玄関に向かうと……。

「姉ちゃん!」

「お姉さんってば!」

和典と恵の2人。思わず膝の力が抜けてしまい座り込んでしまった冬子さん。

恵は何故か一瞬だけ浴衣でした。

遊びに行こう、と冬子さんの手を引っ張る2人。

「遊ぶのはいいけど、何して遊ぶつもりなの」

「水遊び!」

「えー?」

いいけど水着が無いから自分は見てるだけ、と言う冬子さんに、あるよ、と恵がバッグから取り出したのは黄色い布切れ。

「ほら、この前のお祭りで、和典が当てた水着!」

……!

……ちょ、ちょっと待ってよ。

「ね、これがあればいいでしょ」

わたしに、そんな安っぽい、ペラペラな水着を着ろっていうの!

「和典が、どうしていいかわかんなくって」

「姉ちゃんにあげようかと思ったら、小川さんにプレゼントしたら、っていうからさ」

有夏、あの子−!

「それで、水着がないから、泳ぎにいけないっていってたの思い出して」

なんだかんだ言ってもこの2人に押し切られたら勝てる訳もなく、冬子さんも承諾です。

「わーい!」

 

水遊びと言っても川に行く訳でもなく、旅館の裏手で和典の持ってきたビニールのプールでした。

冬子さんも童心に返り、2人と一緒にキャーキャー言いながら水遊びを楽しみます。

……わたし、ひょっとしたらまだけっこう若いかもね。

 

夕方までひとしきり楽しんで和典達は帰っていきました。

風呂に入りながら思い出すのは和典との会話。

それによると今は恭生1人で探し物をしていると言うのです。

てっきり恭生と貴理は祭りの時の様子からうまくいっているのだと思っていた冬子さんには2人に何があったのかわかりません。

他人の事とは言え、やっぱり気になる冬子さん。

もう少しだけここにいよう。そう決心する冬子さんでした。

 

【8/13】

朝、おばさんの言葉に驚く冬子さん。

何でも冬子さんの予約は前日までだったと言うのです。

でもおばさんの厚意によりもうしばらく逗留することにしました。

家に電話を入れて、昼過ぎになって冬子さんが出かけて行ったのは小学校。

大丈夫だから。そう自分に言い聞かせながら。

 

校庭では恭生が1人で探し物作業をしていました。

英輝は引越しの準備があると言っていたけど貴理はどうしたのか。有夏はもう2人に構う気はないのか。

冬子さんには状況がさっぱりわかりません。

手伝ってあげようか、とも思いますがそれま辞めておきます。

……これで、少しは恭生と貴理も大人になれるかもしれないし。

そして2人の仲違いを心のどこかで喜んでいる自分。

でもそれが寂しいのも本当。なんとかうまくいってほしい。

あの子たちには、わたしのような悲しい思いはしないでほしい。

幸せになってほしい。

2人の恋を応援したいのか、引き裂きたいのか。それは自分でもわからないのでした。

 

夕食後、1人でビールを飲んでいた(もう酒はいいのかよ?)冬子さんを有夏が訪ねてきました。

聞いてほしい話があって、と有夏。何故か声はありません。

場所を河原に移して話をする2人。

有夏の相談と言うのは当然貴理のことでした。貴理のことを愛している有夏に冬子さんは恭生と貴理の仲を引き裂くことを助言します。

恭生はいい人だ、と戸惑う有夏にだからと言って恭生に貴理を盗られていいのか、とけしかける冬子さん。

でもどうしたらいいのかわからない、と言う有夏に一言。

「あなたが、恭生を誘惑してしまえばいいのよ」

あんたが裏で糸引いてたんかい!?

「この身体を差し出されたら、ほとんどの男は手をつけるでしょうね」

どんどん有夏をけしかける冬子さん。

−−−みんな、みんな汚れてしまえばいい。

有夏も恭生も、貴理も。

わたしと同じように。

そう思いながらも、そう言いながらも冬子さんには予感がありました。

有夏が身体で迫っても恭生は手を出さないのではないか、と。

それならそれで恭生の気持ちは本物。その時は諦めなさい、と有夏に告げる冬子さんでした。

 

一体冬子さんはどうしたいのでしょうか?

それを一番わかっていないのはきっと冬子さん本人。

 

【8/14】

朝。冬子さんが思い出すのは昨夜の有夏との会話。

部屋に戻って酒を飲みながら軽く猥談。

何だかんだ言いながら有夏は恭生のことを悪からず思っていることを知りしらける冬子さん。

そして買い物に行こうと車の所に行くとそこには英輝がいました。

話がある、と英輝。

引越しの準備で忙しかったんじゃなかったのか、と言う冬子さんにそんな場合じゃなくなった、と英輝は言います。

「……あのさぁ、あんた昨夜倉林になんか吹きこまなかったか?」

「なあに?」

「なんか、よけいなことを言わなかったかって、聞いてるんだよ!」

そう言って冬子さんをにらみ詰める英輝。

明らかに有夏の様子がおかしくなった、原因はあんた以外に考えられない、と英輝は冬子さんにつめよります。

とぼけたりすかしたり。英輝を軽くあしらう冬子さんでしたが、ある英輝の言葉に反応してしまいました。

いつまでここにるんだ、という言葉。そして。

「もう、充分昔の思い出は堪能しただろ」

楽しい思い出なんて何も無い。ここにあるのは辛い記憶だけ。

そんな冬子さんにそれは禁句でした。

「……こんな集落、大嫌いよ!」

冬子さんの気迫に怯えたようにしていた英輝は、内面を吐露する冬子さんを悲しい視線で見つめます。

ダムの底に沈む集落を確認して祝杯をあげに来た、と涙を流しながら叫ぶ冬子さん。

しばらくして英輝は呟くように言いました。

「……済まなかった」

冬子さんが出て行った当時、自分はまだ子供で何も事情を知らなかったんだ、と深々と頭を下げる英輝。

「でも、さ」

去り際に英輝は言いました。

「俺にはあんたの立場はよくわからないけど、でも」

冬子さんを哀れみのような眼差しで見つめる英輝。

「それでも、悲しい記憶だけ、って事はないんじゃないのかな」

……わたしってば、なにを。

なんで、こんな事をいってるんだろう。

「だったら、こんなに長いこと、泊まってないだろうし。第一、あんたはやっぱりここに来ないんじゃないのかな」

 

冬子さんにとってこの集落の記憶は悲しいものだけじゃない?

だとしたらそれはなんなんだろう……。恭生や貴理との思い出以外にあるのでしょうか。

だとしたらこの旅はそれを見つけることが終着点となるのでしょう。

 

【8/15】

朝。泣いたのがはっきりわかる跡を気にしながら朝食。

忙しげに働くおばさんを見てぼんやりと昔の母親を思い出す冬子さん。

そんな母親の背中を見ているのが好きだった自分。そんなことすら忘れていた。

元気の無い冬子さんを心配して声をかけてきてくれるおばさん。

ホームシックか、と心配してくれるおばさんですが冬子さんが悲しいのはそんな理由ではありません。

英輝には随分ひどいことを言ってしまった。有夏にも八つ当たりしてしまった。

わたしは、ダムを理由にして、誰かを傷つけずには居られない、今の自分が悲しいんです。

堕ちていく……

望んで、汚れに堕ちていく、今の自分が。

「ね、元気出して」

 

徒歩でゆっくりを集落を見て回る冬子さん。何故自分がここに来たのかを問いながら。

集落の辻でぼんやりと座り込んでいる冬子さんの前を和典と恵が通り過ぎました。

2人は冬子さんに気付かなかったようで、冬子さんはその後姿を見送りながら昔の貴理と恭生を思い出します。

その時、突然脳裏に浮かんできた1つの光景。

校庭の片隅。

シャベルで、何かを埋める子供たち。

あかね色の夕日。

−−−あの子たちは、あの時確か……

思わず立ち上がる冬子さん。

思い出した!

そうよ、あの子たちは、確かに埋めていた。

その場所を冬子さんは思い出しました。

恭生は違う場所をさがしていたのです。当時は校庭だったその場所も今は違ってしまっているから。

−−−教えてあげようかしら。

そう思いながらもその考えを打ち消す冬子さん。

……探せるだろうか、わたしに。

あの子たちの埋めた品物を。

見つけられたらあの頃に戻れるような気がした。

目の前で品物を埋める幼いカップルを、本当に心から応援できた、あの頃の自分に。

 

恭生と貴理の探し物の場所を思い出した冬子さん。

果たして冬子さんは見つけることができるのか。

そしてまだ汚れていなかったあの頃に戻ることができるのか!?

事態は風雲急を告げております!!

 

【8/16】

翌日一杯で宿を引き払うことをおばさんに告げる冬子さん。2日間で探し物をするつもりなのでしょうか?

おばさんも寂しがってます。

そして朝食を終えて学校へと向かいます。もちろん恭生と貴理の埋めた品物を探すために。

校庭、と言う恭生の記憶は正しかった。でも校庭も変わっていたのです。

当時はもっと子供の数も多く、今はもう取り壊されてしまった校舎があり、その分校庭も広かった。

今は職員用の駐車場となっている場所。

当時冬子さんは、教室の窓からその辺りを見下ろしていました。何かを埋めている2人を。

 

場所は大体わかってる、とシャベルを振るう冬子さんですが、駐車場の地面は校庭よりもはるかに固く、到底シャベルの歯が立たないものでした。

これではとても1日で掘り出せるとは思えません。誰かの手を借りないと。

恭生に言えば手伝ってくれるでしょう。でも冬子さんは恭生の手は借りたくありません。

恭生と一緒に掘るとなると、自分は単なる手伝い役になってしまいます。何故なら埋めたのは恭生だから。

今までならそれでもよかったかもしれません。でも。

−−−掘り出したいの。

わたしの力で。

埋まっている品物を。

品物を埋めた頃と2人は変わっていない。でも自分は変わってしまった。

見つけたいの、もう一度。

あの頃のわたしを。

一心にスコップを振るう冬子さん。

 

「……あんた、何やってんの」

突然現れたのは英輝でした。何故かスコップを持って。

「どうして、あんたがあいつの埋めたものを探してるんだよ!」

「ちょっと、事情があってね」

「恭生には言ったのか?」

「言ってないわ」

わたしが探したいだけなの、と作業を続ける冬子さん。

恭生には黙っていてね、と言う冬子さんに英輝がキれました(?)。

「そうまでして、あいつらの邪魔したいのかよ」

「えっ?」

英輝の言葉の意味が判らず思わず聞き返す冬子さん。

冬子さんが2人の仲を気に入らないようだったのはわかっていたが、と英輝。

「思い出の品物を横取りしてまで、妨害するか?」

「そんなんじゃないわよ」

言ってもわからない、英輝のようにとられても仕方ない、と冬子さんは思います。

「別に、あの二人の邪魔をしたいわけじゃないの」

ただ埋めてあるのが何か知りたいだけ、と言って冬子さんは作業を続けます。

「そうはいってもな」

「だいたい、貴理と恭生の関係にはもう必要ないでしょ」

あなたも判ってるように、と冬子さん。

「……まぁ、それはそうだけどな」

その後はしばらく黙って作業を続ける冬子さん。そんな冬子さんを見つめる英輝。

「……なぁ」

「なあに」

「じゃあ、どうしてそこまでしてるんだよ」

「いったでしょ」

埋めてあるものが見たいだけ、と冬子さんは言いますが英輝には通用しません。

「本当に、それだけなのか?」

「……ただの、感傷だと思わない?」

「はぁ?」

「子供の頃に、埋めたものを掘り出そうなんて」

「それはそうだけど」

でもね、と冬子さん。

「……その感傷が、どうしても必要な時もあるの」

「今の、あんたがそうなのかよ」

「……秘密」

「ハァ!」

わざとらしいため息。

「あんた、もう昼飯は食ったのか?」

「もう、そんな時間?」

「そんなこったろうと思ったよ」

そう言いながら冬子さんからスコップを取り上げる英輝。

一休みして食事にしたほうがいい、と言いながら。

「でも」

「ちゃんと食うもの食わなきゃ、力だってでねーよ」

午後も作業するんだろ、という英輝に冬子さんは頷きます。

「……俺も、手伝ってやるから」

きたぁ!! 漢・英輝!!

「えっ?」

びっくりして、どうして? と聞き返す冬子さん。

「どうしてって、暇だしな」

照れた風にしながら、恭生が探してるようなら手伝ってやろうと思ってきた、と英輝は言います。

それは本当でしょうが、暇と言うのはどうでしょう。引越しの準備や予備校だってあるはずです。漢だぜ、英輝……。

「本当? 嬉しいわ」

 

校舎の中で英輝にもらったおにぎりを食べて、借りたシャツに着替える冬子さん。

そのシャツは英輝がその場で脱いでよこしたもので、クンクン、と匂いをかぐと(かぐなよ)英輝の汗のにおいが。

それでも不快な感じはしませんでした。

それどころかなんとなく楽しくなってきた冬子さん。

 

駐車場に戻るとたまたま遊びに来たと言う和典と恵もいました。

手伝ってくれると言う2人に感謝しながら作業開始。

冬子さんから校庭と駐車場のからくりを聞いて激しく納得した英輝もさらに気合を入れて作業を進めます。

 

そして夕方。

結局見つからなかったものの英輝は声をかけてくれれば明日も手伝うと言ってくれました。

「英輝くん、わたし、この子たちと一緒に宿のお風呂に入って、綺麗にしてから帰すから」

「その方がいいでしょーね」

「それが終わったら、一緒にビールでも飲もうよ」

「はい?」

驚く英輝。

「お姉さんがおごったげる。今日、よく作業してくれたから、それに」

身体をたくさん動かして、ちょっと誰かと飲みたい気分なの、と言う冬子さんに英輝は笑って返しました。

「りょーかい」

 

嫌がる和典を強引に風呂場まで連れて行く冬子さん。恵は全く気にしていない様子でさっさと脱いでました。

いや、別に決して、見たい訳ではなく。

もう男の前で服を脱ぐのなんて慣れっこのはずなのに何故か和典の前で裸になることにドキドキしている冬子さん。

それは徐々に汚れていなかった頃の自分に戻ってきている、と言うことなのでしょうか。

そして一緒にお風呂。

恵のオールヌード立絵もありますがだからどうってことはないです。

お互いに洗いっこ。そして2人を先に脱衣所に戻すして1人でゆっくり風呂につかる冬子さん。

自分も脱衣所に戻ると2人はなにやらゴソゴソとやっていました。

「有夏お姉ちゃんより、おっきい!」

「これ!」

冬子さんのブラジャーで遊びまわる恵。

自分の胸にあてて

「お姉さん!」

頭にかぶって

「ねこさんっ!」

ぶわははははは。

そのまま廊下まで飛び出していった恵を追って、冬子さんもバスタオルを巻いた格好のまま廊下へ。

ドン!

廊下で恵とぶつかったのは……

「……なにしてんすか、あんたたちは……」

やけに冷静な英輝でした。

 

和やかに冬子さんの部屋でビールを飲む2人。

冬子さんのからかいを軽くかわす英輝。大人です。

品物を見つけたら恭生達に渡すのか、と英輝は冬子さんに訊きます。

「原くんは、判ってると思ったけど」

夜空を見上げながら冬子さんは言います。

「いまのあの二人には、そんなもの必要ないわ。むしろ邪魔なくらいよ」

「確かにそうだけど、でも」

「でもね」

小声でつぶやくように冬子さんは言います。

「わたしには、必要だと思ったの」

 

英輝という協力者を得て恭生と貴理の埋めたものを探す冬子さん。

果たして見つけることはできるのか。

そして昔の自分に戻ることはできるのか。

以下次回!!


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