2002.2.16 「本当の気持ち?」編


果たして恭生は本当に探し物を諦めてしまったんでしょうか…。

 

【8/10】

祭りの後、みんなで大騒ぎをしたせいで二日酔いの恭生。

この日は朝から祭りでしたが恭生は顔を出す気になりません。

思い出されるのは皆と合流した後の有夏のことです。

何故か急に積極的になった有夏。

どこかみんなに、特に冬子さんに見せつけるような態度をとっていたそうです。

そんな昨夜の様子を考えると有夏と一緒にみんなと会うのに気が引けてしまう恭生。

確かに有夏はかわいい。でも妹のように見てしまう自分もいる。

そんな曖昧な気持ちのままでは有夏やみんなに会えない、と決意する恭生でした。

 

家にいあると誰かが祭りに誘いに来るだろう、と裏の山に登る恭生。

昔は1日がかりで登ったその山をあまりにも簡単に登れてしまったことに驚きます。

「昔の思い出は、やっぱり、思い出でしかないのかな」

結局全ては子供だった。

祭りの時の尾も思いつめた有夏の様子を思い出す恭生。

「有夏ちゃん、か」

−−−一度、真面目に考えてみなきゃな。

見下ろすと、そこにあるのはもうすぐ失われてしまうひそかな故郷。

それは今まで貴理の記憶と共にあるものでした。

そしてもう探し物をするのはやめよう、と心に決めます。

−−−それは、もはや過去なんだから。

 

【8/11】

新しく始まった1週間。

貴理と有夏は学校へとバスに乗ります。

元気な有夏ですが、いつもにもまして明るい有夏の様子に貴理も心配顔。

−−−こんな能天気な表情をした有夏、これまで見たことないわよね。

 

学校からの帰りのバス。

相変わらず有夏はどこか浮かれた様子。

そして貴理は集落に着いたら小学校に行こう、と考えます。

恭生はまだ探し物を続けるつもりだろう、と考えているからです。

冬子さんと恭生がキスしていた、と聞いた時は動揺してしまったけど、本当かどうかわからない。

それにもし本当だとしても恭生は友達であることに変わりはない。

自分だってキスはしているから冬子さんとは条件はイーブン。

恭生があんなに必死に探し物をしているのだって自分と埋めたものだからだろう、と貴理。

そしてもしそれが見つかったら。

もしかしたら自分と恭生は友達から……。

−−−焦らなくても、いいわよね。

まだ時間はあるし、もし恭生と冬子さんは仮にそうだったとしても仕方ない。

子供の頃からずっと憧れてた先輩だし、と貴理は目を瞑りながら考えていると横から袖を有夏が引っ張ってきました。

「どうしたの?」

「いえ、あの、ちょっと」

照れたように頬を染めてわずかに俯く有夏。

「少しだけ、相談があるんです」

「相談?」

有夏の相談。それは。

「実は、好きな人ができたんです」

……へっ?

「それで、先輩にその」

−−−それって、つまり……

「よかったじゃない!」

有夏の手を掴んで誰々? と貴理。

「せ、先輩、声」

そんな大声出さないでください、と有夏。

祝福しながらも貴理は少しホッとしています。

有夏はかわいい後輩ではあるけどずっと一緒にいられてそれが重荷ではなかった、と言えばそれは嘘。

これで有夏に気を遣わずに校庭に行けるようになる、と貴理は喜びます。

でもそんなに話が上手くいくはずがなく。

「先輩、応援してくれますか」

「もちろんよ」

有夏の初恋。喜んで応援すると貴理。

「で、相手は誰?」

「実は、恭生さんなんです」

……

恭生?

「そ、その、夏休みに入って、一緒にいろんな事してて」

……それって。

つまりそれは、有夏が恭生を……

「最初は、良くわかんない人だなって思ったんですけど」

有夏が、恭生を好き……

「きっかけは本当にひどい理由だったんですけど、実際に話していたら、だんだん本当にそんな気になっちゃって」

−−−恭生が好きって!

「だから、思い切って、お祭りの日に……」

一瞬、目の前が暗くなったように感じる貴理。

「恭生さんに、いってみたんです」

「で、でも」

−−−だって、恭生は!

「恭生は、だって」

石膏像の酔うに白くなった自分の手を見つめる。

「恭生は、ここの人じゃないのよ」

気持ち悪い。

吐き気がする。

「もうすぐ、帰っちゃう人だし」

「でも、あたしたちも、もうすぐ、ここの人じゃなくなっちゃうし」

「だけど」

「それに」

−−−恭生……

「恭生さん、それでもちゃんと、つきあってくれるって」

 

夕方。

小学校の校庭に1人たたずむ貴理。

「恭生!」

誰もいない。

先週までみんなでワイワイと楽しく穴を掘っていたのが嘘のように。

もう諦めてしまったのか。

有夏が告白したら、もう全て不要になってしまったのか。

恭生は自分と埋めた筈だと、何度も語っていた。

−−−それはもう、ただの過去になってしまったの?

涙がにじんできた目で、昔恭生をキスをした校舎を見上げる貴理。

あの頃の恭生は、もう居ない。

−−−どうして。

どうして来ないのよ!

有夏と付き合うようになったらいきなり来なくなってしまった。

その程度のものだったのか。

たとえどんな恋をしてもあの頃の思い出は、友情は変わらないと思っていた。

だから探しているのだと思った。

……それだけは。

それだけは、何があっても永遠だと信じていたのに!

 

い、痛ぇ……。

貴理の気持ちが。

貴理の涙があまりにも痛い……。

何故有夏はあんなことを言ったのか。

恭生が有夏と付き合うと言ったなんて全て嘘。

貴理に恭生を諦めさせるため?

だとしたら有夏の気持ちは本物?

それとも貴理から離れることで気をもたせようとしてる?

わからない……。

 

【8/12】

朝。

結局自分の気持ちはわからない。

貴理と直接話してみるしかない、と貴理の家へと向かう恭生。

そうすれば貴理に対する自分の気持ちもはっきりするかもしれない。

それに有夏のことも。

ほんの数回しか2人きりで話したことはありませんでしたが、徐々に有夏の態度が変わってきていることには気付いていました。

そしてそれが単純に好かれているような感じではなかったことにも。

 

貴理は学校へ行く支度をしていました。

少し冷たい感じのする声と態度にやや蹴落とされ気味の恭生。

学校へ向かいながら話そう、と言うことになり一緒に歩く2人。

さっきとは打って変わって明るい様子の貴理。

聞きたいことがある、と言う恭生に対して明るく貴理は言います。

「もしかして、女の子の話?」

「き、貴理?」

「あら、図星かしら?」

クスクスと笑いながら貴理。

「とうとう、恭生も色気づいたの?」

「そ、そんなわけじゃないんだけど」

あからさまに動揺している自分を戒める恭生。

「その、だから、どうしようか、って思って、それだけで」

「何言ってるのよ」

そして貴理は恭生を見上げて言いました。

「有夏はいい子よ」

「え、えっ?」

「なに狼狽えてるのよ。みっともない」

勢いよくパン! と恭生の背中を貴理は叩きます。

「恭生も、ようやく彼女ができるんだから、少しはシャンとしなきゃ」

そして恭生の前に出て恭生の振り返る貴理。

「引っ込み思案なところもあるけど、有夏は本当にいい子よ」

やっぱり有夏は貴理に相談していたのか、と恭生。

「優しいし、可愛いし、マメだし、恭生にはもったいないくらいよ」

「貴理とは、えらい違いだな」

「そうよ」

わたしとは全然違っていい子なんだから、と貴理。

そう言うとそれきり黙りこんで早足で貴理は歩いていってしまいました。

そんな貴理の様子を見て恭生は思います。

やっぱり有夏は貴理にとって可愛い後輩で。

そして自分が誰と付き合おうが貴理には関係ないんだな、と。

歩調を早めて貴理に追いついた恭生。

少しは動揺したり妬いてくれるかも、というのは思い上がりだったか、と思いながら貴理に話しかけます。

「なあ」

でも。

確かに有夏は可愛い。でもやっぱり。

「なあ、貴理」

恭生は貴理の細い後姿を見つめながら何か判ったような気がしていました。

自分にとってはやっぱり……。

貴理……

僕は……

「待てよ、おい」

「……可愛い、後輩なんだから」

そっぽを向きながらも明るい声で貴理は言います。

「絶対に、泣かせたりしないでよ」

「貴理?」

「つきあうのは構わないけど、中途半端は駄目よ」

勢い良く振り向く貴理。

「あの子は、ああ見えて、母子家庭で、男の子に虐められたり、いろいろと苦労してるのよ」

真剣な表情で貴理は恭生を見つめながら言います。

「だから、ちゃんと大切にしてよ」

−−−貴理!

心の中で叫ぶ恭生。

でもそれはやがて弱いものになって。

……そうか。

それが、貴理の僕に対する、答えなのか。

「泣かせたら、許さないわよ」

−−−判ったよ。

貴理がそう言うなら、と恭生は思います。

貴理が、僕にそう命じるなら。

昔から貴理にはかなわなかった。

一緒に遊んでいても必ず貴理が最後には何事も決めていた。

悔しくない訳ではなかったけど、それが幸せだった、と恭生。

「判った」

だから。

貴理がそう言うなら。

「……大切にするよ」

−−−短い恋だったなぁ。

ようやく気付いたと同時に、あっさり砕け散った恋。

「約束する」

だから、これが最後だ。

貴理の言葉を聞くのは。

「そうだ、でも」

くるりと振り返った貴理。

たとえ恭生が有夏とつきあってもこれまで通り自分達は友達だよね、と言う貴理は涙ぐんでいるようでした。

「当たり前だろ」

内心、今更何を言ってるんだよ、と恭生は叫びます。

そこで貴理はバスの時間があるから、と言い出しました。

「……わたし、今日は早いバスで帰ってくるから」

「だから?」

「有夏には、遅いバスに乗るよう、伝えるから」

低く重い貴理の声。

「……判った」

貴理はそのまま何も言わずに立ち去っていきました……。

 

あわわわ……。

こ、これで恭生と貴理は終わってしまったのでしょうか?

そりゃ今回は有夏狙いだったけどさ……で、でも!

やっぱりこんなのは納得できない訳で。

そしてこんな付き合い出し方をしたって幸せになれるほどゲームは甘くない訳で。

 

気持ちが入らないままボロボロの勉強が終了。

恭生はバス停へと向かいます。

しばらくしてやってきたバスから最後に降りてきた小さな姿。

「……有夏ちゃん」

「た、恭生さん」

「どうしたの?」

「えっと、その」

有夏はバスから降りると立ち止まってしまっていたのです。

「貴理先輩から、言われてたんですけど」

赤い顔を俯かせて小さな声で、恭生さんが待ってるからって、と有夏。

「それで?」

迷惑だった? と恭生。

「いえ、そんなことありません」

ブンブン、と首を振る有夏。

「……ちょっと、恥ずかしいだけです」

話があったから、と恭生は有夏に近づきながら言いました。

「話は、もう判っているかもしれないけれど」

照れたように、恥らうように、そしてどこか怯えたように有夏は恭生を見つめます。

「……これから、よろしく」

「……え?」

「聞こえなかった?」

有夏の肩をつかんで自分の方に引き寄せる恭生。

恭生は有夏を抱きとめるようにして耳元で囁きました。

「貴理が、有夏はいい子だって」

全身を震わせる有夏。

「いい先輩をもったね」

「……恭生、さん」

「これからは、貴理と同じくらい、僕を頼ってくれていいよ」

恐る恐る手を伸ばして恭生のシャツの裾をギュッと掴む有夏。

「……嘘みたい」

夢じゃないですよね、と言う有夏でした。

 

有夏はやっぱり本気?

本気じゃないとしたら恭生の告白(?)にどこか怯えていたのは『自分で策をめぐらせておきながらやっぱり本当に恭生と付き合うことになるのはやっぱり怖い』とか?

……わかりません。

 

狙い通り付き合い始めた2人ですが俺の心は全く晴れません。

果たして有夏の真意は?

恭生はどうするのか?

貴理は? 英輝は?

 

突っ込みどころの少なさに苦労しながらも以下次回!!!


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