2002.2.13 「最後の夏」編
貴理に迫り(ああ、何て柔らかい表現…)、すんでの所で思いとどまった恭生。
しかし貴理を怯えさせてしまったのは間違えようの無い事実。
果たして貴理は? 恭生は?
【8/17】
英助爺さんには気分が悪いと嘘をついて布団に横になり続ける恭生。
……このまま、朽ちてしまいたい。
昨夜の自分の行動をひたすらに悔いる恭生。
許されるわけが無い。
最後の夏を、ただ貴理と一緒に過ごせればよかった。
「……そして、思い出さえあれば」
でもそれは全て言い訳だった。
貴理に自分の気持ちを伝えることからの逃げに過ぎなかった。
想いをちゃんと告げる事も出来ず。
かといってこらえることも出来ず。
結果としてその反動を暴力的に貴理にぶつけてしまった。
「バカヤロウだ」
陽がのぼっても布団から出ようとはしない恭生。
もう、帰ろうか。
そんなことが頭をよぎります。
英助爺さんとも生活できた。
もう思い出の品物を見つけたところで貴理との関係は戻れない。
−−−貴理に、一言だけ謝って。そして、ここを離れよう。
……許しては、くれないだろう。
声もなく泣き続けた昨夜の貴理の姿が思い出されます。
許して欲しいなんて言えない。
ただ一言だけは伝えたい。
すまなかった、と。
階下に下りると英助爺さんはおじやを作って待っていました。
もう大丈夫です、と言っておじやを食べる恭生。
「……もうそろそろ、帰ろうかと思うんだ」
爺さんは「いつでも遊びに来い」と言います。
今まではいつも「帰って来い」だったのに。
この村がダムに沈んだら爺さんは遠くの老人ホームに入ることになってました。
つまりここで会うのはこれが最後と言うことになります。
涙ながらに別れを惜しむ2人。
今日の夕方のバスで帰る、と爺さんに告げて恭生は外に出て行きました。
「もう帰るって?」
電話で呼び出された英輝。
「うん、ちょうど日曜だしね」
「お前に、曜日がなんの関係があるんだよ」
もうちょっと遊んでいけ、と迫る英輝。
でも恭生の気持ちは変わりません。
何も自分が突然帰るのは特別なことじゃない。
いつもこうだった。
そしてこの夏は別に特別な夏じゃないんだろ? と恭生。
英輝ももう会えない訳じゃない、と納得してくれました。
ビールで別れを惜しむ2人。
「で、いいのか?」
「いいんだ」
『高校3年生』じゃないからビールを飲んでもいいのです。
もちろん英輝が言っているのはそのことじゃありません。
何が『いい』のか。
それは貴理のこと。思い出の品のこと。
「僕が本当に探していたのは、昔の思い出でも品物でもなかったんだ」
目を伏せて恭生は言います。
「もう、いいんだ」
「そうか」
恭生を貴理の間に何があったのか知らない英輝。
でも英輝は何も聞きません。
「でもまあ、あいつらにも挨拶はしていけよな」
「うん、また後で挨拶には行くよ。いや、来てもらおうかな」
貴理と2人きりで会うのをどこか恐れている恭生。
「みんなで、一緒に会った方が、楽しいし」
「ああ、そうだな」
家に帰ってみんなに電話しといてやる、と言って英輝は駆けていきました。
その後、冬子さんを訪ねて戸田旅館まで行きますがあいにく不在。
恭生はひとまず英助爺さんの家に帰ってきました。
そこでもう一度荷物の点検。
そして感慨にふけっていると下から爺さんに呼ばれて階下へ。
爺さんは土産に自分で作った野菜をくれました。
それは何より嬉しい爺さんからの土産。
礼を言って受け取る恭生。
そして爺さんは有夏から電話があったことを恭生に告げます。
「有夏ちゃんから?」
貴理から伝言を頼まれたらしい、と爺さん。
「『場所を思い出しました』」
「……は?」
「『場所を思い出しました。昼は用事があるので、夕方、来てください』そう伝えてくれれば判る、といっておったぞ」
呆然と立ち尽くす恭生。
−−−そんな。
そんな、あり得ない!
そして恭生は帰るのを一晩遅らせることを爺さんに告げます。
貴理が『約束の物』を埋めた場所を思い出した?
ありえるのでしょうか?
果たして貴理は何を考えているのでしょうか……。
夕方。
小学校へ向かった恭生。
教室から夕日を眺める恭生は、いつか誰かとこんな風に夕日を眺めていたような気がしていました。
そしてもう空には星が出始めていた頃。
背後で、コトン、と音が響きました。
「入りなよ、有夏ちゃん」
「……やっぱり、嘘って判ってたんですね」
はい?
よ、読めなかった、この展開は……。
「まあね」
外を眺めたまま恭生は答えます。
「今更、貴理が来るとは思えないからな」
「判って、ずっと待ってたんですか?」
「君だって、ずっとそこに居たじゃないか」
有夏はずっと前から廊下にいて、恭生もそれに気付いていたのです。
「僕を引き留める為だけなら、何もそうして待ってることはないだろ」
「古積さんに、聞きたい事があったんです」
恭生に歩み寄る有夏。
「古積さん、貴理先輩とつきあってるんですか?」
「なっ!?」
思わず振り向いてしまった恭生に真剣なまなざしの有夏。
「先輩と、恋人同士なんですか?」
「……僕はこの夏だけ来て、また遠くに帰る人間だよ?」
「時間とか距離とか、そんなの関係ありません!」
はぐらかそうとして恭生に大声を上げる有夏。
「そんなの、なんの関係もないじゃないですか!」
その剣幕に恭生は思わず黙り込みます。
「昨晩遅く、先輩から電話がありました。ずっと、ずっと静かに泣き続けるだけの、よくわからない電話が」
思わず拳を握り締める恭生。
「でも、先輩は確かに一言だけ言ったんです。……恭生が、って!」
恭生は昨夜のことを思い浮かべます。
「古積さん、先輩とつきあってるんですか? ……先輩を泣かせたんですか!」
何も言えない恭生。
「どうなんですか! 答えてください!」
ヒステリックな有夏の声。
「……答えられないくらいの気持ちなら、もうこれ以上、先輩には関わらないでください!」
「……有夏ちゃん」
「あたしは、ずっと先輩を見つめてきました。先輩にとってはなんでもない、ただの後輩でしかないと判ってるけど、でも、それでもずっと、あたしは先輩を見つめてきたんです」
それは単なる先輩後輩の憧れや思慕とは明らかに違う感情。
−−−かもしれないな。
そんな有夏の気持ちに恭生は気付いていました。
きっと英輝も。
わかっていて英輝は有夏のことを想っていたのです。
判ってなかったのは貴理だけ。
「……先輩が、好きなんです。本当に本気で!」
「うん、判っていたよ」
恭生は頷きながら言いました。
「有夏ちゃんの気持ちは」
「あたしなら、絶対に先輩を泣かせない。幸せにするとか、そもそも、先輩はあたしを受け入れてなんてくれないだろうけど」
辺りを切り裂くような声で叫ぶ有夏。
「でも絶対に泣かせたり、悲しい思いだけはさせない!」
「……それは、判らないさ」
「どうしてですか!」
「なぜなら……僕だって貴理を泣かせたいわけじゃなかった」
昨夜の光景をもう一度思い出す恭生。
「貴理を、泣かせるつもりじゃ決してなかった」
「でも、先輩は泣いてました!」
バン! と激しく机を叩く有夏。
「あたしのところに、電話をかけてきて、ずっと泣いてた!」
そして有夏は恭生に近づいてきて言います。
「先輩は詳しく話さないけど……何があったのか、あたしにも想像くらいはできます」
恭生の前で立ち止まり、突然ブラウスのボタンを外し始めた有夏。
「あたしは、先輩を泣かさない。その為にはなんだってします」
思いつめた目。
「そして、わたしの方が先輩を想ってるんだと、証明してみせます」
「あ、有夏ちゃん」
「古積さんが、もし貴理先輩ともう二度と会わないでくれるというなら、先輩をもう泣かさないというなら」
そう言いながらブラウスのボタンを外していく有夏。
「……わたしの身体を、先輩のかわりに自由にしていいですから」
そう言って服を脱いでいく有夏ですが恭生はそんな有夏を見ても全く欲情しません。
夕闇に白く浮かぶ有夏の身体は綺麗でした。
それでも恭生は何も感じないのです。
貴理は有夏から離れていったりしない、たとえ後輩としてでも有夏のことが大好きだから。
その有夏がこんなことをしたら貴理は悲しむ。貴理はきっと泣いてしまう。
そう諭すように恭生は有夏に言います。
「だから、そんな事しちゃ駄目だよ」
「いいんです。だって」
突然涙声になる有夏。
「だって、どっちにしたって、先輩はもう、あたしの事は見てくれないんだもん!」
そう言うと有夏は堰を切ったように激しく泣き出しました。
「やだ、嫌だよぉ」
そっと有夏の顔を抱きしめる恭生。
「先輩をとらないで、お願いだから、あたしから先輩をとらないでよぉ」
「大丈夫だよ」
泣きじゃくる有夏の頭を恭生は何度も何度もやさしく撫でるのでした。
しばらくして。
裸のままでしたが有夏は泣き止みました。
そこに大きな足音を響かせてやってきたのは……
「……やっぱり、ここに居たか」
捜したよ、と英輝。
「どうしたんだ?」
「変な話が、聞こえてきたからさ」
半裸状態の有夏に驚くこともなく、英輝は恭生に近づいてきて言いました。
「迷惑をかけて悪かったな。話の発端は俺なんだ」
意外な言葉。
思わず恭生も聞き返します。
「それは後で、説明するとして」
自分のシャツを脱いで有夏にかぶせる英輝。
「爺さんがえらく心配しているぜ。とりあえず、この場は俺に任せて、お前はいったん帰れよ」
「だけど」
「倉林は、まだ話が出来る状態じゃないからさ」
英輝にそう言われて教室を出る恭生は一つだけ有夏に告げました。
「僕も、貴理に振られたようなもんだから」
貴理の自室。
−−−バカ。
一日何もする気になれなかった貴理。
「恭生のバカ」
もう何度この言葉をつぶやいたのか。
「恭生の阿呆」
涙を拭いながら貴理は昨夜のことを思い出します。
『ずっと好きだったんだ』
それは恭生の言葉。
恭生の馬鹿。どうして、あんな時になってそんな事を言うのよ。
−−−わたしに、どうしろっていうのよ!
ふと夕方に英輝からかかってきた電話を思い出す貴理。
それは恭生が帰る、と言う電話でした。
出て来れないか、と言う英輝に貴理は『いかない』と即答。
何も知らないはずの英輝ですが、恭生と貴理の間に何かがあったことを感じ取ったのかそれ以上は誘ってきませんでした。
何とか引き留めてみるから、そうしたら後日送別会をやろう、と電話を切った英輝。
貴理は判っていました。
逃げていたのは恭生だけじゃない。
自分も逃げている。
そしてもう恭生が東京行きの電車に乗っているはずの時間。
もう、恭生に会えない!
「ウッ……」
そう意識した瞬間、突然涙が溢れてきた貴理。
「ウウッ」
バカ、恭生のバカ!
「バカッ!」
止まらない涙。
ここに居たらダメになる、ここに居ても何も変わらない。
そんな思いが浮かんできた貴理が部屋を出て向かったのは……。
灯りのついた窓を見上げる貴理。
そこは冬子さんの泊まっている戸田旅館。
−−−冬子先輩は、恋敵かもしれないのに。
そう思っていた。
恭生は関係無い、と言っていた。けど。
それにあんなことを言える訳がない。
貴理が諦めて帰ろうとしたその時、旅館の玄関から冬子さんが出てきました。
「貴理?」
「と、冬子先輩!」
どこかに出かけようとしていたのか、大きな荷物を持っていた冬子さん。
冬子さんは貴理の様子から自分に何か相談したいことがあることを見抜きます。
貴理を車に乗せて冬子さんはゆっくり話ができる場所へと向かいました。
「せ、先輩、わたし」
冬子さんが貴理を連れてきたのは町の小さなホテルのバーでした。
カウンターの席に座り乾杯をする2人。
「貴理の、運命の初恋に」
貴理にも酒を飲ませる冬子さん。
貴理には、酔って何か話したくなったら聞いてあげる、と言ってバーテンと世間話をしています。
黙って飲み続ける貴理。
そしてかなり酔いがまわってきた頃。
「バカ……」
「なに?」
「わたし、なにも、判らないんです」
自分が判らない。
恭生に恋しているのか判らない。
話し出したらもう止まらない。
この夏で恭生に恋しているのかもしれない、と気付いた。
でもそれが本当に恋なのか判らない。
そして好きだと言ってくれた恭生を受け入れられなかった自分。
そんな胸の内に溜め込んでいた自分の気持ちを一気に吐き出した貴理。
ハアハアと肩で息をする貴理を冬子さんは穏やかに見つめます。
「貴理のいう、恋ってなに?」
思わず冬子さんをみつめる貴理。
「恋って、なんなのかしら?」
わからない。いや、うまく言えない。
でも何かある気がする。
そう言う貴理に冬子さんは言います。
「それなら、それが判るだけでも、貴理は、わたしよりも恋について、はるかによく知っているのよ」
寂しげに笑う冬子さん。
「わたしが貴理に言える事なんて、なにもないわ」
「でも、わたし、本当に判らないんです」
これからどうしたらいいのか判らない、と言う貴理にそんなのは簡単だ、と冬子さんはあっさりと言います。
考えなければならないのは『どうしたらいいのか』ではなく『どうしたいか』。
「でも、わたし、このまま想い続けてもいいんですか?」
一夏だけの付き合いなんて嫌だ。
恭生が街に戻ったら彼女も出来るだろうし、もういるのかもしれない。
そんな自分の想像に悲しくなってしまう貴理。
恭生が大学に入ったら冬子さんの様に綺麗な人がたくさん居る。
それにダムができたら、英助爺さんの家は無くなってしまう。
さらに集落まで無くなってしまったら恭生がここに来る理由も無くなってしまう。
貴理はいつしか涙声になっていました。
「恭生は、いつか帰っちゃう人だし、……それに、もう会えないし!」
涙を拭う貴理。
冬子さんは貴理にタバコを咥えさせます。
思わず咳き込んでしまった貴理はタバコにむせたフリをして泣き続けました。
「少し、落ち着いた?」
「ありがとうございます」
こんな時になんですがナイステクです。
恥ずかしいところを見せた、と言う貴理に冬子さんは『かっこいい』と言います。
貴理もようやく少し大人になった、と。
「へへっ」
この夏の経験を思い出し、冬子さんに語る貴理。
穴ばかり掘って。バカばっかりやって。
あんなにも恭生が熱心に探していたものを見つけてやりたかった。
そして貴理はあの夜、恭生に押し倒されそうになった夜のことを冬子さんに話します。
それを冬子さんは
「ワイルドでいいじゃない」
とあっさり。
冬子さん、あんたスゲェよ。
「いいわけないですよ! 勝手に一人でその気になって」
ちゃんとしてくれれば。
恭生が貴理に対してちゃんとした手順をふんでくれればもっと違った結果になったのかもしれない。
「バカで、どうしょーーーもなくバカで」
「はいはい」
「間抜けでバカで、……なのに、勝手に帰っちゃって」
だから嫌いになったのか、と冬子さん。
「わたしは、最初から好きだなんていってません。あんなヤツ!」
どうせすぐに帰ってしまう程度の気持ちだったんだ、と貴理。
「じゃあ、いらない?」
−−−えっ?
「どうせ、この夏かぎりのつきあいになっちゃうものね。だったらいらない?」
「せ、先輩?」
なら自分が恭生をもらう、と冬子さん。
いるもいらないももう恭生は帰ってしまった、と言う貴理にまだきっと居る、と冬子さんは言います。
「わたしがもらっちゃっても構わないのよね。かわいい子でわたしの好みだし」
もちろん冬子さんは貴理を挑発しているだけ。
ですが貴理はあっさりそれに乗ってしまいます。
「ダメ!」
反射的に立ち上がっていた貴理。
「ダメ絶対にダメ!」
貴理は冬子さんに詰め寄ります。
「そんなの、絶対にダメです!」
グラスを床にぶちまけて冬子さんに迫る貴理。
静まり返る店の中でクックックッと冬子さんの笑い声が響きました。
「お馬鹿さんなのは、誰かしら?」
そこで初めて自分がのせられていたことに貴理は気付きます。
「恭生? それとも?」
「……わたし、です」
「正確には、恭生とあなた、というべきね」
笑いながら立ち上がり勘定を済ませる冬子さん。
「ほんとうに、しょうがない子たちよね」
そして立ったまま呆然とする貴理を手招きして言いました。
「今夜一晩、上でゆっくり教えてあげるわ」
あらかじめホテルの部屋を取っておいた用意周到な冬子さん。
もう一人では歩けないほど酔っていた貴理。
「一回失敗したくらいで、くよくよしないの」
そう言って冬子さんは貴理をエレベーターの方へと連れて行きます。
「ちゃんと出来るように、わたしが教えてあげるから」
そして2人はホテルの部屋へと消えていきました……。
こ、個人授業ですか!?
【8/18】
恭生が朝、目覚めると外は厚い雲に覆われていました。
帰る、と言ったにも関わらず夜遅くに帰ってきた恭生を何も言わずに迎え入れてくれた英助爺さん。
夕方あたりから台風になるようだ、と爺さんは言います。
台風が来たら昼過ぎからバスは止まり、数日は帰ることができなくなるかもしれない。
そんな爺さんの言葉を聞きながら恭生は昨夜の有夏を思い出します。
あれだけの勇気を見せた有夏。
自分もこのまま逃げ帰るわけにはいかない。
もう数日置いてもらえるか、と恭生が言うと
「ばかもん」
ここはお前の家だ、と漢・英助爺さんは言うのでした。
「よう」
朝の日課であるジョギングに出ると英輝が途中で待っていました。
全力疾走の末、道路に横になってしまう2人。
「すまんな」
ふとポツリと漏らした英輝。
昨夜有夏に恭生を引き留めさせたのは自分だ、と英輝は言います。
身体で迫れ、と英輝が有夏に指示したのか、と声を荒げる恭生。
もちろんそんなはずはありません。
英輝はただ、貴理の名前を出してでも恭生を帰らせるな、と言っただけでした。
「……あんな事をするとは、思わなかったんだ」
辛そうに言い淀む英輝。
そんな英輝に自分も悪かったんだ、と恭生は言います。
−−−僕が弱虫だっただけだ。
それに有夏は英輝に言われたからあんなことをしたのではないのでしょう。
全ては自分の意思で。
貴理のために。
「貴理に対して、態度がずっと曖昧だったから」
「あいつもさ、ガキっぽくみえて、あれで必死なんだよ」
「そうだね」
「だから許してやってくれよ」
もともと全部自分が悪い、と恭生は笑います。
そして有夏や貴理はこれから色々あると思うけど頼む、と恭生。
自分はもうすぐ帰るから。
……もう、僕はなにもできない。
彼女らの力になってやってくれ、と言う恭生に英輝は言います。
「倉林−−有夏はともかく、貴理まで面倒みられるかい」
「英輝なら出来るよ」
「ふざけるなよ」
恭生の胸倉を掴む英輝。
「事情は、有夏から少し聞いた……まさか、これで地元に帰って、それで幕引く気じゃないだろーな」
もう幕は下りてるんだ、と恭生。
「僕に出来るのは、もう、カーテンコールの挨拶だけだ」
今更ですがコイツ何者?
「冗談じゃないぞ」
恭生を締め付ける手に力を込める英輝。
「ふざけんなよ! 貴理は絶対、お前のことがな!」
「たとえそうでも」
恭生は英輝の手を外しながら言います。
「もう、許してもらえないよ」
「許してないのは貴理じゃなくてお前なんだよ!
あいつは、いつもはああだけど、肝心なことはちゃんと判るやるなんだよ! どんな事があったって」
英輝は悔しげに叫びます。
「どんな事があったって、間違えたりしねーんだ。
ここで俺と一緒に育ってきたのは、お前にみたいに、自分から逃げ出す弱虫じゃねーんだよ!」
「……そうかもしれないね」
「こんな事言われて、ものが判ったみたいに笑うんじゃねーよ!」
ボカッ!
(情け無い音ですが)恭生の下腹に食い込む英輝の拳。
「有夏が、どうしてあそこまでしたと思ってるんだ!」
クッ……
「いいか、このままただ逃げ帰ったりしたら、俺はお前をゆるさないからな!」
そう言ってうめく恭生を置いてきびすを返す英輝。
「貴理は絶対にな……とにかく、ちゃんと自分で聞け!」
恭生は自分のお腹を押さえて遠ざかる英輝の足音を聞くだけでした……。
男気を見せた英輝。
これに答えないようじゃ恭生は男じゃありません。
「古積さん!」
英助爺さんと昼食を食べて、縁側に座っていた恭生に声をかけてきたのは有夏でした。
その声は昨夜とは打って変わって優しい声。
「どうしたの?」
「あの、その」
顔を赤くしてモジモジと手をあわせる有夏。
これまた今更ですが可愛いかも。
「えっと、……昨夜は、ゴメンナサイ」
『ゴメンナサイ』……カタカナなのがポイントです。
「あ、ああ」
そう答えながら昨夜の有夏を思い出す恭生。
その場ではなんともなかったのに記憶の中の光景になった途端妙な欲情を覚えてしまいます。
「いや、こっちこそ」
「……そんな目つきで見つめないでくださいよぉ」
思わず謝る恭生。
「えーと、だからその」
「いえ、昨夜のことはもういいんですけど」
お前が言うなって。
パタパタと可愛く手を振る有夏。
「あのまま、もう当分会えないのも、アレかな、っと思って」
「そうだね」
笑顔の2人。
悩んだけどやっぱり来てよかった、と有夏は言います。
縁側に座ってお茶を飲む2人はこの夏の思い出話に花を咲かせます。
「なんだか、あっというまの夏でしたよね」
「本当にそうだったね」
楽しかった、と有夏。
「先輩やみなさんとずっと一緒に、最後の夏が過ごせて」
今までで一番楽しい夏でした、と有夏はにっこりと笑って言います。
「最後に、ちょっと恥ずかしいところ、お見せしちゃいましたけど」
そんな事ないよ、と恭生。
「恥ずかしくなんかないよ。有夏ちゃんの真剣な気持ちはよく判ったし、……それに、綺麗だったし」
「えっ! ウソ、だって」
「嘘じゃないよ。その、本当に綺麗で美人で、可愛かったよ」
「もぅ、バカァ、古積さん」
『だって』なんだって言うんでしょう?
『勃たなかった』とか?
そういうのはその気のある相手にだけ言っていいんです、と有夏。
「貴理先輩に、いいつけちゃいますよ?」
「……いや、えーと」
思わずうろたえる恭生を見て有夏はプッと吹き出しました。
「冗談、冗談ですよ、古積さん」
「もー、勘弁してよ、有夏ちゃん」
「いいんです。そんなに、気を遣ってくださらなくて」
スッ、と真剣なまなざしになる有夏。
「あんな結果になっちゃいましたけど」
後悔していない、と有夏は言います。
「……そうか。なら、よかった」
「古積さんも、後悔しちゃダメですよ?」
「えっ?」
「貴理先輩との事」
「判ってるよ」
「心配しないでもいいですよ。だって先輩は……」
そこまで言うとフッ、と黙り込んでしまった有夏。
そしてしばらくして顔を上げるとにこやかに笑って言いました。
「もし振られたら、今度はあたしが慰めてあげますから」
「……その時は、よろしく頼むよ」
その笑顔につられるように恭生も大きく笑うのでした。
英輝に背中を押してもらった。
有夏に勇気を教えてもらった。
こりゃいくしかないぞ恭生!!
恭生はいつもより早く夕飯の支度をします。
それは台風が来るから。
行きたい場所があるから。
台風が来るぞ、と言う英助爺さんにだからなんです、と恭生。
「あっと、その……貴理、一人になっちゃうと思うから」
台風が来たら貴理の父親・章はダムの工事現場に泊まることになるでしょう。
そうしたら貴理は家に一人きりになってしまいます。
「よしよし、若いもんはそれでええ」
今晩は帰ってこなくていいぞ、と英助爺さん。
いやマジで漢ですよ、粋だよ英助爺さん。惚れた。
「玄関の鍵は閉めておくぞ。夜中に帰ってきても、家にはあげんからな」
恭生は貴理の家のドアの前にいました。
何度押しても反応はありません。
ひょっとしたらいないのかも。
そんな思いが頭をよぎりますが、それはありえない話ではありませんでした。
台風の晩に一人きりで家に居るぐらいなら有夏の家やダムの宿舎に章と一緒にいた方が心強いに違いないからです。
これが最後だ、と決めてもう一度だけチャイムを押す恭生。
チャイムの音が響き、そして消えていくと恭生に諦めの気持ちが広がりました。
そして帰ろうとしたその時。
唐突に玄関脇の窓に灯りがともり、ドアがわずかに開かれました。
「……どちら様ですか?」
ドアの隙間から聞こえてきたのは、か細い貴理の声。
「あの」
とっさに声に詰まってしまう恭生。
「……僕だよ」
「……恭生?」
驚いたような声と共に勢いよく閉められたドア。
−−−そんな!
呆然とする恭生の前でもう一度ドアが開きました。
きっとドアのチェーンでも外していたのでしょう。
「恭生!」
明るい家の明かりでシルエットとなった貴理の姿は恭生には嬉しそうに見えました。
そしてそれはきっと気のせいではありません。
「そんな心配なんて、しなくてよかったのに」
予想通り一人きりとなっていた貴理。
それを話すと貴理はそんなこと言いますが本当は緊張して怯えていたのが恭生には判ります。
台所でコーヒーを飲む恭生。
明るく、いつも調子で話す2人。
恭生はコーヒーの味なんてわからないくせに褒めるもんだからボロを出してます。
楽しそうに笑う貴理。
そんな貴理を見て恭生の緊張もほぐれていきました。
そして軽く夕飯は食べてきた恭生ですが貴理の作ったご飯をご馳走になることに。
手伝おう、と言う恭生の申し出を断って貴理は台所へと消えていきました。
どれも美味しかった貴理の料理。
昔とは大違いにね、と恭生。
昔はご飯の上にキュウリやレタスを乗せただけの弁当など作っていた、と貴理をからかいます。
その頃に比べると随分上手くなってる、と恭生が言うと貴理は当たり前だ、と言います。
「あの頃から、ずっと恭生に食べてほしくて」
そして突然涙声になる貴理。
「食べて欲しくて、それでこの間、また作ろうかっていったのに……バカ!」
それは一緒に穴掘りをしていた時のことを言っているのでしょう。
まだ2人が昔のように楽しく遊べた頃の話。
「また、食べさせてよ」
慌てて取り繕う恭生。
「……絶対よ?」
「うん、約束するから」
「本当に?」
「本当だって」
「……なら、また作ったげる」
貴理は顔を上げると目尻を拭いながらニコッと微笑むのでした。
「恭生は、これからどうするの?」
食事が終わり、お茶を飲んでいる時に貴理が聞いてきました。
「……数日して、台風が去ったら帰るよ」
「……えっとね。そういう意味じゃなくて」
困ったように恭生の顔を見つめる貴理。
「その……今晩は、どうするの?」
貴理はじっと恭生を見つめます。
「どうしようか」
その視線に思わず動揺する恭生。
「そ、その……僕は、用事があるわけじゃないから、暇だけど」
「父さん、今晩はうちに帰ってこないから」
−−−そ、それって……
「もし、気にしてたら、と思って」
「ぼ、僕は何かしようと思ってきたわけじゃないから。ただ、台風が来て、貴理が不安になってないかっておもって、それだけで」
恭生は勢いよく立ち上がって言いました。
「別に、その、この間みたいな真似をしようと思ってきたわけじゃなくて」
−−−い、今だ!
「こ、この間はゴメン」
思わぬ話の流れの成り行きに乗じてようやく誤ることができたのが嬉しい恭生。
そのまま思い切り頭を下げます。
「謝って、許してもらえる問題じゃないと判ってるけど、でも、、本当にゴメン」
「あ、あのねそれは、恭生」
貴理も立ち上がりました。
「心から反省してる。だけど、どうしてもそんな理由で貴理に嫌われたくなくて」
「えっとね、あ、あれはわたしもすこしその、アレだったし」
「家には入れてもらえないかもと思ったんだけど、英輝たちも行けっていうし、それで」
「もしかしたら、恭生が誤解してるんじゃないかと思って、だから」
全くかみ合ってない会話。
恭生は勢い込みすぎて思わず咳き込んでしまいました。
そしてもう一度頭を下げて。
「貴理にちゃんと、謝りたかったんだ」
「あのね」
穏やかな貴理の声。
「あの時わたし、恭生が嫌だったんじゃないの」
あまりにも突然でびっくりして、そんなこと考えたことがなかったから、と貴理は言います。
「……だから、恭生さえよかったら、今晩は一緒に泊まっていって」
貴理の部屋へ。
部屋を片付ける貴理を見ながら恭生が手に取ったのは白地に細い紺のストライプが入った、シンプルなショーツ。
「もう、バカ! 恭生のエッチ!」
電光石火で恭生の手から奪いとる貴理。
「べ、別にどこかから出したわけじゃないよ。そこにあったんだよ」
「だからって目の前で広げて見なくたっていいでしょ!」
バカだの変態だの色魔だの言われて恭生も黙っていられません。
「……黙って、持って帰ればよかったな」
拗ねたように恭生が言うと貴理は小声で言いました。
「……欲しいなら、ちゃんと、そう言ってくれればいいのに」
恭生にならいい、と真っ赤になりながら貴理は言います。
「……わたしより、パンツの方が好きなのかなって、思っちゃうじゃない」
「だから、それはただそこにあっただけで」
手ぶりを交えて弁明する恭生。
「別に、僕が欲しかったわけじゃなくて」
「ねえ、わたしとパンツ、どっちの方が好き?」
変な質問をしながらも貴理は真面目な顔です。
「あ、あのなぁ」
「ちゃんと答えなかったらあげないよ」
「……答えれば、くれるのか?」
「……うん」
うつむいて頷く貴理。
「だから、ちゃんと、真面目にいって」
パンツと貴理のどっちが好きか。
貴理が本当にそんな選択を恭生に迫っているのではないことに恭生は気付いています。
「もちろん」
−−−みっともなく震えるなよ。
右手を伸ばし、貴理の腰を掴んで引き寄せながら恭生は言いました。
「僕は、貴理が好きだよ」
貴理は泣いていました。
「バカ、恭生のバカ」
恭生の胸に顔を何度もなすりつける貴理。
「最初から、ちゃんとそう言いなさいよ」
「ゴメンな」
「怖かったんだから。本当に、凄く怖かったんだから」
何度も貴理の頭を撫でる恭生。
「最初に、真面目にそう言ってくれたら、あの日だってわたし、拒まなかったかもしれないのに」
「悪かったよ」
「ちゃんと、好きって言ってくれればよかったのに」
貴理の耳に恭生は囁きます。
「大好きだよ、貴理」
「……もっと沢山言って」
何度も、何度も繰りかえす恭生。
言われるたびに頷く貴理。
「……でも、これだけじゃまだ、完全じゃないね」
ふと顔を上げて恭生を見つめて貴理は言いました。
「どういう意味?」
まだ自分にまずいところがあったのか、と恭生。
「ううん、そうじゃないの」
貴理は立ち上がり一歩恭生から離れて。
そして。
「わたし、……恭生が好きです」
細いけど、涼やかではっきりと響く声。
−−−貴理……
「ちゃんとそう言えなかったのは、わたしも同じだから」
思わず立ち上がる恭生。
「同じように馬鹿で、弱虫だから」
そして抱き合う2人。
「ゴメンね、わたしも」
「いいよ。もういいから」
お願いがある、と貴理。
「わたしも、今まで言えなかった分、たくさん、大好き、って言ってもいい?」
「ああ、いいよ」
「本当にいい? わたし、ずっとずっと自分を騙していたから」
貴理は泣いています。
「すっごくたくさん、大好きっていっちゃうよ。もう恭生が嫌だっていっても言っちゃうよ。そのくらい大好きだったんだよ」
「たくさん言ってくれ」
貴理の涙を舌で舐めながら恭生は言います。
「全然オッケー。いくらでも言って」
このセリフはどうかと思うよ。
「……大好き」
最初は小声で。
「大好き、恭生」
力を込めて恭生の胸を掴みながら。
「好きなの、恭生。大好きなの」
次第に大きな声で。
「好き、大好き、恭生!」
「嬉しいよ」
「本当に大好きなの。ずっとずっと大好きだったの」
幾度と無く繰り返す貴理。
そして唇を合わせる2人。
その後はもちろんHに突入です。
ジャレあいながらお互いの気持ちをさらに確かめ合っていく2人の雰囲気がすごくイイ感じ。
その中でわかったのは恭生も幼い日に貴理と交わしたキスを覚えていたこと。
と言ってもずっと覚えていた訳ではなく、思い出したのは昨夜のことでした。
小学校の教室で有夏と会った時に。
恭生と貴理、2人はそこでキスを交わしたのです。
そしてそれは恭生にとっても大切な記憶。
それとは全く関係ありませんが。
貴理の下着の中に手を突っ込む恭生の顔があまりに無表情で怖いです。
一緒にシャワーを浴びて。
人が変わったように恭生は貴理のことを可愛がります。
ウザイぐらいに『可愛い』を連発。まぁ気持ちはわかりますが。
冬子さんに教えてもらった知識を総動員する貴理。
手じゃ難しいけど、口でなら男を『終わらせる』ことができるとか。
もう2人は冬子さんに頭があがりません。
そして恭生は言います。
貴理が居れば充分だと。
充分、なんて言葉だけじゃヤダ、と言う貴理に恭生が言った言葉。
「……探し物、だったから」
「は?」
「ようやくみつけたんだ。たぶん、僕の求めていた、本当の探し物」
そう言いながら貴理を抱きしめる恭生。
「だから、貴理が居ればいいんだ」
定番中の定番の言葉。
でもそれは、やはりいい言葉だから定番になるわけで。
騙されてるような気になりながらも心から幸せそうな笑顔を浮かべる貴理。
こうして。
英輝に背中を押してもらって。
有夏に勇気を教えてもらって。
冬子さんにゴムをもらって。
2人は結ばれたのでした……。
【8/19】
翌朝、貴理が目覚めるとベッドに恭生の姿はありませんでした。
焦る貴理。確かに一緒に寝たはずなのに、と。
恭生を探しに部屋を飛び出すと、恭生は台所にいました。
朝ごはんを作ろうと思った、という恭生に貴理は泣きながら叫びました。
「もう、居なくなっちゃったのかと、帰っちゃったのかと思ったじゃない!」
紅茶を飲んで落ち着いた貴理。
「ちょっと、パニックしちゃって」
外はもう台風が通り過ぎた後。
自室へと帰り着替えてきた貴理は恭生と共に外へ。
空は素晴らしい青空でした。
台風が過ぎると共にやってきた秋。
「もう、夏も終わりね」
「そうだな」
並んで歩く2人。
「ここは、秋が早いものな」
「……最後の夏、か」
そうつぶやく貴理。
「来年は、ここはもう、水の底なんだね」
他愛ない話をしながら英助爺さんの家への分かれ道までたどり着きました。
「じゃ、また」
軽く手を挙げて、そのままスタスタと細い道を下っていく恭生。
「ま、まって恭生!」
貴理は発作的に恭生へ駆け寄り、思い切り抱きつきました。
「な、なんだよ」
「あ、あのね」
また会えるよね、と貴理。
「当たり前だろ」
爺さんの家に戻るだけだと恭生は言いますが貴理の不安は消えません。
「そのまま、誰にも何にも言わずに、帰ったりしないよね?」
「……どうして、このまま僕がいなくなるなんて思うんだよ」
「だって恭生、昨日地元に帰るっていってたから」
「いきなり挨拶もなしに帰るわけないだろ!」
そう声を張り上げて、ふと表情を曇らせる恭生。
「……それとも、その方が貴理にとってはよかった?」
「えっ?」
「昨夜のことは、昨夜限りの関係にして、黙ってここから居なくなった方が都合よかった?」
パン!
恭生の馬鹿な言葉に貴理の平手が炸裂。
「バカ!」
大声で叫ぶ貴理。
「昨日のわたしが、そんなふうに見えたの!」
「見えないよ。ただ」
−−−こんな時に泣くなんて、嫌だ。
それではまるで涙で男を引き止める卑怯な女のよう。
こんな時に恭生の前で涙なんて見せたくない。
そう思いながらも貴理の目からは大粒の涙がこぼれてしまいます。
「ただ、一応確認しておきたかったんだ」
「何を確認したい、っていうのよ!」
「えーと、その」
そう言いながらきつく貴理を抱きしめる恭生。
「また、会えるかな」
「なに、言ってるのよ!」
「街に帰っても、ダムが出来ても、ここが水没しても、それでも……僕は、貴理に会いに来ていいかな?」
「バカ!」
泣きながら恭生の首を掴んで唇を寄せる貴理。
「わたしに会いに来るって、ちゃんと言いなさいよ!」
「会いに来るよ。何度でも。だから、貴理は心配しなくていいんだ」
噛み付くように激しくキスをする貴理。
「来年になれば、受験も終わって、もっと時間が出来る。そうしたら、何度でも来るよ」
「わたしも、東京の大学、受験する」
絡み合う2人の舌。
「出来るだけ、そばに行けるようにする」
「じゃあ、何度でも、二人で会おう」
貴理は小さく頷くと、また飛びつくように唇をあわせました。
やがて、フッと顔を離した恭生。
「それなら」
貴理を抱きしめたまま幸せそうに笑って恭生は言いました。
「僕らにとってだけは、この夏は、最後の夏じゃなくて」
最後まで言いかけた恭生の唇に、そっと人差し指を添える貴理。
「最初の夏、だよね」
と言う訳で貴理クリアー!! ぱちぱちぱち。
長い時を経て結ばれた恭生と貴理。
その絆は揺るぎないものとなるでしょう。
いや〜、めでたしめでたし。
『最初の夏』
このフレーズはきっと出てくるだろうとは思ってました。
あれだけ『最後の夏』と言うフレーズが繰り返されれば予想はつきます。
やはりこの流れも定番でしょう。
でも。
先ほども言いましたが、いいものだから『定番』になるのです。
うーん、よかったよかった。
と言う訳で次は有夏を狙ってみようかと思います。
レ○だなんだとバカにさて。
『黙ってろ』と何度も言われ。
それを言ったのは全部俺なのですが、嫌いじゃありません。
むしろ好きです。
貴理に報われない想いを寄せる有夏。
一体恭生とどうなるんでしょうか。
以下次回!!