ドラクリウス「ドラクリウス」のレビュー&感想をば。ネタバレは控えめ&反転で。 ■絵■ 最初はちょっととっつき辛かったけどすぐに慣れました。人間の順応力は素晴らしい。慣れてしまえばこっちのもん(?)で、今となっては「ドラクリウス」はこの絵じゃないと、と思えるレベルまでに成長しております。 ■音楽■ 最近のPCゲームには珍しく主題歌は無し。特に印象的なBGMはありませんでしたが、雰囲気をブチ壊すようなものも無かったので可もなく不可もなくと言ったところ。 ■シナリオ■ 簡単なあらすじ一見女の子と見紛うばかりの優男である主人公・荻島潤は騒がしい操や冷静沈着な修司などの友人に囲まれた日々を過ごしていたが、その周辺では行方不明・動物殺傷などの猟奇的な事件が発生していた。そんなある日、潤の元へ1人の女性が訪れる。見た目は幼いのに成熟した雰囲気を漂わせるこの女性の名はエルシェラント・ディ・アノイアンス、通称ベルチェ。彼女は潤のメイドを名乗り、自分は吸血鬼であり、潤もまた吸血鬼、それも吸血鬼の王となる血統の末裔であると告げる。更に潤の転校生として現れた金髪アメリカ人は吸血鬼の天敵である組織「ダイラス・リーン」の一員であるリカ・ペンブルトン。そして突如家へと押しかけてきた潤の許婚を名乗るリアン・ルーチェ・ディメルモールとそのメイドであるゼノ・ジェイルバーン。彼女達と共に人間と吸血鬼の長年に渡る存亡を賭けた確執に巻き込まれていく潤は、その戦いの中で徐々に吸血鬼としての自分に目覚めていく……。 シナリオや設定、言葉遊びなどにライターである藤崎さんの趣味が溢れんばかりに散りばめられてました。その辺が趣味に合う人にとっては、とことんまでハマるゲームです。逆に肌に合わない人もいらっしゃるでしょうから、あんまりにも趣味剥き出しなこのテキストは一長一短と言えるかも。 以下クリア順にヒロイン別感想……といきたいところですが、この「ドラクリウス」は大きなシナリオが『リアンルート』と『グランドルート』と呼ぶべき2本しかありません。なのでとりあえず各ヒロインの雑感と言う事で。 ▼エルシェラント・ディ・アノイアンス▼ 人となり(?)通称ベルチェ。潤の前に突然現れた彼女は元々潤の父親に仕えていたメイドであり、世界にその名を馳せた最強最悪の吸血鬼にして魔女。故あって幼い姿をしているけどその実年齢は本人もよく覚えていないほど。その強さと能力のみならず、共に暮らしていく中で潤から寄せられる信頼もまた絶大なものになっていきます。ただし潤に対する忠信は妄信的なものではなく、時には潤のために厳しく突き放す母親的なもので、正に潤にとっても”最強のカード”。私もこんなカードが欲しいです。 文句無しに一番好きなキャラですね。老熟と表現しても差し支えない精神や口調と見た目のギャップも魅力。本来は潤の父親であるイド・ブランドルに仕えるメイドであったベルチェが潤に仕えるようになった経緯はさておき、な立場となったベルチェがどう動くのか、と最後まで全く目が離せないキャラでした。 まぁそんな小難しいことは抜きにしたとしても、強さと優しさを兼ね備えたベルチェは文句無しに素晴らしいメイドでした。この藤崎節が炸裂している”メイド”の定義に関しては後述。ベルチェに関してだけでシナリオが1本出来たのではないかと思うとベルチェルートが無かったことは残念ですが、随所で見せ場があったのでヨシと致します……けど、やっぱり欲を言えばもうちょっとベルチェに関するエピソードが欲しかったかな。 ▼リカ・ペンブルトン▼ 人となり(?)転校生として潤のクラスにやってきたアメリカ人。その招待は吸血鬼として目覚めつつあった潤の監視をするべくやってきた対吸血鬼組織「ダイラス・リーン」の一員。この「ダイラス・リーン」の方針は「悪事を働いた吸血鬼を捕らえる」などと言った生易しいものではなく、『吸血鬼・即・斬』とでも言うべき問答無用なもの。当然リカもその理念に染まりきった人間なれど、とある吸血鬼事件で潤と共に行動する中で……。 弾丸を湯水のように使うリカはゲーム内におけるアクション担当とも言うべき存在。大雑把な性格もあって正に乱射と言う表現が相応しいガンアクションはプレイしていて結構爽快でした。序盤から暗躍丸見えなリカの上司であるクェスとの関係や、その清算など見所・見せ所も多く、グランドルートの中でもある意味優遇されていたのではないかと思います。ベルチェ同様、単独でシナリオが丸々1本作れそうなキャラ。 自分の意思とは関係無くリカの葛藤は本作における主軸の1つ。もしかしたら思えるあたり(これは違うでしょうけど)、一番可哀相なキャラなのかもしれません。 ▼リアン・ルーチェ・ディメルモール▼ 人となり(?)吸血鬼として目覚めた潤の婚約者(候補)として現れた吸血鬼貴族の少女。元々は潤の父親であるイドに子供心ながら惚れていた(理想の父親像を反映させていただけかもしれないけど)リアンは、一族のために潤との婚姻を望んでいる部分があったり、本当に潤に惚れているのかどうかも不明だったりと、潤にとっても掴みどころの無いキャラとして描かれております。その実、箱入りで育てられたが故に世間知らずな上に天然なところもあって、メイドであるゼノのからかい半分の助言に乗せられたりと可愛いところも満載。 唯一単独ルートを持つリアン。何故リアンだけがそんなにも高待遇だったのかは不明ですが、グランドルートの根幹であるの構図から一番切り離して考えることが出来るキャラだったからかもしれません。リアンルートはほぼ潤とリアンの関係がどう進展するか、に終始してましたしね。吸血鬼としては非常に若いが故に、ベルチェほど達観した思想を持っているワケでもないリアンと、人間として育ったためにあくまで思想は人間寄りの潤の間にある溝がどう埋められるのかにも注目です。ゼノとのやり取りも非常に面白く、お姫様なのに苛められキャラであるところもグッド。 リアンにとっての一番の見せ場はリアンの個別ルートではなく、グランドルートのシーンではないかと思ってます。こんなことを言うとリアンには怒られるかもしれませんが、最も”人間らしい”ところを見せてもらったような気がするのです。 ▼ゼノ・ジェイルバーン▼ 人となり(?)吸血鬼ではなくライカンと呼ばれる存在であり、リアンに仕えるメイド。偏った知識をリアンに植えつけてはほくそ笑んでるようなイタズラ好きな一面もあるが、本質的にはリアンに仇なすものは絶対に許さない忠誠心に溢れている。何者かもよくわからないうちにリアンの婚約者(候補)となった潤に対しては最初いい感情を持っていなかったが、潤とリアンの関係が向上し、またゼノ自身にとっても潤が信頼すべき存在であると確信出来た時、潤もまたリアンと並ぶ主として仕えることになる。 そのリアンに対する絶対の忠誠心はベルチェの潤に対するソレと比較しても全く遜色は無く、同時にリアンのゼノに対する信頼も揺ぎ無いもの。凛々しい雰囲気もあり、所謂カッコいい女性です。ただしこれはベルチェにも言える事で、つまりは本作における”メイド”や眷属と言った存在そのものがそう言う描かれ方をしているとも言えそうです。己の存在、身体、命そのものを投げ出してでも主を守り、敬うその生き様は圧巻でした。 リアンルートは最後の最後で分岐がありますが、その違いはと呼べるぐらいで、そう大きなものではありません。見せ場に関しても、リアンが保護対象であることに対して、ゼノが対象を潤まで含めた保護する側の存在であると言う描かれ方以外はリアンと同等の扱いと言っても過言ではありません。いや、むしろリアンよりも優遇されてるかも? ▼高柳操▼ 人となり(?)潤のクラスメイトであり、小学校以来の付き合い。修司と合わせて3人は親友関係。騒々しい小動物系で、毎朝潤と一緒に登校すべく迎えに来る典型的幼なじみキャラ……でも男。女装している上に見た目は完全に女なので男からラブレターをもらうこともしばしばらしい。 どちらかと言うと重いシナリオの中で貴重なギャグ要員であり、本作内におけるお笑いの8割は担ってます。潤にしてみれば吸血鬼となりつつある自分にとっての『日常の象徴』的存在。しかし、操にしても修司にしても、物語においては何気にキーパーソンだったり。その辺は置いといたとしても、憎めないバカキャラとしては秀逸なヒロイン(?)で、特に修司や潤、そして仲が悪いようだけど実は喧嘩友達とも言えるリアンとのやり取りは最高。 上記にも書きましたが、シナリオは大きく分けて2本。リアン(&ゼノ)ルートと、グランドルート(私が勝手にそう呼んでるだけですが)であり、ベルチェやリカに個別ルートは存在しません。しかし彼女達に関するエピソードはグランドルートの中でしっかり登場しており、投げっぱなしの設定や消化不良的な要素は無く、グランドルートは長めのシナリオなのでボリューム不足に感じるようなこともございません。 ただそれでもベルチェ達をメインにして、彼女達をとことんまで掘り下げたシナリオも見てみたかった、と贅沢な望みが無いワケではなく。つかリアンだけ個別シナリオがあるってのもちょっと意味不明なんですよね。そのリアン&ゼノもグランドルートで大活躍してますし、その掘り下げ方も個別シナリオと同等かそれ以上と言えますし、ヒロイン別感想で書いた『グランドルートの根幹であるの構図から一番切り離して考えることが出来るキャラ』ってのも理由としては弱いように感じます。 何かの都合でリアンルートしか作れなかったのだとしたら、本当に勿体無い話です。その場合は是非とも何かしらの手段をもって補完して頂きたく思います。無茶言ってるのはわかってますが、これがファン心理ってヤツでして。 ライターである藤崎さんお得意の、と言うより趣味炸裂感バリバリな設定の数々がシビれます。ミリタリー風味溢れる小道具の数々や、科学的なアプローチで解釈されたオカルト要素などなど、正にやりたい放題(褒めてます)。オカルト的、非科学的な現象をデジタルに表現する手法は特に目新しいものではありませんが、特に藤崎さんの場合はその傾向が顕著であり秀逸に感じられます。 本作の設定や世界観が他の藤崎さん作品である「ときどきパクッちゃお!」や「ひめしょ!」と共有している部分が見え隠れしてるのも既存のファンにしてみれば思わずニヤリとしてしまうサービスと言えるでしょう。まぁ時代設定が似通っている「ときパク」はともかく、近未来で世界観が共通とは言いがたい「ひめしょ!」の場合は一種のスターシステムと言った方がいいかもしれません。例えば本作では吸血鬼化を促す薬品である『ブルーペイン』が、「ひめしょ!」では生理痛薬だったりとか。 この複数作品で共通した設定の中でも特に面白いのが”メイド”の設定です。世間一般で言うところのメイドとは『家事全般を得意とする女性使用人』ですが、藤崎作品(つか「ひめしょ!」と本作)におけるメイドとは家事を執り行うのは当然として、その上で更に『高い戦闘力を擁し、身も心も、時には己の命すらも挺して主を守る、現代に生きるサムライ』と言った感があります。かなりの独自設定ではありますが、強さと美しさを兼ね備えた彼女達メイドの姿は心を沸かせてくれました。マジでカッコいい。「ひめしょ!」のポチはこの際カッコいい対象から除外。でもその分面白いからヨシ。 ただ藤崎さんのテキストは結構クセが強くて、どうしても受け付けられないと言う方もいらっしゃるでしょう。よく言えばウィットに富んだ、悪く言えばキザな言い回しを多用するキャラクター達を許容出来るか出来ないかも、この作品の評価に直結する要因の1つ。引用元のネタを知らなければ何を言ってるのかわからないのも多いですしね。 あとはテキスト上は日本語でもボイスでは英語読みされる言葉が多々あったり、一般的でない単語が出てきても説明もされないままに進んでいくことも多いのもネック。どちらもストーリーを追う上では問題無いのですが(後者に関してもニュアンスは伝わるので)、その辺が気になる方は要注意です。 アニメ等のネタを使った伏字ギャグが結構あったのはちょっと残念(そんなのを使わなくても、会話の流れで十分に笑いをとれるライターさんだと思ってますので)ですが、シリアスとギャグの切替と使いどころの上手さは流石でした。 声優さんの演技は全く問題無し。ベルチェ役のかわしまりのさんやゼノ役のまきいづみさんに関してはもう脱帽としか言いようがありません。シャッポを脱ぎます。リアン役の風音さんや操役の成瀬さんも良かったですし、リカ役の新堂さんも好演なされてたと思います(新堂さんはやっぱりこーゆー低めのドスの効いたキャラか、ポンポン喋るキャラがいい感じですね)。始めから声優さんをイメージした上でのキャラクター作りだったのではないかと思えるほどです。 修司役の永倉仁八さんの演技も光ってましたし、キャスティングの妙は流石です、マジで。この辺は藤崎さんだけでなく、プロデューサーのM○KAさんの趣味……もとい、意向も絡んでるのではないかと邪推してたり。 『吸血鬼』や『真祖』と言ったキーワードから「月姫」を連想される方がいらっしゃるかもしれませんが、当然ですが全くの別物と考えて下さい。元々吸血鬼の一族とそれに対抗する組織をモチーフした作品は昔から珍しくありませんし(と思う)、物語としての切り口もビタイチ重なりません。まぁいないとは思いますが、「『月姫』のパクリだべ?」なんて思って手に取ることを躊躇している人がいらっしゃったとしたら考えを改めるべき。 と言う訳で「ドラクリウス」。発売前から抱いていた期待には存分に応えて頂きました。万人にお薦めは出来ないかもしれませんが、私と趣向の通ずるところがあるとお思いの方はプレイして決して損はしないと思います。 |
| 個人的満足度: ★★★★★|★★★★★ |
| 執筆: 2007/05/28 |