Dies irae -Also sprach Zarathustra-

メーカー
発売日
2007/12/21
シナリオ
正田崇
嘘屋 佐々木酒人
奈落ハジメ
中島聖
上野 健太郎
門松 和哉
夢野 Q作
原画
Gユウスケ
音楽
与猶啓至

 「Dies irae -Also sprach Zarathustra-」の感想&レビューをば。

■絵■

 原画はGユウスケさん。日常のシーンから戦闘シーンまで、全体的にレベルはかなり高いと思います。気になったのは、司狼の服装で「冬にアレじゃ寒いだろうなぁ」ってぐらい。一部のCGにはアニメーションも取り入れられていて、それも非常に効果的であったように感じました。

■音楽■

 与猶啓至さん。やはり印象に残っているのは戦闘シーンのBGMでしょうか。盛り上がるBGMがあるのと無いのとでは、迫力が段違いですから。カッコいい主題歌もお気に入りですが、最初聴いた時は歌っているのが榊原さんだと気付きませんでした。

■シナリオ■

 簡単なあらすじ主人公・藤井蓮は、ある日幼なじみであり親友もあった司狼と、殺し合いまがいの喧嘩をする。結果、司狼は蓮達の前から去り、蓮自身も2ヶ月間の入院を余儀なくされる。退院後はやはり幼なじみである香純や先輩である玲愛との穏やかな生活が始まるかに思えたが、蓮達の住む諏訪原市で猟奇連続殺人が発生し、蓮自身もギロチンの出てくる悪夢にうなされるようになる。そしてそれは日常との決別の始まりでもあった……。

 以下クリア順にヒロイン別感想……と言いたいところですが、基本的にルートが2つのみですので、ヒロイン別と言うよりルート別に感想を、と言う事で。

▼マリィ編▼

 蓮の右手に宿ったギロチンの化身とでも言うべき少女・マリィ。このルートはラスボスたるラインハルトとの最終決戦に向けて、蓮が戦いの中でどんどんレベルアップしていく話です。なんつーかもう人外なんて言葉じゃいい表せない程の強さを誇るラインハルトですから、それに対抗しうるために蓮が身に付けていく力もまた大変なものに。バトルものにありがちな『強さのインフレ』一歩手前でギリギリ踏みとどまった感があります。

 トリックスター的役割を果たすメリクリウスの立ち位置が微妙に理解し切れなかったのは、このシナリオを評価する上で重要なポイントを逃してしまっているような気がします。でもその辺を抜きにしてもラストバトル前の【司狼vsシュライバー】【螢vsエレオノーレ】、そして【蓮vsマキナ】の同時戦闘は熱くて楽しめました。むしろラストバトルよりも上な勢いで。

 マリィとどんどんシンクロしていく様子は丁寧に描かれていたので◎。エンディングに関してもあれ以外には考えられないでしょう。強くあれ、蓮。

▼香純編▼

 マリィ編を正史とすると、この香純編はいかにも取って付けたような感じがありました。ラスボスであるラインハルトがやる気を無くて途中退場した時はどうしようかと思いましたし、幹部3人なんて影も形も出してもらえませんでしたし。最強の敵である彼らがそんな調子でしたので、少々拍子抜けしてしまいました。特に幹部3人は好きだったのに……。

 蓮や香純の過去から考えるとそれほど展開に違和感は感じられません。玲愛や螢、ヴィルヘルム達もそれなりに動いてくれましたし、やはり何が不満かと言うとラスボスとしては力量不足なトリファ神父でしょうね。マリィ編でルサルカの聖遺物を奪った司狼が、香純編では普通の人間のままヴィルヘルムと戦ってみせたのも「うーん……」って感じです。凄いには凄いけど、納得は出来ないと言いますか。

 ラストの戦闘でマリィが吹っ飛ばされてそのままフェードアウトとかも、投げっぱなし感が伝わってきました。もうちょっとその辺は練りこめたんじゃないかなー、と思います。

 日常では笑えるシーンがあり(一番笑ったのは「怖イッヒ」)、バトル描写は流石の迫力と思えるシーンも多くてテキストは私好み。モノローグがやや冗長に感じられたシーンも多かったのは難点ですが、そこを除けばテンポよく飽きさせない展開は、仮にチャプターが切り替わってもゲームのヤメ時として踏ん切りをなかなか付けさせてくれませんでした。

 また、思想的・哲学的な話も数多く出てきますので、その辺を読み解くのにも一苦労。概念として何となくでも理解出来ればシナリオを進める上で大した問題は無いんでしょうけど、スッキリしないまま進んでしまうのにはやや抵抗があるんですよ。まぁ、この辺は正田さんのテキストの持ち味でもあるので、あまり文句も言えません。

 登場人物がそれなりに多く、しかも呼び名が複数ある上にカタカナだったりして、最初は一体誰に関する話がなされているのかを理解するのに苦労しました。その辺は公式サイトのキャラ紹介等で調べながらプレイしていく中で徐々に覚えていきましたけど、設定上の都合とは言えやや不親切に感じました。私の物覚えが悪いだけって話もありますが。

 声優さん達の演技は素晴らしかったと思います。特に香純役の佐本二厘さん、螢役のかわしまりのさん、司狼役のルネッサンス山田さん、ルサルカ役の木村あやかさんの熱演は素晴らしく、そしてヴィルヘルム役の杉崎和哉さんに関しては『もう貴方以外に考えられません』的レベル。

 この「Dies irae」に関して巷では色々と不穏な噂と共に、ユーザーの怒りの声が渦巻いている様子。曰く「サンプルとして公式サイトに掲載されていたCGが発売直前に削除され、ゲーム本体でも使用されていなかった」、曰く「ライターが正田崇氏1人かと思わせておいて、スタッフロールで7人もいたことがわかった」、曰く「攻略対象のように思われていたキャラが非攻略対象であった」などなど。

 ぶっちゃけ問題なのは最初のCGに関する部分だけだと思います。サンプルってのは要するに購入する人が参考にするためのものですから、それを発売直前になって削除して本体でも使用しないなんてのは、言葉は悪いですけど騙しみたいなものですからね。でも他の2つに関しては別に大した問題じゃない、と言うのが私の意見。

 『ライターが複数いた』なんてのは普通にある話では。メインが正田さんであるのは間違いないんでしょうし(これが違うとお話になりませんけど)、担当する分量にもよりますけどサブとして、またはお手伝いとして別の方が一部のテキストを担当することまで事前に発表することは必須でしょうか。むしろ複数のライターを使っておきながら黙ってるメーカーがある中で(どことはいいませんが)、lightはちゃんとスタッフロールに載せてる点を評価……とまでは言わないにしても、目くじらを立てることではないんじゃないかなー、と。

 もちろん”ライターが誰か”がゲームを購入する目安である以上、上記のCG問題と似た問題であるのも間違いありませんが、テキスト・シナリオは完全に人任せとはならない以上、メインライターである正田さんの原案・監修・手直し等が入っていると考えるほうが自然でしょう。それは使用される・使用されないのオールorナッシングなCGとは違う点かと思います。

 攻略対象に関しては別にどうでもいいです。プレイ中に公式サイトを見て蛍・玲愛ルートが無いことをネタバレされたのは「おぅ、マジかよ!?」って感じでしたけど、ただそれだけ。蛍や玲愛を攻略したかった人は残念だったと思いますが、私個人としては攻略出来る出来ないはあまり関係なく、蛍はあれで充分に活躍してくれたので満足であり、玲愛に関してもっと振り下げて欲しかったと思う程度。メインであるマリィ編では十分楽しめたけど香純編はちと不完全燃焼だったように、正史以外のシナリオを強引に作ってもよほど上手くやらないと破綻するだけですしね。要は玲愛が助かるシナリオが欲しいとかだったら同意出来ますが、攻略出来なかったことが単純に不満ってのはちょっと違う気がします

 なので公式サイトに掲載された謝罪文(言い訳?)は余計だったと思いますし、

螢、玲愛を始めとした他ルートはこの後も製作を継続させて頂きます。
発売時期を現時点では明らかにすることはできませんが、他ルートの完成した新たな作品作りをさせて頂く所存です。

またその新作の発売の際には、本作品を購入された方には追加パックとして購入できるようなエクステンションパッケージも準備させて頂く所存です。

 ……なんてのも蛇足にならないことを祈るばかりです。本当に満足のいくシナリオであればやってみたいですけど、果たしてどうなることやら。とにかくゲームのクオリティ以外の点で低評価している人が多く見受けられましたので、もっと中身について語ってみたらどうだろうと思い、自分の意見を書いてみました。

 と言う訳で「Dies irae」。なんかいきなりケチがついた形になってますが、1本のゲームとして見れば充分に楽しめるクオリティだと思います。


個人的満足度: ★★★★★|★★★★★
執筆: 2008/01/08