残暑お見舞い申し上げます。〜君と過ごしたあの日と今と〜「残暑お見舞い申し上げます。〜君と過ごしたあの日と今と〜」のレビュー&感想をば。ネタバレ全開です。 ■絵■ 榊MAKIさんと瑠奈璃亜さん。塗りは明るい色調ながらもどこか垢抜けない感じのする絵柄ですが、逆にその雰囲気がこのゲームのコンセプトには合ってるのかも、と思いました。CG枚数に拘りは無いですけど「え? ここにイベントCG無いの!?」的な場面があってその点はやや不満です。特に華菜シナリオのラストにCGが無かったのは非常にガッカリでした。 ■音楽■ OPとED……と言っていいのかどうか。スタッフロールのEDはともかく、起動時やメニュー画面でも流れるOPが使用されるのは相当後半で、むしろそれがエンディングかと思ったぐらいです。出演声優さん2人(新堂真弓さん・成瀬未亜さん)の歌うOPはやっぱりどこか素朴な雰囲気が感じられました。 ■シナリオ■ ライターはのがみとしあきさんと藤崎竜太さん。 簡単なあらすじもうすぐダムに沈むことが決定している田舎の村で、最後の夏休みを目前に控えた主人公・雨竜菁。幼なじみやクラスメイト達と穏やかで騒がしい日々を送って終えるだけの夏休みとなる予定だった。しかしある日、学園内から8mmカメラが出てきたことを切っ掛けに、ダムに沈む前の村の様子を映画として残すことになり、その撮影作業の中で菁はずっと変わらないまま続くと思っていた女の子との関係を変化させていく……。 ってな感じではありますが、これはのがみとしあきさんVerでの話です。藤崎さんVerは全然違います。具体的には『菘奈、アリサ、梗子、柊子』をのがみさんが、『壬生、華菜』を藤崎さんがそれぞれ書かれたシナリオになります。どこかで分担が明記されていたワケではありませんが、これは100%間違いないと断言。以下それを前提として話を進めます。 とにかくライターさんによって全然設定が違うんですよね。性格がちょっと違う、ってぐらいだったらライターさんのテイストの表れってことで理解も出来ますが、キャラクターの根幹を成す設定からしてバラバラともなれば、もうこれは揃える気すら無かったことが容易に想像出来ます。それぞれのライターさんに担当キャラを告げた後に、単語レベルの設定(幼なじみ、アイドル、委員長etc...)以外は何も言わないまま自由に書かせたらこうなるんだろうな、ってレベルです。ここまで来るとむしろ潔いかも。 構成は全シナリオ共通で、夏休み直前から夏休み終了直後までが第1章、OPを挟んで村から引っ越してから数年後の様子を描いたのが第2章となっております。分量比率は【1章:2章=8.5:1.5】ぐらい。 とりあえず以下クリア順にヒロイン別感想。 ▼矢木沢壬生▼ 人となり(?)アイドルとして活躍中のクラスメイト。昔から同じ学校に通っているので仲はいいけど、最近は忙しくてなかなか学園に顔を出すことが出来ない。それでも皆と一緒に撮影作業を頑張ろうと必死に時間を作ろうとするイイ子。 ……と言うのが『のがみVer』の壬生ですが、個別シナリオの壬生は『藤崎Ver』の壬生なのです。と言うわけで以下が個別シナリオでの壬生。 人となり(?)アイドルとして活躍していたが体を壊してしまったため、空気のキレイな村に引っ越してきた。転校生として菁達と同じクラスに転入するも、誰とも仲良くしようとしないためクラスでもかなり浮いた存在。 委員長の指示で構うようになった菁と仲良くなったり、他人からの指示によるものだとわかった時点で反発したり、とにかく思っていた以上に激しい感情の持ち主でした。何か大きなイベントがあって「好きなの!」「俺もだ!」なんてよくある風にいかないあたりも、藤崎さんテイストが溢れててグッド。なんとなく「こいつのこと、好きかも」と理屈っぽく考えるあたりは藤崎主人公の真骨頂ですね。 クライマックスであるバイク疾走シーンも、リアリティのある単車描写が緊迫感を盛り上げてくれました。冷静に、でも必死に単車を運転する菁は一級品の男です。OP後の展開はもうちょっと2人の幸せなラブラブ展開を見せて欲しかったかなぁ。余命僅か設定やその後の展開はちと唐突感がありました。 ▼大瀬内アリサ▼ 人となり(?)ダムに村が沈んだ後に菁達が転入する予定の学園の学園会長。理事長の娘でもあるお嬢様で、視察なのか仕事なのか、村までちょくちょくやってくる。実は菁とは子供の頃に遊んだことがあって、アリサはその思い出を大切に思っているけど菁はそのことに気付いていない。 『藤崎Ver』のシナリオには一切姿を現さないキャラクターです。なんだかんだと菁達の撮影作業に付き合って、協力もしてくれる『高飛車で怖いけど実はいい人』っぷりを発揮してくれました。自分のことを一切思い出さない菁に怒りを募らせるも、菁が自分のことに気付いた次の瞬間にはセックス突入。ええええええええ。もうちょっとやりようがあったのでは? もう少し深い描写をしてくれてもよかったのでは? OP後、菁はアリサに見合う男となるために勉強して帝王学まで学んで、いずれは理事長となることを前提に母校で教鞭を振るう……と、申し訳ないけど浅いにも程がある展開に。髪をアップにしたアリサがあまり可愛くないという不満もあります(超個人的趣味全開)。 ▼温井柊子▼ 人となり(?)委員長。天衣無縫(と言うより無法)で傍若無人な姉の世話に振り回される出来た妹。 真面目で融通が利かなくて、他人に頼らず何でも自分1人でやろうとする強情っ子。どういう経緯で菁のことを好きになったのかはよくわかりませんが、2章では2人で会社を経営してるとか設定が微笑ましくて仕方ありません。 『藤崎Ver』の柊子はサブキャラながらも菁に胸を揉ませることを交換条件に仕事を依頼してきたり、やたらとデジタルな思考をしたりとやたら濃いキャラをしている全くの別人。私は先に壬生シナリオで『藤崎Ver』の柊子を見ていたので、そんな柊子をどんな風に攻略するのか楽しみにしてたんですよ。でも個別シナリオの柊子は『眼鏡をはずしたら美人になる』なんてありふて過ぎて、最早誰も使わないような設定の持ち主になっていてショボーン。 ▼温井梗子▼ 人となり(?)見た目は子供の先生。柊子の姉だけど、ズボラで我侭で生活能力はゼロ。語尾は「〜お」がデフォルトな2ちゃん用語遣い。 『のがみVer』と『藤崎Ver』でほとんど変わらなかった唯一の人物。その特徴は一言で表すと『ウザい』につきます。結局最後までどこに魅力があるのかわかりませんでした。よくわからないままに菁とセックスをして、童貞を奪われた菁が心まで奪われてしまい、そのままなし崩し的にセフレ→結婚の流れ。なんでこのシナリオは存在するんだろう……。 ▼一ツ瀬菘奈▼ 人となり(?)菁の隣に住む幼なじみ。世話好きだけど料理は苦手。快活だけど悩みは抱えるタイプ。『のがみVer』では剣道少女。 『のがみVer』のシナリオでは唯一ストーリーと呼べるものがあったように思います。流石はメインヒロイン。ダムに村や学園が消えてしまう現実を一番受け入れられない人間であり、頑張ろうとしても空回りと失敗ばかり。空気が悪くなっていく撮影隊の中で潰されそうになりながらも、必死に自分の場所を守ろうとする健気な菘奈。そしてそれを横目に何もしない主人公。 撮影が終わった後のフィルムが台風に流されそうになるのを守ろうとするも、結局は風に飛ばされてしまって凹む菘奈。でも皆は笑って許してくれて菘奈も笑うことが出来て、村での最後の思い出とばかりに楽しい花火大会……でも数年経ったらより酷い精神状態になってるとか、菘奈は友人の気持ちってヤツを何も理解してなかったってことなのね……。ラストであっさりフィルムが見つかってしまいましたが、個人的にはフィルムが見つからなくても皆の気持ちはひとつだった、って終わり方の方が良かったかな。 ▼鳴子華菜▼ 人となり(?)山深いところにある神社に住むロリ巫女娘。その実態は村の守り神的存在。 『のがみVer』のシナリオでは菘奈に憧れて菁に喧嘩ばかりを売ってくるウザいだけのキャラでしたが、壬生に『華菜様』と呼ばせてたり一応神様的存在と言う設定は共通だったようです。菘奈シナリオでもラストに皆の記憶から消えていたあたり、かろうじて両者のシナリオには繋がりがあったのかな、と。華菜シナリオではダム工事で地脈が分断されてしまったことで弱体化してしまったことに対する処置として、菁と共に植樹作業に明け暮れることになります。 カッパのカトリーヌも含めたトリオがかなりイイ感じ。『藤崎Ver』の菁なので、知的で無茶をやる頼れる主人公だったのも良かったです。オカルト的な作業をあくまでもデジタルに分析・解析して進める姿がステキでした。およそ神様らしくない言動もコミカルでグッド。ラストを1枚絵とかでビシッとシメてくれれば良かったのに、と残念でなりません。 ライターさんによって”色”が出てしまうのは仕方ないとしても、それがここまで顕著に出てくるゲームは初めてでした。設定レベルから揃える気がゼロ。例えば8mmカメラにしても、『のがみVer』のシナリオでは学園で埃を被っていたことになってますが、『藤崎Ver』のシナリオでは菘奈の家にあったことになってますし、この辺は藤崎さんに「8mmカメラで撮影をする」って曖昧な情報しか与えられていなかった結果なのかな、と邪推したくなってしまいます。ここまでくると、完全に別の作品と見なした方がいいでしょう。 そしてこう申し上げるのは大変失礼かもしれませんが、のがみさんと藤崎さんのテキストにあまりにもクオリティに差が……こう感じてしまうのも私が藤崎さんのテキストを好きだからかもしれませんけど、それでもレベルに隔たりがあるのはあまりにも明白。『藤崎Ver』のシナリオでのキーパーソンである”こーちゃん”と浩平が『のがみVer』のシナリオで一切姿を見せないのは残念でしたけど、浩平は藤崎さんテイストバリバリ過ぎるキャラなのでこれで良かったのかも。【藤崎テキスト×永倉ボイス】の化学反応は素晴らしいです。 『のがみVer』シナリオに関しては”映画を撮る”と言うことをもっと上手に料理して欲しかったですね。キャラクターに団体行動をとらせるための道具にはなりえましたが、それ以上の役割は果たせていなかったように感じました。ロゴにフィルムが描かれるぐらい主要な設定なのですから、もっと印象に残る使われ方をして頂きたかったです。 逆に映画撮影が全くと言っていいほどスルーされた『藤崎Ver』のシナリオは、それはそれで面白かったとしても、それならこの「残暑お見舞い〜」でなくともいい話になってしまいますので、その辺は何とかならなかったのかとやはり残念。 声優さんに関しては不満無し。驚いたのは大人しいキャラを新堂さんがしっかり演じてらっしゃったことですね。ガサツなキャラの演技ばかりが印象に残ってましたので意外でした。北都南さんや一色ヒカルさん、かわしまりのさんの演技は鉄板。神村さんと成瀬さんの演技もキャラクターによく合っていたかと思います(演技がハマっていたからこそ梗子のキャラがあそこまでムカついたワケで)。 藤崎さんのテキストは面白かったんですけど、全体のクオリティとしてはやや厳しめ。更なる進化を期待致します。 |
| 個人的満足度: ★★★★★|★★★★★ |
| 執筆: 2008/03/26 |