そして明日の世界より−−「そして明日の世界より−−」のレビュー&感想をば。 ■絵■ 原画は植田亮さん。特徴的ではあるけど受け入れがたいと言う人はいないのでは……と似たような事を他のレビューで言った事がありますけど、その際に友人から「あの絵は凄く好き嫌いがあるよ」と言われ、改めて自分の感覚がずれてるんじゃないか疑惑が沸き起こっております。とにかく自分にとっては違和感もなく受け入れられる絵柄でした。一番好きなCGはCGです。 ■音楽■ I’veによるBGM&主題歌は雰囲気を壊すことなく、むしろ大いに盛り上げてくれました。あとシナリオごとに用意されているEDは複数クリエイターによって作成されておりましたが、ディレクションの妙か、どれもしっくりくる出来栄えだったかと思います。お気に入りは朝陽EDの「Kiss」と青葉EDの「夕空ワルツ」。 ■シナリオ■ 簡単なあらすじ小さな島に住む主人公・葦野昴は、隣の家に住む幼なじみ姉妹や長年の親友、そして転校してきて間もないながらも仲の良いクラスメート達と平穏ながら楽しい毎日を暮らしてた。そんなある日、突然1つのニュースが飛び込んでくる。『小惑星が地球に衝突する。世界の終焉まで残り3ヶ月』 以下クリア順にヒロイン別感想。 ▼日向朝陽▼ 人となり(?)昴の隣の家に住む幼なじみ姉妹の姉。おっとりとした優しい性格で、昴も「姉ちゃん」と呼んで慕っている。何をやらせても完璧なのに運動能力だけは致命的に欠落している。でもそれもまたご愛嬌。昴達の担任かつ英語教師を勤める。 小さい頃に自分を守って死んでしまった母親の代わりとなるため、己の全てを家族のために捧げた悲しい女性。それゆえの完璧さであり、女神とまで呼ばれる神聖さを体現するも、世界の滅亡を目の前にして隠していた弱い部分や本音の部分が……と言うのが朝陽シナリオの大まかな流れ。 最愛の妹である夕陽のために己を律してきた朝陽が、昴に甘えることで逆に夕陽の場所を奪ってしまう事に……と言う展開はある程度読め読めではありました。でも先が読めることと、のめり込まないことってのは必ずしも一致しないワケで。完璧に見えていた朝陽姉ちゃんの弱い部分と、その弱い部分を超える強い部分と……その全てが愛おしい。 ▼樹青葉▼ 人となり(?)昴の幼なじみであり親友。島内で唯一昴と対等に張り合おうとしてくれる存在で、性別を超えた関係……であると昴は思っている。 サバサバして、どちらかと言うと少年っぽい悪がきとでも言うべき性格。それは本当の姿ではなく、幼い頃に自分たち家族を捨てて他の男の元へと走った母親への反発から生まれた仮の姿。でも理由はそれだけじゃなく……元気で明るくてしっかりしていて元気に跳ね回っていた青葉も、どんな青葉も愛おしくてたまらない。昔話の例えには心臓を鷲掴みにされる思いでした。 全員に言えることではありますが、青葉シナリオをクリアした後に他のシナリオをプレイすると心が痛くて痛くて。もちろんに嘘の気持ちは一切無かったんでしょうけど、それでもを思うと切なくて切なくて。エンディングははミスマッチなようなのに、それでいてこの上なくマッチしているようで、見ているだけで泣きたくなるぐらい胸が締め付けられます。 ▼水守御波▼ 人となり(?)1ヶ月前に転校してきたクラスメート。病弱で激しい運動を控える身ながら、最近では仲間を放っておかない昴達と友達になって明るくなってきていた。 元々死と隣り合わせの生活を送っていたため、世界の終焉のニュースを聞いても平然としていた御波。それは周囲に動揺が走っていた分、むしろ今までよりも元気に見える程で……とそれをそのまま受け取れるほど健速さんのシナリオは甘くなく。世界の終わりを目前にして、温もりと幸せを初めて知った御波の涙が鳥肌立つほどに愛おしい。 この作品の中では一番好きなキャラですね。深窓のお嬢様っぽい雰囲気を持ちつつ、いたずらっぽい面も垣間見せる御波の可愛さは犯罪だと思うのですよ。口に指を当てている背骨の折れそうな姿勢の立ち絵が気にならないこともありませんが、そんなことで御波の愛らしさが損なわれるはずもなく。エピローグも青葉シナリオと並んで読後感の爽やかさが最高でした。 ▼日向夕陽▼ 人となり(?)昴の隣の家に住む幼なじみ姉妹の妹。生活の全てが昴のためであり、昴と共にある。見た目の幼さや能天気さに反して、やれば何でも出来る子。 夕陽にとって恐ろしいことは世界が滅びることではなく、昴と離れ離れになることのみ。そんな危うさを秘めた純真さが夕陽の魅力であると同時に、夕陽シナリオの根幹。守られてばかりだった夕陽と守ってばかりだった昴の成長には感動させられざるを得ません。夕陽はいい幼なじみでした。愛おしさが止まりません。 ただ『朝陽&夕陽シナリオ』とでも呼ぶべき朝陽シナリオを先にやっていたので、夕陽シナリオ単体での琴線触れっぷりは、シナリオ本来が持っていたものよりもやや減少しちゃったかも。 ▼ノーマルルート▼ ノーマルと言うよりもトゥルー? 誰とも結ばれないままだと突入するこのルートは「僕たち、友達だよね?」的な安直バッドエンドとは程遠い、他のヒロインシナリオと比べても遜色無い、と言うよりも更に完成度の高いシナリオでした(エロ無し)。 八島のじいちゃんや竜のお父さん・海のお母さん、陽のおじさんに至るまでのサブキャラの魅力と威力が全開となるのもこのシナリオ。更にはヒロイン達が個別シナリオと同等、もしくはそれ以上に炸裂してくれるシナリオ。あまりにも優しい人達が集っているので「もう俺、この島で暮らすよ……」と何度思ったことか。竜のの問いに対する答えはわかっちゃいたけどシビれないではいられませんでした。 ▼アフターシナリオ▼
まず「3ヵ月後に世界が終焉する」と超大前提があるので、基本的なシナリオの流れは全て同じなんですよね。なので「シナリオが変わり映えしない」と不満に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私は全く飽きることなく全編思う存分楽しめました。 恋愛系ADVではまずキャラクターありきなのが普通かと思いますが、この作品は『1つの流れの中でキャラクターをどう動かすか』に注力されていたように感じました。それでいてあんなにも魅力的なキャラが生み出されるってのは、素直に凄いと思います。いやもうあの愛おしさと言ったらもう。 世界が滅びる、と言う前提の上で描かれておきながら、星の衝突までは描かずにエンディングを迎える手法。これは3ヶ月先に確実な終焉が待っている事がわかっているからこその”これから”を思わせる余韻と、爽やかこの上ない読後感を感じさせていれました。終わりを描くのが目的ではなく、終わりに向けて強く生きていく彼らを描くのが目的だったんでしょうねぇ、とわかりきった事を言ってみたり。 小惑星が地球に衝突する、と言うある意味トンデモ設定なこの作品ですけど、確かな描写力でもって書かれたテキストのためか、違和感無く受け入れることが出来ました。むしろ4人しかいないクラスで主人公以外の3人と担任の全員が美少女って方がありえねーだろ、的な気がします。 ヒロインが魅力的なのは上記の通りですが、それと同等にサブキャラや主人公である昴もまた非常に魅力的に描かれておりました。最も生身の人間らしく描かれていた母親・海の叫びはそれだけで涙が出てきましたし、もまた、母親としては当然のあるべき姿だったと思いますし。更には父親・竜や八島じいちゃんのカッコよさたるや尋常でなく。 そして昴自身もまたとてもカッコいい。なんつーか弱い自分を認めた上での強さを持っているとでも言いますか、決してスーパーマンじゃないけどどこまでも真っ直ぐな性根がズンズン響いてきましたよ。あれは惚れますって、マジで。ちなみに一番私が泣いたのはシーンでした。共通シナリオ部分ですが、毎回ここで号泣。 声優さんの演技も冴え渡ってました。それこそヒロインからサブキャラまで。「どこまで隙が無いんだ、この作品は!?」と理不尽な怒りを覚えるまであります。 とにかく最初から最後まで、隅から隅まで震えさせて頂きました。現段階における私的2007年度ナンバー1です。即義務ゲー入り。 |
| 個人的満足度: ★★★★★|★★★★★ |
| 執筆: 2007/12/12 |