世界でいちばんNGな恋「世界でいちばんNGな恋」のレビュー&感想をば。ちなみに私は一人で「ダメ恋」と略して呼んでおります。 ■絵■ みこしまつりさん。立ち絵とイベントCGでやや違和感を感じるところもありましたが、総じてクオリティ高し。SD絵もいいタイミングで入ってきましたし不満はございません。 ■音楽■ 凄く印象に残るOP・EDだった、ってワケではありませんけど雰囲気には合ってたと思います。某シナリオのクライマックスでOPが流れた時とかは正にピッタリでした。 ■シナリオ■ 簡単なあらすじ三十路近いリストラ青年・芳村理はやけ酒に浸っていた後、1つの出会いをする。とことんまで堕ちた自分に優しくしてくれた女性に運命を感じ、決死の覚悟で彼女の住むアパートを訪れた理を待っていたのは、かの女性は他の男を駆け落ちしていた現実と、彼女の娘・陽坂美都子と一癖もふた癖もあるアパートの住人達による手痛い出迎えだった。健気で不幸をものともせず頑張る美都子の保護者たらんと決意した理の明日はどうなる? 以下クリア順にヒロイン別感想。 ▼天城夏夜▼ 人となり(?)理が何とか再就職した先の会社にいた事務員。マイペースでどこか達観した感じだけど案外世話好き。 すげーいいキャラしてました。むしろ夏夜自身のシナリオよりも、他のキャラのシナリオで暗躍もしくはツッコミをしてる時の方が活き活きとしていたように感じたのは私だけ? 一番シナリオが短かった夏夜ですけど、その印象は決して薄くありません……が、それも自身のシナリオのインパクトによるものじゃなかったり。なんだかんだ言って、短期間で理の良さを見抜いたあたり人を見る目は抜群なのかも。実は登場するキャラの中で一番の常識人なのでは、と思わないでもありません。 ▼澤島姫緒▼ 人となり(?)アパートの隣に住むお嬢様。昔から美都子の事を可愛がっており(と言うか一筋)、その度合いは自分以外の人間が美都子を保護する事を認めないほど。女子大生で世間知らず。そんな自分を理解した上で権力や財力を使ってくるけど、決して他人を陥れたりはせずにマイナスを自ら被る人。 すげーいいキャラしてました。姫緒のシナリオは美都子と理と3人で形成する三角形が安定するまでの流れと、姫緒自身の成長を描いたものなんですが、理と結ばれてからのデレデレっぷりと美都子に嫌われたくないと泣き崩れるダメダメ女っぷりが逆に可愛らしくて仕方ない。真に求める幸せの形の実現を目指し、自分に出来る事に全力投球する姿は確かに美しかった。 ▼香野麻美▼ 人となり(?)美都子の担任で、美人で気さくで教育熱心な人気教師。その実態は理の別れた元妻。 すげーいいキャラしてました……なんてレベルでは語れません。世間的にこの「ダメ恋」のヒロインは”美都子と麻美の二強”と言う事になっているようですが、私個人としては天地がひっくり返ろうとも麻美でキマリでした。本当に本当にイイ女で、本当に本当に本当にダメでダメでダメでダメでダメな女。そんな麻美を愛さずしてどうするのかと。 理へのプロポーズや結婚に至る経緯とかは聞けば聞くほど愛らしさがこみ上げてきて、離婚した本当の原因とその経緯を知れば知るほど愛しさが湧き上がってきました。そしてその愛しさと比例して、あの体育教師の『万死に値する係数』は跳ね上がります。殺したい……マジで殺したい。真実を知った後における理の苦悩と、ある意味達観と言っていいレベルに達したかに見せかけるようにまでなる事が出来た麻美の心中を思うと涙が止まりません。つかボロボロボロボロ、理と一緒に理ばりに泣きました。 そんな『全てを振り切って、前向きに歩き始めた一人前の女性』の仮面の裏に隠された”ダメ女”の本性がまた琴線に触れてきます。ダメ女っぷりはコミカルを交えて描かれているため、場面によっては笑いのあるシーンとなっておりましたが、むしろそのダメっぷりを含めて全てのキャラの中では麻美が一番”生の人間”として表現されていたようにも感じました。あんな姿を見せられて、どうして麻美を捨てて美都子に走る事が出来ますでしょうか、いや出来ない。反語です。つか出来るはずもありません、人として。倒置法です。 が忘れられません。面子もプライドも、何もかもをかなぐり捨てて出てきた魂の吐露ですよ。私はこれで心が揺るがない人とわかりあえる自信はありません。美都子シナリオで理が美都子と結ばれてしまい、格好良く見送ったはずの麻美が夏夜や姫緒を相手に酒を飲みながら号泣する姿はコメディーの極地ではありますが、これこそ正に『悲劇と喜劇は表裏一体』の体現です。麻美の背負った十字架が重過ぎて、とても笑う気になりませんでした。 美都子シナリオを見る限り、他のヒロインのエンディング後も麻美は理への気持ちや未練を抱えたままに乗り越えて、強く暖かく、時には涙と共に理達を見守っていることでしょう。そんな麻美が幸せにならないなんてことは絶対に許せません。麻美が不幸な未来なんて認めない。っつーか私が幸せにします。してみせたい。 ▼陽坂美都子▼ 人となり(?)理が勘違いの末に乗り込んでいって、最終的には住み込む事になるアパートの大家。その実態は受験を控えた中●3年生。 や、最初の方で受験受験と言っていたのを聞いて、私は完全に高●3年生だと思ってたんです。そしたら中●生でしたよ、中●生。まぁこれは誰もが騙されたと思いますし、何より最後に大きな意味を持ってくる伏線にもなってましたし、完全に丸戸さんの狙い通りと言ったところでしょう。高●生だと思っていた時は「確かに年の差カップルだけど、そこまでウリ文句になる程じゃ……」なんて思っていたのも、今となってはいい思い出。 強気でしっかりしてて、でも甲斐甲斐しくて決して困っている人を見捨てない美都子は”いい子”の権化と言っていいでしょう。それがこの作品内でも屈指のダメ女(個人的にはバカ女と言いたいけど)である母親に育てられたからであっても、美都子の魅力と資質に影を落とすようなものではありません。むしろ逆境で力強く咲く可愛らしい雑草、と言ったイメージに直結します。 そんな美都子が、母性本能をくすぐる事にかけてはギネス級の理に惚れてしまったのはある意味必然。ただ年齢的な問題もさることながら、初めて自分の保護者たらんとする大人に対する親愛の情であった事は絶対に否定出来ないと思うんですよね。もちろんそれを本当の意味で男女間の愛情にまで昇華させたのも間違いありませんが、出発点と前提がアレなだけに心からの感情移入は難しかったのもまた事実でした。 真・エンディングは他のキャラも大活躍で、非常に満足のいくシナリオ展開でしたが、んじゃないかなー、とも思います。 とにかく楽しいテキストとテンポ良く進む会話、わかりやすい人物相関と飽きさせない展開で、一気に引き込まれてあっと言う間にクリアしてしまいました。正に”HERMITでの丸戸ワールド”ですね。なんと言いますか、広く売れることを前提としている戯画作品にはない、好き勝手にやっている雰囲気がビンビンに伝わってきました。特に姫緒シナリオでしつこいぐらいに出てきた名古屋・岐阜のローカルネタとか、やりたい放題感が溢れてました。そう言えば丸戸さんってあちらの方でしたっけ、確か。 HERMIT作品だけじゃなくて、戯画における丸戸さん作品のセルフパロディも多く見受けられました。こーゆー遊びもファンには嬉しい限りですが、のは何かの伏線かと思っていたら、単にをパロディだったようでした。 シナリオのボリュームは圧倒的に美都子が最大。ただし後半に至るまで麻美と多くのシナリオを共有しているので、麻美クリア後の美都子シナリオはかなりスキップする事が可能です。口惜しくも美都子の当て馬的位置づけとなっている麻美が2番目のボリュームで、姫緒→夏夜と続く感じでしょうか。お勧めの攻略順はシナリオ的にもボリュームの逆順で【夏夜→姫緒→麻美→美都子】がベストでしょう。 と言うかですね、あんまり他の作品を引き合いにするのは気が引けますが、特に戯画での丸戸さん作品で多く見られてきた裏メインヒロイン制で言えば、表が美都子で裏が麻美になると思うんですよ。そしてこの裏メインヒロイン制では『裏ヒロイン=真ヒロイン』であり、その点はこの「ダメ恋」でも同じだと思うんですよ。もちろんそれは「昔イロイロあったワケありの女」を書かせたら天下一品な丸戸さんだからこそ、の話ではありますが。 そんなワケで私はしつこいようですけど、麻美こそが本作品のメインヒロインであると主張する次第でございます。 脇役に至るまで魅力的なキャラの多い本作ですが、主人公の理も負けず劣らずナイスなキャラでした。気弱で自己主張が無く、何よりも運の無いダメダメ男として描かれていた理は、プレイヤーが自己投影しやすいことこの上ない主人公の鑑だったと思います。そてでも仕事の事になれば超敏腕っぷりを発揮するあたり、それもまたやはり理が主人公としての鑑なところ。 そーゆー意味では多面的なキャラ付けがなされている理は、ヘタをすると『ダメだけど凄い』と言うどっちつかず的な印象も与えかねないキャラになってしまっていたかもしれません。それでも魅力的なキャラとして完成しているのは、ひとえに丸戸さんのテキスト力の為せるワザなのでしょう。 主人公も含めてのフルボイス。声優さんは実力派を揃えた隙の無い布陣ですが、やはり注目すべきは美都子役の夏野こおりさんと麻美役の一色ヒカルさん、そして理役の先割れ丼さん。夏夜役の風音さんや姫緒役の芝原のぞみさんの演技も素晴らしかったんですけど、いかんせん見せ場が少なかったのは残念無念でした。 総じて期待していた通りの面白さでした。笑いと涙の絶妙なブレンドと、クリア後に残る心地よい感動。やって損無し。むしろやらないと丸損。丸戸さんのディープでコアなファンから、ライトなエロゲーファンまで誰もが楽しめる良作でした。 |
| 個人的満足度: ★★★★★|★★★★★ |
| 執筆: 2007/12/03 |