さかしき人にみるこころ

メーカー
発売日
2008/05/30
シナリオ
嘘屋佐々木酒人
原画
AKINOKO
音楽
樋口秀樹

 「さかしき人にみるこころ」、通称「さかここ」のレビュー&感想をば。

■絵■

 原画はAKINOKO氏。私は特に問題はありませんでしたが、結構クセがあるので人によっては厳しいかもしれません。あと絵によって少々バラつきがあるように感じられました。欲を言えば、エロシーン以外のCGをもっと見てみたかったですね。

■音楽■

 BGMの大部分は「DearMyFriend」からの転用で、一部が「僕と、僕らの夏」からの転用。本作と同じ低価格ソフトの「潮風の消える海に」も同じようにBGMが旧作品からの転用でしたが、これはもうコストの問題から仕方のないことなのでしょう。元の作品のイメージが強いのが難点でしたが、場面場面で違和感なく使われておりました。主題歌はお馴染み樋口秀樹さん&WHITE−LIPSさんのTynwald musicコンビによる『ゴールドバッハの恋愛予想』。お二人には珍しく、どちらかと言えばアップテンポな曲です。一応『おまけ』でフルバージョンを聴くことは出来ますが、一刻も早くCD化されることをお待ちしております。

■シナリオ■

 簡単なあらすじ八方美人を心がけて誰からも嫌われないように生きている主人公・勾坂一重は、ある日の図書館で偶然出会った真柄亜利美からいきなり邪険に扱われる。理由もわからいまま見知らぬ女の子に罵倒されて当惑する一重は、亜利美の親友である紀子や紀子の妹である真路乃を巻き込みつつ、亜利美への接近を図る。

 登場人物と呼べるのは一重・亜利美・紀子・真路乃の4人だけで、攻略対象は亜利美のみです。と言うワケでいつもみたいに『クリア順にヒロイン別感想を』ってワケにもいきませんので、感想をツラツラダラダラと書かせて頂きます。

 知識をひけらかした時の言葉、もしくは深い意味を持たせる言葉で『文字色を変える演出』は、最初不要だと思ってましたが、慣れるとあれはあれで悪くないように思えてきました。ハートや汗などの絵が台詞に入ってくるのはやめて欲しかったんですけど、これも慣れれば気にならなくなりました。

 それらを別にしても、テキストは人を選ぶと思います。【クールビューティーペダンチック恋愛ADV(“Pedantic”=訳:学者ぶった、知識をひけらかす)】の名の通り、最初から最期まで一重と亜利美の間では知識と駆引きの応酬が繰り広げられ、そんな一重の思考はややもするとしつこいぐらいに理屈っぽく、言動も全てその理屈に裏打ちされたものばかりです。この辺は好き嫌いが分かれるところではないでしょうか。

 とは言うものの一重自身は決して嫌味な人間でも悪い人間でもなく、考えすぎるきらいはあるにしても結構まっすぐな性根の男なので好感が持てました。あとはヒロインたる亜利美を好きにになれるかどうかが、このゲームを好きになれるかどうかの分かれ道でしょう。そして私は大好きです

 典型的なツンデレである亜利美もとことん理屈っぽいキャラです。その上真面目で融通が利かず、一重に対しては常に攻撃的。ことあるたびに衝突し、相手をやり込めるまで攻撃(口撃?)をやめることはありません。それがツン状態の時です。

 デレ状態になったとしてもやり取りにあまり変化はありませんが、それがスキンシップ・コミュニケーションとしての駆引きや応酬となっているのがかなりグッドでナイス。正に”(さか)しい”同士の会話が楽しくて仕方ありません。『打てば響く』とでも申しましょうか、『ウィットに富んだ』とでも申しましょうか、とにかく言葉遊び的な会話も多くて、その裏に秘められた意味を探るのもこのゲームの楽しみ方の1つかと思います。色々と勉強になったこともありましたし。

 この辺の”亜利美の可愛さ”を表現するのは難しいんですけど、間違いなく自分にとってはクリティカルヒットでした。知的な可愛さと意地っ張りな素直になれない可愛さのハーモニーが絶妙です。

 中盤までは『ワケが分からないまま冷たい態度を取られつつも亜利美に一目惚れした一重が、とことん亜利美にアタック(死語?)して結ばれるに至る』展開で、後半は『ラブラブ状態の2人。しかしやがて試練が訪れる』展開と、まぁありがちな流れではありますが、全体的にメリハリが利いているので飽きるということはありませんでした。亜利美攻略に向けた文字通りの意味でのイベントが色々と発生するので、徐々に一重に対する態度を軟化させていく様子が凄く自然だったのも大きいです。一重が能動的かつ確信的なので、『よくわからないけど、とにかく惚れられる主人公』と言う曖昧な表現にならないのも高評価。それに登場人物が少ない故か、1人1人を掘り下げられていたのも良かったと思います。紀子や真路乃もいいキャラしてました。

 かなり悲しいバッドエンドもありますが、その他のエンディングは基本的に絵に描いたようなハッピーエンド。いいことです。出来ればもう少しバリエーションを増やして欲しかったところですが、あまり無茶は言えません。結構なボリュームとクオリティで忘れがちではありますが、「さかしき〜」は低価格ソフトですし。

 亜利美が初対面のはずの一重を嫌っていた理由は中盤にはっきりしますが、とても亜利美らしくて”悪くない嫌い方”でした。これが他のゲームだったら「そんな理由かよ!? なめんなよコンチクショウ」とか思いかねない理由でしたけど、亜利美と一重の人物像が丁寧に描写されていたことと、その理由がわかるシーンの展開がこそばゆくて仕方ないぐらいだったので、結論として個人的には超OK。あんな場面を学生時代に経験していたら、人生変わっていたような気がします。主に前向きな方向で。

 好き嫌いが分かれそうなテキストであることは上で書いた通りですけど、それは多かれ少なかれ全てのゲームでも言えることです。なのでこのゲームにおける一番の難点はそこではなく、『攻略の難しさ』にあると私は考えます。とにかく難しかった……その一言に尽きます。

 攻略対象は亜利美1人ですし、ハッピーエンドを迎えること自体は簡単です。そしてエンディングは大きく2つに分類出来て、その条件分岐となる選択肢は非常に分かりやすいものなので、こちらも問題ありません。でも2つに分けられたエンディングは更に細かく2つずつ分けられて、その分岐条件がまた難しくて全くわからないのです。更に難しいのは細かいイベントを全て制覇することで、これに至っては条件を予想することすら困難。

 選択肢を全て選んだだけではダメ。おそらくは選択肢の組み合わせパターンによるものと予想されますが、おまけのCGを100%まで持っていくのにどれだけ苦労したことか。無駄に難易度が高すぎです。勘弁して下さい。ちなみに一番苦労したのは亜利美の誕生日イベントで、今でもどうして見ることが出来たのか、自分でもわかっておりません。そんな苦難を乗り越えて、CG100%を達成した時の感無量さときたらそれはもうもうもう。

 んでクリア後、公式サイト(登録者専用)に攻略のヒントが載っていることに気付く私。切なすぎる。

 声優さんは亜利美が青山ゆかりさん、紀子がまきいづみさん、真路乃が木村あやかさん。鉄板of鉄板です。特に亜利美が知識をひけらかすクールビューティー的シーンの演技なんて、背筋がゾクゾクしてゾクゾクしてたまらない程たまりません。更には甘い声を出すシーンとのギャップなんて、殺人のジャンルに『悶殺』なんてものを追加する気かと。

 いたるところで一重と亜利美が知識をひけらかすので、クリアした時にはいっぱしの雑学王になった気分です。ただ1つ気になったのは、亜利美が『朝勃ちは就寝中に尿が膀胱に溜まったことによる刺激で起こる』と言っていたことですね。確かに以前はそう言われてましたし、実際に私が昔読んだ本にもそう書かれてましたけど、その後の研究でそれは誤りであることがわかっているのです。朝勃ちはレム睡眠の影響であると言う説が現在の主流ですので、皆さんご注意下さい。ふふふ、何となく勝利気分。

 低価格ソフトとは思えないボリュームとクオリティに大満足でした。そこらのフルプライスゲームよりよっぽど楽しめますし、そのお得感は比較にすらなりません。多少のマイナス点も低価格ソフトであることを踏まえれば、十分過ぎるほどに許容範囲。そんなこんなで私は期待以上に楽しめたんですけど、上記の通り人を選ぶのではないかと思いますので、評価は高くしつつも「興味を持たれた方は是非」と言うに留めておきます。でも推奨ゲーには追加してみたり。


個人的満足度: ★★★★★|★★★★
執筆: 2008/06/05