ナギサの

メーカー
発売日
2007/02/02
シナリオ
海富一
木緒なち
秋津環
原画
司ゆうき
笹井さじ
音楽
Elements Garden
井出今日子
Barbarian on the groove
44
SENTIVE
舘内

 「ナギサの」のレビュー&感想をば。

■絵■

 原画は司ゆうきさん&笹井さじさん。言われて初めて原画が2人いらっしゃる事に気付いた私はどんだけ鈍いのかと。立ち絵に関しては問題無かったのですが、一部のイベントCG(特に水守先輩)で「別の方が描いたのかな?」と思えるレベルで違和感が感じられたものがありました。あとCG枚数が少ないことそのものに不満はございませんが、「ここで!」と言うシーンでCGが無いのはちょっと寂しかったですね。夏生と灯台から遠くを眺めるCGと、ラストの進学校の制服を着たCGは愛してると言っても過言ではないぐらい愛してる。

 あと主にイベントシーンで登場した、ミヨルノユメギさんによるデフォルメ絵がCG閲覧モードに登録されないのは何故なんでしょうか? そこそこの枚数がありましたし、見ていて楽しくなるような絵柄だっただけに残念。

■音楽■

 恒例の複数クリエイター依頼制。それでも違和感もなく自然と盛り上げてくれたBGMの数々はディレクションの妙技かと思います。エンディングでテキストオートモードに入るタイミングで流れるED「夏風」はちょっとシビれました(特に夏生シナリオ)。

■シナリオ■

 簡単なあらすじ勉強と成績に追われる日々を送っていた主人公・富士見聡司はゴールデンウィークのある日、両親に無理矢理連れ出された海岸の町で放置される。途方にくれた聡司の前に現れたのは、予め両親から住み込みバイトの話がいっていた民宿と海の家を営む早川親子だった。そしてその町で出会う少女達との交流の中で、やりたいことも目的も無いままに勉強をしていた聡司は何を見つけるのか……。

 以下クリア順にヒロイン別感想。

▼柳生あおい▼

 人となり(?)夏生のクラスメート。漁師の父親に育てられたせいか、がかつで乱暴だけど面倒見のいいところもある男らしい女の子。そんな自分を変えたいと思っていたあおいは、都会の進学校からやってきて本当の自分を知らない聡司に対しては淑女らしく見せかけようとするが……。

 共通シナリオ部分では一番光っていたキャラでした。バレバレなのに聡司の前では大人しい女の子を一生懸命演じる姿が微笑ましかったり、それ以上に爆笑だったり。ふっきれて聡司とも普通に接するようになってからも、メンバー内の暴力を伴ったツッコミ役(主に千果に対して)として獅子奮迅の大活躍っぷりが輝いていたと思います。ただレディーぶるのをやめた途端、聡司に対する態度が他の男に対するものと変わらなくなってしまうのはイキナリ過ぎたかも。

 あおいは残念なことに、個別シナリオに突入した後は激しくパワーダウンしてしまいました。港の手伝いはいいとしても、乙女特訓にシナリオ構成上のアザとさ(?)っぽいものが感じられてしまったのはイタかったです。港の端っこで聡司と2人でやっていた頃はまだ面白かったのですが、冬美さんによる指導が始まった以降は首を捻らざるを得ない場面も。貴重なバイプレイヤーであった妹のさとみを活かしきれていなかったのも勿体無かったです。それはもう勿体無かったです、ええ。

 個人的にはヤっちゃった後になってから「オレはアイツのことをどう思ってるんだろう……」とウジウジ悩むシナリオがあんまり好きじゃない、ってのもよくなかったかな。

▼岩波千果▼

 人となり(?)夏生の1つ年下の後輩。診療所で祖父と二人暮らしをしていて、口から先に生まれてきたかのような元気っ子。聡司にデコピンされようが、あおいに殴られようが、とにかく己の道を貫くが如くボケまくる。

 共通シナリオ部分ではあおいに続いて美味しいところを持っていってたキャラで、肉体的な意味でもテキスト的な意味でもとにかく動きまくり。そのノリと勢いはドタバタな日常描写には欠かせない人材であり、デコピンされてのけぞる立ち絵だけで笑えました。

 個別シナリオに関して言うと、導入部分でいきなり聡司と急接近していた唐突さは気になりますが、その点以外は非常に丁寧な描写が好印象。記憶を取り戻す&幼児退行は想像の範囲内かつビックリな展開でしたけど、聡司がある意味悟りを開き、その後千果が元に戻るまでの長い間の演出は見事。「ナツメグ」のほとりシナリオでも感じましたが、この辺は木緒さんの真骨頂なのではないでしょうか。

 千果が自分を取り戻したら、聡司達の頑張った1年が消えてしまうのは寂しいなぁ……と思っていたら、ラストでちゃんとその辺も救って下さっていて一安心。何故記憶が戻ったのかが聡司にはわからないままでも、聡司の頑張りを見てきたプレイヤーにはちゃんとわかるようになっている、ってのもニクいですね。

▼沢木水守▼

 人となり(?)夏生の先輩。夜の海で裸で泳いでいたり、服の下にスクール水着を着込んでいていつでもどこでも水着姿になってしまったりと、自由奔放でつかみどころの無いエロスの殿堂。

 何を考えているのかイマイチわかりづらいミステリアス&エロス。あんな先輩が身近にいたら3日で襲う自信があります。それほどまでに迸る天然フェロモンが凄まじい水守先輩ですが、何気に包容力のある人だったりして好感度は高いです。海での初体験において己を全てさらけ出した聡司の男らしさは、ある意味伝説(レジェンド)級かもしれません。

 水守先輩のシナリオには「大切なものは目に見えない」のフレーズで有名な『星の王子さま』を一部モチーフとして使用されております。童話等をガジェットとして使うのはハイリスク・ハイリターンである、と言うのが私の持論(さっき作った)ではありますが、水守先輩シナリオにおいては成功したと言えるのではないかと。水守先輩が『星の王子さま』に傾倒するに至る顛末は、やや説得力が弱いかなー、と思わないでもありませんが。

 ライターが夏生と同じ海富一さんだけに、両シナリオをプレイして初めてわかる伏線も用意されているのも上手い演出でした。ただ、クライマックスからエンディングにかけての流れがあっと言う間で「えええっ、そんなあっさりと!?」と言った感じだったのは残念。もう一捻り、と言うか、もう少しの”溜め”が欲しかったかなー、と。せめて間にもうあと5分ぐらいの劇間があれば……っ!

▼早川夏生▼

 人となり(?)聡司が世話になる民宿の娘で、バイトすることになる海の家の主。聡司とは同い年ながら何をやってもトロ臭い自分を恥じている部分があり、進学校を休学しても勉強を続けている聡司を尊敬している節がある。

 引っ込み思案で大人しくて、でも頑張って頑張って頑張って。もうそのあまりの健気さに泣けてきてしまうのは歳のせいではないでしょう、きっと(そう思いたい)。そんな弱い子が自分のため、好きな人のため、自分の居場所を作るために努力して努力して努力して……いやもう爽やかなエンディングを拝見させて頂きました。ラストの眼鏡は賛否両論あるような気がしますが、夏生の努力の証としていい伏線だったのではないかと思います。

 三者三様に語られた事件のあらましや裏話、冬美さんから語られた夏生の出生の話等、色んな要素が無理なく関連して収束していく様子はなかなか秀逸でした。難しいとは思いますけど、もっと他のメンバーが深く関わってくるようであれば、より完成度の高いシナリオに感じられたかも、と思うと惜しい気持ちでいっぱいですが、そのは分委員長が奮闘してくれました。ここまでプレイした3シナリオで委員長が忘れ去られていたことを嘆いていた私にしてみれば、突然の登場は嬉しいサプライズであり、こっちのメンバーと戯れる(勝負する)彼女に軽く感動を覚えたり。委員長にも幸せになってもらいたいものです。

 最初の出会いこそ無理があったかもしれませんが、その後は奇跡も偶然もなく、ただただ自分達のやりたいことと自分達に出来ることを見極めた上で、歩むべき道を決めていく流れに思い切りのめりこみました。絶妙な視点切り替えで夏生に対する感情移入もバッチリで、「ナギサの」では一番好きなキャラで一番好きなシナリオです。存分に爽やか過ぎる読後感に浸らせて頂きまして、本当にありがとうございます。

 全体的に言えて、かつプレイした誰もが気になったであろう点は、やはり共通シナリオでのノリと勢いが個別シナリオで影を潜めてしまったことでしょう。それまでの全員登場ドタバタ劇の占める割合が大きかった楽しい雰囲気から一転してしまうのは、ちょっと寂しかったと言わざるを得ないかと。

 「ナツメグ」のRESシステムを進化させたイベントシステムは、より容易に、より親切なGUIになっておりました。更には固定の共通イベントを間に挟んだりすることで時系列も整えられたりと、RESシステムでの課題点がかなり改善されておりましたが、それでも微妙な細切れ感を完全に払拭することは出来ませんでした。でももう一息でこのシステムは完成するような気がしますので、今後に期待です。

 ただ「ナツメグ」の時は『思い出を作る』と言うシナリオの内容と非常にリンクしていたシステムだったことに対して、「ナギサの」では日常の積み重ねがイベントとなっている点が気にかかりました。面白いけど使いどころの難しいシステムです。

 しかしながら、イベントシーンはそうした理屈を超えて楽しめたのもまた事実。1つ1つのイベントが丁寧に作られていて、彼らの日常が近く感じられました。あれは全てのイベントを見ずともクリア可能ですけど、全イベントの全選択肢を見ておくべし、です。何回声をあげて笑わせてもらったことか。

 個別シナリオと違って、さとみも含めたメンバー全員によるドタバタの占める割合が多く、心行くまで夏の海辺の青春劇を楽しめたのも大きいです。千果が荒らしまわって、あおいがキレて、水守が治めるかと見せかけて煽って、夏生がアワアワして、さとみが冷静にツッコミを入れる。更には角川までもが暴走。なんて楽しいヤツらなのかと。

 ヒロインが揃って魅力的なのは本当に嬉しいことでしたが、サブキャラも要所要所で光っていたのがゲーム全体のクオリティを底上げしておりました。さとみや角川は言うに及ばず、委員長と冬美さんも当然として、柳生のおじさん岩波のじいさん、更には登場は最初だけだったくせに、物語において欠かすことの出来ない聡司の両親とか、要はもう登場人物全員と言っていいぐらい。

 さとみは面白くて(ラジオ大爆笑)美味しいキャラでしたけど、あの立ち位置だからこその美味しさだと思うので、別に攻略させろと声を上げるつもりはありません。委員長もまた同様。でも冬美さんは攻略したいかな。や、ほら、冷静に考えると年齢的に私は充分射程距離ですので。

 前半でパロネタが多用されすぎな気もしましたが、あれぐらいならギリギリ許容範囲。ちらほら出てくるコットン作品ネタも、プレイしたファンにしてみれば嬉しいサービスで、相変わらずシゲオは最高にバカで最高でした。全体のボリュームもちょうど良かったです。「足りない」ならともかく、あれで「短い」とか思うのはちょっとどうかと思いますよ(そんな話があることをちらほら耳にしましたので)。

 開発期間の問題か、ボイスの無いセリフや前後で矛盾したセリフ等がちらほらと。数はそれほど多くないんですけど、誤字脱字以上に気になってしまうのでどうにも引っかかってしまいました。修正したパッチをお待ちしておりますが、システム的なバグでもない限り難しいかなぁ。

 あと小さいことですけど、あおいのボート、明らかに向きが逆ではないかと。それに散歩中に夏生と寝た海岸からは方角的に日の出は見られない気がしないでもないとかあるとか。

 声優さんも抜かりない布陣でした。特に女性陣は最高で甲乙つけ難いところではございますが、やはりここは腹を抱えて笑わせてもらったあおいを演じた青山ゆかりさんに一票を投じたいと思います。

 そんなこんなで細かな粗がいくつか目に付きはしましたが、期待していた通りに楽しませて頂きました。お気に入りキャラ&シナリオは【夏生→千果→水守→あおい】の順番で、お薦め攻略順は私と同じ【あおい→千果→水守→夏生】かと。

 推奨ゲーとさせて頂きます。ありがたや、ありがたや。


個人的満足度: ★★★★★|★★★★★
執筆: 2007/12/17