PARADISE LOST

メーカー
発売日
2004/01/16
シナリオ
正田崇
原画
峰岡ユウキ
音楽
与猶啓至(ヨナオケイシ)
樋口秀樹

 簡単なあらすじ舞台はかつての大戦により荒廃した世界において、ありとあらゆる悪と悪意に包まれ、サイボーグやミュータントが跋扈する魔都・ソドムにておいて最強を誇るのはデスサイズ−−死神と呼ばれる主人公・ライル。逆に唯一の家族である妹守るべく、己を身を切り売りしながら糊口をしのぐ最下層の存在と呼ぶべき「ボディチョッパー」と成り果てているもう1人の主人公・ノウ。決して交わる事の無かった2人だが、瘴気溢れる地下層で水晶に包まれて眠りについていた1人の少女とナイルが出会った事により、世界の運命は激しく動き出す。

 今にしてみると本当に勿体無かった作品でした。ちょうど発売時期が「Fate」と重なってしまい、伝奇アクションと言うジャンルまで被ってしまったのは痛恨だったと思います。そのため知名度は非常に低く、lightの他作品と比べても埋もれてしまっている印象がございますが、そのクオリティは決して「Fate」に勝るとも劣らないと思っております。

 まず神話や聖書をベースとした物語設定が、ありがちではあれど使い方が非常に上手くて好印象でした。術式の詠唱や暗喩的な名前で知っている事柄があった場合に思わずニヤリとしてしまうこともしばしば。これは当然作品を楽しむ上でその辺の知識は必須と言う事ではありません。押し付けがましくない程度に雰囲気の演出や設定の味付けに使用されておりましたし、荒廃・腐敗した世界観に神話的モチーフがとてもマッチしていたあたりは流石でした。

 そんな世界観を彩る音楽やテキストがまた魅力的。激しいロック調のOPや戦闘シーンを盛り上げる熱いBGMなど、音楽面における品質も折り紙付きです。テキストに関しても一部難解とも受け取れる表現がございましたが、それすら雰囲気を構成するのに一役買ってましたし、非常に長いシナリオにも関わらず展開のテンポが良く、後半になればなるほど冗長さを感じる事は皆無。

 そんな音楽やテキストに紡がれるキャラクター達がまたまた魅力的。主人公その1・ライルには最強故のカッコよさがあり、主人公その2・ノウには最弱故のカッコよさがあり。この2人の視点で物語を進める事で、よりストーリーに深みが増したのは間違いないでしょう。サブキャラ達までもが魅力的なのでメインヒロインであるリルの影が薄まってしまった感があるのはちと寂しいですが、それでもソフィアやアストと言った他のヒロインに負けず劣らずな存在感は健在。

 サブキャラ達についても語っておくべきでしょう。その筆頭とも言うべきは何と言ってもライルの宿敵となるジューダス、その人です。オープニングから登場し、あっさり消えていくだけの噛ませ犬かと思わせておいて、最後の最後まで八面六臂の大活躍を繰り広げる姿には、いい意味で裏切られました。完全にダークサイドな狂気的高笑いや、自分をも含めて全てを見下した高慢で道化めいた言動。CVであるルネッサンス山田さんの熱演と相まって、この上なく強いインパクトを残すキャラとなってました。

 そのジューダスをサポートし、唯一制御出来る科学者のリリスがまた良かった。登場時はジューダス以上(と言うより以下)のチョイ役と思わせておいて、これもまた最後まで見せ場のある存在感たっぷりなキャラに大成長。ほんと、サブキャラが活きてる作品には名作が多いですね。逆にラスボスであるサタナイルは最後の最後まで実力を見せず、要所要所で黒幕的雰囲気を漂わせながらもあまりに”上”の存在っぽ過ぎたためか、敵役としての存在感がジューダスに集中してしまっていたのが残念無念。

 残念と言えば、一部のキャラのみにしかCVが無かったのも残念でした。声優さんが皆さん好演なさっていただけになお更。特にアズラーン、デザード、クレメンスの3人にはCVが欲しかったです。それだけで中盤の盛り上がりは大分変わったのではないでしょうか。

 物語が単純な勧善懲悪ではないのも興味深いところ。サタナイルですら決して”悪”ではありませんでしたし、それはジューダスも同様で、ライルやノウだって別に”善”と言うワケではありませんでした。各々が各々の信念の元に行動し、ぶつかっていく姿には熱いものを感ぜずにはいられません。

 褒め過ぎたような気がしないでもありませんけど、本当に埋もれさせてしまうには勿体無い作品である事は間違いなく断言出来ます。既にロットアップしており、発売本数もそれほど多くなかったらしく入手はやや困難かと思いますが、困難を乗り越えてプレイするだけの価値がある作品です。


個人的満足度: ★★★★★|★★★★
執筆: 2007/09/11