ひめしょ!

メーカー
発売日
2005/11/25
シナリオ
藤崎竜太
原画
鳴海鈴音(なるみすずね)
スドウヒロシ
音楽
unMOMENT
ms-jacky
4-EVER

 「ひめしょ!」オールクリア致しました。自力でコンプリートしたゲームはかなり久々です。だっていつまで経っても攻略サイトに攻略が載らないんですもの……それだけ売れてないってことなのかと思うと寂しい限り。それは純粋に「勿体無い」と思えるゲームでした。

 ■シナリオ■

 未来のお話。日本に複数の王国があって、ある日突然王位継承者であることを知らされた主人公・コハルが暗殺者の目を眩ますべく女装して学園に通い、その学園にいる他国の王女の中から結婚相手を選ぶ、と言うのが根幹となるストーリーです。他には微妙に軍事に関する化学力が向上していたり、地球を出ていって宇宙で暮らしてる国があったりとSFチック&ファンタジックな設定もチラホラ。元々シナリオライターである藤崎竜太さんは設定魔でらっしゃるので、こう言ったSF周りの設定は得意とするところなのではないかと。

 主人公は『ショタ系主人公のはわわ奮戦ADV』の名に恥じないショタっぷり。そして周りのヒロイン達に”愛をもって弄りたおされる”と言うこの展開は同社の「ときどきパクッちゃお!」と酷似しておりますが、今作の方が遙かに洗練された感があります。「女装して学園に通う」と言う設定はストーリーの中ではあまり活かされておりませんので、果たしてこの設定が必要だったのかどうかは甚だ疑問ではございますが、コハルのように”イジメられっ子でありながら実は相手を手玉に取っている曲者”と言うキャラ付けは見た目が完全にショタ系であるが故に上手く昇華されている設定なのではなのではないかと思います。これが普通のカッコいい青年風の主人公でしたら只の”裏表激しいヤツ”で終わってしまうでしょうし。もちろん単に製作者の趣味である可能性が一番高いのですが。

 エンディングに持っていくまでの流れがちと弱いんですが、日常会話の面白さは折り紙付きです。この方面で定評のある「つよきす」と並べても遜色無い、と言うよりも遥かに上であるように感じました。そう言った面白さを求めていて、ドタバタコメディーが好きな方には是非ともお薦めしたいと思います。

 ■絵■

 とっつき辛い絵であるのは確か。でもすぐに慣れます。私自身かなり抵抗を感じていたのですが、開始5分で気にならなくなりました。CG等に関して特筆すべき点は特に無し。

 ■音楽■

 BGMは作品の雰囲気を損ねることの無い無難な感じ。ボーカル曲はOP・EDに加えて章の終わりに毎回流れる挿入歌の計3曲。欲を言えば挿入歌のムービーは何種類か欲しかったところですが、それは贅沢過ぎかな。一番好きな曲は挿入歌の「Praise me!」。そしてOPの「SPIRAL」は曲単体で聴くよりもゲームと合わせて聴くことで愛着が湧くタイプの曲で、これはゲームの主題歌としてはかなり重要なポイントなのではないかと思います。どんなにいい曲であろうと作品に合っていなければ意味が無い、と言うのが私の持論ですので。

 それではシナリオ別感想をクリア順に。

 ▼センゴク ナナミ

 強気系イジメっ子。メイドのポチを従えてコハルを(愛をもって)苛めたおす毎日。たまーに見せる弱さに心を揺さぶられたりしますが(主に私が)、基本的には常に押せ押せな猪突猛進タイプです。CVは新堂真弓さん。偉そうなことを言ってしまいますと、かなり演技が良くなっているように感じました。上記の「ときパク」でも今作と同じようなタイプのキャラを演じてらっしゃいましたが、演技と言う面では比べるべくも無い程に自然になっていると思います。センゴク弁(≒関西弁)にやや微妙なところがあるのもご愛嬌。

 シナリオはノーマルエンドとトゥルーエンドの2本。別に”ノーマルエンド=バッドエンド”と言うワケではなく、どちらもハッピーエンドですのでご安心下さい。ノーマルエンドは”穏やかな日常の中で静かに育んでいく絆”と言った感じで、トゥルーエンドは”何があっても2人は変わらず一緒”みたいな感じ。ノーマルエンドだけでもよかったところにトゥルーエンドまであるのですから、プレイヤーとしてはナナミに一番感情移入してしまうのではないでしょうか。間違いなくメインヒロインです。シナリオの中心、と言う意味ではなく優遇されてる、って意味で。

 素直になれず、でも真っ直ぐに気持ちをぶつけてくるナナミは見ていて気持ちいいモノがありました。一番心に残ったのは海で遭難したシーンと戦車に閉じ込められたシーンで、つまりいずれもナナミが弱さを見せるシーン。コハルじゃなくても守ってやりたくなります。

 ▼シキシマ ナコト

 典型的お姫様にして完璧超人。それでいてイタズラ心が満載、と欠点をどこかに忘れてきたようなヒロイン。やや高飛車になりがちではあるものの、持ち前の茶目っ気がそれを覆い隠して余りある魅力を醸し出しております。CVは青山ゆかりさん。周囲からは距離を置かれてしまいがちな中で、コハルに対しては素直な自分を見せるナコトが可愛いこと可愛いこと。これはもう青山さん以外に考えられない配役です。

 過去の事件により人と深く結び付くことに対して臆病になっているナコトが、コハルといかに結ばれるかがシナリオの大きなポイント。やや最後が駆け足になってしまった感がありますが、いかにもナコトらしいエンディングに異存はございません。他のキャラがよく動いていた、ってのも私の好み。エピローグで10年後の他のヒロインが登場したのも結構嬉しかったり。サキも何だかんだ言って”仲間”だったんだなぁ、と。

 あとコハルとナナミのエロシーンを陰から解説するシーンは大爆笑。

 ▼サキサカ サキ

 宇宙に飛び出して突出した化学力を持つ国・サキサカの王女。肉体の80%が機械化されている”ロボ姫”。宇宙人だのロボだのと蔑視されても全く気にしないクールビューティーです。CVはまきいづみさん。低くボソボソっとした声に感情を込めて、更には全く逆の性格をした双子の妹も見事に演じてみせるまきいづみさんはもう流石の一言。ぽやぽやっとした脳みそ半分溶けてそうなキャラの印象が強いまきさんですが、個人的にはサキのようなキャラの方が好きです。一番好きなのは「ままらぶ」の涼子さんですが。

 感情を滅多に出さないサキが、徐々にコハルへ惹かれていく……と書くにはやや展開が急な感じでしたが、強くそれを感じさせなかったのは元々サキは感情の起伏があまり無いせいでしょうか。妹のシキ(と書くと17分割されそうな気が)との対比も良かったですし、エンディングへの持って行き方も一番上手かったシナリオだったと思います。クライマックスではちょっと涙出た。

 ▼シキシマ ココ

 ナコトの妹。完璧な姉へのコンプレックスを抱えていて、常に人の陰に隠れて怯えている男性恐怖症。剣道を通じて性格が前向きになっていく様子が上手く描かれてました。CVはかわしまりのさん。芯に強いものを秘めたオドオド系キャラを演じさせても抜群です。

 尊敬すると同時に偉大なる姉を何か1つだけでも越えたいと願うココはある意味一番アイデンティティの獲得に貪欲だったと言えるかもしれません。もちろんその強さはコハルはもちろんのこと、姉であるナコト自身から与えられたものであり、そんな素晴らしい人達に囲まれたココは本当に幸せ者だったと思います。

 剣道、つか剣術の描写に関してはツッコミたいところが多々あるにしても、ここでそれを言うのは野暮と言うもの。自分の力で欲しいモノを勝ち取ったココに幸多からんことを。

 ▼ハーレムエンド▼

 やっぱりあったハーレムエンド。ハレーム状態があまり好きじゃない私ですが、何となく許せてしまうのはコハルが尊敬に値する男だからか(ショタだけど)。まぁコメディだから、ってのもあるんですけどね。

 このルートに入るのには苦労致しました。元々選択肢が明確ではない(特定のヒロインを攻略するにも正解が分かりづらい)ので、このハーレムエンドに辿り着くまでに『誰とも結ばれないままコハルが旅に出てしまうエンディング』を見ること5・6回。選択肢型ADVにゲーム性を求めない私にとっては既に辛いレベルだったり。

 んで攻略対象じゃないけど美味しい人達。

 ▼ポチ

 ”美味しい”と言う意味では全キャラ随一な、ナナミのメイドである犬チック少女。ノリよし、ボケよし、キレてよし、イジめられてよし、のギャグのオールラウンドプレイヤー。何回腹を抱えて笑わせてもらったことか。CVは立花舞さん。テキストだけでも面白いのに、立花さんの絶妙なる演技によって界王拳10倍炸裂です。感服致しました。文句なし、最優秀助演賞を差し上げます。

 ▼ミシマ キョーコ

 コハルの身を守るべく現れた最強メイド。充分カッコいいのですが、もう少しその強さを発揮する場面が欲しかったかな。CVは甲賀忍さん。初めて聞く名前だなぁ、と思って検索してみても「バジリスク〜甲賀忍法帖〜」ばかり引っかかってどうにもこうにも。

 テキストはもとより、演じる声優さんも最高でした。テキストだけでも面白いところに一分の隙も無い布陣が組まれて、その面白さを磐石のものにしているように思えます。あと個人的な話で恐縮ですが、プロデューサーのMOKAさんとは声優さんの趣味があまりにも合い過ぎているような気すら致します。狙われてるんじゃないか、とすら思える声優陣にボクのハートはKOです(KO:心穏やかじゃない、の略)。

 上記の通りシナリオ展開の弱さを補って余りある面白さがあると思います。語弊があるかもしれませんが『非常に質の高い娯楽作品』と言えるのではないかと。それだけに現状の扱いは勿体無いなー、と思えてなりません。「このゲームを知らなかった」「絵がちょっと……」と言う方は是非手にとってみてください。上記感想に感じるところがございましたら、決して損はなさらないでしょう。

 あと何が嬉しいって、XANADUさんのゲームを自信を持って推薦出来るのが嬉しいですね。「ときパク」も嫌いじゃないんですが、人に薦めるとしたら「ひめしょ!」かな、と。

 んで他に気になったのはタイトル画面の「Start」が「Stert」になってたり、「Extra」画面からタイトル画面に戻る時の「Return」が「Retune」なってたりしたこと。あまつさえ音楽鑑賞にあるOP曲「SPIRAL」に関しては曲名を間違えてる上に誤字まで炸裂してたり。パッチで修正されましたけど、焦ってらっしゃったんだろうなぁ……と思わせられる心温まる(か?)エピソードでしたとさ。


個人的満足度: ★★★★★|★★★★★
執筆: 2005/11/29