姫さまっ、お手やわらかに!

メーカー
発売日
2007/09/28
シナリオ
渡辺遼一
原画
ねこにゃん
音楽
Elements Garden
Little Wing
Barbarian on the groove
Shim
なるちょ

 「姫さまっ、お手やわらかに!」の感想&レビューをば。

■絵■

 ねこにゃんさん。戯画でねこにゃんさんと言えば丸戸さんとのコンビが印象深いですが、今作では作風に合わせて更にコミカル調が強くなったような感じ。すました表情よりも、崩れた表情(たくらみ顔、ヘン顔等)の方が面白くて好きです。

■音楽■

 BGMは明るいアップテンポ調のものが多くて、主題歌「アルカディア・パレード」もまた同じ。OPで聴くだけではそんなに印象的ではなかったんですけど、クライマックスで流れる「アルカディア・パレード」はドンピシャでした。

■シナリオ■

 簡単なあらすじ舞台は南の国・マジャプーラ。主人公・比留間賢治(実はマフィアの跡継ぎ)は幼馴染の恋心やお嬢様のちとせ、その用心棒である小桃達と祭り楽しんでいたが、ステージに突然謎の女の子2人組が乱入してきた。1人はこの国から追放されていた王族の王位継承者を名乗るパフィン、もう1人はその奴隷(?)である名取さん。暴れに暴れた2人は祭りの場所から逃げ出した後、図々しくも恋心の家に住み着いたばかりか、賢治と恋心を自分達の奴隷と認定し、ヴィジャヤ王国を復活させるべく更に暴虐をエスカレートさせていくことになる。果たして賢治やマジャプーラの運命や如何に。

 知る人ぞ知る(?)渡辺僚一さんによるシナリオ。徹底した下品なノリで畳み掛けてくるようなテキストでした。肌に合わないと仰る方もいらっしゃるかもしれませんが、ただの下ネタじゃない勢いを感じる渡辺さんのテキストはそれだけで敬遠するには勿体無いんじゃないかと思います。全編通してボリュームは控えめであり、ショートショート的な1話完結型のストーリーの積み重ねですので、進める上でのテンポは非常に快適です。エンジンは「パルフェ」や「この青空に〜」でも使用されていた安心と信頼の戯画仕様。

 以下クリア順にヒロイン別感想。

▼パフィン・プラクリティ・ラーマティアン7世▼

 人となり(?)自称ヴィジャヤ王家の末裔。強気かつ傲慢であり、自分は天佑を授かっている、と信じて疑わない。そして実際に予言らしきものをしたり、異常に運がよかったりと、本当に天佑の存在を周囲に信じさせてしまうような言動も多い。胸が小さいことがコンプレックスなのか、大きい胸には邪神・悪魔が宿っていると言って憚らない。行動の全てがヴィジャヤ王国復活のためであり、傲岸で不遜な態度は他人に嫌われてしかるべしだが、王族らしい気高さと決して悪人ではない性根によって憎めないところもある。

 基本的にはイタい子なんですが、もっと基本的には真っ直ぐな子なので結構好感が持てるタイプでした。人を人とも思わない傲慢さも慣れれば微笑ましいレベルでしたし。脇の甘い王侯貴族服も斬新かつ新鮮。個人的な希望としては、もっと他のヒロインのシナリオでも活躍して欲しかったかなぁ、と思います。

 パフィンのシナリオはふとした切っ掛けで(パフィン達らしいと言えばとてもらしい切っ掛け)賢治と結ばれるに至ったパフィンが、国の支配を望んでクーデターを起こすちとせの叔父と結託するも、最終的にはクーデターを叩き潰すと言うもの。その流れの中でパフィンが本当の意味での王位継承者としての自覚に目覚めていくのは、展開としてはコテコテながら後味スッキリ。

▼千寿院ちとせ▼

 人となり(?)マジャプーラの”表の顔”を支配すると言っても過言ではない千寿院一族のお嬢様。ちとせ自身も千寿院家の人間として民衆から人気を得るために、偽善的と言われながらもありとあらゆる努力を怠らない。マジャプーラの勢力を二分する”裏”のマフィア・ゴディーヴァの跡取りである賢治に対して、事あるたびに結婚を前提に迫ってくる。パフィンとはとことん肌が合わないのか、顔を合わせては喧嘩ばかり。

 本来は賢治のバックにあるゴディーヴァの裏の権力を目的として賢治に近づこうとしていたのに、いつの間にやら賢治本人に惹かれていたという王道的展開。それでもプライドが高いので意固地になってるところも可愛らしいところと言えるでしょう。ただやや空回りしてる部分があるのも確か。もっとお嬢様らしからぬ一面が見られれば好感度はもっと高かったかな。

 ちとせシナリオはパフィンシナリオでも出てきたちとせの叔父がちとせを誘拐されてしまいそれを皆で助けると言うもの。賢治がゴディーヴァを受け継ぐことで解決に向かっていく流れは爽快と言うよりも傑作(面白い意味で)と言った方が雰囲気は近いかも。鬼瓦とのやり取りとかマフィア故にしきたりとか、何だかんだ言って賢治は生粋のマフィア育ちだったんだなー、と。

▼時田恋心▼

 人となり(?)賢治の幼なじみ。非常に前向きな正確故に、強引に巻き込まれたヴィジャヤ王家の復活にも結構協力的。賢治達の何でもない会話で「もしかしてエッチな会話が始まる?」と妄想を逞しくして顔を赤らめたりするあたり、純情なんだかエッチなんだか。無自覚な巨乳で、賢治をうろたえさせることもしばしば。

 メンバーの中では一応一番の常識人かもしれないけど、ここぞと言う時には強い(かもしれない)。「もしかしてエッチな会話が……」はしつこくない程度のギャグで好印象。長年の付き合いで賢治のことを誰よりもわかってるあたり、幼なじみ検定1級は確実ですけど、子供の頃の思い出系の話が恋心自身のシナリオであまりなかったのは減点かな。

 恋心シナリオはメイン2人よりも短くて、恋心との恋愛話が中心となるシナリオでもないため印象が薄いんですけど、ラスト付近の全員集合的なドタバタは結構好きです。

▼名取さん▼

 人となり(?)パフィンの奴隷兼メイド。何があってもパフィン至上主義。人間離れした怪力と頑丈さを持った直情型で、恋愛事には非常に疎い。パフィンが絡んでこない場面では天真爛漫で優しい性格なこの上ないいい娘。巨乳であり、そのことでパフィンからは事あるたびに苛められている。

 何故か「さん」付けしてしまう名取さん。登場人物の中では一番好感度が高いかも。他の人のシナリオでは純然たるサブキャラで、パフィンと常に行動を共にしているものの自発的な行動が少ないのが残念。特にパフィンシナリオで賢治とパフィンが結ばれた時とかもっとリアクションが欲しかったなぁ。

 名取さんシナリオは賢治と相思相愛になる過程がすっぽり抜け落ちているばかりか、クライマックスと呼べるシーンすら存在しないので、展開としては非常に物足りない部分がありました。でも名取さんの出生の秘密名前の由来などが賢治には知られないまま提示されて、余韻を残しまくりつつ終幕となるラストの演出はかなりお気に入りだったり。結局名取さんは人間じゃないって事でFAか。

▼小山内小桃▼

 人となり(?)ちとせの用心棒。どんな命令にも「Yes,ボス」と従い、無表情に拳法を繰り出してくる。見た目は賢治達よりも年下だけど、ちとせを守るためか同じクラスに在籍。あまり表情を表に出さないけれど、ボソッと呟く一言が核心をつくことも。

 一体どうすれば小桃と結ばれるんだ、と全く予想出来ておりませんでした。そーゆー意味では全シナリオの中でも意外性ナンバー1かも。ややご都合主義的なものを感じますが、よく話すようになった小桃が可愛かったのでヨシ。欲を言えば小桃がゴディーヴァに戻る展開も見てみたかったかな。

▲グランドルート▲

 全員クリアするとプレイ可能となるグランドルート。と言っても長さ的には各シナリオの1・2話分程度で、グランドルートと言うより”最後のシメ”と言った方がしっくりきます。

 やっぱりこうなっちゃうのか、と言った展開は最後の最後までノリも勢いも変わらぬまま突き進んでいきました。「こうして俺達の騒々しい毎日はまだまだ続いていく」と言ったジャンプ風エンディング。誰かのシナリオの後日談と言うより、どのシナリオに進んでも最後はこうなる、と解釈するのが正解? バッドエンドの後すらこうなりそうな予感です。大団円と言うか、”最後のシメ”と言いつつ全然シマってないような気がしないでもないけど「これでいいんだろうなー」と思えるのがこの「姫さま」クオリティなのでしょう、きっと。

 サブキャラも濃いのが揃ってましたが、やはり一番は鬼瓦。人がいいのか悪いのかわかりませんが、バカなのはヒシヒシと伝わってきました。悪役も非常に分かりやすく描かれていて正に愉快痛快。ボリュームが少なめな事自体に文句はありませんし、テンポよく進められる事は大いに評価すべきポイントではありましたが、やはりもうちょっと心の機微を掘り下げて欲しかったですね。

 と言ってもこのゲームの真骨頂は、何と言ってもライター・渡辺さんによるノリと勢いがたっぷりな下ネタの数々です。おそらくはかなり控えめに書かれているとは思うのですが、それでも溢れる下ネタ魂は抑えられない模様。いやー、笑った笑った。このノリが肌に合う人にとっては、とことんまでハマれること請け合い。

 アイキャッチの歴代ヴィジャヤ王の紹介や、同じくアイキャッチのヒロインによる一言などは、ゲームを進める上でいいアクセントでした。およそ迷う事の無い選択肢(誰の話を進めるか、を選ぶ)や、必要と思われる機能を全て兼ね備えたエンジンなど、ゲーム環境に関しても文句無し。

 声優さんの演技もナイス。ヒロイン4人はもとより、サブキャラに至るまで抜かりはありません。

 結論としては大作では無いけど、気楽に楽しめる良作。短いってだけで低評価してる人は正直間違ってると思う。クリア後の達成感は無くとも、短編集を読み終えた後のような爽快感……があるほど爽やかさは無いかな、うん。


個人的満足度: ★★★★★|★★★★★
執筆: 2007/10/03