Bullet Butlers

メーカー
発売日
2007/07/26
シナリオ
東出祐一郎
原画
中央東口
音楽
Antistar

 「Bullet Butlers」の感想&レビューをば。

■絵■

 中央東口氏。相変わらず女性の可愛さ以上に男のカッコ良さがタマらない画風。もちろん女性も非常に魅力的に描かれておりますが、エロシーンのCGにはちょっと違和感が(通常のイベントシーンでは感じないんですけど)。

 また、同社作品の特徴の1つであるデフォルメ絵のカットインは本作でも効果的に使われておりました。そして本作では更に立ち絵でもデフォルメ絵が使用されておりまして、最初は多少戸惑いましたが、すぐに慣れました。と言うより通常の立ち絵とデフォルメ絵の同居がコミカル度のアップに繋がっていたように思います(逆に慣れないと結構厳しいかもしれない)。あと、まさかあるとは思っていなかったヘルのデフォルメ絵。使いどころが少ないのはわかりますけど、それでも1回しか使われなかったのはちょっと寂しかったかも。

■音楽■

 戦闘シーンのとことん熱いBGMは限りなく熱い。他の日常で使用されるBGMにしても高いクオリティに満足です。ちなみにOPやEDはボーカル曲と言うよりBGMの1つとして見てます。

■シナリオ■

 簡単なあらすじ2000年の昔、”不死の王”が顕現する世界を救った8人の英雄がいた。現代においてもミスティック・ワンと呼ばれる”英雄”を受け継ぐ者は、誰からも理屈を超えた敬愛を受けた。そんなミスティック・ワンの継承候補であるセルマに執事として仕える主人公・リックは、大切な人を守るために己の魂を削りながらも戦い続ける……。

 『銃と魔法と執事と主のファンタジーAVG』の看板に嘘偽り無し。ただファンタジーと言っても綿密に練られた設定と世界観のバックボーンがしっかりしているので、理解さえ出切れば荒唐無稽に感じる事も無く、非常に重厚なシナリオを楽しむことが出来ます。そしてこのジャンル名には『ハードボイルド』を付け加えた方がより正確かと。やはり東出祐一郎さんからは今後も目が離せない。そう確信致しました。以下クリア順にヒロイン別感想。

▼渡良瀬雪▼

 人となり(?)セルマの友人であるヴァレリアの執事。剣に長けており、執事学校「白手の学院」を主席で卒業した後、ヴァレリアに仕えるようになったのが3年前。それ以降は並々ならぬ敬愛と愛情を持ってヴァレリアに仕えており、少々過保護気味なところも。リックとは執事仲間と言える間柄であり、気の置けない付き合いをしている。養父は刑事をしているガラ。

 ヴァレリアに対する度の過ぎた愛情の注ぎ方とたまに見せる暴走っぷりが素敵。リックとは友人として接しながらも、内心は同じ執事として憧れのような感情を持ちつつ、更には恋愛感情に近い意識まであるもののヴァレリアの想い人であると言う点で悩みながら、その上自分の出自の秘密とリックの秘密の関係を知った時には狂おしい程に煩悶を……ととにかく気苦労が絶えない可哀相な人。

 雪シナリオではラストにおけるリックvsレイスと雪vsガラ(操られ中)のダブルバトルが見所。特に雪の戦いなんて、戦闘シーンだと言うのに涙が流れて止まりませんでした。熱いは泣けるはでモニターの前の男(=私)は大変なことに。逆にリックvsアルフレッドのラストバトルはちょっとアッサリし過ぎていて拍子抜けだったかもしれません。

 最後の選択肢でエンディングが分岐する雪ですが、そのうちも片方ではリックよりも雪よりも誰よりも、ガラがあまりにも格好良すぎてシャレになってませんが、何事ですかアレは。雪の幸せを誰よりも願った悲しい選択。ガラさん……あんた、”父親”だったよ……。

 あ、あと個人的には巨乳設定はいらなかったかなー、と思ってます。戦闘中は邪魔だったんだろうなぁ、なんてことじゃなくて、男装(執事服)にはスレンダーなスタイルの方が似合うと思ったので。最大でもCカップどまり(充分大きいけど)を希望致します。

▼ヴァレリア・フォースター▼

 人となり(?)10年来のセルマの親友であり、リックとも親しくしているエルフの少女。没落気味の貴族出身で、魔法修行に励みながら健気に暮らす毎日。執事である雪とは3年の付き合いで、2人は深い深い絆で結ばれている。リックに対しては淡い気持ちを抱いている恋する乙女。ちょいハワワ系。

 優しい心をもった、新米でちんまい魔法少女。しかしながら、その出自には本人さえ知らなかった秘密が……と言うヴァレリアシナリオは、3つあるシナリオの中では少々異色のシナリオでした。一番の理由はラスボスが唯一アルフレッドじゃない上に、その本来のラスボスたるアルフレッドが中盤過ぎに殺られてしまった点が少々引っかかったからでしょう。その点に関しては「ええーっ!?」って感じでしたけど、それだけギュスターヴの執念が大きかったってことか、と自分を納得させてます。

 とりあえずヴァレリアと雪の絆に改めて涙。そしてギュスターヴとベアトリスの悲恋にも涙。アルフレッドを倒す程の凄まじいギュスターヴの執念は計り知れませんが、それだけにセルマシナリオでベアトリスの見守る中でギュスターヴヴァレリアを救った時は心底嬉しかったです。「お、お、お、おお……」と一瞬自分の動きが止まりました。

 リックにとっての最強必殺技と思われる二挺拳銃を見られるのがヴァレリアシナリオだけってのは勿体無い話です。兄との戦いと言う過酷な運命から逃げずにリックと共に戦うことを決意をしたヴァレリアの心中は察するに余りありますが、それこそがギュスターヴをも救う道だったとは……最期に見られた安らかな顔がせめてもの救い。

 ヴァレリアシナリオの見所は戦闘シーンもさることながら、何と言ってもエンディングのモノローグでしょう。穏やかに語られるヴァレリアの生きてきた道のりと、迎えることが出来た仲間達との邂逅。よかった……本当によかった……ヴァレリアが幸せになれて本当によかった。そして魔銃の2人(?)が満足していたのも非常に印象深かったです。

▼セルマ・フォルテンマイヤー▼

 人となり(?)次代のミスティック・ワン候補であり後にミスティック・ワンとなる、リックが10年来仕える主。竜に変身出来る種族『ドラゴニュート』であるにも関わらず、その能力を失ってしまった「ラッカー」と呼ばれて蔑まれる存在。やや厭世的ながらもリックやヴァレリア、雪や屋敷の人間と言った自分の仲間に対しては深い愛情を持っている。

 もう最高。強くて弱くて、優しくて厳しくて、温かくて毅然としていて。ミスティック・ワンを継承して、世界で最も重いものを背負わされたセルマと、そんな彼女を支えるリックと、そんなリックに向けられる揺るぎないセルマからの信頼と、そんなセルマに対するリックの絶対の忠誠。これぞ主と執事のあるべき形における究極。私もサラリーマンなんかじゃなく、執事になればよかったと激しく後悔しました。

 主として、執事として、仲間として、恋人として、何人たりとも間に入ることなんて出来ない絆があまりにも眩し過ぎます。語れば語るほど陳腐になりそうなのでこの辺にしておきますが、とにかくセルマあってのリックであり、リックあってのセルマ。そんな2人と出会えた事に感謝。

 セルマのシナリオであると同時に、物語全体のグランドルートと呼んで差し支えないであろうこのシナリオは、正に見所と見応えがタップリ。そもそもOPが流れるまでの長い長いプロローグの時点で、こちとら完全にリックとセルマに感情移入を完了している上に、他のシナリオで明らかになった事実が活きてきたり、更には新たな事実が次々と判明してきたりするんですら……正に怒涛の展開と呼ぶに相応しいでしょう。

 ラストバトルに向けて一気にストーリーが収束していく中、仲間達がそれぞれに出来ることを死に物狂いでやり遂げようとする姿からは一時たりとも目を離すことが出来ませんでした(お陰でスゲー寝不足)。自分の魂を限界まで削り、人間としての限界を超えたリック&セルマvsシド(ファーブニル)。これだけお腹イッパイだと言うのに更に繰り広げられるリックvsアルフレッドとセルマvsレイスのファイナル・ダブルバトル。もう勘弁して下さい。当然いい意味で。

 とにかくこんな主がいたら私もいつだって己の命と身体を賭けてお守りする所存。主としての毅然とした態度と、恋人としての甘い表情に私のハートは鷲掴まれです。”英雄”を継承したことでセルマ自身も絶大な力を持つに至ったにも関わらず、胸の奥から滾々と湧き出でてくる『守ってあげたい』と言う想いは……これが執事魂なのでしょうか。

 とまぁヒロインがとにかく魅力的だったんですけど、サブキャラがまた男女問わずイイ味出してくれちゃってるんですよね、これがまた。

 ベイル・ハウター。喋る銃器で、使用する人間の魂を削り”不死の王”への糧とすることで絶大な力を発揮する特殊な魔銃。益する存在かどうかは判断に苦しむところですが、滅茶苦茶口が悪いけどどこか憎めないベイルがいなかったら、この物語の面白さは半減し、同時に面白いが故に際立っていたシリアス度も大打撃だったことでしょう。それは杉崎和哉さんの快演によるところも大きかったと思います。

 ホープ・A・シャルマ。セルマに惚れていて、顔を合わせるたびに告白してはフラれている大手自動車メーカーの御曹司。とにかくギャグ担当で、何度笑わせてもらったことか。一介の執事であるリックにも友達付き合いをしてくる気さくさもあり、何があってもセルマの味方であり続ける気骨のあるところも見せてくれたりと、好感以外持ちようのないキャラでした。それだけに、もしも「ホープが裏切る」なんて展開があったらこっちは人間不信に陥りかねませんでしたけど、ホープはやっぱり最後までホープで一安心。

 エルネスタ・ディートリッヒ。ヴァレシアの師匠にしてリックの恩人で、かつてのシドの戦友でもあった大魔法使いなお姉さん(見た目は)。飄々としていながらも、深い愛情を持って皆を見守ってきたその生き様、しかと心に刻ませて頂きました。そして貴女との筆下ろし、大変甘美でございました。や、正直に申し上げますと、数あるエロシーンの中で一番エロスを感じたのがこのシーンだったんですが、それ以上にエルネスタの優しさが感じられて、何だか心があったかくなるようなエロシーンだったのが凄く心に残ってます。や、まぁ可能な限り多くの女性キャラにエロシーンを、の精神で挿入されたシーンなのかもしれませんけど。

 ガラ・ラ・レッドウッド。雪の養父であり、やはりかつてのシドの戦友でもある腕利きの刑事。文句無しに助演男優賞を授与させて頂きます。あまりのシブさと格好良さにクラクラしました、マジで。雪シナリオの2つあるエンディングのうちの1つ、私が個人的に『ガラエンド』と呼んでいるエンディングでは、貴方の背中を目蓋に焼きつかせて頂きました。ガラさん……漢だよ。

 プーキー・フーキー。実はやっぱりシドの戦友だったガラの相棒刑事。常にシドと行動を共にしているので毎回面倒に巻き込まれては嘆いている……と、こう書くと何だかガラさんの引き立て役のように思えてしまうかもしれませんが、プーキー自身も腕利きなのでしょう(きっと)。シリアス系のガラさんとは本当にいい相棒関係だったのだと思います。何度も和ませて頂きまして感謝しております。

 レイス。どんなに傷付けられても殺されても復活する不死性を持ち合わせた最凶の殺し屋。出てきた時はあっさりやられて消えていくキャラかと思いきや、最後まで絡んでくる超重要キャラだったことにビックリ。間違いなく最強のうちの1人ではあるのですが、アルフレッドには手も足も出なかったり、ガラさんに叩きのめされて捕縛されたりと少々抜けている部分も。レイスに関して特筆すべきはその恐ろしさよりも、娼婦にして情婦であるヘルに対する優しさでしょう。それもあってか、どうにも憎めないナイスな敵キャラとなっていたと思います。

 カウラ・ロイ・ラガスティア。たまにリック達の前に姿を現す謎の仮面女。その正体は『コゼットだろ?→あれ、違ったらしい→って、やっぱりコゼットじゃん!』と二転三転。でも最終的には幸せを掴んでくれて(セルマシナリオで)胸をなでおろすことしきり。ただカウラに関してはエロシーンが必要だったのかどうかやや疑問です。そしてエンディングでのメイド姿に思わず吹きだしてしまったのは私だけじゃないはず。ラストでは元の姿に戻るんじゃないかと思ってたんだけどなぁ。

 etc.etc....

 スラップスティック的な笑いと、しめる時はとことんまでしめるシリアスの加減は絶妙。だからこそ日常の穏やかな描写と、非日常におけるシビアな描写が映えるのだと思います。ライター・東出さんのテキストはやはり素晴らしい。緻密で骨太な設定と、それらを投げっぱなしにすることなく最大限に活かしたシナリオに感服です。ただ欲を言えば”不死の王”の復活関連のイベントや他のミスティック・ワンが絡んでくるイベントや本来は目が見えない事に関するイベントとかも欲しかったかな。

 シナリオは長めですが、それが苦にならない面白さを備えていることは請け合いです。『執事と主』と言う立場を余すところ無く活用してみせてくれたところも高評価。どっかの主と執事とは言いつつ( ピ ー )なゲームとはワケが違います。まぁジャンルが全く別物なので、比較する事に意味は無いんですけど。

 あえて苦言を呈させて頂くとすれば、もうちょっと伏線を上手く使って頂ければ良かったかな、と思いました。例えば修理に出していた懐中時計とかセルマとの海外(?)旅行の話とか、もっとストーリーに上手く絡ませることが出来れば、より展開に深みが増したのではないかと。前者に関してはちゃんと使われてましたけど、アッサリ風味でちょっと肩透かし。

 それでもひたすら濃い上に魅力的なキャラクター達が活躍しまくる姿を存分に味わえるシナリオ・テキストはプレイしなければ大損だと思います。特定のルートに入った後も、キャラクター同士の掛け合いが全く損なわれないのも私好み。

 声優さんも実力派揃いで文句無し。メインキャラからサブキャラ、主人公に至るまで隙がございません。それはもう「誰々の演技が良かった」と具体的に挙げることすら憚れる程に。無理をして名前を挙げていくと結局は全員の名前を挙げることになるであろう程に。いつも思いますが、Willは声優さんの使い方が本当に上手いですね。好きな声優さんも数多く出演なさってますし、嬉しい限りです。

 各シナリオをクリアした後に表示されるトップのメニュー画面のバックが、エンディングで使用されたCGになる演出は”小さな親切ながらも痒いところに手を届けてくれた”的な仕様でした。余韻に浸るにはうってつけです。特にセルマシナリオをクリアした後はメニュー画面を見ているだけで涙が溢れそうになりました。よく動く立ち絵による本編中での演出やカットインCGによるアクセントも好印象。

 褒め過ぎた感が無きにしろあらずですけど、期待していた以上に楽しませて頂いた私の正直な感想です。当サイトの推奨ゲーとさせて頂く事で脳内会議は終結致しました(一部からは義務ゲーとの意見も)。


個人的満足度: ★★★★★|★★★★
執筆: 2007/08/01