| シャカリキ! | |
| 曽田 正人 | 秋田書店 |
主人公・野々村輝は自転車の魅力、坂の魅力、そしてレースの魅力に取り付かれた人間。
作者である曽田先生は代表作である「め組の大吾」や「昴」などからもわかるように『危うい天才』を描かせたら日本一という漫画家ですが、この「シャカリキ!」はその最たるものではないかと思います。
主人公である輝は自転車以外は何も目に入らない人間です。寝ても覚めても自転車ばかりで、時間があれば坂を自転車で駆け上がる……もはや『自転車キチガイ』と言えるであろう輝は「熱い男だ!」なんて言葉では片付けられない狂気を秘めており、それは同時に危うさを抱えたものでもあります。もし輝が自転車に乗れなくなったら一体どうなるのか……ただ1人の理解者であった姉をしてそう言わせる輝。輝がレース中に事故に遭い、その危惧が現実のものとなりそうな時がありました。全治2ヶ月の重症を負い、歩くことすらままならなくなった輝。周囲の人間は輝が自転車を辞めてしまうのではないかと心配しますが輝はこう言い放ちます。
「落車は怖くなくなった。ビョーイン行けば治してくれるのがわかったさかい」
恐ろしい……恐怖さえ抱かせる輝の狂気。しかしこのマンガはそれだからこそ読者をグイグイ惹きつけるものがあるのです。
高校1年生にして参加した日本最大の自転車レース。そこで輝は日本自転車界の皇帝と呼ばれる男や『電算機』の異名をとる戦略家、コロンビアからの留学生など数々の強豪を次々に破ります。そしてその最後まで争った敵は同じ部に属する同級生・由多比呂彦。伝説にまでなりうる2人の名勝負は本作品のヤマ場でしょう。
未読の方は是非一度読んでみてください。そして輝の熱気にヤラれちゃってくださいませ。