First Experience
協奏曲


「さあ、入って」

僕はドアを開け、壁の電気のスイッチを入れて部屋を明るくすると、後ろに控えていた都に言った。

「う、うん……」

都は頷くと、僕の脇を通っておずおずと部屋に入っていく。僕もその後を追うように中へ入ると、後ろ手にドアを閉めた。……ついに連れ込んでしまった。

「誠司君の部屋に入ったのって小学生の時以来だね」

都はきょろきょろと物珍しそうに部屋を見回していた。

どうも巷では女の幼なじみというと毎朝部屋まで上がってきて起こしてくれるというイメージがあるようだけど、現実にはそんなことあるわけないじゃないかと思う。少なくとも、僕と都の間にはない。都のことだから頼めばやってくれそうな気もするけど、いくら幼なじみで恋人であったとしてもそこまで甘えるわけにはいかない。

それに、僕らの年頃は自分の部屋になわばり意識を持っていて、他人に踏み込まれることに抵抗があるものだと思う。だって、そうだろ。部屋の中には他人の目には触れられたくないもののひとつやふたつは置いてあるものだし、知られたくない行為を行っていたりもするわけだから。特に、母親をはじめとして異性には上がってほしくないという思いは強いのではないだろうか。

だから、都を部屋に招待するのにはかなりの勇気が必要だった。とりあえず、入られても恥ずかしくないようにしなくてはと思った。年相応の男の部屋らしく散らかっていたのをきちんと掃除したのはもちろんのこと、よからぬ本やビデオを隠したり、趣味が伺い知れそうなポスターをはがしたりと、事前にさまざまな準備をした。そうしたかいがいしい努力があって初めて安心して都を部屋に招き入れることができたというわけである。

僕は携帯や薬局の紙袋などを机の上に置いた後、ベッドに腰を下ろした。布団は事前に干しておいたのでフカフカだ。シーツも新しい清潔なものに替えてある。側に置いてある箱テッシュも念のため新しいものを用意しておいた。

都は物書きの性なのか、本棚に目が奪われていた。僕の部屋には背丈ほどもある少し大きめの本棚が置いてあるものの、そこに詰まっているものの大半はマンガ本や雑誌だし、昔作ったプラモなどが上の一段を占領していたりして、あまり都の興味を引けそうにはなかった。

それでも、都はマンガ本を抜き出しペラペラとページをめくっては僕に質問をぶつけてきた。

「ねえ、これって以前柔道マンガ書いていた人だよね。面白いの?」

「ああ。ミステリというかサイコサスペンスというか、そういう感じなんだ。逃走する殺人容疑をかけられた医師とそれを追う捜査官という展開は昔観た映画みたいだけど、医師が探している殺人犯の過去が明らかになっていくあたりはけっこうぞくぞくするんだ。絵も綺麗だし、けっこう都の好みかもしれないよ」

「そうなんだ。ちょっと興味あるかも。今度借りてもいいかな?」

「うん、かまわないよ」

都は別の本を抜き出す。

「これって昔アニメでやっていた『あたたたた』とか言いながらパンチ繰り出したり、『ひでぶ』って悪人が破裂するマンガを書いてた人?」

「違う違う、まったく別の人だって。まあ、その作者は以前、都が言っているマンガの原作者の原作で書いていたこともあるんだけどね」

「そうなんだ。どっちにしても、こういうバイオレンスなのはちょっと苦手かな」

「でも、面白いんだよ。人間の業なんかを描いたかなり奥深い内容だしね。聞く話によると、女性ファンもけっこう多いんだってさ。主人公のライバルは美形でいかにも女性に人気が出そうな感じだし、それに妖精キャラも重くなりがちな話の中にあって、けっこういい味出してるしね」

「本当だ。かわいいね、これ。――うーん、ちょっと怖いけど、これも読んでみたいかな」

「いいよ、それも貸してあげる」

都はまた別の本を取り出す。

「あ、これは知ってる。以前、誠司君が貸してくれたマンガ雑誌に載っていたから。……でも、それってけっこう前のことだったよね。なのに、これだけしかないんだ。人気が無くて打ち切りになっちゃったの? それとも途中で買うのやめちゃったとか」

「いや、それは今でも大人気連載中だよ。話が面白いのはもちろん、設定がけっこう複雑でよく考えられているなって感じるし。……ただ、載っている時より休載されている時のほうがはるかに多いんだよね」

「休載? よくある“作者急病ため――”ってやつ?」

「さあ、どうなんだろ? ただ単に、原稿が間に合わずに落としているだけのような気もするけど」

「ふーん。わたしとしては、面白い話を書いてくれるのなら少しくらい待たされるのは我慢できるけどね」

こうして、都は本棚のマンガ本を物色し続ける。僕にとってはどれもお気に入りであるから、ひとつひとつ懇切丁寧に解説してお勧めしてあげたいのはやまやまではあるのだけど、今回部屋に招き入れた目的はそれではないわけで……。

「へーえ、このマンガって背表紙の絵が繋がっているんだ。まるで絵巻物みたいだね。……あれ? 同じキャラが二回出てきているよ。作者が前に描いたのを忘れてたのかな?」

「都」

僕は都の声を遮るように名前を呼んだ。また本棚から本を抜き出そうとしていた都の手が止まった。そのまま硬直して動かなくなる。

僕は座っているベッドの隣りをパンパンと叩いて言った。

「おいで」

都はしばらく動かなかったけど、やがて錆びついた二足歩行ロボットのような緩慢な動きでこちらに歩いてきた。そして、僕の隣りにちょこんと腰を下ろす。うつむいたまま僕のほうを見ようとしない。だけど、その横顔だけでがちがちに緊張しているのがよくわかった。

僕は都の肩に右手を回した。とたんに都の身体は電気が走ったようにビクリと揺れた。次いで左手で都の頬に触れると、無理矢理にならない程度の力でこちらを向かせた。都の顔を正面から見る形になる。都の目は不安げにあちこち泳いでいた。僕はゆっくりと顔を近づける。都は何をされるのか察してより一層の緊張を見せたものの、やがて状況を受け入れるかのように目を閉じ、唇を突き出してきた。

そして、僕らはキスをした。

僕らは別に手を握るのもためらうほどの清い付き合いをしてきたわけではないから、当然これはファーストキスではない。だけど、キスの時は毎度のように心臓がドキドキした。

やがて、どちらともなく唇を離した。

都を見る。さっきまで緊張で引きつっていた顔はそこにはなく、少しぽーとした安らいだ表情をしていた。都はキスした後はいつもこうなってしまう。僕は都のそんな幸せそうな表情が見たくてキスをしているような気がする。

僕は左手を都の右肩に乗せた。これで都の両肩を抱く形になる。そうして真っ直ぐに相手を見据えて僕は言った。

「優しくするから」

言葉通り、できるかぎり優しい声で言ったつもりだった。それに対する都の反応はというと――

「あ……あはははは……」

……笑われてしまった。その笑顔は毎度のことながらかわいかったのだけど、今は笑うタイミングと違うだろと思ったこともあり、ちょっとムッとしてしまう。

「あ……ごめん」

僕の不満に気づいたらしく、都は謝る。でも、その表情はまだ笑みが残っていた。

「いったい何笑っていたんだよ。別におかしいことなんて言ってないだろ」

僕が尋ねると、都は照れくさそうに、

「いや……ね。想像と同じだなって思ってさ」

「想像? 何だよ、想像って」

そう僕は聞き返すものの、都は「ん……ちょっとね」と曖昧に言葉を濁すだけで答えようとはしない。うーん、気になる。これは無理にでも答えさせなければ。

「ほら、答えろ。じゃないと、こうだぞ!」

「ひゃっ!? ……誠司君、やめてよ。わたし、くすぐられるのが苦手なんだから」

「知ってるよ。だからこそやっているんじゃないか。答えてくれないかぎり続けるからな。ほら、こちょこちょこちょ」

「やんっ!? ……わ、わかったから、答えるからやめて!」

くすぐり地獄から解放すると、都は観念したようにボソリと答えた。

「あのね……わたし、部屋に一人でいる時によく誠司君のことを想像したりするの。誠司君がわたしの部屋に現れてくれる想像をね。その想像の中の誠司君は必ずこう言ってくれるんだ。『優しくするから』って……」

「なるほどね。さっき僕が言ったことと、想像の僕が言ったことが一字一句同じだったものだから、それでおかしくなって笑ってしまったというわけか」

「うん、そんなところ」

さっき笑われた疑問はこれで氷解した。しかし、それによりまた新たなる疑問が浮かび上がってきた。まあ、その答えはおおよそ見当がつくのだけど、これは是非とも都の口から言わせたいと思った。

「で、都は想像の中に僕を登場させて、それからどうするんだい?」

僕が聞くと、都はあたふたとうろたえたように、

「べ、別にどうもしないよ……」

「嘘だ。そんなわけないだろ。その後、絶対何かやっているはずだ。ほら、答えなよ。じゃないと、またくすぐり地獄だぞ」

「う……」

僕の意地悪な質問に、都は恥ずかしそうに身をちぢこませて答えた。

「あのね……誠司君に抱かれることを想像しながら……胸を揉んでみたり……ショーツ越しに指であそこを触ってみたり……そういうことを……するの……」

そこまで言うと、都はもう耐えられないとばかりに手で顔を覆ってしまった。おかげで表情を窺うことはできなかったけど、耳たぶまで真っ赤になっているところを見ると、隠された中身がどういう状態になっているかは容易に想像がついた。

「そうかそうか――」

僕はニヤニヤと笑みを浮かべてうなずいた。

「都が僕に抱かれることを想像してオナニーをねぇ」

「い、言わないでよ!?」

都は顔を覆ったままいやいやと首を振る。

僕は純情な都にいやらしい秘密を言わせたことにちょっとした爽快感を味わっていた。セクハラオヤジの心情が少しだけわかったような気がした。

都は指と指の間から恨めしそうな目を向けて、

「誠司君、ちっとも優しくないよぉ……」

あ、すねた。そんな様子もかわいらしくてよかったのだけど、ちょっと調子に乗りすぎたかもしれない。

「ごめんな、いじわるしたりして。許してくれよ」

僕は謝ったものの、都は口を尖らせて、

「……許さないもん」

うーん、これは思ったより強情そうだな。どうしたら機嫌を直してもらえるものか……。

いろいろ考えてみたけど、結局のところ、僕も都と同じ恥をかくしかないんだろうな、と思った。

「……白状してしまうけど、僕も同じなんだ」

「……?」

都ははっとして、顔から手を外した。その目はじっと僕を見つめている。ちょっと気恥ずかしい。だけど、都に言わせたように僕もちゃんと告白しなくちゃいけないんだ。じゃないと不公平だから。

「僕も都のことをよく想像するんだ。頭の中で都を裸にしちゃうんだ。そして、いろいろいやらしい想像をしながら、その……オナニーするんだ……」

その言葉の最後のほうは口の中でごにょごにょと呟くようになってしまった。都に言わせといて何だけど、こういうことはなかなか人には告白しづらいものだと思う。

「……だからさ、都だけが恥ずかしがることはないよ」

「…………」

僕の突然の告白に、都はどう反応してよいのかわからず呆然としていた。……女の子相手にこういう話をするのはちょっと刺激が強すぎただろうか。

「……僕がそんないやらしいことをしているなんて幻滅したかい? 自分がその対象されていることを汚らわしいと思ったかい?」

僕が恐る恐る尋ねると、都は首を振って、

「そんなことないよ。そういう欲求ってきっと誰にでもあるものだと思うからさ。そりゃあ、どんな想像をされているんだろうって不安はあるけど……でも、わたしだって同じようなことしてたんだもんね。……だから、わたしも同罪だよ」

「そうか……」

「それにね……ちょっと恥ずかしいけど、ほっとしたかな。他の人じゃなく、わたしのことを想像してくれているんだと思うとさ」

「…………」

実のところ、人気アイドル歌手やクラス一の美人である増田さんを想像してしたこともあるのだけど、それは黙っていた方がいいだろうなと思った。

「まあ、互いの恥ずかしい告白はこのくらいにしてだ――」

僕はゴホンとひとつ咳払いをすると、都をギュッと抱きしめた。

「僕も初めてだからうまくできるかわからないけど、可能な限り優しくするから。だから、怖いかもしれないけど、気を楽にして僕に身を任せてほしい。――いいかい?」

都はしばらく黙っていたけど、今度は笑い出したりはせず、真面目な顔でうなずいた。

「うん……。誠司君に任せるよ」

そして、僕らは再び唇を交わす。ここまではいつものキス。だけど、僕はそれから一歩先へと進もうと試みた。

舌を突き出し、都の唇の間に滑り込ませた。いつものようにぽーとしていた都は突然の異常事態にパニックに陥り、あわてて身を離そうとする。だけど、僕は都の身体を腕でがっちり掴んでそれをさせない。

舌は奥へ奥へと突き進む。限界まで伸ばすと、今度は都の口内をぐりぐりと蹂躙した。都の舌に絡ませ、歯の裏をまさぐり、頬の内側をノックする。

そんな状況に最初都はされるがままだったけど、やがてこれが大人のキスの仕方なのだと理解したのか、自らも舌を動かし僕の動きに応えようとする。相手の舌を絡めるようにしてなめ回した。ざらざらとした感触が気持ちいい。

やがて息切れして僕らは唇を離した。名残を惜しむかのように互いの唇の間を透明な糸が伝っていた。

「こんなキス、初めて……」

都の目は眠そうな子どものようにとろんとしてしまっている。そうとう気持ちがよかったようだ。それは僕も同じだ。これまでキスがこんなに情熱的なものだなんて知らなかった。何度もしたい衝動に駆られる。……だけど、今は我慢だ。今日はもっと先へと進むのだから。

「服……脱がすよ」

その言葉に、再び都の身体に緊張が走る。しばらく都は黙り込んでいたけど、やがて意を決したようにこくりと頷いた。

僕は都のブラウスに手を伸ばす。一番上のボタンに指を触れる。両手を使ってボタンを外した。他人の服のボタンを外した経験なんて当然なかったからなかなかうまくいかなかったけど、数をこなしていくうちにコツが飲み込めてきた。そうして、僕はブラウスのボタンを全部外してしまった。

開いたブラウスの隙間から都の白い下着やかわいいおへそがちらりと顔をのぞかせていた。それだけで胸が高鳴った。

「ブラウス、脱がしちゃうね」

そう断ってから、僕は都の肩からブラウスをずり下げていく。露わになるきゃしゃな肩。鎖骨が色っぽい。下までおろしてしまうと、腕から袖を抜くところは都が自分でやってくれた。

こうして、都の上半身はブラジャー一枚だけになる。

そのブラジャーを見る。都が勝負下着だと言っていたそれは、色こそひかえめな白だったけど、刺繍などが細かく凝っていて、たしかに高そうだと感じさせた。だけど、僕には女性の下着の価値なんてよくわからないし、下着フェチでもない。見たいのはあくまでその中身だ。

僕はブラジャーの下に手を伸ばすと、そのまま胸の上へとたくし上げようとした。

「せ、誠司くん……」

僕の行動が予想外だったのか、都は戸惑ったような声をあげる。

ブラジャーをたくし上げていくと、やがてぷるんと音がするかのように乳首が元気よく飛び出した。それはきれいなピンク色をしていた。

その愛らしさに引き寄せられるように僕は手を伸ばそうとした。だけど、その前に都に制止させられてしまう。

「……待って。先にこれ外しちゃうから。ワイヤーが痛くて」

都は背中に手を回し、馴れた手つきでホックを外す。肩ひもから腕を抜き、ブラジャーを外した。

これで都の上半身を覆い隠すものはなくなってしまった。都は恥ずかしそうに肩をすぼめたものの、手で胸を隠すようなことはしなかったので、その双房は僕の目の前に露わとなる。

都の胸はまだ発達途上なのかさほど大きくはなかったけど、優しい曲線を描いて膨らんでおり、まさに女性のオッパイと呼べる代物だった。その中央には先ほどお目にかかったピンク色の小さな乳首がちょこんと乗っかっていた。

僕は息を飲んで見入ってしまう。

「……誠司くん、顔にやけてる」

呆れたように都は言う。

僕ははっとして自分の顔に手を当てた。……たしかに頬がだらしなく弛んでいた。どうも男という生き物は女性の胸を見ると幸せになってしまうものらしい。オッパイって癒し系なのかも、なんてバカなことを考えてしまう。

都は「しょうがないなぁ」というようにため息をついた後、

「触っても、いいよ」

少しはにかんだような笑みを浮かべて言った。

僕はありがたくその言葉に甘えることにした。唾を飲み込んでから恐る恐る手を伸ばす。温かい感触と共に都の胸が手のひらの中に収まる。まるでオーダーメイドしたかのようにピッタリとフィットした。

痛くしないようにギュッと握ってみた。指先が胸の中に食い込んだかと思うと、すぐさま押し戻されてしまう。まるでゴムまりのような弾力性があった。

「あ……はぁ……」

僕が胸を揉む度に都の口からため息のような甘い声が漏れる。それが聞きたくて僕はさらに執拗に愛撫を続ける。

胸全体を大きく回転させるように。下からたぷたぷと持ち上げるように。胸同士を近づけたり離したりするように。

その度に都の喘ぎが漏れる。

やがて、僕の視線は胸の中央でピンと勃っている乳首にいった。気持ちよくなるとそうなるという話を聞いたせいかもしれないけど、心なしかさっきより隆起しているようにも見受けられた。それを親指と人差し指できゅっと摘んでみる。

「んくっ!?」

都が悲鳴をあげた。僕はあわてて手を離した。

「ごめん! 痛かった?」

僕が聞くと、都は戸惑い気味に首を振って、

「ううん、違うの……。何か、身体にビリッて電気が走ったの……」

「感じたんだ」

「……よくわからない。だけど、気持ちよかったかもしれない……」

「もっとやってほしい?」

「……うん、してほしい」

そのリクエストに応えるように、僕は再び乳首を指で摘んだ。コリコリとこねるようにいじってみたり、少し引っ張ってみたり、先っぽを爪で掻いてみたりする。

「あ……んん……はぁ……」

都はたまらず上体を後ろに反らした。倒れそうになるのを手を付いて防ぐ。そんな体勢になったことにより、一層胸の膨らみが強調される。

僕は手を付けられていなかったもう一方の胸に顔を近づけた。乳首に軽くキスをした後、おもむろに口に含んだ。唇ではさみこうように、ついで歯で軽く噛むように、そして舌で乳首全体を円上になめ回した後、先っぽをつつき合うように――という具合に愛撫を続ける。

「うふふ……まるで赤ちゃんみたいだね……」

都は、はあはあと息を吐きながらそう言うと、慈愛に満ちた笑みを浮かべ僕の頭を撫でた。

「よちよち、いい子でちゅねー」

「…………」

こらこら、人を赤ん坊扱いするんじゃない。……そりゃあ、こうやって都に子どものように甘えるのもなかなか心地がよいのだけど、今日の僕はとっても凶暴な狼なのだ。

「それっ!」

「きゃっ!?」

僕はベッドの上に都を押し倒した。淡いブルーのシーツの上に横たわる都の身体。その手は露わになっている胸を隠すでもなく、だらんと上のほうに投げ出されている。それはさながら、海の上を漂っているクラゲのようだ。そして都クラゲは今、僕という荒波に翻弄されているのだ。

「下……脱がすよ?」

「うん……」

僕は都の制服のスカートに手を伸ばしてホックを外した。ファスナーも下までさげてしまう。

「腰、浮かして」

僕がそう言うと、都は無言で腰を持ち上げた。スカートとベッドの間に隙間が空く。僕は素早くその下にスカートを通した。そのまま足を滑らせて脱がしてしまう。用済みになったスカートはベッドの下へと落とした。そんなぞんざいな扱いをしたら皺になってしまいそうだけど、今はきちんと畳んでいる余裕なんてないから、後でアイロンを貸すことで許してもらおう。

再び都に向き合う。都はさっきまでとまったく変わらない体勢だ。ただスカートが消えただけの違い。だけど、それだけで艶めかしさは何倍にも跳ね上がっていた。

目は自然とショーツへと向かう。ブラジャーと同じように刺繍が凝っていて、控え目なフリルが付いている純白のショーツ。その一部は半透明に透けており、奥の様子をぼんやりと窺わせていた。それは別にメッシュ地なわけではなくて――

「濡れてる……」

僕はため息まじりに漏らした。

「だ、だって、誠司くんが気持ちよくするから……」

都は恥ずかしそうに内股をもじもじさせる。その度に透けている部分の黒い影がさわさわ揺れた。

その奥を見てみたい……僕は切に思った。ショーツの両脇に指をかける。少しきついゴムの感触があった。

「せ、誠司くん……」

不安そうな声をあげる都。

僕はそんな都の顔を見上げて「脱がすからね」と言った。

「うん……」

都は顔を背けて頷いた。

僕はゆっくりとショーツを下へずらしていく。

「あぁ……」

都は恥ずかしそうに手で顔を覆ってしまう。

ショーツは太股を通り、膝を抜け、くるぶしを通過し、最後は未練がましく指先に引っかかったものの、それもすぐに外れてしまう。

僕は、その少し湿った予想以上に小さな布をベッドの脇に置くと、再び横になっている都の姿を見た。

そこには生まれたままの都の姿があった。

都の身体は思った以上に細くて儚げで、だけど扇情的で、なにより――

「きれいだ……」

そうため息混じりに漏らすより他なかった。これが幾度となく想像し、憧れてきた都の裸……。

「あんまりじろじろ見ないで……」

都が泣きそうな声で言うけど、そんなことはとてもできそうになかった。もっと見たい! もっと触りたい! そんな衝動が僕の胸にむくむくとわき上がっている。

僕はゆっくりとさっきまでショーツに覆われていた未知の領域をのぞき見た。ほわほわとした柔らかい恥毛は湿り気でだらんとしなだれてしまっており、その奥にあるものを隠すという役割を充分果たすことができずに、僕の眼前にその姿を露わにしていた。

これが、女の子の一番大事なところ……。

僕は取り憑かれたようにゆっくりとそこへ手を伸ばした。指先に触れるヌメヌメとした暖かい感触。

「は……ん……」

筋を辿るように指を滑らせる。

「あ、あん……いや……」

奥へ奥へと指を沈み込ませる。

「ん、や……やめ……」

そして、一番上でぷっくりと膨らんでいるもの――クリトリスに手を触れた。乳首の時のように指で摘んでみた。

「痛っ!」

都はこれまでの艶めかしい声とは違い、明らかに痛がっている声を上げた。身体をビクリと大きく揺るがした。

それで僕ははっと我に返った。僕、今何をしていた? 都が嫌がっているのに大事な部分を触ろうとしていたのか? ……都の裸を見てからの記憶がいまいち判然としない。それほど興奮していたということなのだろうか。

「ご、ごめん……」

僕はしゅんとなって謝った。都が嫌がるようなことを、痛がるようなことをしてしまうだなんて……。

「ううん、大丈夫……」

さっきまで荒い息をあげていた都は、少し疲れたような笑顔を向けて言う。

「誠司くん……いい感じだったよ。あたしちょっとだけ気持ちよくなっちゃった。……だけど、そこはやめて。そこは敏感な所だから、その……もっと優しく……」

「うん、わかった」

僕はうなずいた。そうだな、ただ自分の欲望を発散するような真似だけはしないように気をつけないと。

「ねえ、誠司君」

都が僕のシャツを掴んだ。

「誠司君だけ服着てるなんてずるい。……誠司君も脱いで」

甘えた声で都が言う。その言葉で僕はまだ服を着たままだったことに気づく。都を裸にすることばかりに気を取られていてすっかり忘れていた。たしかに、これじゃずるいよな。

「ちょっと待ってて」

そう言うと、僕はあわててベッドから飛び降り、都に背中を向けて服を脱ぎ始めたシャツのボタンを乱暴に外して脱ぎ捨てる。ベルトをガチャガチャと外してズボンを脱ぎ、そしてパンツを……いででで、ペニスの先がゴムのところに引っかかって一緒に下に引っ張ってしまった。

「誠司くん、どうかしたの?」

都が不思議そうに尋ねる。

「ううん、何でもない」

僕はそう答えると、今度は引っかからないように慎重にパンツを脱いだ。

これで、僕も都と同じ生まれたままの姿になってしまった。僕は陸上をやっていることもあり、身体はけっこう引き締まっているほうだと思う。視線を下へと向ける。パンツに引っかかったくらいだから想像はついていたけど、ペニスはこれ以上ないくらいに勃起していた。一人でしている時にはこれほどの大きさになったことはなかったはずだ。やっぱり相手がいると違うのだろうか。

「誠司くんのお尻、かわいいね」

都がクスクス笑った。う……たしかにこの体勢では都に尻を丸出しにしていることになる。あらためて、裸になった恥ずかしさを感じた。

「ねえ、どうして背中を向けたままなの? ……こっち向いてよ」

都が急かす。裸を人に、それも好きな相手に見せることに羞恥心を覚えた僕はなかなか振り返ることができずにいた。だけど、都は僕よりも先に全てをさらけ出しているのだ。僕だけ恥ずかしがっているわけにはいかない。

僕は心を決めて都のほうを振り向いた。いきなり猛っているものを見せたら驚かれるかなと思ったのと、やっぱり恥ずかしい気持ちがあり、股間は手で隠していた。だけど、限界まで大きくなっているそれはとても覆い隠せるものではなく、先のほうがニョキッとはみ出してしまっていた。

「ひゃっ!?」

それを見た都は、案の定驚きの声を上げた。

「……怖いかい?」

僕は心配そうに尋ねる。男のそれを直に見てしまったショックでやっぱりセックスは怖いからやめたとか言い出さないだろうか不安だった。

都はしばらく呆然としていたものの、やがてはっと我に返ったようにあわてて首を振った。

「そ、そんなことないよ。ただ、ちょっとびっくりしただけ。何て言うか……思っていたよりずっと大きかったから」

「思っていたのってどれくらい?」

そう聞くと、都は親指と人差し指を広げて、

「これくらい、かな?」

「……それじゃ子どもだよ」

それくらい都の想像していたものは小さかった。

「しょうがないじゃない。うまくイメージができなかったんだから。だって、前に誠司くんのそれを見たのって、幼稚園の頃、一緒にお風呂に入った時以来なんだもの」

「そりゃそうだけど、だからって当時のままなわけがないじゃないか。僕だって成長しているんだからさ」

「そうだよね……」

都は僕の身体を上から下までじーと見渡した。

「誠司くんの身体、筋肉とか付いててたくましくて、すごく格好いいな。いかにも男って感じがするよ」

そう評してくれたので、僕も都を評する。

「そういう都の身体だってすごく色っぽくて……女って感じがする」

「うん……ありがとう……」

都は恥ずかしそうに胸とあそこを手で隠した。

「隠さないで見せてほしいな」

僕がねだると、都はぶるぶると首を振り、

「やだ。誠司くんがそうやって隠しているのにわたしだけ見せるなんて不公平だもん。……誠司くんのそれもちゃんと見せてほしい」

「え……」

僕は躊躇した。まさかそんなこと要求されるとは思ってもみなかったから。

「で、でも、見たって面白いものじゃないよ。グロテスクだと思うし……」

「いいの。だって、どんなものかわからないままだなんて、その……怖いから」

「……わかったよ」

僕は観念したように頷くと、股間を覆っていた手を外した。都の前に露わになるペニス。それはこれでもかというくらい元気に上を向いていた。うぅ、恥ずかしい……。

都は息を飲んで僕に近づいてきた。まじまじと僕のペニスに見入る。その顔は羞恥心で赤くなりながらも、その一方では好奇心できらきらしていた。

「これが誠司くんのなんだ……。本当に昔見たのとは全然違うや。これがわたしの中に入るんだね。とても信じられないな」

都はゆっくりと手を伸ばしてきた。……ま、まさか!?

都の手が僕のペニスに触れた。

「ひっ!?」

僕は情けない声を上げてしまった。

都は僕の反応なんてまるで気にしないかのようにペニスを包み込むように両手で握った。

「すごい……カチカチだ」

そして、ペニスをペタペタを触ってその感触を確かめる。強弱を付けて握ったり離したり、前後にこすってみたりする。

「う……」

僕は堪らず声を出してしまう。裸の女性に触ってもらっているというシチュエーションのせいもあるのかもしれないけど、自分の右手でやるよりはるかに気持ちがよかった。

い、いけない。このままだと出てしまう……。

「ここ、不思議な形しているんだね」

都はペニスの先っぽを爪でゴリッと掻いた。

「ぐっ!?」

不意の激痛に僕は顔をしかめた。

「あ、ごめん!? ……痛かった?」

都はびっくりしたように手を離す。やっと解放されたペニスはあいかわらず元気に猛っていたけど、幸いなことに射精衝動はすーと引いていた。

「大丈夫、少し痛かっただけだから」

「そっか。よかった……」

都はほっと息をつくと、悪戯っぽい笑みを浮かべて、

「これ、さっきのおかえしね」

「……わざとだったのか?」

「えへへ、ちょっとだけね」

下をぺろっと出しておどける都。そんな姿を見ていたら、この上なく愛おしくなってしまった。

「こいつぅ!」

「やーん!?」

僕はまた都をベッドに押し倒した。たださっきと違うのは、都がとっさに僕の腕を掴んために、僕まで一緒にベッドの上に倒れ込んでしまったことだ。僕の身体が都の身体の上にのしかかる形となる。

僕の目の前に都の顔があった。その表情は僕の顔がすぐ目の前にあるという驚きと、何かを期待するようなときめきに彩られていた。

僕はその期待に応えることにした。都の柔らかい唇に自分の少し荒れ気味の唇を重ねる。最初はついばむようなかわいいキスを、やがてそれは、先ほど初めてしてその気持ちよさに心を奪われた大人のキスへと切り替わる。まるで相手を取り込んでしまおうかというほどの情熱的な口づけを繰り返す。

その間、手では都の胸をなぶるように揉んだり、ヴァギナをなでつけるようにまさぐったりする。都はその度に切ない声をあげるが、決してキスをやめようとはしなかった。

しばらくして、やっと唇を離した頃には、どちらもはあはあと荒い息をしていた。互いに相手を見つめている。会話はない。だけど、その間も相手を愛おしく思う気持ちはとめどなく膨らんでいった。

呼吸が落ち着いた頃合いを見計らって都は言った。

「誠司君、いいよ。……して」

その目はとても真っ直ぐで、透き通っていた。

「わかった」

僕は頷いた。このまますぐにでも都の身体にのしかかりたい衝動に駆られる。……でも、だめだ。その前にちゃんとすべきことをしておかないと。

僕はベッドから飛び降りた。

「誠司君?」

都は不安げに僕を見つめている。

「すぐ戻るから」

僕はそう言って都の額にキスをすると、机の方へ歩いていった。机の上には先ほど購入したコンドームの入った紙袋が置かれていた。コンドームの箱を袋から取り出し、蓋を開けると、パッケージされているコンドームが姿を現す。その中の一個を摘んで持ち上げたところ、その他のも一緒にくっついてきた。そういえば、昔スーパーのお菓子売り場にこういうパッケージの飴が売られていたことを思い出し、何だかおかしくなってしまった。連なっている物の中から一枚を切り取り、残りは再び箱の中にしまった。

「その袋、コンドームだったんだ」

背中越しに都の声がした。僕は悪戯がばれた子どものようにぎくりとしてしまう。ばつが悪そうに振り向くと、都は上半身だけ起こしてこちらを見ていた。

「買い物している時から都とこうなることをたくらんでいたっていうのがばればれだよな。……いやらしいやつだと思ったろ?」

僕が自嘲気味に言うと、都は「ううん、そんなことないよ」と首を振った。

「むしろ、ありがたいかな」

「ありがたい?」

その意外な言葉に僕が首を傾げると、都は真面目な顔で言った。

「『雰囲気を壊してしまうんじゃないか』、『嫌われるんじゃないか』……そういう気兼ねがあって、女の人のほうからはなかなか避妊してとは言いにくいものなんだと思うの。だから、男の人のほうから進んで避妊してもらえるとこちらとしてはありがたいし、それに……嬉しいな。自分は大事にされているんだって感じるから」

「…………」

僕が避妊をするのは、まだ未成年の学生にすぎず、万が一都を妊娠させても責任をとることができないからに他ならない。いうなれば当然のことをしているだけであるので、それをわざわざ感謝されたり、大事にされていると喜ばれても、こちらとしてはちょっとむずがゆくなってしまう。

僕はコンドームの封を切ると、中身を取り出した。独特のゴムの臭いがした。すべすべしたゼリーで覆われているコンドームをペニスに巻き付けるようにして装着していく。仕上げに先っぽの空気を抜いて……これでよし、準備完了。

「おまたせ」

僕は再びベッドに戻ってくると、横になっている都の足下に腰を下ろした。

「都、足開いて。見えるようにして」

「う、うん……」

都は恥ずかしそうに頷くと、ゆっくりと、だけど確実に足をM字型に開いていく。そして、露わになるきれいなピンク色のヴァギナ。それはこれ以上ないくらいしっとりと濡れそぼっていた。

その艶めかしい光景に僕は息を飲んだ。また指でいじって都にいやらしい声を上げさせたい衝動に駆られるけど、今は我慢だ。

僕はペニスに手を添えると、ゆっくりと都のヴァギナに近づけた。挿入する場所を間違えないように慎重に確認すると、恐る恐る入り口にペニスをあてがった。

「いくよ」

僕は都の顔を見て言った。

「ま、待って!?」

都はあわてて枕の位置を整え、両手でシーツをギュッと掴み、

「……いいよ。きて」

緊張を隠せない面持ちで頷いた。

僕は自らの腰を都の腰へ押し付けた。膣内に入っていくペニス。四方から圧力がかかる。その締め付けが痛い。めりめりと何かを突き破るような感触が走る。それでも一気に押し込もうとする。

「ぐひっ!?」

都が悲鳴をあげた。クリトリスを触ってしまった時以上に苦しそうな悲鳴だ。眉間にしわをよせ、必至に歯を食いしばっている。瞳からは涙があふれ出す。

そんな都の苦しげな様子を見ていたら、僕の気持ちはとたんに萎えていってしまった。僕はセックスをしたいという欲望や、早く童貞を卒業したいという焦燥のためだけに都にひどいことしているんじゃないか、そんな気がしてならなかった。

だめだ、これ以上都に苦しい思いをさせられない!

僕は腰を引いてペニスを抜こうとした。

「逃げないで!」

都が叫んだ。手で僕の腰を掴み、離れさせまいとする。

都は潤んだ瞳で僕を睨み、絶え絶えの息を吐きながら言った。

「女の子はね、たとえどんな痛くて苦しい思いをしようとも、好きな相手を受け入れようと必至なんだよ。……誠司君、あなたも男だったらその気持ちに応えてよ!」

その、これ以上ないひたむきで切実な訴えに、僕は圧倒されてしまった。

僕には想像もつかないような苦しみを受けているにもかかわらず、都はそれに必死に耐えながら、躊躇する僕を叱咤し、先に進むよう促してくれている。僕は幼なじみとして、恋人として、そして男として、その気持ちにどう応えたらいいのだろう?

そんなのわかり切っている!

「……わかった。先を続けるよ」

僕がそう答えると、都は苦しげながらも微笑んでみせた。

「お願い……一気にやっちゃって。肌についちゃったガムテープをはがすのと一緒で、じわじわやるよりそのほうが痛くないような気がするから……」

「うん、わかったよ」

僕は頷くと、もう一度挿入する体勢を整えた。

「じゃあ、行くよ」

「うん、来て!」

「くっ!」

僕はペニスを一気に中へと押し込んだ。途中、押し返すような強い抵抗があったけど、それを一気に突破した。何かが破れるような感触と共に、僕は奥まで到達した。

「あぁーーーーーっ!?」

外まで聞こえんばかりの大きな悲鳴をあげた。身体がびくりと弓なりに反る。瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「都!」

僕は都の身体を押さえつけるようにギュッと抱きしめた。都の口を塞ぐように唇を重ねる。都の口内に舌を押し込んでかき回す。そうすることで、都の苦しみを少しでも僕に移そうとするかのように。

しばらくして、僕は都から唇を離した。そのとたん、都がこれまで我慢していたかのような大きな息をついた。そして間欠泉のように荒い細かい息を幾度となく繰り返す。その間隔は次第に長くなっていき、やがて通常の呼吸へと戻っていった。

「誠司君……わたしたち、うまくできたんだよね?」

都は涙声で尋ねる。

「うん、そうだよ。ちゃんと都の中に入ることができたよ」

「うん、わかってる。だって、あたしの中で誠司のあれがビクビクしているんだもの。すごく熱いの……。ああ、これが誠司君なんだってわかるの。――不思議だね。あたしは誠司君じゃないのに、誠司君の一部になったような、そんな気分なの」

「たぶん、それがセックスの意味なんじゃないかな? 身体を重ねることによって相手と一体となれる……そういうものなんだよ、きっと」

自分でもえらく恥ずかしい台詞だとは思ったけど、臆面もなく言えた。

「そっか……。素敵だね、セックスって」

都は幸せそうに笑った。その笑顔はとてもかわいらしくて、僕は堪らなくなって都をギュッと抱きしめた。

「あはは、誠司君痛いよぉ」

僕の腕の中で都はもだえる。だけど、その声はとても明るかった。

それからしばらくは瞳に溜まった涙を拭ってやったり、髪を撫でてやったり、キスし合ったりしていていたのだけど、

「誠司君、動いてもいいよ」

僕を促すように都は言った。

「大丈夫なのか?」

「んー、どうだろ? ちょっと厳しいかもしれない。……でも、動いてほしいんだ。わたし、気持ちよくなりたいの」

「僕もだよ。一緒に気持ちよくなろう」

僕はゆっくりと腰を浮かした。押しのけるような圧迫感を感じながらペニスは入ってきた道を戻っていく。だけど完全に引き抜きはしない。途中まで戻ったところで再び突き刺す。

「んっ、ああっ」

都が悲鳴とも嬌声ともつかない声をあげる。

もう一度途中まで抜く。突き刺す。途中まで抜く。突き刺す。途中まで抜く。突き刺す。それを幾度となく繰り返す。

「あ、は、はぁ、ん……」

その度に都の喘ぎ声が漏れる。

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……」

僕はトラックを走っている時以上に荒い息を吐きながら腰のピストン運動を続ける。最初はゆっくりと優しく、しだいに強く激しく。

仰向けになっているため心持ち低く見える都の胸が、腰の動きに合わせてたぷたぷと揺れる。

「あうっ、あううっ、ん、んんっ……」

ベッドのスプリングがギシギシ悲鳴をあげる。

僕は手を都の手に添わせる。都はシーツから手を離し、僕の手を握った。僕もぎゅっと握り返す。何があってもこの手は絶対に離さないと誓った。

「はっ、はっ、都、都、みや、こ……」

僕は都の名前を呼ぶ。いつもより強く、切実に。

「ん、誠司君、誠司、あっ、せ、いじ……」

それに呼応するかのように都も僕の名前を呼び続ける。その度に相手との繋がりが強くなっていく感じがした。

心臓がドクドク鳴っている。

苦しい。

だけど……気持ちがいい。

自分がとけてなくなってしまいそうな、そんな気さえした。

ああ、頭が真っ白になっていく……。

そして、その瞬間はやってきた。

「うっ!?」

僕は悲鳴のような声をあげてしまった。衝動が股間に集中し、一瞬の間をおいて一気に外に向かって弾けた。

………………。

……………。

…………。

………。

……。

…。


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