おてんこ温泉旅行〜♪

第四話 楽しい食事♪


僕はお風呂から上がると、先輩が出てくるまでの間、マッサージ器で体をほぐしていた。
何だかどっと疲れていた。何故だろうか?
まあ、そんなことは考えなくても分かってるんですけどね。
とにかく今はのんびり待つとしましょう。
僕は目を瞑り、マッサージ器に身を委ねた。
そして程なくして先輩がお風呂から出てきた。

さやか 「いいお湯だった〜。満足満足」

どうやら先輩は上機嫌みたいだった。
まあ、あれだけ好きなことをやれば当然だろう。まったく。

さやか 「あっ、蒼司くん待っててくれたんだ。ねえ見て見て私の浴衣姿、似合うかな?」

僕の前で嬉しそうにくるりと一回転してみせる先輩。

蒼司 「はいはい、似合ってます。それで大人しくしていてくれれば、先輩はいつでもかわいいですよ」

さやか 「もう蒼司君たら。らんらららん♪」

僕の言葉をそのまま受け入れる先輩。
どうやら僕の皮肉は通用しなかったみたいだ。
少しは自覚して欲しいんですけどね。

蒼司 「ほら先輩、そんな所で踊っていたら皆んなの邪魔ですよ。夕食が出来てるころですから部屋へ戻りましょう」

さやか 「えっ!? ご飯? それってそれって、もしかして・・・」

何か想像している先輩。
絶対何かとんでもないことを想像しているに違いない。

蒼司 「ほら先輩行きますよ」

僕は先輩が何か言い出す前に部屋へと歩き始めた。

さやか 「あっ、待ってよ蒼司くん。ねえ、ご飯ってもしかして・・・」

蒼司 「部屋に着いたら分かりますから、楽しみにしててください」

さやか 「それもそうだね。うん、楽しみ楽しみ♪ えいっ」

そして、嬉しそうに僕の腕に抱きついてくる先輩。
湯上りでほんのり紅くなった先輩。
まだ湿った髪からシャンプーのいい香りがしてくる。
そんな先輩に少しどきどきしながら、僕は先輩と一緒に部屋へと戻っていった。

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さやか 「わっ、蒼司くんすごい料理だね」

部屋に入った瞬間驚く先輩。

蒼司 「そうですね、僕もここまでとは思いませんでしたよ」

部屋に戻ってきた僕たちを、見事な料理の数々が出迎えていた。
岩魚の塩焼き、鴨鍋、山菜の天ぷら、そしてお刺身の舟盛りなどが並べられていた。
これだけでもここに来て良かったと思ってしまう。

さやか 「蒼司くん見て見て、このお魚まだ生きてるよ、口がパクパクしてるよ」

先輩が舟盛りに乗っているお刺身を見て驚いている。どうやら生き作りだったみたいだ。
僕も見るのは初めてだった。

蒼司 「すごいですね、商店街の福引きでここまでの料理が出てくるなんて。先輩それじゃあ早速食べましょうか」

用意されていた席に座り、箸を手に持って料理を食べ始めようとしたとき、ふと先輩がまだあの生き作りの魚をじっと眺めている姿が目に入ってきた。

蒼司 「先輩どうかしましたか?」

そう呼びかけてみたけど。

さやか 「・・・」

先輩は僕の声が聞こえていないみたいだった。
どうしたんだろうと思いながら暫く見ていると、先輩はゆっくりと生き作りの魚に人差し指を差し出していく。
まさか・・・僕がそう思った瞬間!

さやか 「えいっ!!」

プスッ。

さやか 「蒼司くん! 蒼司くん! 見て見て私の指食べられちゃったよ。すごいすごい」

先輩は、パクパクしていた生き作りの魚の口に指を突っ込んでいた。
それはそれはとても楽しそうだった。
でも、お魚さんはきっとお困りですよ先輩。

蒼司 「先輩、どうしたらそういう発想が出てくるんですか?」

とりあえず僕は冷静に聞いてみた。

さやか 「だって、何かもの欲しそうに口をパクパクしてたんだよ。私じゃなくても誰だってやってみたくなるはずだよ、ねえ?」

蒼司 「『ねえ?』って、かわいく言ってもダメです。そんなことするのは先輩と子供ぐらいですよ」

さやか 「そうかな?」

蒼司 「そうです。それより早く食べましょう、冷めたらおいしくありませんからね」

そして僕は止まっていた箸を動かし始める。

さやか 「そうだね、あっ蒼司くん、このお刺身ってこういう風に出てくるんだね。私てっきり裸の女の人の・・・」

カラーーーン。
僕は思わず持っていた箸を落としてしまった。

蒼司 「わーーーっ、先輩それ以上はダメです! 頼みますから口に出さないでください!」

さやか 「あや? そうなの」

蒼司 「そうです! 絶対他の人にそんなこと言っちゃダメですからね! まったくどこでそんなこと知ったんですか!?」

僕は動揺を抑えながら、落とした箸を拾った。

さやか 「私がまだ子供の頃にね、お父さんがテレビで見てたのを一緒に見てたの。いけなかったかな?」

律先生、あなた自分の娘になんて物見せてたんですか。
僕は何だか頭が痛くなってきた。

さやか 「ところで蒼司くんはどうして知ってるのかな?」

蒼司 「・・・僕は男だから知ってても仕方ないんです。それより早くいただきましょう。ほら先輩鴨鍋がいい感じで煮えてますよ、取って上げますから早く食べましょう」

そうしてよそった鴨鍋を先輩の鼻先に差し出してあげた。

さやか 「いい匂いだね〜、おいしそう。それじゃあいただきまーす」

そして僕がよそってあげた鴨鍋を食べ始める先輩。

さやか 「おいしいね蒼司くん。おかわり」

蒼司 「はいはい、熱いから気を付けてくださいね」

さやか 「大丈夫大丈夫、子供じゃないんだから。あちっ」

蒼司 「言った側からやらないでください。ほんとに先輩は子供なんですから」

さやか 「てへ♪」

そして先輩は、これもおいしいね〜とか言いながら豪華な料理を夢中になって食べ始めた。
どうやら誤魔化せたみたいで、僕はほっとした。
実に危なかった、やはり先輩は食べ物で釣るのが一番ですね。
そして僕も先輩に全部食べられないうちに食事を再開することにした。
途中先輩が、 「お酒はないのかな?」と言って、備え付けの冷蔵庫を漁り始めたのには参ってしまったけど・・・。

こうして温泉旅館での夜は、先輩の予測不可能な行動と共に、楽しく更けていくのであった。

 

つづく


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