始まりの予感
第六話 そして・・・
雪の季節が終わり、桜の季節へと移り替り始めた、そんな、ある日の出来事・・・。
狭霧 「頼人様、昼食をお持ちしました」
頼人 「ああ、ありがとう狭霧」
狭霧 「でも、よろしいんですか? まだお仕事の途中だと思うんですが?」
頼人 「ああ、大丈夫だ。きっと一輔がうまくやってくれているよ」
狭霧 「もう、頼人様ったら・・・ふふ、一輔様の困った顔が目に浮んできますね」
頼人 「ははは、まあ、一輔には後で誤っておくよ」
そして、狭霧が用意してくれた昼食を食べ始める。
すると・・・。頼人 「うっ・・・狭霧、またやらかしたな。何だこの椀の味は」
狭霧 「あっ、またやってしまいましたか? ふふ、直に作り直してきますね」
頼人 「いや、それはいい。それよりも、また子供たちが遊びに来ているぞ」
俺は庭先を指差した。
狭霧 「あっ、そういえば約束をしていたことをすっかり忘れておりました。それでは頼人様もご一緒に遊びに行きませんか?」
頼人 「そうだな、たまには俺も付き合ってやるか。よし、そうと決れば早く行くとしよう」
狭霧 「はい頼人様」
そして、廊下を歩き、子供たちの下へと歩き始める。
庭先の桜には、少しずつ花が咲き始めていた。頼人 「それにしても、この俺がまさか進んで子供たちと遊ぶようになるとはな。そう思うだろう狭霧」
俺はそう言って、狭霧に視線を向けてみた。
狭霧は何故か、廊下からじっと、空を見上げていた。狭霧 「・・・ありがとう・・・」
すると、狭霧は何もないはずの空に向かって、そう、呟いていた。
頼人 「狭霧・・・どうした?」
狭霧 「いえ、何でもありません。ただ・・・何となく、そう言いたかっただけでございます」
頼人 「そうか・・・」
そして、俺も狭霧と同じように空を見上げてみた。
空は、どこまでも青く澄み渡っていた。
心地いい春の風が、俺と狭霧の髪を揺らして通り過ぎていく・・・。
その時ふと、何かが光ったような気がしたが、それは一瞬の出来事だった。『お姉ちゃーーーん。頼人様ぁーーーっ。早く一緒に遊ぼうよぉーーーっ』
子供達の声に、はっと我に返る俺と狭霧。
狭霧 「あっ、ごめんなさぁーーーい。すぐ行くねぇーーーっ。・・・頼人様、それでは参りましょうか」
頼人 「そうだな狭霧、これ以上待たせたら後が怖そうだ」
狭霧 「ふふ、頼人様ったら」
それは、もう冬の寒さも感じなくなった日のこと。
舞い散る桜の花びらを見ても、もう、悲しいと思わなくなった日のこと。
そしてそれは、幸せな日々の始まりを予感させた。
私は生きている・・・大好きな頼人様と共に・・・。
おわり