「みずいろ」の愉快な仲間たち

第二十四話 暴走する縁日


俺と日和はあれから何事もなかったように縁日を楽しみ、本殿に向け歩いていた。
清香のことはすっかり忘却の彼方へと消えていた。いや、消し去ってやった。
それにしても・・・俺たち何時になったら神社の本殿につくんだろうな・・・。

健二 「そういえば、雪希はどうしてるんだろうな」

俺は何となく日和に聞いてみた。

日和 「あっ、そういえば、雪希ちゃんたちも来てるんだよね」

思い出した用に日和が答える。

健二 「さすがにこの人ごみだと、お互い見つけるのはもう無理っぽいな」

日和 「そうだね、でも清香ちゃんたちの時みたいに偶然出会ったりするかもしれないよ」

健二 「・・・せっかく清香のことは忘れていたのに、思い出してしまったじゃないか日和」

まさか清香のやついまだに俺を探してないだろうな・・・まさかな。

健二 「まあ、雪希も楽しんでるんならいいけどな」

日和 「うん、きっと雪希ちゃんたちも楽しんでるよ。あっ、けんちゃんあそこのお店何だか面白そうだよ、行ってみようよ〜」

そう言うと日和は俺の腕を引っ張って歩き出す。
そうだな、俺たちは俺たちで楽しまないとな。

健二 「よし日和、いくぞ」

日和 「うん」

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日和 「けんちゃん面白かったね、もぐもぐ」

健二 「そうだな日和、それにしても結構うまいなこれ」

チョコバナナを食べながら、のんびり歩く俺たち。
俺と日和はあれから金魚すくいやら、輪投げやら、細工あめやら、露店巡りを楽しんでいた。
それとなく俺は、雪希がいないか注意して歩いていたが、やっぱり見つけることは出来なかった。

健二 「やっぱりみつからないな・・・」

俺は何となく呟いていた。

日和 「そうだね〜、私も注意して見てたけど、やっぱりこの人ごみだと無理なのかな」

俺の呟きに日和が答えてくる。

健二 「なんだ、日和も探していたのか?」

日和 「うん、なんだか宝探ししてるみたいで楽しかったから」

健二 「宝探しとはなかなか日和も面白いこと言うな・・・って、俺なんだか大事なことを忘れているような気がするが・・・まっいいか」

その時。

ピンポンパンポーン。

またしても境内放送を知らせるチャイムの音が聞こえてきた。
思わず立ち止まる俺と日和。

健二 「・・・いくらなんでも、また俺たちに関係する放送ってことないよな・・・」

何となくいやな予感がする俺。
額を冷たい汗が流れる。

日和 「でも・・・二度あることは三度あるって言うし・・・もしかしたら・・・」

不安を煽る日和。
日和もいやな予感がしているのだろう。
あの清香の放送には思いっきり脅かされたからな。
二人なんとなく緊張しながら放送に耳を傾けていた。
すると・・・。

係員 「迷子のお知らせをします・・・」

と言うアナウンスが聞こえてきた。

健二 「よし!どうやら俺たちとは関係なかったようだな。日和はしっかりここにいるし、まったく脅かしやがって・・・なあ日和」

清香の件があっただけに、思いっきり喜ぶ俺。

日和 「うん、よかったね、けんちゃん」

俺の様子を見て日和も嬉しそうだ。
よかったね、よかったね。

係員 「・・・片瀬健二様、恋人の進藤さつきさんを迷子センターにてお預かりしています。至急迷子センターまでお越しください。繰り返しお伝えします。片瀬健二様・・・」

俺たちが安心した所に驚愕の放送内容が流れる。

健二・日和 「・・・」

不意を付かれ、口をあけたまま固まってる俺と日和。
そ、そうだ、雪希と一緒に進藤もこの縁日に来ていたんだ。
あの進藤がおとなしくしている訳がない。
それを証明するようにさらに驚愕の境内放送は続く。

進藤 『はーい、せんぱーい♪聞いてますかー?こ・い・び・と・の進藤さつきですよー!きゃあーっ、恋人だなんて何だか照れちゃいますね。・・・縁日の夜、友達とはぐれて一人寂しく泣いてる私のもとに、先輩が『どうしたさつき?大丈夫かい。俺が来たからもう大丈夫だよ』って現れるんです。いやもう恥ずかしいですよせんぱ〜い♪ だ・か・ら・早く迎えに来てくださいね、いとしの進藤さつきはここにいますよー。あっそれから、ここに来る時にたこ焼きと、イカ焼きと、リンゴ飴買ってきてくださいね。ほら雪希ちゃんも黙ってないで何かリクエストがあればいまのうちですよ?」

雪希 『えっ・・・!?そ、それじゃあ私はいつものを・・・じゃなくて』

進藤 『せんぱーい!聞きましたか?雪希ちゃんは、”いつもの”をお望みですよ。それにしても”いつもの”だけで分かり合えちゃうなんて、ほんと二人とも仲良しですよね。それじゃあ私も、い・つ・も・の・お願いしますね、せーんぱい♪きゃあ〜、何だかこれって本当に恋人みたいですね』

雪希 『はうっ、どうしよう、進藤さんが暴走してるよ』

進藤 『それじゃあ先輩が来るまで、今から進藤リサイタルをはっじめまーす♪では最初の曲は”みずいろ”でーす♪』

雪希 『うわぁ、ますますエスカレートしてきちゃってるよ。こうなったらお兄ちゃん直伝の・・・えいっ!』

進藤 『♪胸がふるえ、ヴ・・・ま、まさか、ゆ、雪希ちゃんまで・・・がくり』

雪希 『よし、これでもう大丈夫ね。るんらら〜♪あっ、お兄ちゃんこっちのことは気にしないで日和ちゃんと楽しんできてね。それじゃあね』

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雪希 『わぁ〜、そういえば進藤さん気を失ったままだよ。ど、どうしよう!?進藤さん進藤さん起きてよー。はうっ、白目むいたまま何か呟いてるよ・・・』

係員 『こら、お前たちいいかげんにしろ』

ピンポンパンポーン。

シィーーーン。
気がつくと辺りは静まり返っていた。
あれだけ賑やかだった一般ピープルの誰もが呆れて声が出せないでいた。
しかも、全ての視線が何故か俺たちに向けられている気がする。
何故だ!?進藤は先輩としか言ってないはずなのに何故視線が俺たちに集まる!?
くそっ、進藤のやつ誰が恋人だ、一人だ、迷子になっただ。
しっかり雪希と一緒だったじゃないか。

健二 「日和、とにかく今はこの場を離れるぞ」

俺はそう言うと日和の手を掴んで歩き始めた。

日和 「・・・進藤さんすごいね・・・」

日和はただ一言そう言うと、後は黙って歩いていた。
さすがの日和も呆れているのだろう。

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健二 「さて、どうしたもんかな・・・」

人ごみから離れ、境内の庭石の一つに座って俺はこれからのことを考えていた。
日和はそんな俺の横にちょこんと座って俺の顔を見ている。
あの迷子センターには行きたくないんだよな・・・進藤だけなら無視するんだが、雪希が今あそこで困ってるんだよな・・・。
そんなことを考えながら、ふと日和の顔を見てみる。
日和は俺の顔を見て可笑しそうに笑っていた。
ちぇっ・・・気づいていたのか・・・まあ、長い付き合いだからな。
日和や雪希が困ってるのを俺がほっとける訳ない。それを日和も雪希も知っている。
それはずっと昔から、そして今も変わらない・・・。
俺は舌打ちして立ち上がり、日和に言った。

健二 「日和、ちょっとそこで待ってろ。すぐに戻ってくるからな」

そして俺は一人、沢山の人で賑わう露店の一つを目指して駆け出した。

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健二 「はあ、はあ、日和おまたせ」

俺は急いで用事を片付け、日和のところに戻ってきた。
さすがに少し急ぎすぎたかもしれない、息が苦しい。
俺は膝に手を置き息が落ち着くのを待った。

日和 「けんちゃん大丈夫〜。あっ、それが雪希ちゃんの欲しがってたものなんだね。私のと色違いなんだ、きっと雪希ちゃん喜ぶと思うよ。えへへ」

日和は俺が手に持っている物を見つけると、自分のことのように喜んでいた。
日和らしいな・・・俺はそう思いながら息を整え起き上がった。

健二 「それじゃあ日和、雪希を迎えにいくか。これは日和から渡しておいてくれ」

日和 「うん、きっと雪希ちゃん大喜びだね」

そして俺と日和は迷子センターに向け歩き始めた。
日和の指には、みずいろとさくらいろの水風船が、縁日の明かりを反射し、とても綺麗に揺れていた。

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程なくして迷子センターに到着した俺と日和。

健二 「さてと、ここまで来たのはいいが・・・やっぱり入りづらいよな・・・あいつらのせいで、この中ではきっと俺犯罪者になってる気がするぞ、ここは慎重にいかないとな」

俺はそう呟くと日和に視線を向ける。

健二 「いいか日和、まずは中の様子を確認してから・・・って、日和がいない!?」

今さっきまで俺の隣りにいた筈の日和がいなくなってる!?
一体どこへ?
俺は慌てて辺りを見渡してみた。
すると。

日和 「雪希ちゃん迎えに来たよ〜、もちろんけんちゃんも一緒だよ。えへへ」

俺の心配をよそに、日和は迷子センターに堂々と入っていくところだった。
ぐわっ、日和のやつなんて大胆な行動を。
俺は慌てて日和の後を追いかけ迷子センターに入っていった。

健二 「こら日和!お前は何で行き成り迷子センターに入っていくんだ!もう少し後先考えて行動したらどうなんだ!こっちに来い、ぐりぐりしてやる!」

日和 「うわ〜ん、何で迷子センターに入っただけでぐりぐりされなきゃならないのよ〜。ぐよぐよぐよ〜」

俺のぐりぐり攻撃に半泣きになる日和。

雪希 「お、お兄ちゃんダメだよ、こんな所で暴れちゃ、ほらみんな見てるよ」

そんな俺たちの所へ、雪希が困り顔で現れた。
そうだ雪希がいたんだ、すっかり当初の目的を忘れるところだったぜ。
うん?みんな見てる?
その言葉に辺りを見てみると・・・。

係員A (ほら、あれが噂の男の子よ)

係員B (やだ、一体何人の女の子を泣かしてるのかしらね)

係員C (見てみて、今だって女の子いじめてるよ。ひどいね)

全員 (ほんとねー)

い、いかん。係員のみなさんが俺を白い目で見ている。しかも迷子のお子様まで。
痛い、猛烈に視線が痛いぞ。
くそっ、こうなるはずではなかったのに、これ以上ここに留まってるのは危険だ。

健二 「ほら日和もう泣くな、俺はもう怒ってないぞ〜」

俺はぐりぐりするのをやめ、代わりに日和の頭を撫でてやった。

日和 「ぐっすん、けんちゃんいきなりどうしたの?」

突然の豹変振りに不審顔の日和。
気持ちは分かるが今はそれどころじゃない。

健二 「ほら日和、雪希、早くここから出るぞ」

俺はそう言うと、返事を待たずに二人の腕を掴んで歩き出した。

雪希 「ちょ、ちょっと待ってお兄ちゃん。まだ進藤さんがあそこで気を失ったままだよ」

そんな俺に雪希が慌てて声をかけてくる。
確かに雪希の指差す先には、いまだにぷるぷる震えている進藤の姿が見えた。
くそっ、進藤のやつどこまでも世話かけやがって。
俺は二人にちょっと待つように言うと、ダッシュで進藤の所に向かった。

健二 「ほら進藤何時までも寝てるんじゃない。目を覚ませ進藤」

俺はそう声をかけながら進藤の体を思いっきり揺さぶり、さらに頬を叩く。
無論さっきの仕返しでもある。

雪希 「うわぁ、お、お兄ちゃんそんなに激しくしたら進藤さん壊れちゃうよ」

そんな進藤を心配する雪希。

健二 「大丈夫だぞ〜、雪希。進藤がこれくらいで壊れるもんか、わはは」

そしてさらに進藤を揺さぶる俺。

進藤 「・・・う〜ん、何だか世界が揺れてます〜」

さすがに目を覚ます進藤、しかしここでやめては面白くない。
俺はさらに回転を加えるように進藤を激しく揺さぶる。

進藤 「わわわ、な、何をしてるんですか〜、私もう起きてますよ〜、目が回ります〜」

健二 「いや、お前はまだ眠ってるはずだ。早く目を覚ませ進藤」

粘る俺。

進藤 「も、もういい加減にしてください!」

そう言って進藤が行き成り立ち上がり、俺の魔の手から逃げ出していく。

進藤 「うっ・・・世界がぐるぐる回ってる。気持ち悪い・・・」

行き成り立ち上がったもんだから足取りがふらふらしている進藤。

健二 「わはは進藤、お前はどこの酔っ払いだ。まったく恥ずかしい奴だぜ」

いたずら成功ですっかり満足の俺。
と、こんなことをしている場合じゃなかった。

健二 「ほら進藤しゃきっとしろ。早くここから脱出するぞ」

俺はそう言い残し出口に向け歩き始める。
すると背後から。

進藤 「あれ?先輩じゃないですか。うわっ本当に来てくれたんですね、私感激です。あっ、もしかしてさっき私の頭シェイクしてたの先輩ですか?もう先輩ひどいですよ。でも私のためにここまで来てくれたんですから、もうそんなことは気にしません。やっぱり恋人の私のことがほっとけなかったんですよね。いやもう何だか恥ずかしいですね。あっ、ところで先輩、頼んでおいたお土産はどうしたんですか?見たところ手に何も持ってないみたいですけど?まさか忘れたなんていいませんよね」

意識が元に戻った途端喋り捲る進藤。
しかもその場から動こうとしないし。

健二 「やかましいぞ進藤!土産ならある!ほれ受け取れ!」

俺はポケットに入れていたものを進藤に渡してやった。

進藤 「うわぁ〜、先輩ありがとうございます・・・って、なんで私へのお土産がみどり亀なんですか?」

みどり亀を手に不満顔の進藤。

健二 「お前が言ったんだろ、いつものやつって、だからみどり亀買って来てやったんだぞ。感謝して欲しいな」

進藤 「どうしてそこからみどり亀が連想できるんですか?せめてシーモンキーを連想してくださいよ」

健二 「お前こそどういう発想してんだ!」

今の状況を忘れて言い合いを続ける俺と進藤。

雪希 「お兄ちゃん、だからここで騒いじゃダメだってば。ほら、ますます注目を浴びちゃってるよ」

そんな様子に雪希が慌てて止めに入る。
しまった、こんなことをしている場合じゃない。

健二 「進藤、不本意だが今は言い争っている場合じゃない。早くここから出るぞ」

俺は進藤の首根っこを掴み、引きずるようにして強制連行する。

進藤 「ちょっと先輩首が苦しいですよ。へるぷみ〜です〜」

何か進藤が言っているようだが無視無視。
しかし、よくよく考えてみれば、何故俺はこんなにここにいることを恐れてるんだろうな・・・。
そりゃあ、周りの冷ややかな視線は気になるが、この俺がここまで恐れることはないはずだ。
すでに開き直ってるしな。
何か、非常に大事なことを俺は忘れているような気がする・・・何だ?俺は何を忘れてるんだ?
う〜〜〜ん。>進藤を引きずりながら考えてみる俺。

健二 「そ、そうかっ!?分かったぞっ!!」

日和 「わっ、けんちゃんどうしたの?突然大きな声出して?」

雪希 「ど、どうしたの?お兄ちゃん」

進藤 「先輩何が分かったんですか?」

突然俺が大声を出したもんだからみんな驚いてる。
しかし、それどころじゃない。事は一分一秒を争う事態だ。

健二 「日和、雪希、進藤、急いでここを離れるんだ!急がないと奴がやってくるぞ!」

俺はさらに日和と雪希を捕まえ、三人を引きずるようにして出口に急いだ。

日和 「わわわ、けんちゃんそんなに引っ張らないでよ〜」

雪希 「お兄ちゃん、一体何が来るの?」

進藤 「せ・ん・ぱ・い・首、本格的に首が絞まってます。ギブギブ」

みんなの声を無視し、出口に急行する俺だったが・・・くそっ、気づくのが遅すぎた。
奴だ!奴が出口に立ってやがる!

清香 「けぇーんーじぃー、とうとう見つけたわよ。さあ覚悟してもらいましょうか」

日和 「あっ、清香ちゃんだ」

清香の姿を見て日和が驚く。他の二人も声には出していないが驚いた顔をしている。
清香のやつマジで今までずっと俺を探してやがったのか。
あの放送を清香も聴いてたはずだから、こうなる事は予想できたはずなのに・・・油断したぜ。

清香 「さあ健二、約束通り何でも奢ってもらうわよ・・・逃げ出した分の利子をたっぷりつけてね。覚悟しなさい」

出口をしっかりガードしながらゆっくりと近づいてくる清香。

麻美 「健二さん・・・見てください・・・これ私が取ったんですよ」

清香の後ろには、麻美先輩がにこやかに『ひよりん』を俺に見せているし・・・。
麻美先輩もう少し状況を理解してください。
くそっ、ひよりんから、『お困りですか?』光線が出ている気がするぞ。

健二 「・・・マズイ・・・このままでは今月の生活費が、すべて清香の腹の中へ消えてしまうぞ」

ゆっくりと清香との間合いを取る俺。

進藤 「あはは、先輩何だか大変そうですね」

健二 「進藤〜、こうなったのも全てお前のせいだろうがぁーっ!」

進藤 「せ、先輩、マジで苦しいです。ロープ、ロープ」

日和 「あっ、そうだ、雪希ちゃんはいこれ。お土産だよ」

雪希 「わぁあ〜、日和ちゃんありがとう」

健二 「こらそこの二人!勝手に和んでんじゃない!」

段々訳の分からない状況になってくる俺たち。

清香 「逃がさないわよ健二!!」

健二 「捕まって堪るか!!」

そしてとうとう迷子センター内で大暴れをはじめた俺と清香。
まさに阿鼻叫喚の世界がそこにはあった。
しつこく追いかけてくる清香。
何故かガッチリ出口を固めている麻美先輩。
囃し立てる進藤。
おろおろあたふたするばかりの日和。
そんな俺たちを必死で止めようとする雪希。
しかし、事態は最悪の展開へと進んでいった・・・。

係員 「こらお前たちこんな所で騒いじゃダメじゃないか!」

騒ぎに驚いた係員が俺たちを止めに入る。

健二 「ダメだ!今の清香に近づいてはいけない!殺られるぞ!」

必死で係員を止めようとしたが、事情を知らない係員はそのまま清香に近づいていく。

係員 「こら!いくら子供だからってこんな所で暴れちゃダメじゃないか!ほら、あそこにお友達がいるから、一緒におとなしく遊んでなさい」

そう言って係員が指差した先には、明らかに小学生と思われる迷子の子供たちの姿が・・・。
うおっ!この係員、清香の逆鱗に触れやがった!
でも俺的にはOKだぞ〜。

清香 「・・・何でこの私が小学生に見えるのよ・・・許さない・・・」

ヤバイ、ヤバイぞ!係員!

健二 「待て清香!早まるな!本当のことを言われただけじゃないかぁーっ!」

清香 「くらえっ!!」

バキッ!

清香の会心の回し蹴りが名もない係員の鳩尾に!

係員 「うっ・・・がくり」

その場に崩れ落ちる係員。
ああ、清香の奴本当にやっちまいやがった。

清香 「ふん、いい気味よ。ところで健二・・・」

係員を足蹴にした清香が、俺に視線を向けてくる。

清香 「あんた、さっきどさくさに紛れて何か言わなかったかしら?」

健二 「いや、何も言ってないぞ〜。気のせい気のせい」

すっとぼける俺。くそっ、しっかり聞いてやがったのか。

清香 「あからさまに態度が変なんですけど」

しつこく追求してくる清香、いかんこのままではまずい。

健二 「そ、そんなことよりそれどうすんだ?このままだと・・・」

進藤 「先輩!!」

足元でプルプル震えている係員を指差し、話題を変えようとした所に、進藤の叫び声が聞こえてきた。

健二 「どうした進藤、そんなに慌てて、何か出たのか?」

進藤 「向こうから、団体さんがやってきますーっ!」

清香 「何よ、一体何が来るって言うのよ?」

俺と清香は進藤が指差す先に視線を向けてみた。

健二・清香 「げっ!?」

視線の先には、この騒ぎを聞きつけた係員の団体さんの姿が・・・。

健二 「うわおぅ!ほら見ろ清香どうすんだ?あいつら仲間がやられたもんだから、何だか目が血走ってるぞ!ヤバイ、ヤバイぞ!」

清香 「ふんっ、私の邪魔をする者はすべて倒すまでよ。やれるもんならやってもらおうじゃないのよ」

健二 「うわーっ!清香それじゃあ事態がますます悪化するだけじゃないかーっ!」

進藤 「うわっ、清香先輩かっこいいです。及ばずながら私もやっちゃいますよ」

何故かこの事態にのりのりの進藤と清香。
麻美先輩はちょこんと座って楽しそうに観戦しているし。
くそっ、こんな奴らに付き合ってられるか!
俺は清香たちに気づかれないよう、そっと日和と雪希の所へ移動した。

健二 (日和、雪希、これ以上あいつらに付き合ってたらこっちの身が危険だ。逃げるぞ)

俺は小声で二人に話しかける。

日和 (えっ!?で、でも・・・)

雪希 (それより二人を止めた方が・・・)

健二 (大丈夫だ。あの二人なら何とかなるだろ、先輩はあの性格だから捕まっても問題なしだしな。それより今はこっちの身を守る方が先決だ)

日和 (う、うん。そうかも・・・)

雪希 (・・・いいのかな)

健二 (いくぞ)

そして、日和と雪希をつれ、そっと歩き出したとき。

清香 「健二、何逃げ出そうとしてるのよ。逃げ道なんてもうどこにもないわよ。あいつらを倒さない限りね、分かってる?」

即効で清香にばれた。
しかし、何言ってんだ。出口ぐらい小窓でもあれば十分だ。
そう思い、周りの壁を見渡してみる。

健二 「なんだこれは!?どうしてこの部屋には窓が一つもないんだ?どう考えてもおかしいだろう。何故だ?何故なんだーっ!?」

頭を抱え思わず叫ぶ俺。

日和 「あっ、ほんとだ〜、言われるまで気づかなかったよ。どうしてかな?」

雪希 「う〜ん、多分ね、ここに連れてこられた子供たちが、勝手に外に出て行って、また迷子にならないようにするためだと思うよ」

俺と日和の疑問に的確に答えて見せる雪希。

健二 「そうか」

日和 「なるほど〜」

その答えに感心する俺と日和。

清香 「そんなことちょっと考えれば直ぐに分かるじゃない。まったく健二も日和もあい変わらずバカなんだから、雪希ちゃんもほんと大変よね」

そんな俺と日和をここぞとばかりにからかってくる清香。

健二 「うるさいぞ清香!そんな事で突っ込んでないで、この状況を少しは何とかしろ!」

日和 「私バカじゃないよ〜」

健二 「そうだ!日和はバカじゃない!ぽんこつなんだ!」

日和 「な、何言ってるのよ〜、けんちゃんまで、私ぽんこつじゃないよ〜」

清香 「そうね、日和はバカじゃなくて、ぽんこつだったわね」

全員 「うんうん、納得納得」

日和 「うわ〜ん、みんなひどいよ〜、ぐよぐよぐよ〜」

珍しくみんなの意見が一致した瞬間だった。

健二 「ええい!こんなバカなことをやっている場合じゃない!どうするつもりだ清香!」

清香 「そんなの決ってるじゃない、道がなければ作るまでよ!!」

そう言って、今や戦場とかそうとしている唯一の出口を指差す、相変わらず強気な清香。

進藤 「みんな何やってるんですか?もう直ぐそこまで来てますよ。数はざっと10人ぐらいです」

一人敵の様子を見ていた進藤が状況を説明に来る。

清香 「あんたもいい加減覚悟を決めなさいよね」

健二 「・・・仕方ない、不本意だがここはやるしかないな。ここで捕まれば、本格的に学校へ行けなくなりそうだ。日和と雪希は後ろに下がっていろ」

日和 「う、うん。分かった」

雪希 「お兄ちゃん、無理はしないでね」

進藤 「先輩、私も少しは気遣ってくださいよ」

健二 「うるさい進藤!お前は最前線で戦ってろ!」

進藤 「ああ、先輩それってひどいですよ」

清香 「おしゃべりはそこまでよ、来るわ」

そして戦いの火蓋は切って落とされた。
水を得た魚のように、次々と現れる係員を倒しまくる清香。
ひたすらわめき散らしながら相手を挑発している進藤。
俺も得意の延髄チョップを駆使して応戦する。
麻美先輩はそんな中、お茶をすすりながらのんびりと、迷子の子供たちと一緒に俺たちの戦いを観戦していた。
子供たちは、ヒーローもののアトラクションを見ているかのように、おおはしゃぎをしている。
一体どっちが悪者なのだろうか?
しかし、なんでこんな状況になってるんだ?俺はただ雪希を迎えに来ただけなのに・・・。
そんな中、更なる展開が始まる。

日和 「あれ?このボタンは何かな?」

戦いの最中、何かを見つける日和。

係員 「あっ!それに触れちゃダメだ!」

係員の一人が、日和に向かって叫ぶ。

日和 「えっ・・・!?」

ぽちっ。

係員の声に驚いた日和が思わずそのスイッチを押す。

健二 「何だ?あのスイッチに何かあるのか?」

清香 「私に聞かれても分からないわよ」

何のスイッチだったのか気になる俺と清香。
さっきの係員に聞こうとするが、すでに清香によって安らかな眠りについていた。
一体何のスイッチだったんだ?

雪希 「お兄ちゃん、私の気のせいかもしれないんだけど・・・何だか進藤さんの声が、外から聞こえてくる気がするの・・・これってもしかして・・・」

何かに気づいた雪希が、困り顔でこっちにやって来る。
外から進藤の声だって。
外の音に集中してみる俺たち。

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聞こえる・・・確かにこの声は進藤の声だ!
とすると、もしかしてさっきのスイッチは・・・。

健二 「日和!早くそのスイッチを切るんだ!そのスイッチは境内放送の開始スイッチだ!このままだと俺たちさらし者だぞ!」

日和 「えっえぇーーーっ!」

雪希 「わわわ、やっぱり。日和ちゃん早くお願い」

日和 「ええと、ええと、にゃあぁ〜、どれだったか分からなくなっちゃったよ〜」

清香 「日和どきなさい!こんな物はこうすればいいのよ!」

ドカッ!!
コンソールパネルに向かって踵落としを決める清香。
しかし。

健二 「・・・なんか、進藤の声が更にでかくなった気がするんだが・・・」

日和 「そうだね・・・」

雪希 「・・・私もそう思うよ」

清香 「あはは、何だか失敗だったみたいね」

健二 「笑ってごまかしてる場合かーっ!」

進藤 「先輩今度は一体何をやらかしたんですか?私の声が何だか外から聞こえてくるんですけど。ああーーーっ!こ、これは・・・もしかして、今の私たちのこの騒動が境内中にライブ中継されちゃってるんじゃないですか!?どうするんですか?片瀬健二先輩!」

健二 「進藤さつき!この状況を理解したんなら、フルネームで俺の名前を叫ぶんじゃない!俺のイメージが壊れるだろうがっ!」

清香 「あんたのイメージなんて、最初から壊れてるじゃない。今さら恥じの一つや二つかいたって何も変わらないわよ」

健二 「なんだと小野崎清香!迷子のお子様は黙ってろ!」

清香 「なんですって!!」

雪希 「みんな少し落ち着いて、外に丸聞こえだよ」

麻美 「ずずずっ」>この後の展開を期待しながらお茶をすすっている先輩。

日和 「と、とにかく、この放送を止めようよ〜」

健二 「しかし、壊れてる物をどうやって止めるんだ?」

清香 「そんなの決ってるじゃない。止まるまでぶっ壊すまでよ!」

進藤 「あっ、清香先輩それ楽しそうですね。私も手伝いますね」

ドカッバキッグシャ!
心底楽しそうに破壊活動に勤しむ清香と進藤。
しかし、今だライブ中継は断続中である。

係員 「こら!お前らそんなことしてただで済むと思ってるのか!覚悟しろ!」

実況生中継、迷子センター乗っ取り乱闘大作戦は、まだまだ続きそうな気配を見せていた。

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たまたま今日、縁日に来ていた南山くんの一言。

南山 「あいつら、とんでもないことやってるな。こりゃ明後日の学校が楽しみだぜ」

縁日の夜は、ますます賑やかになっていくのであった。

 

つづく


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