「みずいろ」の愉快な仲間たち

第二十一話 変わらない二人


初夏の夕暮れは、暑すぎも寒すぎもせずとても過ごしやすい。
頬をなでる風もとてもすがすがしく気持ちがいい。
ふと見上げた空は、青色から茜色へ、さらに藍色へと代わり始めていた。
俺と日和は、そんな初夏の夕暮れの中を、縁日が行われている神社に向かって歩き始める。

健二 「・・・日和、今気がついたんだが何故お前は制服を着ているんだ?」

日和 「えっ・・・!?」

なぜそこまで驚くポンコツくん。
まあ、こいつのことだからきっと、『外出するときは制服じゃないとだめなんだよ〜』とか言いだしそうだが・・・。
それにしても、多少なりとも浴衣姿を期待してやってたのに、何でこいつは私服ですらないんだ。

健二 「俺は恥ずかしいぞぉーーー!」

頭を抱え、オーバーアクションで叫んでみせる俺。

日和 「だっ、だって〜外出するときは制服じゃないとだめなんだよ〜、それに〜そう言うけんちゃんだって制服着てるじゃないのよ〜」

やはりそう答えてきたかって・・・。
うん?俺が制服着ているだって。
日和に言われ、俺は自分の服装を確認してみた。

健二 「うおーーーっ!何故俺は制服を着ているんだぁーーー!」

日和の言うとおり俺はなぜか制服を着ていた。
たぶん寝起きだったため、無意識のうちに朝と同じ行動をしたんだろう。
それにしても・・・。

日和 「えへへ〜、私とおそろいだね、るんらら〜よかったね」

なぜかとてもうれしそうな日和。
こいつ・・・絶対知ってて黙っていたな。

健二 「日和、お前知っててわざと黙っていただろ」

日和 「そんなことないよ〜、けんちゃんに言われて私も今気がついたんだもんね」

そう反論してくる日和だったが、絶対うそだろう。
くそっ、今さら着替えに戻るのもめんどくさいし・・・。

健二 「・・・仕方ない、今さら家に戻るのもめんどくさいし、このまま行くとするか」

日和 「うん、それがいいよ、えへへ」

俺の返事に満面の笑みで答える日和。
よっぽど俺とおそろいなのがうれしいのだろう・・・これもいいか。

健二 「よし日和、そうと決まれば早く縁日に行くぞ」

日和 「うん」

そして、二人並んで再び夕暮れの町を歩き出す。
空はさっきよりも藍色が強くなり始め、遠くに見える縁日の明かりを鮮明に映し始めていた。

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健二 「やっと着いたな」

日和 「うん。わ〜みんな楽しそうだね〜」

神社の本殿へと続く境内にようやく到着した俺と日和。
辺りは沢山の出店と、色とりどりの浴衣を着た沢山の人たちで賑わっていた。
遠くからは、太鼓の音も聞こえてくる。
みんな楽しそうだ。

健二 「それにしても、予想以上に沢山人がいるな・・・こりゃ気をつけないとすぐにはぐれてしまうぞ。日和、俺の側から絶対離れるなよ」

俺はそう日和に忠告した。

し〜ん。

だが、何故か日和からの返事が返ってこない。

健二 「日和?どうした?返事しろよって・・・」

俺はそう言いながら、日和に視線を向けた。

健二 「うおーーーっ!言ってる側から日和のやついないじゃないかぁーーー!」

そこに確かにさっきまで俺の隣を歩いていたはずの日和の姿がない。
俺は慌てて辺りを見回してみた・・・しかし、日和の姿はどこにも見えなかった。

健二 「あいつ、言ってる側から迷子か・・・しかもまだそんなに込み合ってない境内の入り口で・・・」

俺は頭が痛くなってきた。
しかし、探さない訳にはいかない。

健二 「仕方ない、とっとと日和のやつを探しに行くか」

そう思い、俺が駆け出そうとした時。

ピンポンパンポーン。

『片瀬健二様、片瀬健二様、お連れ様の早坂日和さんを、迷子センターにてお預かりしています。至急迷子センターまでお越しください。片瀬健二様・・・』

日和が迷子センターで保護されている事を知らせる迷子案内の放送が流れた・・・もちろん境内中に・・・。

健二 「・・・」

思わずその場に固まる俺。
この放送・・・当然ここに来ているであろう清香たちの耳にも聞こえたはずだよな・・・。

健二 「うおーーーっ!絶対あいつらに会ったらかわかわれるじゃねえかぁーーー!」

思わずその場で頭を抱えて叫んでしまう俺。
その叫び声に、縁日に来ている一般ピープルの動きが一瞬止まる。

健二 「はっ!待てよ、それよりも・・・」

俺の頭の中に、ある現実が浮かび上がってきた。
もしかして、俺は迷子センターまで日和を迎えに行かなければならないのか・・・。
迷子センター、そこは主に子供のための施設のはずだ。
そこに大の大人?が迷子でいるだけでも恥ずかしいというのに、きっと日和のやつはそこに半泣きでいるのだろう・・・。
俺はちょっと想像してみた。

日和 「うわ〜ん、けんちゃん早く迎えに来てよ〜、ぐよぐよぐよ〜」

当然半泣きの日和。

係員 「ほら、いい子だから泣かないの。きっともうすぐ迎えが来ますよ」

そんな日和を優しく慰める係員。

日和 「でも、でも〜」

それでもぐずる日和。

係員 「ほら、お菓子あげるからもう泣かないの」

そういって日和にお菓子をあげる係員。
完全に日和は子ども扱いである。

健二 「あの、ここに日和が居るって聞いてきたんですけど」

そこへ現れる俺。

係員 「ほら、お父さんが迎えに来てくれましたよ、よかったね日和ちゃん」

日和 「うん、えへへ〜」

子供のように喜ぶ日和と、その周りから聞こえてくるクスクスという笑い声・・・。

健二 「うおーーーっ!超はずかしいぜぇーーー!それに誰がお父さんだぁーーー!」

またもや頭を抱えて叫ぶ俺。

子供 (お母さんあの人何で叫んでるの?)

母親 (ダメよ指差しちゃ、ほら行くのよ)

俺の叫び声に、再び一般ピープルの動きが止まるのであった。

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健二 「さて、一体これからどうしたものか・・・」

冷静さを取り戻した俺は、これからのことを考えていた。
日和を無視して帰るという選択肢もあるが・・・そんなことをすれば、またあの放送が流れて俺が帰ってしまったことが清香たちにばれることだろう。
それに俺にはそんなこと・・・。

健二 「仕方ない、日和を迎えに行くか」

俺は迷子センターに向け歩き始めた。

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健二 「さて、ここまで来たのはいいが・・・」

俺は迷子センターの近くまで来ると、隠れて中の様子を伺っていた。
なにしろ迷子センターからは、俺の予想通り聞き覚えのある泣き声が聞こえていたからだ。
今中に入れば、まさに俺の予想どうりの展開が待っている気がする・・・。
さてどうしたものか・・・俺は腕を組んで考え込む。

?? (あっ・・・!)

そこへ、誰かが何かを見つけたような声が聞こえてきたような気がする。

?? (けんちゃ〜ん、そこで何してるの〜、私はここだよ〜、早く迎えに来てよ〜)

何故か俺の名前が呼ばれているような気がするが・・・きっと気のせいだろう、俺最近疲れているからな。

?? (けんちゃ〜ん、お〜い、け・ん・ちゃ・ん〜)>めちゃめちゃ大声

健二 「・・・」

何故か、俺の周りに居る一般ピープルたちがみんな俺の方を見ているような気がする・・・。
いかん、このままでは非常にまずい。

ダダダダダダッ!
猛ダッシュで迷子センターへ駆け込む俺。
ムンズ。
問答無用で日和の腕をつかむ俺。
スタタタタタッ!
風のようにその場を後にする俺と日和。
この間わずか数十秒!
そして、辺りに人がいないところまですばやく移動する。
そして・・・。

健二 「お前はあんなところで俺の名前を大声で叫ぶんじゃなぁーーーい!」

日和 「はうっ」

そう日和に叫ぶ俺。

健二 「だいたい俺があそこにいるのに気がついたんなら、さっさとこっちにこればいいだろう、まったく恥ずかしいやつめ」

日和 「だ、だってだって〜けんちゃんが迎えに来てくれてうれしかったんだもん」

すでに半泣きの日和。

健二 「それに、そもそもなんでお前はあんな即効で迷子になってるんだ」

日和 「そ、それは私のせいじゃないよ〜私はただ縁日の様子を見てただけだもん。それで〜気がついたらけんちゃんのほうがいなくなってたんだよ。私は悪くないよ〜ぐっすん」

半泣きになりながらも必死で自分の無実を力説する日和。
だが。

健二 「ほほう、ということはよそ見しながら歩いていて迷子になったとこうおっしゃりますか日和先生・・・思いっきりお前の方が悪いんじゃないかぁーーー!しかも典型的な迷子のパターンにはまりよって、お前は幼稚園児かぁーーー!」

日和 「う、うわ〜ん、そんなこというなんてひどいよ〜私一人で寂しかったんだから〜ぐよぐよぐよ〜」

俺の反論に半泣き所ではなくなってくる日和。

健二 「まったくしょうがないやつだな」

昔と少しも変わらないままの日和。
だから本当に一人きりになって寂しかったことだろう。
そういうやつだということは俺が一番良く知っている。
だから・・・。

健二 「ほら日和、また迷子になったら困るだろ、ちょっと手を出せ」

日和 「ぐっすん。手・・・?」

俺の言葉に訳も分からないまま手を差し出す日和。
俺は差し出された日和の手をぎゅっと握る。

健二 「こうすればもう迷子にならないだろう。行くぞ日和」

俺は日和と手をつないだまま歩き出す。

日和 「わわわ、け、けんちゃん待ってよ〜」

最初俺に引きずられるように歩いていた日和だが、やがて俺の隣に並んで歩き出す。
そして・・・俺の手をぎゅっと握り返してくる。

日和 「えへへ、もう迷子になんてならないからね、けんちゃん」

そう言って、いつもの照れた笑顔を俺に見せる日和。

健二 「いいや、日和のことだからきっとまた迷子になるぞ。そしたらもう帰っていいからな、絶対迷子センターには行くなよ」

日和 「大丈夫だよ〜もしまた迷子になっても、迷子センターでけんちゃんのこと呼んでもらうから〜」

健二 「お前は俺の話を聞いていたのか?俺は今度は絶対迎えになんて行かないぞ」

日和 「そんなこと言っても〜私の知ってるけんちゃんならまた絶対迎えに来てくれるよ〜」

そんな日和の言葉に何も言えない俺。

日和 「ほらけんちゃん、早く行こうよ〜みんな楽しそうだよ〜えへへ」

そんな俺を見てさらにうれしそうな日和。
昔から変わらない日和。
そんな日和をほっておけない俺。
昔と変わらないのは俺も同じかもしれないな・・・。

健二 「日和、そんなに慌てると転ぶぞ」

日和 「そんなことないよって、わわわ」

言ってる側から転びそうになる日和。
俺はこけそうな日和を繋いでいる手で支えてやる。

日和 「けんちゃんありがとう」

健二 「そんなに慌てなくてもまだ時間はいくらでもあるぞ。ゆっくりい行けばいいだろう」

日和 「うん、そうだね」

そして俺と日和は沢山の人で賑わいを見せる境内に向かって歩き始める。
離れえぬよう二人手を繋いで・・・。
空はすっかり夜の闇へと変わり、沢山の星たちが瞬いていた。

 

つづく


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