「みずいろ」の愉快な仲間たち

第五話 いざ温泉宿へ


温泉宿へと続く山道

健二 「ハア、ハア、清香・・・まだ着かないのか?」

清香 「も・・・もう見えてくるはずよ」

俺たちは今、勾配のきつい山道を歩いている。
清香の話だと、この道の先に温泉宿があるらしい。

進藤 「さ・・・さすがに・・・疲れてきました・・・」

雪希 「う・・・うん・・・私も・・・」

俺も皆もすっかり歩き疲れていた。
何しろここまで来るのに、電車で揺られること2時間、バスに揺られること1時間、そして、かれこれバス停をでてから30分は歩いている。
みんなくたくただろう。
そして日和はというと・・・。

日和 「うわ〜ん、待ってよ〜みんな早いよ〜置いてかないでよ〜」

かなり遅れていた。
まあポンコツの日和には、この山道はかなりきついだろう。
俺でもかなりきつい。
所が・・・。

麻美 「みんな・・・どうかしたんですか?」

なぜか麻美先輩は疲れた様子がない・・・。
あの独特のマイペースに秘密があるのか?
まったく不思議である。
それよりも今は・・・。

健二 「ほら、日和、俺が荷物持ってやるから、がんばれ」

俺は日和の居る場所まで山道を戻り、そう声をかけ、荷物を受け取った。

日和 「わあ〜けんちゃん、ありがとう〜えへへ」

いつもの照れた笑顔で素直に喜ぶ日和。
俺も日和には弱いな。
そう思いながら今度は・・・。

健二 「ほら、雪希も俺が荷物持ってやるから、がんばれな」

雪希の所まで行き、そう言って荷物を受け取る。

雪希 「うん、ありがとう、お兄ちゃん・・・やっぱり優しいね」

そう言って、クスッと笑う雪希。
俺が日和を放って置けないことをからかっているんだろう。
まったく・・・。

健二 「こいつ」

そう言って雪希の頭を小突く。

雪希 「あははは」

おかしそうに笑う雪希。

健二 「ほら、日和、待っててやるから早く来いよな」

日和 「うん、私、がんばるよ〜」

日和も雪希も少し元気が出て来たみたいだ。
俺はほっとした。
そこへ・・・。

進藤 「せんぱーい、私のも持ってくださいよー」

進藤の声が聞こえてきた。

健二 「進藤、お前なら大丈夫だ、俺が保障してやる、一人でがんばれ」

俺は、からかってやった。
まあ、これも何時ものことだ。

進藤 「あー、先輩のいじわるー、何の慰めにもなっていませんよー」

そう言ってふくれる進藤。
何だかんだ言ってまだ元気そうだ。
こうして俺たちは、遅れ気味になる日和を気遣いながら、山道を進んだ。

           ・

           ・

           ・

そしてさらに、10分ほど歩いたとき。

清香 「ほら、見えてきたわよ、あれがそうよ」

どうやら宿に着いたみたいだ。

健二 「ほう、あれが・・・」

俺は、宿を見るなり固まった。

雪希 「あれ? お兄ちゃんどうし・・・」

そして雪希も固まった。

日和 「・・・よ、ようやく追いついたよ〜あれ? けんちゃん、雪希ちゃん、どうしたの〜?」

ようやく追いついた日和が、そんな俺と雪希を見て不思議がる。

進藤 「き、清香先輩、も、もしかして、あ、あれですか?」

そう言いながら、進藤が指差した先には、見るからにヤバイ温泉宿があった。
戦前の木造校舎の学校と言えば、そのヤバサが分かるかもしれない。
しかも・・・。

カァー、カァー

やけに沢山いるカラス。

ウォーーーン

何故か、犬の遠吠えまで聞こえてくる。
ま、まあ、ここまではまだ許せる、だがなぜに宿の隣が墓地なんだ?
まさに、この温泉宿には何かあるぜ、と宣伝しているようなものじゃないか。

清香 「そうよ、なかなか趣があるでしょ」

麻美 「何か・・・出てきそうですね」

清香 「そこがいいのよ」

しれっと言ってのける清香。

健二 「お前の趣味に俺たちを巻き込むなー!」

清香に誘われたときに考えて置くべきだったと、俺は少し後悔した。

進藤 「そうですよ、何か出てきたら、どうするんですか? 私いやですからね」

さすがの進藤もどうやら怖いらしい。

清香 「とにかく、もう来ちゃったんだから、あんたたち、あきらめてね」

清香が俺たちに、止めを刺す。
くそ、最初ッから、狙ってやがったなこのチビッコが。
いくらそう思っても、すでに後の祭りだった・・・。

健二 「・・・」

言葉も出ない俺。

雪希 「あははは」 >棒読み

わらってごまかすしかない雪希。

日和 「到着、到着、るんらら〜、よかったね」

この状況を分かっていない日和、さすがポンコツさん。

進藤 「せ、先輩、何かあったら助けてくださいね」

そう言って、俺の側に来る進藤。

麻美 「・・・すばらしい・・・お宿です」

何故か、大喜びの麻美先輩。

清香 「さあ、あんたたち、突っ立ってないで、早く中に入るわよ」

そして、泊まる気満々の清香であった。

健二 「ま、まあ、ただで連れて来て貰ったんだから、文句言っても仕方ないだろう、それに、こう見えても中はまともかもしれないしな」

雪希 「う、うん、きっとそうだよね、お兄ちゃん」

進藤 「そ、そうですよね、先輩」

俺と雪希、進藤はそう自分を納得させ宿に向かった。

日和 「温泉、温泉、るんらら〜」

この何も状況を理解してない日和の明るさが、この時の俺には救いだった。
だが、ぜったい後から泣くはめになるだろうな、ともこの時俺は思った。

清香 「あんたたち、なにやってんのよ」

麻美 「・・・早く・・・中に入って見ましょう・・・」

とにかくこうして俺たちは、この見るからにヤバイ温泉宿に泊まることになった。
何も起こらない・・・ことは絶対無いだろうなと俺はこの時そう思った。

つづく


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