この「智代アフター」は大雑把には本編と【アフター】の2つのシナリオに分けることが出来ます。と言ってもどちらがメインと言えるワケではなく、その辺はやはり本編と【アフター】に分かれていた「CLANNAD」と同じような感じ(むしろ揃えたのかも)と言えるでしょう。上記の『賛否両論』ですが、私は本編が『賛』、【アフター】が微妙な評価と言う位置付けです。
「CLANAD」智代エンド後の主人公・岡崎朋也と坂上智代の蜜月生活に始まり、その部屋にしょっちゅう出入りしている智代の弟・鷹文や、更にそこに転がり込んできた智代の父親の隠し子・とも、鷹文の昔の彼女・河南子の5人が繰り広げる面白おかしくも儚い日々を描いた本編……これは文句無しに大好きです。笑いと感動の絶妙なブレンド具合は流石のKeyクオリティ。個人的にはパロディネタを多用する「つよきす」のような笑いよりも、純粋に言葉遊び(?)でウケを取るコチラの笑いの方が好きです。
オープニングの1週間は朋也と智代のエロシーンと、それを期せずして覗いてしまう鷹文、と言う構図がひたすら続きます。「エロシーンを描きたかっただけちゃうんか」とツッコミたくなるような展開ですが、これは「CLANNAD」後の朋也と智代がどれだけ仲睦まじく暮らしているのか、そしてそこに鷹文を加えてどれだけ平和な生活をしているのかをプレイヤーに伝えるためにも必要だった……と前向きに解釈。なのでそこにイチャモンをつけるつもりは無いです。面白かったですしね。姉がヤッてるシーンを見てしまっても結構平然としている鷹文はかなりの大物なのかもしれません。
そんな朋也のアパートに鷹文がともを連れてきたことで物語は動き出すワケですが、正直「CLANNAD」の智代シナリオがどんなストーリーだったか記憶が曖昧だったので、鷹文の行動に含まれた意味を完全に理解するのにちと時間がかかりました。簡単に言うと「不仲だった坂上家を変えるべく鷹文は自殺紛いの事故を起こし、その甲斐あって坂上家は生まれ変わった。一命をとりとめた鷹文との大切な思い出である桜並木を守るべく、智代は頑張って頑張って頑張りぬいた」と言うのが「CLANNAD」の智代シナリオであり、この「智代アフター」の前提。
ともは坂上父の愛人に生まれた隠し子で、その愛人女性が坂上家の前に放置したまま姿を消してしまい、それに気付いた鷹文が坂上家の平和を守るべく朋也のアパートにともを連れてきた、と。んで母親の再婚に反対して家を飛び出して鷹文を頼る形でやってきた河南子を加えての生活がスタート。この辺の日常を描くテキスト力は本当に流石の一言で、「一気に引き込まれる」と言うよりも「気付いたらその世界の中にいた」みたいな感じでしょうか。5人の生活が始まってからが『本編』。「よかった……本当によかった……頑張れ……頑張れよ……」と純粋に感動の涙を流して大団円。
……とそこで終わりかと思いきやその後突然始まる【アフター】。いきなり朋也がプレイヤーは茫然自失。奮闘する智代が痛々しくて見てられませんでした。結局。その口から語られた衝撃の事実…………朋也以上にプレイヤーもショック甚大。
「智代アフター」で賛否両論分かれるポイント第一弾はここでしょう。逆に言うと『本編』の展開に異を唱える人はいないと確信してます。正直な話、この展開をもってKeyが”何を言いたかったのか”が全く分かりません。「」その問いには否と答える人が大多数だと思います。それに、『本編』で見られた非常に丁寧な描写が見る影も無くなっているのも痛い。これではプレイヤーが完全に置いてけぼりになってしまいます。
このラストの展開が賛否両論分かれるポイント第ニ弾ではないかと思います。
おい、ちょっと待てよ、と。私にはこれがだったとはとても思えません。これだったらバッドエンドの方がなんぼかマシではないかと。智代だったらが出来ると思いますし。そりゃ智代としては満足かもしれませんが()、本編から朋也とシンクロしていたプレイヤーとしてはどうにもこうにも……私がであると言うもあるんですが。あれだけ懸命に生きてる朋也や智代にはじゃないですか。
のは評価されるべきかもしれません。でも、それでも私はがいいんです。あれじゃあんまりです、あんまりですよ。プレイヤーは智代ほど強くないんですよ。
上記より、シナリオに関しては本編が傑作、【アフター】が良作よりの凡作。【アフター】が凡作にならなかったのは、テキストのクオリティの高さとそこに至るまでの”貯金”かな、と。評点が辛いのは単にと言う感情論だけではなく、説明不足な点とあまりにも唐突な展開でユーザーを煙に巻いてる印象がある点の2点が主な理由です。
キャラ立ちに関しては一級品。やはり”魅力的なキャラクター”と言うのは『面白い設定』ではなく『活かすテキスト(シナリオ)』から生まれるんだな、と改めて思い知りました。メインである朋也と智代に限らず、鷹文や河南子と言うキャラクターの素晴らしさを、キャラ立ちを設定に頼ることしか知らないメーカーさんは見習べき。
音楽に関してはもう感服あるのみ。フミオ氏によるキャラデザも違和感を覚えることはありませんでした。イベントCGも印象的なのが多いですしね。あとボイスに関しては、元々ボイス無しだった作品の続編をフルボイスにすると言う”冒険”に不安があったのは確かですが、そんな心配は見事に吹き飛ばしてくれました。智代に一色ヒカルさんを当てたのは慧眼以外のナニモノでもなく……って別にこれは私が一色ヒカルさん好きだからという理由からではなく、演技力に限らず声のイメージがピッタリであったことによる感想です。あとカップルである鷹文と河南子のCVが共に涼森ちさとさんだったことに驚き。声優さんって凄い。
と言うワケで「智代アフター」。人に薦めたいかどうかは難しいところです。本編だけであったなら文句無しにお薦めだったんですが、【アフター】の展開に納得が出来るかどうかが「智代アフター」を受け入れられるかどうかのポイントになるでしょう。「AIR」のエンディングを受け入れることが出来たユーザーは大丈夫かもしれませんが、やはりあれは『長い物語の末に辿り着いた終着点』と言う印象があったためであり、「智代アフター」のように唐突な展開の結果としてとなると、私のように受け入れることが厳しいんじゃないかと思います。この辺は「CLANNAD」本編で一度ハッピーエンドを迎えてるだけに尚更ですよね。