空色の風琴(18禁)
Lotus

 

この物語は売れっ子予備校講師・奥田友哉が7歳年下である従妹・如月颯沙(さらさ)と共に異世界の国「アルシオ」を舞台に繰り広げるファンタジーです。「アルシオ」は牧歌的かつ平和な国で、精霊という存在が非常に身近な世界。『星祭り』を目前に控えて浮かれた感のある、そこに住まう人々もどこか暢気な印象が拭えないながらもある意味理想的な『夢の世界』。

そんな国へ突然飛ばされてしまった友哉。共にアルシオへ来ていると思われながらもはぐれてしまった颯沙を求めて……しかし友哉と颯沙は決して仲がいいわけではありません。颯沙が小さい時から家庭教師として勉強を教えてきた友哉でしたが、成長するにつれて現実主義者の友哉とその対極に位置する颯沙は『7歳差』と言うとても大きな壁と相まって、どこか相容れない同士になっていました。勝手ながらこの作品はそのどちらも正解であり不正解でもある2つの極論をどう料理するかが全てだったのではないかと思います。

現実主義者である友哉がアルシオでの生活を通してどう変わるのか、自分の目から見るととても不潔な存在であった友哉を決して認めようとしなかった颯沙がどうなるのか、2人の本当に気持ちは一体どうなのか……その辺は実際にプレイして確かめて頂きたいと思います。

それではちょっとだけレビューめいたことを。

■シナリオ■

この作品は選択肢がほとんど関係無い1本道シナリオ。それでいてヒロインが颯沙を含めて6人、となるとどうしても八方美人的な主人公になってしまうのは必然。現実主義ですが冷たい人間ではない友哉と心を通わせるヒロイン達……まぁ行き着くところは1つなワケで。少々腰を振りすぎの感はございましたがその1つ1つは決して不自然では無かったので「おいおい」とは思いつつも違和感はあまりございませんでした。納得がいくか、と言われるとちょっと厳しいんですけどね。あえて苦言を申し上げるとすれば会話にハートマークや汗の記号などを多用するのはもうちょっと控えて頂きたかったかな、という点(「F&C」テイスト?)。

シナリオ、と言いますかテキストについて特筆すべきは全く中だるみが無かったこと。ファーストプレイ13・4時間はほとんど一気にやってしまった感じなのですが、途中でダルくなるような箇所はほとんどありませんでした。クリア後の開放感・満足感という意味ではやや物足りない部分もございましたが、適度に発生する事件もさることながら日常会話でもプレイヤーを離さないテキストにも大いに注目すべきなのではないかと。私はイベント発生中のテキストと同じぐらい日常会話にも重点を置きたい人間ですがその点における「空オル」のクオリティの高さには大いに満足。

■キャラクター■

「空オル」にボイスはついていないのですが、それでも充分すぎるほどにキャラクターの「立っている」作品だったかと思います。特にヒロイン達(+エイプリル)に関してはかなりのレベルで。癒し系フローリア、物忘れの激しい夢見がちな少女・メナム、元気少女・エイプリル、踊り子を夢見るトラブルメーカー・ルフィーユ、厳格ながらも弱い部分を持ったミレット、しっかり者の姐さん女房的なステラ、そして存在に現実感が全く欠けている颯沙。

1つ間違えるとステレオタイプになりがちなキャラクター付けのようですが、これがまた美麗なCGと相まって非常に魅力的に表現されております。メインヒロインは颯沙なわけですが、他のヒロインがあまりに活き活きと描かれているので颯沙の印象が薄くなってしまうほど(後半盛り返したと思いますが)。

■音楽■

発売前から「星祭り×トークライブ」などが開催されていたことからもお分かりになるかと思いますが、この作品で最も重点が置かれていた点と言えばこれなのかもしれません。OP/ED&7人分のキャラクターソングに業界屈指のシンガーを揃えた、正に全力を注ぎ込んだと思われるコレでもかと言わんばかりの攻勢。要所要所で使われる楽曲にプレイ中ミュージカルと言いますか『舞台』に近いイメージを抱きました。もちろんそれは楽曲の素晴らしさに加えて演出の妙があってこその話です。

ストーリーにも「音楽」という物が深く関わっているだけあって、この作品において音楽が占める割合は非常に大きいのではないかと思います。桑田佳祐氏の初にして最後の監督作品「稲村ジェーン」は映像と音楽の融合を目指した結果サザンファンの黒歴史に落ち着いてしまった涙の終着駅ですが、「空オル」でのこの試みは成功していると思います。音楽が重要視されてきている昨今の流れにおいても群を抜いているのではないでしょうか。

これもまた個人的な意見で申し訳ございませんが、ゲームで使われる音楽と言うものではどんなに名曲であろうと作品にマッチしていなければ単なる駄作に過ぎないと思ってます。上記の通り非常に豪華なメンバーで構成されている音楽陣をまとめつつ、ゲームの雰囲気にマッチさせながらもここまで高クオリティの楽曲をそろえることが出来たのは一重に金杉氏の手腕によるところが大きいのではないかと。そういった意味でも満足できたと思える作品でした(個人的に音楽面で同等の作品は「朱」ぐらいかな)。

 

あー、なんか褒めすぎてる気がする(汗)。ここまで書いておいて何ですが万人が面白いと認める作品かと言いますと難しいかもしれません。人によっては友哉の八方美人っぷりにイラつきを覚えるかもしれませんし、結局は颯沙の引き立て役に過ぎないのではないかと他のヒロインに感情移入して怒りを覚える方がいらっしゃるかもしれませんし。それでも私はこの作品は充分プレイするに足る作品かと思います。特にボーカルCD付きに関してはかなりの自信を持ってお勧め致します。

それにしてもOP「TRACE〜響きあえる場所」とED「ETERNAL MELODY 語り合うために」はマジでよい。あと「進め、わたし!」も色々な意味で好き(どんな意味で好きなのかは謎)。「星祭り2」が今から激しく楽しみです。

 

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