「潮風の消える海に」の感想・レビューをば。
■絵■
ぽよよんろっく氏。私はよく知らないのですが結構有名な方のようで。特に問題は無し。
■音楽■
lightさんご用達とも言える樋口秀樹氏&WHITE−LIPS。気になったのは本作と同じくシナリオが早狩さんで音楽も同じ樋口さん達である「僕と僕らの夏」からの使いまわしBGMが多かったことでしょうか。確かに両作品はイメージ的に共通する部分が多いように思えますが、そのまんまの流用ってのはどうなんでしょう。クロスオーバー的な作品ならともかく完全新作なのですから、BGMもそれに合わせて作成して頂きたかった、と言うのが本音。低価格&短期間での開発、雰囲気的にもマッチしている等は確かにありますけどね。
■シナリオ■
何に対しても無気力に過ごしていた主人公・宮地進は、工業地帯であるため誰とも顔を合わせることが無い海の近くで1人の青年と出会う。進と同い年のその青年・東上浩介は仲間を探していた。海に沈んでいるヨットを引き上げて、一緒に何処か知らない場所へと旅立つ仲間を。意気投合した進と浩介、そしてそんな2人と偶然関わりを持った榎木田美潮とそのクラスメイト椎木莉佳子の4人は浩介の計画に熱中することになる。
笑いながら、時には衝突しながら。時と共に少しずつ変化していく4人の関係と、変わることの無い目標。1年が過ぎ、2年が過ぎ、そして遂に計画に乗り出そうとする時、果たして進達はどんな道を選択するのだろうか……と言った感じ。
選択肢は無く、完全なる一本道。ヒロイン(=攻略対象)と呼べる存在は美潮だけで、ボリュームとしては非常に小さめです。クリア時間は4・5時間ぐらいで、1冊の青春小説を読んでいるような感覚でしょうか。安価な価格設定もあり、非常にお手軽な感じ。
早狩さんお得意の『遊びと呼べるところが一切無い、奇跡とかファンタジー要素とかが皆無な青春モノ』。泥臭いレベルまで青春時代特有の心情を描写するテキストは、共感を覚える人と全く感情移入出来ない人の真っ二つに分かれるのではないでしょうか。その分かれ目は、進達と同じように『何かに熱中する青春時代を過ごしたか』では無く、「今時そんな青春あるワケねーよ」と言った風に斜に構えてしまうかどうかかと。
早狩さんの得意技と言えば”複数視点からの描写”と言うのが、本作は完全に進視点のみとなっております。それ故に美潮の心情を追い辛いところもありますが、むしろそれによって進とのシンクロ率はアップしているように感じました。
ちなみに”萌え”とか”燃え”とかとは完全に無縁な世界です。その辺を期待したら負け。
多少ゲーム的な設定はありますが、基本的にはあくまで等身大の物語。進達のやり取りや徐々に近づいていく描写は青春モノとして一級品。尺的なものも含めて、そのまま青春映画に出来るんじゃないかとまで思えます。決して綺麗事ばかりじゃすまない人生の壁にぶつかる若者達の苦悩と煩悶、そして前進。これらは何となく早狩さん作品に共通しているテーマなような気がしますね。
物語の舞台となっているのは実在する鶴見線の沿線であり、その事がリアリティの向上に一役買ってます。実際に行ってみたくなりました。進と浩介が出会った場所とか、莉佳子の実家の飲み屋とか特に(作品内に飲み屋自体の描写は出てこないけど)。
お求め易い金額設定とプレイ時間の短さから、ちょっとした青春小説を読む感覚で手に取る分にはお勧め出来る作品かと思います。同じ早狩さん作品である「群青の空を越えて」のような激しい展開を期待すると痛い目をみるかもしれませんが、「僕と僕らの夏」のような雰囲気が好きな方にはハマるんじゃないかと。lightさん初の試みであるダウンロード販売も行っておりますので、気になった方は是非どうぞ。