サナララ(18禁)
ねこねこソフト

 

いきなり総括から申し上げると「やってよかった」「気持ちよかった」。全4章からなるオムニバス形式な「サナララ」ですが1つ1つの長さはそれほどではないので、作品の雰囲気と相まって気軽に楽しめる作品となっております。人への薦め易さで言えば「ラムネ」よりも上かもしれません、作品としての優劣ではなく「気軽に〜」って意味で。

ある1つの設定(テーマ、と言ってもいいかも)を元に4つのシナリオが展開。章ごとの繋がりは無いものの、全体的なイメージとして「起承転結」的な印象を受けます(かなり狙ってらっしゃる部分もあると思いますが)。ですので章ごとのシナリオを楽しむもよし、全体をクリアした後に感じる”爽快感”や”達成感”を楽しむもよし。その後に待っている『おまけ』で私のように食っていたうどんをモニターに向かって思い切り吹き出すもよし(←普通にエロゲーをやりながら飯を食う男)。

作品としてのイメージは学園モノ風ながらも「みずいろ」や「ラムネ」より「120円」に近い感じでしょうか。ですので「みずいろ」のような作品を求めてプレイなさった方は不満を感じるかもしれませんが、そんな理由だけでこの作品を放り出すのはあまりにも愚の骨頂。父ちゃん情けなくて涙出てきます。「120円」プレイ後に感じる「嗚呼……誰だって……俺だって人に優しくなれるんじゃないだろうか……」と言う刹那的性善説の感覚が好きな人なら楽しめること請け合いです。

要するに溢れんばかりの萌えや燃え尽きる程の熱さ(ヒート)を秘めた作品ではなく、エンドロール後に誰にとも無く慈愛に満ちた笑みを浮かべてしまいそうなそんな”温かくも優しい作品”、それが私の「サナララ」の印象です。以下やや詳細な感想になります。

 

■絵■

最初見た時は違和感を感じましたが、今となっては「この絵じゃないとダメ」と言う境地に達しております。恐るべし闇野ケンジ。恐るべし藤宮アプリ、またの名をうめ(姉)。立ち絵とイベントCGの間に違和感を感じないのは個人的に評価が高かったりします。シナリオの長さが短いだけにイベントCGの枚数は決して多くはありません。お気に入りは涼のフェンス越しに向かい合うシーン(「AIR」のみちるを彷彿とさせられたのは私だけじゃないはず)と由梨子が色を作ってるシーン。

 

■音楽■

OPが無いのが残念。ボーカル曲としては挿入歌とEDがありますが、流れるタイミングがなかなかに絶妙でニクい。BGMに関しては作風にあった明るい曲が多くて好印象。中でも「スカーレット2004」は素晴らしい。

 

■システム■

章の中で更に細かいチャプター構成となっていて、一度プレイした後は好きなチャプターから始められる親切設計。細切れになる、という印象を受ける方がいらっしゃるかもしれませんが、私としてはちょうどいいタイミングで切れるので気にはなりませんでした。むしろ1つのチャプターをクリアした後に、そのチャプターについている簡単なあらすじを読むのが楽しかったりもしました(特にヒロインの視点で書かれている3章)。使用しているエンジンはお馴染みのNScripter。やや反応が重い気がしましたが、それも仕様ということで。

 

■シナリオ■

『ナビゲーター』と『対象者』と言う1つの設定を根幹として、そのから派生する4つの物語りがそれぞれ独立した形で語られております。MMR日記にもございましたが、それぞれのシナリオ担当者の方の”色”が強く出ているのがとても印象的。以下ネタバレは少なめに章ごとの感想を。

 

【Story01:のぞみ】

ヒロインはオドオド小動物系後輩・希未。伏線等の技巧的な部分も突出しておりますが、それ以上に哀愁と言いますか郷愁と言いますか……とにかくテキストが琴線に触れる。「120円」以降で特に強く感じるようになってきた”優しい”雰囲気にたまらなく癒されます。色々と感じた点もあるのですがスタッフルームで語られていたものも多くて、今ここで私が語っても後出しジャンケンっぽくてアレなので割愛。何はともあれ「プリンス床ホテル」は自分では一生出せない表現です。

 

【Story02:Sweet days,Sour days】

ヒロインは元気系幼なじみ・あゆみ。4つのシナリオの中で最も明るくてライトな感じです。一番近くにいる幼なじみとの間にあった”気付かないでいた想い”と言うあまりにもありきたりなシナリオではありますが、「サナララ」の『少し不思議な物語り』の風味によって面白い味付けがされているように感じました。2人が互いの想いに気付いていく流れが自然で良かったのですが、少々物足りなさを感じたのもまた事実。もう少しあゆみの心情について掘り下げてくれてもよかったんじゃないかと。

 

【Story03:センチメンタル・アマレット・ネガティブ】

ヒロインは一見お嬢様系天然少女・涼。『少し不思議』な”設定”を見事に活かしきったシナリオだったと思います。あくまでも前向きながら決してハッピーエンドと言えるかどうか微妙なエンディングは賛否両論かもしれませんが、ハッピーエンド至上主義の私でも安易なご都合主義で終わらせなかったこのシナリオには惜しみない拍手を送りたいと思います。かなり”心に染みました”と言うのが正直な感想。

 

【Story04:”Summer Holiday”】

ヒロインは真面目系兼殻を破りたい系少女・由梨子。「サナララ」と言う言葉の由来や、大団円的なエンディングを備えた「サナララ」のトリを飾るにふさわしいシナリオでした。何を言ってもネタバレになりそうなのでアレですが、前に進むための第一歩を踏み出せずにいた2人のささやかながらも大きな一歩……と言ったところでしょうか。クリア後は思わず目を瞑って幸せのため息をついた私。

 

前述の通り「サナララ」は全4章からなるオムニバス形式。各章毎に違う4人のライターさんによってシナリオが書かれているため、かなり章ごとの印象が違います。1つのゲームにおいてシナリオによってテキストの印象が違ってくるのは私的にはマイナスなのですが、この「サナララ」に関してはオムニバス形式をとっているためむしろその違いを楽しむ事が出来ました。それでいて全体的に「起承転結」が出来ているあたりに注目すべきではないかと思います。そう言う意味ではシナリオごとに違うライターさんが担当した結果やや統一感に欠けた印象のある「ラムネ」よりも人に勧めやすいと思います。とっつきやすい、と意味で。

と言う訳で「サナララ」はお勧めです。値段も手ごろですし時間と財布に余裕のある方は是非ともプレイなさってみては如何でしょうか。最後にさりげなくプレイしながらリアルタイム感想を書き連ねていたmixi日記の中でもオールクリア直後である5/2に書いた感想を抜粋して「サナララ」感想の締めとさせて頂きます。

取り逃していたCGの回収やバッドエンドを終えて、とりあえずはオールクリアと相成りました。このような”ある意味「まったり」”で、その上で”心温まる”作品は貴重ですので、そういった作品に出会えることは本当に嬉しい事です。

雰囲気的には「みずいろ」や「ラムネ」よりも「120円」に近いのはプレイした方なら誰でも感じたところかと思います。「みずいろ」に拘りっぱなしの某ゲームレビューサイトでは酷評が下されているようですが、その辺は個人の趣味なので仕方の無いことでしょう。個人的には「比較論でしか物事を判断出来ない人間は黙ってろ」って感じですが。

プレイしていて随所に実験的要素を感じたのですが(120円のような細かい章構成やオムニバス形式、フェイスウインドウ等)、それらは概して成功だったのではないかと。どんな作品でも同じ形式を採用して欲しい、と言うのではなく「サナララ」だからこそ、という前提で。作品に合った効果、という意味で評価すべきだと思います。

これ以上褒めようとするとおべんちゃらっぽくなりそうなので割愛。頑張って書こうとすればするほど偉そうな感じになって自己嫌悪になりますし。クリア後に感じたことを素直に書けば「気持ちいい」ですね。

 

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