「ナツメグ」の感想をば。ネタバレ全開。隠してはいますが、未プレイ&プレイ予定の方は要注意。
■絵■
原画は司ゆうき氏。全く問題無し。ただ何枚かおまけのCG閲覧モードに収録されないものがあるのはどんな嫌がらせ仕様ですか。まぁ絵だけ見てもしょうがなくて、その時のテキスト・音楽と一緒に見るからこそ意味がある、とは思いますけどね(そんな意図じゃないと思いますが)。要所要所で挿入されるミヨルノユメギ氏によるSD絵もコミカルでナイスでした。
■音楽■
複数クリエイターへの依頼制ですが、BGMとして違和感を感じるようなものはございませんでした。この辺の統一感はディレクションのなせる業と言ったところ。主題歌「ナツメグ 〜Precious Last Summer〜」はYURIAさんが歌う曲として目新しさはありませんでしたが、歌詞・曲調共にこの「ナツメグ」と言う作品に合った良曲だったかと思います。
■シナリオ■
主人公・渡部敦志の通う都内の葉成川学園は生徒数減少に伴い、夏休み明けには兄弟校との統合が決まっていた。それと時を同じくして親友であり恩人でもある由佳子が転校することとなり、敦志は楽しい思い出作りをするべく夏限定の部活を発足。メンバーは中学以来の親友達、幼なじみの姉的存在、ドジな後輩、ハーフの転校生。こうして”最後の夏”が始まる……と言うもの。
以下クリア順にヒロイン別感想。
▼東雲 由佳子▼
メインヒロイン。親友であり、中学時代に転校してきて誰とも打ち解けようとしなかった敦志を仲間に引き込んでくれた恩人でもあり、”マンションの隣の部屋”ではなく窓を開けたら空間を隔てたすぐそこにいる”隣のマンション”の『お隣さん』でもあり。夏休みが終わったら大阪に転校することが決まっており、寂しげな由佳子のために敦志は部活を始める。一見気が弱い女の子だけど、秘めたる意志は強いタイプ。
敦志とは中学からの付き合いなので『幼なじみ』ではないけれど、一緒にいた時間以上に深い絆を持っている存在。スタッフコメントでシナリオを担当なさった木緒さん曰く、そんなコンセプトらしいです。確かにただでさえ同じような境遇であった敦志と由佳子ですから、実梨やシゲオを含めた親友としての付き合いの仲で育まれた絆は相当なものであったことは想像に難くありません。なんで転校する間際になって結ばれたのか、なんでもっと早くから結ばれなかったのか。何故か私が悔しくて悔しくて泣けてきそう。
敦志と由佳子の2人の関係もそうですが、それと同じぐらいに感じたのが仲間達の絆でした。部活仲間達から去り行く由佳子への言葉と贈り物に、思わずマウスを強く握り締めてしまった私。エンディングでナイスだったかと思います。夢を繋ぐと言うか。他のキャラの関係上、と言う事情かもしれませんが。
▼小早川 円▼
生徒会長であり、敦志にとっては幼なじみであり、姉的存在でもある頼れる存在。可愛い人、面白いことが大好きで、今回の”部活”にも率先して参加してくる。
シナリオのプロットとしては。別にそれが問題と言うワケではないのですが、話の中心が敦志と円2人だけとなってしまい、他の登場人物がかなり置いてけぼり状態になってしまったのは残念な限り。”部活”と言う舞台を活かしきれておらず、それでいて円の言動に唐突なイメージがあるため(シナリオの展開以上に)、消化不良気味なシナリオになってしまったように感じました。
▼セリス・アルフォード▼
理事長を父親に持つハーフの転校生。くだらないダジャレが大好きで、かなり他人とはかけ離れたセンスの持ち主。転校生の心細さを理解している由佳子たっての願いもあって入部することになるが、実は結構優しいところもあるので由佳子はその辺も見抜いていたのかなー、なんて思ったり思わなかったり。
実はセリスもので、であることがセリスシナリオで判明。キャラとしてはかなり可愛い部分があるので、この「ナツメグ」の中では萌え担当なのかも。よくよく考えると金髪ツインテールなツンデレ、ってかなりテンプレート的だな……なんて思ったり思わなかったり。
エンディングで考えるのは野暮ってことで。
▼乾 実梨▼
由佳子と同じく中学時代からの親友。敦志・シゲオ・由佳子・実梨の4人の中ではツッコミ担当の元気娘で、実家は元革命家の父親の経営するお好み焼き屋。革命家て。太い太もも(二重表現?)を気にしており、他人から指摘されるとキレる。でも俺はあの太ももで全くもって問題無いと思わざるを得ません(力説するところでもありません)。
シゲオとの絡みが多いこともあって、実梨の言動は凄く面白い。笑えるテキスト、と言う意味では実梨シナリオが一番でした。遊園地のシーンとか笑いっぱなし。シナリオ自体はと言うこれもまたよく見るプロットではありますが、実梨だけじゃなくて由佳子の心情もきっちり描ききっていた点でポイントは高いです。
▼野島 ほとり▼
可愛い後輩。掃除好きなドジっ子で、その天然っぷりをシゲオに目をつけられて入部。ぽわぽわ笑顔で部のマスコット的存在だが、ほとりシナリオでのみ判明すると言うファンタジー設定が。これは「ナツメグ」と言う話において異端すぎて賛否両論では……と思いましたが、終わってみればこの『夏が巡る』物語の締めくくるに相応しいシナリオであることがわかりました。それでもファンタジー要素の要否についてはやっぱり賛否両論あるかと思いますが。私は無問題派。
【ほとり→敦志】の好意はともかく、敦志のほとりへの好意がいつの間に芽生えていたのかは少々謎。ゲーム内期間の短さにも起因するところですが、この辺については後述致します。ただその後の展開は秀逸(と言うより私好み)で、特にエンディングに向けた流れは大好きですね。ややご都合主義的な部分もあり、先が読めてしまう展開ではありますが、それでもラストに向けて引き込まれていくテキストに感服致しました。
王道と言えば王道かもしれませんが、ラストへの持っていき方が素晴らしい。。。。わかってました。流れとしてこうなるのはわかっていました。わかっちゃいましたけど、それでも感動しないワケにはいきませんでした。とかとかそれこそ色々あるとは思いますが(特に後者)、それでも私は素直に感動させて頂きました。
シナリオとしては特に目新しいものがあるワケではなく、むしろ「ありがちな王道的シナリオをきちんと描いてくれた」と言う印象です(円とセリスに関しては上記の通り消化不良的なものがありましたが)。
ゲーム内の時間が”夏限定の部活”を言う設定からも分かる通り3ヶ月程度しかなく、しかも最初の2ヶ月は部活内のイベントを描く共通部分となっている関係上、個別シナリオが非常に短いものになっておりました。悪く言えば『詰め込み過ぎ』で、よく言えば『短くまとめた』。シナリオによってはその短い期間においても日付が飛び飛びかつ1日1日の描写が少なかったので、余計にそう感じる部分も多かったと思います。ゲーム内時間が短い作品なんてのはいくらでもあるにはありますが、この「ナツメグ」はシステムの関係上どうしても『日々の積み重ね』と言うよりも『イベントの積み重ね』と言う印象があるので、余計に時間を短く感じたのかもしれません。”イベントの回数=日数”ってワケでもありませんでしたし。
そう言う意味で本当によくまとまっていたと感じたのは由佳子シナリオと実梨シナリオでした。主人公とヒロインの馴れ初め(から別れまで)のみに留まらず、部活仲間との関係等をきちんと描写していたのも好感度高し。長けりゃいい、なんてのはありませんしね。最近たまに見られる”長いだけ”のシナリオとは対極にあると言えるかもかもかも。
”イベントをこなしてく部活”と言うことでプレイヤーがそのイベントを選択していくシステム(RES)を導入しております。面白いとは思いますが、必要性はあまり感じなかったり。選択回数に上限があるので、1人のヒロインに関するイベントを1周で全て見ることも出来ませんでした。
システムがシナリオとリンクしている点は面白いと思いますが、ランダム要素があるのでやや時系列に不整合が発生する場合があるのもちとマイナス。特に不都合があるワケじゃないのですが、その辺が気になる人は気になっちゃうかもしれません。
シゲオが面白すぎ。もっとお笑い以外の見せ場があると嬉しかったなぁ。
好きなシナリオ順。
【由佳子>実梨>ほとり>セリス>円】
ほとりはラストの展開にもっと採点上の重点をおいたら実梨と入れ替わるかな。
今作では声優さんの演技も光ってました。夏野こおりさんは由佳子のように『気は弱いけど、本当はとても強い心を持っている』キャラを演じさせたらピカイチ。まきいづみさんは単にホワホワしたキャラよりも円のようなしっかりしたキャラを演じた方が絶対にイイと思います。それに大人しめな可愛いキャラ・ほとり役の佐本二厘さんもグットな味を出してらっしゃいましたし、元気な同級生・セリスを演じた韮井叶さんの真骨頂も味わえました。
でもそれよりも何よりも、やはり一番のナイス配役は実梨役の青山ゆかりさんでしょう。素晴らしいとしか言えません。正に
ディ・モールト 良い。実梨は青山さんにしか演じられないキャラだったと思いますし、青山さんじゃなかったら全く違った実梨になっていたかと思います。ただのツンデレでは終わらない面白さがありました。「ねこねこソフト」的な部分についてですが、元より比較をする気は無かったですし、感想を比較で述べるのは愚の骨頂であることもわかっているのですが、スタッフコメントでも幾度と無く触れられておりましたし、ご本人達も意識してらっしゃったと思いますので敢えて書かせて頂きます。
まず先に書かせて頂きますと、この「ナツメグ」をプレイするにあたっては「ねこねこソフトの後継」なんてことは微塵も考えない状態でした。確かにスタッフさんのみならず音楽・声優さん等に関しても「ねこねこ」の色を濃く残してらっしゃったようには感じましたが、それとこれとは全く別の話ですし。それを念頭に置いた上での感想です。
それでも「ねこねこ」の色(と言うよりともさんの色?)を強く感じる演出(エンディングにおける映画の字幕風表示とか)があったりと、プレイする側としてもどうしても意識してしまう部分はありました。それが悪いことかと言われればそんなことはありませんし、これで「結局ねこか」とか思うのはどうかと思います。要するに今後も同じ芸風……と言うのもやや御幣がありますが、演出云々も含めて「ねこっぽさ」を「コットンらしさ」に昇華させて今後も頑張って頂ければ、と思います。
あ、あとこれは私が多少色眼鏡を通して見てるからかもしれませんが、言い回し等に丸戸さんの風味を感じることが結構ありました。
と言う訳で「ナツメグ」。プレイ時間も短めですし、ある意味『安心してプレイ出来るギャルゲー』ですので、軽い気持ちで手にとってみては如何でしょうか。次回作の「レコンキスタ」にも期待しております。