もしも明日が晴れならば(18禁)
ぱれっと

 


「もしも明日が晴れならば」の感想。致命的なネタバレは無いと思ってますが、気になる方は回避なされた方がよろしいかと。

■絵■

原画はくすくす氏。柔らかい雰囲気を持った氏の絵はかなり好きな部類でして、つまり超OK。立ち絵・イベントCG共に文句無しです。この作品を購入した方の中には”原画買い”である方も大勢いらっしゃるのでは?

■音楽■

主題歌は主にlight作品を多く手がけている樋口秀樹氏とWHITE-LIPSによるもの。繊細ながらもよく通るボーカルと、作品の世界観にマッチした曲は流石の一言です。特に印象的なBGMはございませんが、雰囲気を壊すようなことは決してありませんので、この点に関してはご安心を。や、安心出来ないところがあるワケじゃありませんが。

■シナリオ■

主人公・鳩羽一樹には小さい頃から同居している幼なじみの姉妹が。何をやらせても完璧な姉・野乃崎明穂と、努力家ながらも報われない妹・野乃崎つばさ。夏休み直前のある日、意を決して明穂に告白をして無事付き合うことになった一樹。しかし長年の想いが成就した喜びもつかの間、その一週間後に突然の病気によって明穂はこの世を去ることに。夏休み明け、途方に暮れ、悲しみに打ちひしがれた一樹とつばさの前に”元気な明穂”の幽霊が現れたのだった……と言うのがオープニング。

つまり主人公である一樹には最初から彼女と呼ばれる存在がいるワケです(死んでますが)。そう言う意味では『他のヒロインと結ばれる=明穂を捨てる』と言うことになってしまうのはある意味必然。これはヘタをすると単なる浮気性な八方美人的主人公を描くことになりかねませんが、この「もしらば」はその辺の一樹や明穂の心情描写が非常に上手いのです。もちろんそこには「明穂が幽霊である」と言う要因が強く関係してくるのですが、設定を投げっぱなすこと無く、逆に設定を余すところなく使い切っているところは賞賛に値するのではないかと思います。

日常会話は爆笑テキスト、と言うわけではありませんが、読んでいて全く苦にならない飽きさせないテキスト。クライマックスの盛り上がり方も問題無し。かなり泣かせて頂きました……が、私の『泣いた』は当てにならないと専らの評判ですので、この辺は話半分ぐらいでちょうどいいかも。涙腺ゆる過ぎ、とよく言われる雀鬼龍です、皆さんこんにちは。

物語は章構成がとられており、次章に進む際に次回予告的なムービーとセーブ画面が出てきます。特に次回予告は最近たまに見られる趣向ですが、なかなか面白い試みかと思います。各章の概要は以下の通りです。

各章の題名は私が超適当につけてるだけです、念のため。ご覧の通りCapter.5までは共通シナリオとなっておりますので、2周目以降は既読スキップが多用されることになるでしょう。ですので初回プレイは結構時間がかかると思いますが、それほどお気になされる必要は無いのではないかと。

個人的にはCapter.1・4・5が好き。特にCapter.4はガラリと珠美に対する印象が変わるほどヒット。各章はそれぞれ完結した作りになっていて、クライマックスと呼べるシーンも章ごとにあるのも、プレイヤーを飽きさせる事無くゲーム内世界に引き込ませる大きな要因と言えるでしょう。

以下クリア順にヒロイン別感想。

▼野乃崎つばさ▼

小さい頃に一樹の家へとやってきた明穂の妹。明るい努力家ながらも、どうにも上手くいかないことが多い報われない系のキャラ。完璧な姉に対するコンプレックスがあまりにも大きく、それ以上に敬愛の念が強いので、かなりの葛藤と煩悶に悩まされる位置付けになるのは仕方の無いこと。演劇部に所属。

一樹に家族以上の気持ちを抱き続けながらも、姉の存在があまりにも大きいため自分の気持ちを隠し続けて幾星霜。一樹と結ばれた途端に死んでしまい、そして帰ってきた姉に対する複雑な気持ちは痛々しいの一言です。可愛い顔に似合わず結構黒いイメージがありますが、それはつばさが人間誰でも抱くであろう感情をモロに体現しちゃってるからでしょうね。

かなりウジウジグジグジしているシーンが多いのでぶっちゃけ癇に障ることもありましたが、本当は芯の強いイイ子なのです。愛してあげたい……のですが、やっぱり明穂にはかなわないんだよなぁ、個人的には。前向きに生きろよ。つばさのシナリオでは明穂がまたいい味だしてます。

▼湊川珠美▼

つばさのクラスメート。神社で巫女さんをやってるけど、実は人に害なす妖怪や幽霊を斬る『鬼切り』の役目を負った少女。「幽霊は問答無用で成仏すべき」の信念が明穂の存在と衝突しないワケがありません。その辺についてはCapter.1で。ちなみに京都出身なので京都弁。

男嫌い、と言うより人間嫌いの域に達した気難しい少女ながらも、そんなことを気にせず近づいてきたつばさには友達以上の気持ちをもって接する……つまり心を許した存在にはベタベタになる典型的ツンデレキャラ。最初は敵愾心バリバリだった一樹に対して(つばさが一樹の話をよくするので)、徐々に心を開いていく描写はかなり秀逸でした。何故か泣きたくなるぐらい(何故泣く)。

一樹の彼女である明穂と、一樹に想いを寄せているつばさ。この大きな2つの壁を乗り越えるまでの苦悩があるからこそ、乗り越えた後の笑顔の魅力がよりタマらなくなるってモンです。つか大好きです。珠美シナリオではつばさシナリオ以上に明穂が大活躍。しかもそれでいて珠美の存在が薄れることなく、より際立っていくのはライターさんの勝利でしょう。感服。

▼千早▼

学園の合歓(ねむ)の木に住む疫病神。要するに神様だけど全然らしくないのがいいところですが、神様なのに「人がいい」とはコレ如何に。気弱なオドオド系で保護欲をくすぐるタイプながらも、実は秘めたる強い心も。

千早に関してはネタバレをせずに語るのが非常に困難。とりあえずミニスカな着物は賛否両論で、私的には賛であり否でもある感じ。だからどうしたって感じですね、スイマセン。

エンディングに関してはちと納得のいかない部分が無きにしろあらずですが、一樹と千早を信じて2人の幸せを祈ることに致します。

▼野乃崎明穂▼

メインヒロインにして、一樹と付き合いだしてすぐに死んでしまった悲劇のヒロイン。でも作品自体がホンワカとした雰囲気でいられるのは、明穂が底抜けに明るくて能天気と言えそうな程に天真爛漫っぷりを振りまいてるからでしょう。もちろん喜怒哀楽の「喜」以外の感情も秘めていて、それ故の悲しみがまた涙を誘います。Capter.5の屋上で踊るシーンは全章通して一番好きなシーンです。こうして明穂のことを思い出しながら文章を書いてるだけで泣けてきそうです。つか実際に潤み始めてしまいました。ヤバいですね、ここは会社なのに。

外面的には優等生なのに、一樹の前ではワガママ三昧ってのもいい感じ。そう、全ては愛故に。幽霊云々は置いといたとしても、優しさや可愛らしさ、強さや弱さも兼ね備えた近年まれに見る完璧なヒロインかも。それでいて嫌味なところを全く感じさせないのも完璧たる所以。とりあえず私は明穂と生きていきます。

とにかく楽しませて頂きました。シナリオに関しては特に目新しいものはなく、「小さい頃から同居」「死んで幽霊に」等の設定もこれと言って斬新なワケではありません。それでもコレだけ魅せてくれるのは、本当に素晴らしいことです。シナリオ担当のNYAON氏は”普通で、惹かれるシナリオを描く”ということに関しては稀有な存在ではないかと思ってます。次回作も絶対に”買い”の方向で。

この作品はシナリオ:NYAON氏、原画:くすくす氏、音楽:樋口秀樹氏&WHITE-LIPSと、完全にlightの制作ライン。その辺りにどんな事情や関係があるのかは置いといて、「もしらば」を面白いと思った方で「DMF」「Sultan」を未プレイの方は、是非とも手に取られてみては如何でしょうか。

他に注目すべきはぱれっとのお家芸である『後姿立ち絵』でしょうか。第1作目から採用されているこの『後姿立ち絵』は作品を重ねるごとに洗練されてきていて、この「もしらば」で1つの完成形となった、と言っても過言ではないでしょう。ADV形式のゲームでは当たり前ではありますが、1対1ならともかく複数人で会話をしていても”全員が主人公(=プレイヤー)の方を真正面から見ている”構図は実際のところかなり不自然。しかし『後姿立ち絵』を導入することでこの不自然さは完全に解消され、それ以上に心情描写の幅がグンと広がるのですから驚きです。

登場人物が後ろを向く……ただそれだけで登場人物の表情が豊かになり、更には”動き”も大幅にアップ。それは全くしつこさを感じさせないにも関わらず、プレイヤーに対する効果は絶大と言っていいでしょう。この絶妙とまで言える『後姿立ち絵』芸はお見事の一言に尽きます。

今までぱれっとさんはファンディスクがございませんでしたが、そろそろ作られてもいい頃合ではないでしょうか。まぁぶっちゃけてしまえば今回「もしらば」で”主人公好き好きビーム”出しまくりだったのに全く報われなかった委員長・彩乃の追加シナリオが欲しい、ってだけなんですけどね。一応それっぽいエンディングはありましたが(上記ヒロイン4人の誰のエンディングにも到達しなかった場合)、あれだけで終わらせてしまうには勿体無いキャラですし。

と言う訳で「もしらば」は義務ゲーとさせて頂きます。

 

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