君が主で執事が俺で(18禁)
みなとそふと

 

「君が主で執事が俺で」のレビュー&感想。

■絵■

白猫参謀さんによる原画は万人ウケする絵柄ではないでしょうか。塗りのせいか、以前よりもだいぶクセが抜けてスッキリとした印象になってきたように思います。

あ、あと朱子と南斗星は外人であり、物語の序盤でも「見ての通りインターナショナルな顔ぶれ」的なセリフがありましたが、私の場合見た目では全くわかりませんでした。朱子は見た目完全に日本人ですし、南斗星にしたって単なる色黒な人ですし。それを言ったら金髪の未有の方がよっぽど外国人っぽかったです。

■音楽■

ボーカル曲はOPとEDに加えて挿入歌2曲で合計4曲で可も無く不可も無く。や、悪くはないんです。私は「姉しよ2」や「つよきす」の主題歌をかなり気に入っているので、その分期待し過ぎてしまっていたのかもしれません。そして特に印象的なBGMも無いけど、雰囲気に合わないように感じられるようなものも無し。

■シナリオ■

母親を早くに亡くし、長きに渡って父親から家庭内暴力を受け続けた主人公・上杉錬は、我慢しきれなくなったある日、意を決して姉の美鳩と家出をする。2人は辿り着いた街で紆余曲折を経た末に名門・久遠寺家で執事とメイドとして雇われることに。

攻略対象は久遠寺家の3人姉妹とそれぞれに仕えるメイドで合計6人。久遠寺家の人間をクリアすると、その専属メイドの攻略が可能になる方式です。ゲーム性は低く、攻略に悩むことは無いでしょう。

以下クリア順にヒロイン別感想。

▼久遠寺森羅▼

久遠寺三姉妹の長女にして久遠寺家当主。七浜フィルハーモニー交響楽団の指揮者を務める全国的な有名人で、プライドが高い。ただし”冷酷”とか”孤高”とかではなく、他人に対する気配りも出来るあたりは好感度高し。強度のシスコン。

偉大なる父と比較されるプレッシャーを跳ね除けながら我が道を貫いていく森羅には、初心な執事として可愛がられることはあっても1人の男として認められることは非常に難しい。その辺をどう料理するのか……と思っていたけど、かなり拍子抜けなクライマックスでした。「あら? あら? え、それで錬に惚れたの? 惚れちゃったの?」みたいな。それでも森羅シナリオのストーリー展開が一番マシ(よく出来ていた、とは言わない)だったことに気付くのはオールクリア後の話。

あまりにもアッサリと解決する錬と父親の確執問題に関してもヤッツケ仕事感がバリバリで、錬と美鳩は本当に家出してくる必要があったのかどうかすら疑問に思えてきました。ま、その辺は置いといたとしても、私は基本的に様付けキャラは好きになれないと言う致命的なマイナスポイントがあったんですけどね。

▼朱子▼

森羅に仕える専属メイド。料理の腕がよくて、久遠寺家の台所を取り仕切るイタリア人。名前は『ベニス』と読み、その由来はヴェネツィア出身だから。お金にがめついところがあるけど、それを補ってなお余りある生来の面倒見の良さと元気パワーが魅力。錬とは顔を合わせるたびに喧嘩となるが、それは気が合わないからではなく似たもの同士が故。怒った時の口は破滅的に悪いけど、普段は小さい時の境遇を見返すために”雅”たらんと心掛けるレディ(かもしれない)。

とりあえず一番のお気に入りキャラ。元気で前向きで、錬とは喧嘩ばかりだけど一度認めた相手にはとことん尽くす献身的なところがヒットです。しかしながら、徐々に錬との心の距離が近づいてく様子は見ていてそれなりに楽しかったけど、いざ結ばれる段になってソレカヨ的ないつもの展開にガッカリしたとかしないとか。結局このシナリオでやりたかったのは何なんでしょう?

朱子の生い立ちや久遠寺家に仕えることになった経緯の中に、今でもうっすらと跡が残っているらしい刺青の話がありました。悲惨だった過去を強調したい狙いはわかりますけど、逆に当時の朱子に刺青を入れるようなお金や余裕は無かったんじゃないかと思うのですが。

▼久遠寺未有▼

久遠寺三姉妹の次女。大学を飛び級して卒業した天才で、家族の温かい食卓を大切にする気持ちから外食産業を起こす夢がある。今はその夢に向かっての準備期間なので、普段は家の中でまったり。見た目は完全にお子様だけど子ども扱いされることに激しく抵抗があり、自分自身のことはアダルトな魅力溢れる大人の女だと思っている(もしくは思い込もうとしている?)。

ナイスなキャラでした。ふとしたことで出てきてしまう子供らしさを必死で隠す様子や、見た目からは考えづらいながらも非常に大きな器を持って接してくるところとか。専属となった錬に対する気持ちが変化していく様子は急でもなくゆっくり過ぎることもなく。でもラスト付近恒例のナニコレ的な展開には織り込み済みだったとしてもガッカリ。

▼上杉美鳩▼

錬の姉にして未有の専属メイド。その弟溺愛っぷりは凄まじく、堂々とブラコンを称して錬を甘やかしまくる。どこにしまっているのか49の秘密道具を持っていて、錬のピンチには欠かさず駆けつけてくる世界最高の姉(らしい)。

自分にもこれぐらい溺愛してくれる姉がいたら幸せな人生を送れそう。そう思いました。以上終了。ん? シナリオについて? まぁいいんじゃないですかね。もうこの辺までくるとシナリオそのものに対する期待はしてなかったのでガッカリもしないです。あえて指摘をするのであれば、父親話は森羅シナリオ以上に投げっぱなしでオザナリなこと、一応このシナリオの主軸じゃないの? あんなんで解決出来るんなら、実家にいた頃お前らは何をやっていたんだと聞きたくなります。

他ルートで弟をひたすら甘やかしつつ、ヒロインと結ばれると泣きながら嫉妬する美鳩の姿は面白かったんですが、本人シナリオでもひたすらそのままなのはともかく、そこから何ら掘り下げることが無いままな展開には正直見所がゼロでした。

▼久遠寺夢▼

久遠寺三姉妹の三女。特にこれといった特徴も無ければ特技も無く、何をやってもマイナー扱い。あまりにも個性が強すぎる姉達に囲まれつつ、凹むたびに南斗星に慰められつつ、そして事あるたびに現実から逃避しつつも、夢は今日も頑張るのだった。

個性が無いと言うキャラ付けと同様にシナリオも全く個性が無いです。何ですかコレは? 没個性時代における社会の病巣でも浮き彫りにしたいのですか?

見所は『YUMENOTE』ぐらいかな。あれはちょっと面白かった。

▼南斗星▼

夢に仕えるメイド……ではなく執事。女性だけどその凛々しさや腕っ節から執事服に身を包んでいる。肉が大好きな大飯喰らいだけど、その優しさ故に誰からも好かれる性格。夢に対しては夢本人の希望により、執事と言うよりも友達感覚で付き合っている。南方出身。

最後の最後に待ってましたね、爆弾が。つか地雷が。その眼帯や何となく匂わせていた悲しい家族構成から、どんなドラマが待っているのかとウッカリ期待してしまったんですけど、結論としてはなめてんのかと。展開も痛ければこんなシナリオを堂々と商業作品に入れてる神経も痛い。この主従のシナリオ、いらなかったんじゃないんですかね。2人とも他シナリオで小ネタ的に使われてた時の方がよっぽどイイキャラしてたと思います。

あと森羅から南斗星に対して犬小屋をプレゼントするシーンがありました。嬉々として犬小屋を使う南斗星の姿によって、その純粋な心を表現したかったんだと思いますが、見ているこっちは胸糞が悪くなるだけ。高飛車であり人を見下すようなところがある森羅ではありますが、こんな人間としての尊厳を踏みにじるような行為は絶対にしないと思います。喜ぶ南斗星の姿も痛々しいだけ。

とにかくライターのタカヒロ氏の特徴である【笑いアリ。でもシナリオはどこかに忘れてきました。と言うかストーリー展開って何ですか? それって美味しいんですか?】的なゲーム内容。テキストは笑えます(パロディネタが多すぎるのはあまり好きではありませんが)。キャラは楽しい連中ばかりで、その活き活きとした掛け合いも面白いです。でもシナリオはあって無きような物、と言うより全く無い。それにラストの展開でことごとく肩透かしくらうので、余韻も何も無ければクリア後のカタルシスも無く、爽快感や達成感もございません。そんなタカヒロ氏のゲームをやる度にいつも思います。勿体無い、と。

ここまで来ると、意図的にシナリオを投げっぱなしにしてるんじゃないかと思えてきます。「コレはシナリオなんて形だけで、ひたすらキャラに萌えつつ笑ってもらえればそれでいいゲーム」みたいな感じで。そんなところに突っ込みや指摘をするのは逆に踊らされてるような気すら致しますし、だとしてもそれを悪いとは言いませんが、あまりにも勿体無いですホントに。もしかしたら他の人にシナリオを考えてもらって、そこにタカヒロ氏がキャラやテキストで肉付けしていく……と言う手法が取れたらもっと高評価出来るゲームが出来るかも、と思わないでもありません。

とまぁそんな感じなので、この「君ある」の印象はテレビで言うところの『お笑い番組』と言ったところでしょうか。見ていると何も考えずに笑える。それ以上でもそれ以下でもない。逆に世間で「シナリオがいい」とか「感動する」と言われているゲームは『大河ドラマ』と言った感じ。別にそのどっちが上でどっちが下とかの話ではありません。私の受けた印象の話であり、好みの話でもあり、そしてそのどっちも需要がある、って話です。

それはそうと、よく言えばテンポがいい、悪く言えば何をやりたかったのかわからないままに二言三言だけで終わる日常の描写は、一体何だったのでしょうか。

主人公のキャラ付けがシスコン以外に何も無い上に、全編通してヒロインと恋愛関係に至るまでの過程がキレイに抜け落ちているので、プレイヤーは完全に置いてけぼりをくらいます。ヒロインは錬の、錬はヒロインのどこに惚れたんだっけ? いつの間に惚れたんだっけ? そんなプレイヤーの声を華麗にスルーしていきなりラブラブになる2人に感情移入するのはちょっと無理。

そして途方も無く中途半端な父親の性格や朱子の刺青、そして南斗星の犬小屋など安易かつ短絡な設定や展開があまりにも多く見受けられました。あと一番印象に残っているのがハルが朱子に告白するシーンと言う本筋とは全く関係の無い場面だったってのはどうなのよ?

このゲームで多く目に付いたのは声優ネタでした。たまーにやるぐらいならいいけど、今回は少々しつこいぐらい多用されていて、かつ「それ、いいのか?」と思わず心配してしまうようなネタが散りばめられていたのが気になりました。声優さんも楽しんで演じてらっしゃると思うのでコチラがとやかく言うことではありませんが、ちとハラハラ級のギリギリ(っつーか確実にアウト)なネタの数々には首をひねらずにはいられないような。声優さんのボイスが入ってこそのネタ、と言うよりも、声優さんのパーソナルな部分に頼り切ったネタで笑いを取るのは正直プロの仕事しては頂けません。

声優さんの演技そのものに関しては全く問題無し。そもそも上記のことからも『オーディションは行わず、始めからキャスティングを想定した上でのテキスト作り』だったのではないかと素人ながらの推測も出来てしまうのですが、例えその通りだったとしても何の不思議も無いグッドなキャスティングでした(夢だけがオーディションで選んだ声優さん、って話がスタッフ日記にありましたし)。

既にテレビアニメ化が決まっている本作。登場人物や内容を把握してもらうために、ゲームをアニメ製作側にプレイして貰ってから製作が始まる事や、シナリオのタカヒロ氏がにストーリー構成や脚本で参加する事が公式サイトで発表されているらしいですけど、それって完全に順番が逆ですよね。これも一種の青田刈りとでも言うのでしょうか。んー……なんかちがくね?

ま、ゲームやラノベのアニメ化権利獲得が激戦と化している昨今ですし、これもまた仕方の無いことかもしれません。原作のテイストを活かしつつもアニメとしての面白さを追求した作品になることをお祈り致します。そして何よりもキャスティングに全く変更が無いままアニメ化されることも祈ってます、心から。

なんかひたすら苦言しか述べてないようですが、笑える笑えないで言えば確実に笑えます。ただ、それ以外の点があまりにもお粗末だったかな、と。

と言うワケで、パロディネタが大好きな「シナリオはどうでもいいから、とにかく笑えれば満足」と言う方にはお薦め。「ゲームをやる以上は少しでもシナリオを楽しみたい」と言う方は回避推奨。新ブランドの第一作目ってことで多少のことには目を瞑るにしても、もっと開発期間を長くすることが出来れば、もう少し練りこまれたゲームになったのかもしれないと思うと、ちょっと残念ですね。

 

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