いつか、届く、あの空に。(18禁)
Lump of Sugar

 

「いつか、届く、あの空に。」の感想とちょっとした考察っぽいのをば。

■絵■

原画は萌木原ふみたけさん。初めて萌木原さんの絵に触れましたけど、色塗りの丁寧さも手伝って作品の雰囲気にピッタリで美麗なCGが多かったように思います。一番好きなのは巫女姿ののんが霧の中で立っているCG。あとあまり気にしたことはありませんが、CG枚数も問題無しかと。

■音楽■

ボーカル曲はOPでかかる主題歌、途中でかかる第2主題歌、そしてEDの計3曲。1周目で第2主題歌が流れた時はそのタイミングと相まって結構シビれた。今ではお気に入りの曲。BGMは作品の雰囲気には合ってましたし戦闘シーンの曲は結構好きですけど、ちと演出の面で難アリ。ぶつ切りされてからまた同じBGMが流れ出すとか。

■シナリオ■

代々優れた芸術家を輩出してきた巽家のおちこぼれである主人公・策は、一族から1人”空明市”なる街へ行く必要があると聞かされた時、巽と言う家から逃げるために立候補する。そしてたどり着いた空明市で待ち受けていたのは「巽のヨメ」を名乗る少女・ふたみとの出会い。雲に覆われて決して星空が見えない街・空明市。その雲を払うための「弐壱学園天文委員会」であるふたみとの出会いが、策の人生を大きく変えることになるのだった……と言うもの。

第1部と第2部があり、その展開についてこられるかどうかが楽しめるかどうかのキーポイント。以下クリア順にヒロイン別感想。

▼唯井 ふたみ▼

策のヨメとなるべく一身に奉仕してくる少女。知識に偏りがあり、かなり強情で思ったことは全部口にするため他人と衝突することもあるが、ふたみ自身にはどうして他人が怒るのかがわからない。でも基本的にはとても優しい子で、多くの人間に好かれている。空明市の雲を払う儀式『照陽菜』に並々ならぬ思い入れと意気込みがあり、策と共に臨むことになる。策のことを”お主人ちゃん”と呼ぶのがタマりません。

第1部はふたみと共に照陽菜に向けて突き進む共通パート。ぶっちゃけ照陽菜が成功してればそれだけで1本のシナリオとしても良かったんじゃないか、と思わなくもなく。笑い転げるレベルのテキストと、健気で可愛らしいふたみの描写で”ちょっと不思議な学園ラブストーリー”が展開される……と思わせておいたところで第1部ラストの怒涛の展開。この段階でプレイヤーはある種のふるいにかけられるような気がします。

巽家と唯井家……と言うか雲戌亥家にまつわるふたみシナリオの第2部。これで両家の関係や照陽菜の意味とかが見えてきました。雲戌亥家がただの悪役ではなかったことや、それでも策がふたみのために己を貫いたこと、そして己を捨ててでもふたみを救ったラストの展開は惚れました。静婆さんが喪服を着た上で肩にかけていた艶やかな着物の意味を知った時は正直泣けましたし。あと策の”異能”発動シーンは熱かったです。誰ですか、策の異能がガンダールヴっぽいなんて言ってるのは。

後半は星空を覆う雲となり、更には消えてしまう太陽の代わりとなって世を照らす『蛙蟆龍』となる運命を背負ったふたみよりも活躍していた感のあるメメですが、ここで「なんで攻略キャラじゃないんだ」とか思うことは無いかな。あの立ち位置だからこそメメは映えたのだと思いますし。尿瓶シーンはすげー笑いました。桜守姫家の存在を完全に置き去りにしていた以外はかなり満足なシナリオだったかと思います。

▼桜守姫 此芽▼

正に”お姫様”なお嬢様で、策に対して何やら含むものがある様子。唯井家と対立している桜守姫家の謎に迫るシナリオ。

桜守姫家が魔術師の家系であることが判明して、此芽と策がどんな関係であるのかも明らかになりますが、それ以外はかなり不親切に投げっぱなしなシナリオでもありました。それでも御前の槍が「グングニル」だったり魔術の式がワルキューレの名前だったりした時点で、御前の言う”ご主人様”がオーディンであることや太陽を飲み込もうとしてのがスコールであること(最初はスコールじゃなくてフェンリルだと思ってたけど)が見えてはきましたけど、それでも不親切感は拭いきれないかなぁ。

此芽自身のキャラは実にイイ。お姫様っぽさが全く鼻につかない。

▼明日宿 傘▼

「かさ」ではなく「さん」。おっとりしつつも優しく見守ってくれて、時には温かい助言もくれるパーフェクトな先輩。人智を超えた大食漢でもあり、持っている和傘からはいつでも何でも出てくる(食べ物限定)。策の呼び方は「傘姉」。ふたみシナリオと此芽シナリオがそれぞれの家系にまつわる……と言うよりも限定されたものだったので、傘姉シナリオでは全体を俯瞰するような大団円的シナリオを期待していたのですがそんなことはありませんでした。

なんと言いますか、明日宿家の思想やそれに基づいた行動、その他諸々を含めても全く認めるワケにはいきませんね。戦闘服のセンス以外は。アレは素晴らしいものでした。惚れ直す勢いで。まぁそれはそれとしても、3つのシナリオの中では一番グデグデと言っていいのではないかと思います。終わり方も尻切れトンボ的でしたし、策が傘姉を好きになる過程が完全に抜け落ちているため感情移入も出来ませんでしたし。

かなり簡略化した感想ですが、もっと細かい点に関しては考察っぽいやつの方で書きたいと思います。正直、ネタバレをしないように何かを書くにはあまりにも難しい作品でしたので。

サブキャラとしてはメメとのんがいい味だしてました。特にのんは此芽にくっついてるだけの腰巾着キャラかと思わせて、何気に美味しいところを持っていってますし。巫女姿は正直心が震えました。

別にこの辺のキャラが攻略対象じゃなかったことに対する不満はありません。3つのシナリオで十二分に魅力が発揮されておりますし、シナリオの数が多ければいいってもんじゃないと思いますし。

全編通して言葉遊びと言いますか、伏線的名称が散りばめられていたのも面白かったです。長い説明的文章にややダレがちになる部分も多少ございましたが、笑えるシーンはとことん笑えて、シリアスなシーンはとことんシリアスになるメリハリは秀逸。テキストはかなり好きな部類です。

やはり気になるのは本編中ではほぼ名言されないままに裏設定となっていた北欧神話(主にオーディン)に関する部分でしょう。かなりの独自解釈が加わっているとは言え、あれはそれなりに詳しい人間でないと推測出来る出来ない以前に、全く意味がわからないままになってしまうのではないでしょうか。

オールクリア後に閲覧が可能となるその”裏設定”にしても、それなりに下地が無いと理解しづらいのではないかと思います。オールクリア後になってから出てくる”読み物”で説明がなされる、ってのもかなり不親切と言えますし、その辺を指して『ライターの自己満足』とするのは当然の評価かもしれません。なのでこの作品に関して「ハマる人はどっぷり。ダメな人はばっさり」と評価が真っ二つに分かれてしまうのも無理の無い話。

評価が分かれるとか投げっぱなしとか色々ありますが、私はあえて推す

上記にもある通り自分なりに整理してみたいと思います。もうネタバレを一切気にせず書きますので、未プレイ&プレイ予定の方はこの段階でお帰り下さいませ。



 

予め申し上げておきますが、基本的に以下は私が勝手に推測を大いに混ぜて書いているものです。指摘を頂くのは大歓迎ですが、”勝手な解釈”に対する文句はご遠慮下さい。その危険のある方はお読みなられない方がよろしいかと存じます。


時系列でまとめつつ話をしていこうかと思います。神話を詳しく説明しても仕方ありませんので、もの凄くかいつまんで。あ、もちろん私がこの辺の神話を全て知っていた、と言うワケではありませんよ。神話とかは好きなので元々知っていた部分もありますが、細かいところとかはちょいと調べたりしながら書きました。



そして神話では、オーディンはその蜜酒を神々に振舞った……とされています。が、ここで「いつ空」アレンジが入ります。「スットゥングはオーディンがやってきた時に蜜酒を偽物とすり替えていた」と。

更にスットゥングは神話上”巨人”とされておりますが、「いつ空」アレンジでは”巨人に拾われて育てられた人間の魔術師”と言うことになってます。この”人間”であることが「いつ空」では重要なワケですね。以下では、この2つの「いつ空」アレンジを前提として話を進めます。



ここまでが明日宿家誕生秘話&グングニルと蜜酒が空明市に存在する理由の説明編。そしてスットゥングがオーディンの従者の「二人の内の一人」であるならば、当然残り1人にもスポットライトが当たるワケです。



そんな妖精の暴挙に対抗すべく立ち上がった人間がいました。それが”静”。ちょっと時代をさかのぼって、静がこの物語の舞台に上がってきたあたりから書きますと……。



こうして空明市に雲戌亥・桜守姫・明日宿と言う3つの家系が誕生したワケですが、そんなとこ住みたくないです。



こうして雲戌亥と桜守姫の小競り合いは続くことになるけど、何とか空明市は停滞期に突入。雲戌亥家は100年に1度の蛙蟆龍を執り行い、桜守姫の御前はひたすら死体から槍の欠片採集。明日宿家は傍観しつつも多少は雲戌亥に協力したりしていたのか(そもそも御前が人外の最たるものだし)、いつしか雲戌亥の眷属として見られるように。明日宿家は周りからどう思われようと気にしない大らかでフランクな性格だった……のではなく、そんなのは取るに足らないことだと思っていたとのこと。

そして時は流れて現代に。まずは策やふたみが子供の頃の話。



この後は三者三様の人生を送ることに。

そして策が再び空明市を訪れたことで物語はスタート。



こうして第1部が終了。”ちょっと不思議な学園ラブストーリー”かと思わせておいて後半は怒涛の展開。この先はヒロイン個別ルートへ突入。

その前に「異ならぬ世の終わりより」のラストの部分に注目しておきます。



これはオールクリアに閲覧が可能となる「異ならぬ世の終わりより」と言う裏設定話の性質上、各ルートクリア後におけるオーディンの様子であると思われます。つまりどのシナリオをクリアしようと”ラグナロクは策達の手によって回避された”のは確実。これを念頭に置いて各シナリオを見ていきます。


■ふたみルート■


以上、ふたみシナリオでした。続いて此芽シナリオ。


■此芽ルート■


以上、此芽シナリオでした。続いて傘姉シナリオ。


■傘姉ルート■


さて、これにて全シナリオを振り返ることが出来ましたが、大いなる謎が1つ残っております。それは『策の解対は何を識るものなのか』と言うこと。

本編中では「触れた武器の本質を識る」と語られておりましたが、ふたみシナリオのラストでメメが「策が解対で見ていたのは武器じゃなかった」と言ってます。更にはふたみを追って天空まで昇ったり、自分が語ったインチキ伝説の通りに帰ってきたりと、それでは説明のつかない事象がいくつもございます。とりあえず整理する意味で、改めて策が解対を使ったタイミングを見てみると……

抜けてるのがあるかもしれないけど、とりあえずこんな感じで。こうしてみると解対の発動には策の意図は関係無いことがわかります。また、”強い”武器は直接触れずとも何かしら感じることが出来るようです。

ここまでなら策の解対は「武器を識る」で一件落着だけど、問題なのは太字部分。どう見ても武器とは関係ありません。解対と切り離して考えられればいいんですけど(とにかく凄いことが起こった、みたいに)、少なくとも策が天に昇っていったのは解対によるものだとメメが言っているので無視は出来ません。そうなると不可解な策の帰還も解対によるものと考えたくなるのが人情。

ここで注目したいのは、策が雷切を伝説の通りに使ってみせた事。つまり解対の対象が”思い込んでいる”ことであれば事実であろうが無かろうが、その”性質”を引き出すことが出来る、と。策自身が「自分は『狼殺し』である」と思い込むことで自分自身を『狼殺し』なる武器として扱うことが出来たのもそれが理由。

そう考えると策がふたみやスコールのところまで昇って行けたのは「策がそこまで”届く”と思い込んだ(=信じた、と言い換えてもいい)」からと考えられます。つまり無意識のうちに策は自分自身に解対を用いていたのではないかと。

面白いのはどんなに凄いモノだと思い込んでも姿形は変わらないことですね。雷切はともかくとして、『狼殺し』になった策も見た目は何も変わっていないようです。ふたみからはビンタまでされてますし。正に「本質を引き出す」解対の面目躍如と言ったところ。天まで昇っても普通でいられたのもその辺が理由かと思います。

ふたみシナリオのラストで策がインチキ伝説の通りに帰ってこられたのも、自分の作った伝説を信じていた(=思い込んでいた)から、と考えれば苦しいながらも何とか繋がるかも。「あの状態で?」と言われると厳しいですが……。

そうなるとやはり問題は『解対の対象は何か?』に立ち返るワケです。

 

 

 

ごめん、ギブアップ。

 

 

 

これは本当にわかりませんでした。一度は「解対の対象は武器に限らず”全てのもの”と言っていい。ただし解対の発動には『発動が絶対に必要なタイミングであり、それが策にとって本当に大切な人間のためである場合のみ』と言う条件がある」のではないかとも思ったのですが、実際の解対発動シーンにちとそぐわないのがあると、そんな万能な能力は流石に無いだろうと言う事で却下。

一番単純なのは「解対の対象は『武器と自分自身』」って考えることかなぁ。そうするとメメが言っていた事と微妙にズレがあるけど。


と言う訳で「いつか、届く、あの空に。」の考察っぽいのでした。ここまで長くなるとは思ってなかったので、想定していたよりもかなり時間かかってしまいました……つか超疲れました。ここまでやる必要があったのかと言われると確実に無かったのですが。

あ、あと自分向けに時系列をまとめるために書いたタイムチャートも一応置いておきます。参考程度ってことで。

 

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