群青の空を越えて(18禁)
light

 

■シナリオ■

複雑な政治的・哲学的背景により、日本から関東を独立させようと戦争をしている青年が主人公(決して千葉県に限定した話ではありません)。何のために戦うのか、を激しく問いかける異色作と言えるでしょう。常に死と隣り合わせに生きる彼らの生き様は激しく胸に響くものがありました。ある意味荒唐無稽ですが細やかな写実的表現や心理描写によりリアリティを感じさせる作りとなっております。

攻略対象は5人。そのうち3人が戦争の中で心を通わせていく人間関係に重点が置かれていて、残る2人(うち1人は隠れキャラ?)は戦争そのものに重点を置いたシナリオ。んで全員クリアすると戦争を止めようとするグランド・ルートへの道が開かれます。登場人物にはいわゆるギャルゲーにありがちな”特殊”な設定は無く、誰もが文字通り必死になって生きようとする普通の人達。そんな普通の人達が戦争と言う非現実の最上級たる状況の中で見せてくれる眩いばかりの姿は心を打つものがあります。

 

■絵■

可も無く不可も無く。立ち絵に多少違和感を感じる時もありましたが、慣れれば気にならなくなりました。

 

■音楽■

作品の雰囲気には合っていたと思いますが特に耳に残るような曲は無かったかな。

 

それではシナリオ別感想をクリア順に。

水木 若菜

(一応)メインヒロイン。と言っても特別な設定は何もありません。普通の、本当に普通の女の子で、そんな普通の女の子が自ら進んで戦争をしているところにこの作品の妙があるワケで。まぁ普通と言ってもイザと言う時に見せる”強さ”は並大抵のものではありませんでしたが、これは全キャラ共通で言えること。

シナリオとしては、どんなに若菜を愛していても「若菜のために生きる」ことが出来ない主人公の拘り・我がままに付いていく若菜の一本筋の通った凄まじさがメインとでも言えばいいのか。個人的には主人公の拘りも若菜の”自分を抑える強さ”もあまり好きではないのですが、これは背景を考えるとしょうがないのかも。

あと若菜に関しては榊原ゆいさんの好演が非常に良かった。素の声に近い形で演技が出来たそうですが、それだけに自然で違和感の無い演技だったと思います。

 

日下部 加奈子

主人公達の後輩(みたいなもん)。戦争で兄を亡くしており、兄と同じパイロットである主人公にその面影を重ねている……のはいいんだけど、主人公を「お兄ちゃん」と呼ぶのは個人的にはどうかと。正確には「お兄ちゃん」と呼ばれても私の趣味じゃないので嬉しくないんですよ。背負っているものの重さはヒロインの中でもトップクラス。

その健気さと頑張りっぷりはナンバーワン。守られていたばかりの存在である加奈子が、今度は主人公を守ろうと自分の命すら賭ける姿は正直ジーンときました。そしてラストの全員が己の命と引き換えに加奈子を守ろうとするシーンはヤバかった。あのシーンで加奈子が部隊の人間にキスして回るシーンは独占欲の強い私でも嫌悪感を感じることが全く無く、ただただ胸に悲しみと感動が染み入るばかり。シナリオとしては一番好き。

そして俊治にはどうか幸せになってもらいたい。

 

渋沢 美樹

主人公と俊治の教官。戦争における英雄・シンボル的存在であり、恋人(加奈子の兄)を戦争でなくしている。背負っているものの重さはナンバーワン。かなり頑なに自分の信じるモノを貫く姿はある意味美しく、ある意味痛々しい。なのでキャラ的にはあんまり好きになれないんですが、嫌いになることが出来ない……できるものか!(何故かキレてみる)

 

澤村 夕紀

主人公達を取材するカメラマンにしてジャーナリスト。飄々としているようで実は凄い。シナリオとしては”戦争”と言うものから目を背けがちであった主人公に真正面から捕らえさせる非常に深いシナリオ……なんだけど前の3キャラに比べて何故か凄く短いんですよね。もっと振り下げられれば……と思ったんですが、その辺はグランド・ルートで。別にグランド・ルートが夕紀のシナリオと言う意味ではなく”戦争”に対して立ち向かうって意味で。

 

▼長田 圭子

公式サイトに出てこないので隠れキャラ? でも夕紀シナリオをやれば出てくるし、特に隠れキャラにする意味はないような。んでシナリオは悪くは無いのですが、やはり夕紀シナリオと同様に短くて、もうちょっと掘り下げて欲しかった点もやっぱり同様。

 

▼グランド・ルート

全ての集大成的シナリオ。Hシーンはありません。特定のヒロインもいません(あえて言えば若菜かな)。ちょっと強引な感じもしましたが、青臭い展開は嫌いじゃありません。願わくば彼らの想いが成就されますように……。

 

全体として非常に良くまとまった作品でした。腹をかかえて笑うような展開はありませんし、日常会話にしても誤解を恐れずに言えば面白みの無いテキストだったと思います。普段私が申し上げている『面白い作品は日常会話が重要』と言う主張に反しているかもしれませんが、ここで言っている”面白さ”ってのはイコール”笑える”ではないことに注目。

要はどれだけ惹きつけられるテキストか、ってことです。その意味では”非常に面白い”テキストだったと思うのです。重いテーマに対して真正面から取り組んだ意欲作であると同時に異色作と言えるでしょう。

 

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