【音楽】
OPはとにかく熱い。日常シーンで特に印象に残ったBGMと言うのは無かったのですが、違和感を感じることもありませんでした。それだけ場面場面の雰囲気に合ったBGMが使用されていたと言う事でしょう。戦闘シーンのBGMは熱い熱い熱い。こうこなくっちゃ、と言わんばかりのBGMに満足です。【絵】
原画はニトロプラスの作品で名を馳せている(と言うか私が他に知らないだけかもしれませんが)中央東口氏。熱い絵を描かせたらこの方の右に出る人はいないんじゃないかと。虎太郎先生が燃える炎をバックにキメているCGなんてのはもう最高です。そしてコミカルなシーンでカットインされてくる可愛らしい絵柄のCGがまたほのぼのとしてイイ感じでした。【シナリオ・テキスト】
人間ながらも人間にはありえない能力を行使できる存在『人妖』。普通の人間が大多数を占める現代社会において彼らは迫害される立場にあり、それは人妖である主人公・如月双七もまた同様。幼い頃、両親から引き離されてとある病院に隔離されていた双七は、そこで出会った少女・すずと共に日本で唯一人妖が普通に暮らせる町”神沢市”へ逃亡。そこで2人を待っていたのは、かけがえの無い存在となる友人達や味わったことの無い平穏な生活、そして想像もつかない程過酷な運命。
……ってな按配です。攻略対象はすず、神沢学園生徒会に属する2人、人妖を追う人妖集団”ドミニオン”の隊長・薫の計4人。共通ルートは双七とすずが神沢学園生徒会に属してから少ししたくらいまでですが、ここまでが結構長いです。更にそこからの個別ルートは4つのシナリオで展開が完全にバラバラのためクリアに要する時間はかなり長めと言えるでしょう……が心配すること無かれ。私はそれを「長くてダレる」とは一切感じませんでした。
私が常に提唱している『ゲームの面白さはクライマックスよりも日常会話の面白さ』を見事に満たして頂きました。それはもちろんクライマックスがつまらない、と言う事ではなく、日常の会話で存分に楽しませて頂いた上で、クライマックスの盛り上がりも堪能出来たと言う事です。中央東口氏の原画で熱い展開、と言ったところでどうしても浮かんでくるのはニトロプラスの作品であるところは否定のしようがありません。そして”萌え”ならぬ”燃え”に関して言えばニトロに一日の長があると言わざるを得ませんが、個人的にそれ以外の部分に関しては「あやかしびと」に軍配が上がると言うのが私の感想です。
シナリオは「逃亡・潜入パート」「学園生活パート」「戦闘パート」の3つに分類が可能です。導入で一気に”世界”へと引き込まれる「逃亡・潜入パート」、温かくも笑える展開がてんこ盛りの「学園パート」、そしてシリアスで熱い熱い展開の「戦闘パート」。どれも魅力満載でした。
あえて難点を挙げるとすればエロシーンが『無理に押し込んだ』ように感じられたことでしょうか。全てのエロシーンがいらない、とは申しませんが、明らかに蛇足と思われるものもあったかと思います。18禁PCゲームである以上仕方の無いことかのかもしれませんが、作品のクオリティが非常に高いが故、逆にその点が気になってしまいました。それでは以下にキャラ別感想。クリア順となっております。
◆一乃谷刀子◆
強くて綺麗で優しい刀子先輩。そんな彼女が背負った業はあまりにも重いものでしたが、そこは双七との愛、そして愁厳との兄妹愛で乗り越えて頂きたいところ。
刀子先輩シナリオは途中からもの凄く普通な学園モノっぽくなってきてどうしようかと思いましたが、後半になれば当然の如く一転。めくるめく怒涛の展開が貴方をお待ちしております。エンディングで一番丸く収まってる気がするのがこの刀子先輩シナリオでして、ハッピーエンド至上主義者の私としては一押し……にしたいところではあるんですが、他のシナリオも大好きなんですよね、コレまたどうして。
おおらかで相手を包み込むようなハートの持ち主。純情で初心でヤキモチ妬き。そして実は双七よりも強かったりするところなんて最高です。でも刀子先輩にとって一番の見せ所はすずシナリオの倒れかけの煙突を駆け上って一気に自動車を叩き斬るシーンだったりします、個人的には。◆トーニャ◆
ロシアからの留学生。冷静沈着で、それでいて気の許せる人間に対しては小悪魔的に振舞うところがとても可愛かったり。そんなトーニャが背負っている業は刀子先輩に負けず劣らず重く大きい業。トーニャエンド以外でトーニャの人生がどうなるのかが非常に気になるところではありますが、刀子先輩のバッドエンドでちゃんと神沢市で老衰で死んだっぽい記述があったのでちょっと安心。
”泣かせる”と言う意味ではトーニャシナリオが最強だったと思います。妹への想い、そして兄への想いがプレイしながら胸に染みて染みて……。
チェルノボグとの戦闘では双七があまりにも役に立っていなかったせいか(全くとは言わないけど)、トーニャの活躍が引き立つこと引き立つこと。と言うか刑次郎よりも活躍してないってどうなのよ? あと愁厳がカッコよすぎる……刀子先輩シナリオでもそうでしたが、あまりにもカッコよすぎて惚れそう。
CVは「みずいろ」の日和と同じ籐野らんさんですが、キャラの方向性は全くと言っていいほど逆。今までにもトーニャ系(冷静・小悪魔系)のキャラはございましたが、このトーニャはその中でも抜群にハマり役だったと思います。◆飯塚薫◆
冷徹・冷酷に任務を果たすドミニオンの隊長。同時に双七の心の中にいつまでも残っていた薫お姉ちゃん。他のシナリオではちょい役扱いですが、さすがに自分のシナリオでは面目躍如。輝義との戦闘シーンはかなりシビれましたが、これは薫さんよりむしろ輝義の方に見入ってしまったのは私の不徳の成すところ。
とある理由により薫シナリオではすずが薫に身も凍るほど辛くあたる場面があるのですが、双方に感情移入してるこっちの身としては非常に辛いところ。あ、あとドミニオンの隊長である薫のシナリオだけに、ドミニオンの他の面々にも見せ場があったのが良かったですね。まぁ一奈はどうでもいいとしても零奈とかはいいキャラしすぎなぐらいの勢いで。◆如月すず◆
ずっと双七がいた病院近くの森に住んでいたためか、非常にわがままかつ世間知らず。してその正体は金毛九尾の狐と言う名の大霊獣で双七以外の人間が嫌い、と言うより憎悪の対象。そんなすずが神沢学園生徒会の中で徐々に打ち解けていく様は見ていて嬉しい限り。
すずシナリオの素晴らしいところは『すずを助けるために脇役達が大活躍』するところでしょう。ただのツンデレ眼鏡っ子幼なじみという役割しかなかった伊緒や、「むしろ自分の見せ場はこっちだ」と言わんばかりに大活躍する刀子先輩、そして友人のために未だかつて無い程の”強さ”を見せた美羽などなどなど。正直クライマックスよりも燃えたのはここだけの話です。そして忘れちゃいけないのが脇を固める面々。神沢学園の人間はもとより、ドミニオンの人間や(一奈除く)鴉達、おっちゃんと言った面子も「あやかしびと」の世界を彩る名キャラクターです。カッコよくてカッコよくて余りにもカッコいい愁厳やキメるところはビシッとキメてくれる刑二郎、何回笑わせてもらったかわからないけどやはり”生徒会の人間”にふさわしい心の持ち主だった狩人。そして平穏な生活の象徴のような癒し系キャラであるさくら等、生徒会の人間はもの凄くキャラが立ったメンバーばかり。
敵役とは言えドミニオンについて何も語らなかったら片手落ちもいいところでしょう。零奈には幸せになって欲しいですし、一兵衛の武士っぷりは敵ながら天晴れと言う他に無く、輝義も壊れっぷりと律儀さが同居した愛すべきキャラクターでしたし。何度でも言いますが一奈はどうでもいいとして。そして九鬼先生は……九鬼先生は……九鬼先生は……九鬼先生ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!
そんなこんなで「あやかしびと」。戦闘シーンの描写にもう一声欲しいところではありましたが、それを補って余りあるクオリティだったと思います。めでたく義務ゲー入り。期待していたゲームだったのですが、終わってみれば期待を大きく上回る面白さに大満足でしたとさ。めでたしめでたし。